前回までのあらすじ
第22回 「三国激突」 (6月3日)
諏訪での戦は長引き、その間、晴信とともに過ごした由布姫(柴本幸)は懐妊する。由布姫は勘助に穏やかに礼を述べ、「御館様と生まれてくるこの子を頼みます」と頭を下げる。
甲斐に戻った晴信の元に、同盟を結んでいる駿府の今川家の軍師・雪斎(伊武雅刀)が訪ねてくる。今川家と長く争っている北条氏康が、関東管領との戦いで窮地に陥っているので、この機に北条を討ち取りたい、その援軍を出してほしいというのが、雪斎の用向きだった。
だが、今、武田家が東に軍勢を裂けば、せっかく抑えた信濃の警備が手薄になる。武田の家臣で、密かに雪斎とも氏康とも縁をつないでいる小山田信盛(田辺誠一)は、両家の戦いを傍観し、勝った方につけばいいと意見を述べる。しかし勘助は、今川と北条を武田の仲立ちで和睦させる案を出し、晴信から今川家への使者に立つよう命じられる。
実は雪斎は、武田がそう行動してくれることを見越して、甲斐に援軍を申し入れに来たのだった。そしてそのことを晴信だけが気づいていたことに、勘助は感服する。
関東管領の上杉家が、北条の領地を攻め始める。勘助は上杉軍をこの目で見たいと、援軍に立つことを志願する。そして板垣信方(千葉真一)とともに東に向かい、北条氏康(松井誠)と再会する。本拠地の関東を上杉勢から守りたい氏康は、和睦を快諾。北条は奪っていた今川の城を返し、武田家と同盟を結ぶ。第21回 「消えた姫」 (5月27日)
由布姫(柴本幸)の不気味な笑顔に、勧められた甘酒を飲むのをためらう三条夫人(池脇千鶴)。それを三条夫人の侍女の萩乃(浅田美代子)が奪い取り、飲み干す。しかし甘酒には毒など入ってはいなかった。由布姫は三条夫人の心を試したのだった。
武田家に心を開かず、子もできない由布姫に、武田家の家臣たちは反感を持つようになっていた。彼らを勘助はなだめるが、晴信にもそれを抑えることはできない。とうとう晴信は、由布姫を諏訪に帰す決断を下し、勘助に送っていくように命じる。
勘助は、諏訪の城に郡代としている板垣信方(千葉真一)の判断を仰ぎ、姫の思い出の詰まった城に入れては恨みを増すだけだと、由布姫には湖のほとりの小坂観音院に入ってもらうことにする。だが準備を整え、いざお連れした輿の中には、由布姫の侍女・マキ(おおたにまいこ)が自害して果てていた。
姫の姿はどこにもなく、勘助は、由布姫が晴信を討つため甲斐へ向かったのではないかと考え、雪の中、必死に由布姫を探し回る。
夜になり、やっとのことで勘助は、山中のお堂の中にいた由布姫を見つける。由布姫は「あの方のみしるしをいただきに甲斐へ向かおうとした。でももうそれもできない」と苦しい胸のうちを語る。勘助は「この勘助といっしょに逃げてくだされ」と申し入れるが、由布姫は「あの方と離れて暮らすなどできない」と泣き崩れる。勘助はこの時初めて由布姫が晴信のことを慕っていることに気づく。由布姫は父の仇を討つこともできずに、正妻のいる晴信への恋に苦しむ自分の心を恥じて張り裂けそうになっていた。由布姫は勘助に、「助けてほしい。殺してほしい」と訴える。だが勘助は、寒さに凍える由布姫の体をさすりながら、小さなことだと笑い飛ばす。「殿は天下人になられるお方。その子は天下人の子。そうなれば甲斐も諏訪もない。勘助がそうさせる、お信じくだされ」と。
勘助の予言どおり、その後まもなく晴信は諏訪に出兵し、由布姫と再会する。第20回 「軍師誕生」 (5月20日)
大井貞隆(螢雪次朗)をはじめとした武田に恨みを持つ者たちが占拠した長窪城へ出陣した武田勢は、六千の兵で城を囲む。その軍議の場で、事前に勘助と話し合った作戦を話す晴信に対し、重臣の諸角虎定(加藤武)はいっそのこと勘助を軍師にしてはどうかと勧める。そのほうが自分たちも作戦についての意見を言いやすいと。それを受け晴信は、このたびの城攻めがうまくいけば、勘助を軍師にすると宣言する。
そのころ長窪城内では、集まった武将の一人、相木市兵衛(近藤芳正)が突如、大井を裏切り反乱。実は勘助は海ノ口城でともに戦った相木と内通していたのだった。そこに武田勢が乗り込み、大井勢は総崩れになる。
大井を頼って長窪城に集まっていた兵の中には、平蔵(佐藤隆太)とヒサ(水川あさみ)、矢崎十吾郎(岡森諦)の姿もあった。勘助は平蔵に武田の軍門に下らねば斬ると脅すが、平蔵は頑として聞き入れず、勘助に歯向かう。やむを得ず斬ろうとした勘助を、教来石景政(高橋和也)が止めに入り、三人を逃がす。
論功行賞で、勘助は軍師に取り立てられ、晴信から陣羽織を贈られる。
また、晴信は勘助に、半年経っても由布姫(柴本幸)が心を開かないとこぼす。そして同じ武田に恨みを持っていた勘助には心を開くだろうと、勘助に話を聞きに行くよう命じる。勘助に由布姫は、「子を作る務めは果たすが、心までは渡さぬ」と言い張る。
一方、勘助は、信濃に行く前に、太吉(有馬自由)に真田幸隆(佐々木蔵之介)に会いに行くように命じていた。だが幸隆にとって武田は敵、会う前に幸隆の妻・忍芽(清水美砂)に追い返されていた。そのころ、落ち延びた平蔵たちは、休息を取ったあばら家で、身を潜めていた真田幸隆と再会していた。幸隆は平蔵に、諏訪を落ち延びた者たちが村上義清(永島敏行)を頼って佐久の布引城に集まっていると教える。いっしょに行こうと誘う平蔵に、幸隆は、村上は仇敵だと断る。
由布姫は三条夫人(池脇千鶴)とともに、父・諏訪頼重が切腹した東光寺に詣でる。そしていっしょに参ってくれたお礼にと、諏訪の縁者から贈られたという甘酒を勧める。第19回 「呪いの笛」 (5月13日)
三条夫人(池脇千鶴)は再び由布姫(柴本幸)を訪ね、晴信のことを私利私欲で諏訪を攻め取るような人ではないと、その気質が誠実であることを説き、自分が嫁入りするときに京から持ってきた笛を贈る。そして「御屋形様をお頼み申します」と頭を下げる。
晴信は由布姫を側室に迎えるのに、諏訪と武田の結びつきを知らしめるため、正式な祝言の形を取る。諏訪家が生き残るためには、武田に頼るしかないことを理解している諏訪の生き残りの家臣たちは、このことを喜んだ。しかし由布姫の心は違った。その姫の心を知る侍女の志摩(大森暁美)は、寝所に向かう由布姫に懐剣を渡す。
閨で晴信と対面した由布姫は、三条夫人から贈られた笛を吹き続け、一晩中晴信を寄せ付けない。翌日、またも笛を吹き続ける由布姫に、晴信は笛を取り上げる。由布姫は隠し持っていた懐剣を抜き、晴信に切りかかるが、晴信に叩き落されてしまう。晴信は、「そなたに討たれてやるわけにはいかぬ。わしとそなたは一人の男と女ではなく、国と国じゃ」とその立場を諭す。この夜から、武田への怨念がこもっていたような由布姫の笛の音が変わったことを、三条夫人だけが気づいていた。
一方、勘助は、武田の次の進軍先になる信濃を調べるために、一人旅立つ。そして日は過ぎ、晴信の元に勘助が戻らないうちに、信濃の大井貞隆が武田の領地の端にある長窪城を攻め落としたという知らせが届く。第18回 「生か死か」 (5月6日)
寅王丸を領主とし、晴信はその後見として諏訪を手中に収める。そして由布姫(柴本幸)を甲斐に迎え、板垣信方(千葉真一)の屋敷に客人として留め置く。だが由布姫は、武田に対する敵愾心を解こうとはしない。
城では由布姫をどうするかの会議が行われていた。晴信は由布姫を側室にと望むが、家臣たちは、武田に恨みを持ち血の気の荒い由布姫を晴信の閨に送ることを危惧して反対する。だが勘助は、晴信と由布姫の間にできた子を諏訪の領主にすることが、諏訪を治める最良の手段だと考える。
勘助は由布姫に、晴信の側室となることを手を変え品を変え、説得しに行くが、由布姫をますます怒らしてしまう。てこずっている勘助に晴信は、歌を書き記し、これを届けよと命じる。その晴信のあまりにへたくそな歌を見て、勘助の帰った後に、思わず由布姫は笑いを漏らす。
甲斐に戻って以来、心臓を病んでいた禰々(桜井幸子)が、とうとう亡くなる。日をおかず、産まれたばかりの晴信と三条夫人(池脇千鶴)の三男も死に、武田家は暗く沈みこむ。
いまだ武田に屈しようとしない由布姫の元に、武田家重臣・甘利虎泰(竜雷太)が訪れ、自害を迫る。甘利が由布姫を逆上させ、自分を討たせることで武田家を守ろうとしたことを由布姫は見抜き、それに続いて訪ねてきた三条夫人も心から晴信のことを慕っていることを感じ取り、勘助に武田晴信とはそれほどの者かと尋ねる。勘助は自らの過去を語り、晴信によって自分は恨みの心だけを討ち取られ、大望を抱くことを教えられたことを話す。勘助の話を聞いた由布姫は、晴信の側室となる決心をする。第17回 「姫の涙」 (4月29日)
勘助は由布姫(柴本幸)に「お逃げ下され」と告げ、変装用の着物を用意する。そして一人の女人として望むように生きて下されと。由布姫は勘助の言葉を信じ、夜陰に紛れ、城を出る。
そのころ甲斐では晴信が、勘助が由布姫を助けたことに興味を示し、由布姫の命を救うため、側室にしようと考えていた。家臣たちは寝首をかかれると反対の意を示すが、晴信は聞き入れない。
晴信が由布姫を側室にするという噂は勘助の元にも届き、勘助は敬愛する晴信に由布姫を預けるというこれ以上はない案に喜び、すぐさま由布姫を追いかける。
勘助が追いついた時、由布姫は夜盗に襲われていた。勘助は由布姫を助け、甲斐の晴信の元へ行くように言うが、由布姫は父の仇の武田の元へなど行く気はないと突っぱね、どうかこのまま見逃してほしいと頭を下げる。勘助は、先ほどの夜盗は自分が雇った者たちで、勝手なことをして晴信に叱られたと説明。由布姫は勘助を信じていたのに裏切られたと涙を流す。しかしそれは、由布姫の恨みを武田ではなく自分一人へ向けようとする勘助の嘘だった。
高遠頼継(上杉祥三)が諏訪全土を手に入れようと兵を上げる。それに対し晴信は、諏訪の正当な後継者が寅王丸であることを示すため、まだ乳飲み子の寅王丸を禰々(桜井幸子)から引き離し旗印にして、諏訪鎮圧へと出陣する。
一方、西美濃の地侍の元へ嫁いだヒサ(水川あさみ)が、先の戦が武田の調略であったことを父・矢崎十吾郎(岡森諦)に伝えるため、命がけで戻ってきていた。ヒサと再会した十吾郎(岡森諦)もまた、武田がだましたことを知っていた。十吾郎は諏訪を落ち、武田を撃つことを決意し、ヒサを平蔵(佐藤隆太)に託す。
晴信は高遠頼継を撃ち取り、諏訪全土を抑えるようになる。第16回 「運命の出会い」 (4月22日)
諏訪頼重(小日向文世)とその妻・禰々(桜井幸子)、嫡男・寅王丸は甲府へと護送された。晴信の母・北の方(風吹ジュン)は禰々との再会を喜び、暖かく迎え入れるが、頼重は、晴信が高遠頼継(上杉祥三)との話し合いをつけ戻ってくるまでの間、妻子から離され、寺に幽閉される。
諏訪の領主の座を望む高遠頼継に対し晴信は、出陣の約定を違えたことをあげつらえ、武田家の家臣としてなら認めると強硬な姿勢を崩さず、諏訪領の半分を武田家のものとする。
甲斐に戻ってきた晴信は、諏訪領を甥の寅王丸に継がせると宣言し、頼重は切腹を強いられる。その知らせを持ってきた勘助に、頼重はくれぐれも寅王丸を頼むと言い残し、切腹。これで勘助の思惑通り、武田は戦わずして諏訪を手に入れた。
諏訪の桑原城には、まだ頼重の娘・由布姫(柴本幸)が数名の家臣とともに立てこもっていた。頼重切腹の報に、彼らは憤る。一方の晴信は、諏訪の残党攻めを板垣信方(千葉真一)と勘助に命じる。「後に憂いを残すな」という命は、寅王丸以外の諏訪の血を引く者を根絶やしにすることを意味していており、勘助も同じ考えだった。
攻めてきた武田軍に対し、諏訪の残党は由布姫に、辱めを受ける前に自害をと説得していたが、由布姫は拒否。そこに勘助と板垣が現れる。由布姫は、「自ら命を絶つのは嫌」と勘助に切りかかり、「生きてこの世を見たい。どんなに辛くても生きていたい」と訴える。その胸には、かつて晴信が嫁に行く禰々に贈り、護送される禰々から由布姫に託された摩利支天像がかかっていた。由布姫の言葉にミツ(貫地谷しほり)の言葉を思い出した勘助は、由布姫を殺すことを思いとどまる。第15回 「諏訪攻め」 (4月15日)
諏訪頼重(小日向文世)と晴信の妹・禰々(桜井幸子)との間に、嫡男・寅王丸が産まれた。その知らせを機に、晴信は諏訪攻めを開始する。
諏訪の地侍・矢崎十吾郎(岡森諦)の食客となっていた教来石景政(高橋和也)は、武田家と高遠家が手を結び、諏訪は挟み撃ちになる、西美濃の者たちはすでに裏切ったと、十吾郎を不安にさせる。
約束どおり高遠頼継(上杉祥三)の援軍として出陣した武田勢だが、高遠の軍は一向に動こうとしない。頼継は、晴信が頼重と密かに手を結び、自分を裏切るのではないかと疑っているのだった。晴信が表立って攻めれば、人質の禰々を救うことはできない。武田の五千の兵に、わずか一千で挑もうとする諏訪軍に対し、勘助は篝火を焚き、さらに大軍に見せかけ、戦わずに諏訪軍を撤退させる。
兵を引き上げた頼重は居城の上原城を捨て火を放ち、もっと奥の桑原城に立てこもる。城が燃えているのを見た頼継は、勘助の思惑どおり武田と諏訪の戦火だと思い、晴信を信用して参戦。それを知った桑原城では逃げ出す者が続出し、頼重に従う者はわずか20人となる。頼重は討ち死に覚悟で打って出ることを決意するが、そこに武田家重臣・板垣信方(千葉真一)と勘助が和睦を申し出に現れる。
板垣と勘助は、今度のことは晴信の諏訪に対する裏切りではなく、諏訪が晴信を裏切ることを恐れての行為だと説明。だが頼重の元には、伝兵衛(有薗芳記)とつなぎを取っているところを十吾郎と平蔵(佐藤隆太)に見つかり捕らえられた教来石がいた。だが教来石は武田も裏切った者として切りかかろうとする勘助と、寅王丸に諏訪を継がせると言う板垣の条件に、頼重は屈服を決意しかける。そこに頼重の娘・由布姫(柴本幸)が「だまされてはなりませぬ」と割って入ってくる。第14回 「孫子の旗」 (4月8日)
諏訪頼重(小日向文世)は、盟約を結ぶ武田家に何の相談もなく佐久に出陣し、関東管領の上杉家は戦わずして頼重と和睦を結ぶ道を取った。諏訪家は労せずして佐久を手に入れたことになる。
そんな諏訪家に対し、甲斐の武田家中ではすぐに出陣すべきという意見が出ていた。だが勘助は、今ではなく、時を見て出陣すべきだと述べる。勝機がなくなると反対されるが、勘助は、勝ち目は作ればいいと言ってのける。今は国作りをすべきだと考えていた晴信も、勘助に同意する。
諏訪には、晴信の妹・禰々(桜井幸子)が人質として嫁いでいた。武田家としては、禰々に被害が及ばないように戦を構えるため、諏訪とその分家・高遠とを対立させ、武田家は高遠の援軍として出陣しようと目論む。勘助は同じ武田家の家臣・教来石景政(高橋和也)と共に高遠頼継(上杉祥三)の元へ。諏訪家に戦を仕掛けることを勧めた上で、武田家が先陣をきる、いや先陣は頼継に任せ、武田家は援軍につくと、二人でもめてみせる。頼継は晴信が家臣の意見もまとめられない無能だと侮り、後には甲斐も滅ぼそうと、先陣を快く引き受ける。
景政は晴信から、そのまま諏訪の間者になるよう、命を受けていた。諏訪の地を歩いていた景政と勘助は、諏訪の地侍・矢崎十吾郎(岡森諦)に奉公している平蔵(佐藤隆太)に出会う。平蔵から十吾郎に紹介された景政は、浪人と偽り、諏訪家へ仕える口利きを頼む。
甲斐に戻った勘助は、春日源五郎(田中幸太郎)が晴信の近習に取り立てられたと知って驚く。源五郎は、国作りを進める晴信から意見を求められ、勘助から教わった孫子の教えを述べ、晴信の目に止まったのだった。勘助を驚かせたのはそれだけではなかった。晴信が新しく作った甲斐の旗には、勘助が晴信に孫子の言葉の中でも好きだと話した「風林火山」の文字があったのだった。第13回 「招かれざる男」 (4月1日)
勘助は、戦さながらでないと興が乗らない、庭を血で汚したくないと理由をつけ、原虎胤(宍戸開)との立会いを、翌日に延ばし、場所を池の傍に変更させる。
そのころ、晴信の次男は疱瘡を患い、生死の境にあった。晴信は、このような時に血を見ることを疎い、勘助が他の者を殺したときには、その始末を板垣信方(千葉真一)に任せると、密かに命じる。
翌日、雪の降る中、主従一同の前で向き合った勘助と虎胤。勘助は、自分は足が悪く死角に回り込まれれば勝ち目がない、またそのような者を討ち取ったところで手柄にならないと、虎胤を挑発して、二人の条件が同じになるよう、池に浮かべた舟の上で戦いたいと申し出る。虎胤に異存はなく、二人は勘助が昨夜のうちに頼んでおいた、勘助が寝起きさせてもらっている屋敷の子・春日源五郎(田中幸太郎)が用意した舟で、池の真ん中に浮かべた舟に移動する。
虎胤の振るう刀を避けた勘助は、舟底に穴を開け、源五郎の舟に飛び移る。一人浸水する舟に取り残され、慌てる虎胤に勘助は綱を投げ、その端に刀を当てる。泳げない虎胤は降参する。勘助は晴信の思いを汲み取り血を流すことなく、策略を使い、戦わずして勝ちを収めたのだった。見ていた他の家臣たちも、確かにこれは戦であると、勘助の知略を認めた。
家臣として認められた勘助は、晴信から屋敷を賜る。そこには葛笠村にいた太吉(有馬自由)が、一家を引き連れて、勘助の家来にしてもらおうと、待ち構えていた。
一方、晴信の次男は快方に向かうも、その代償に視力を失ってしまう。勘助の目もまた疱瘡で失ったものだと知った三条夫人(池脇千鶴)は、勘助が武田家に不幸をもたらすのではないかと恐れる。その不安は的中。関東管領の上杉家が、先代の信虎が諏訪頼重(小日向文世)と攻め落とした信濃の佐久に、攻め入ってきたとの知らせが届く。第12回 「勘助仕官」 (3月25日)
晴信は家臣の前で今後の抱負を述べ、間違った道に進んでいると思ったときは遠慮なく進言するように一同に申し渡す。そして家宝の前で誓いを立て、武田家家督を受け継ぐ。
一方の勘助は、今川家からは褒美だけもらい、いまだ元の荒寺で浪人暮らしをしていた。そこに青木大膳(四方堂亘)が褒美の金子をせびりに来る。勘助と同じく今川家に仕官する気のない青木が、駿河に来ている板垣信方(千葉真一)に取り入り、甲斐の武田家に仕官するつもりだと聞いて、勘助は青木に板垣を襲えと助言。そこを自分が助けに入り、板垣に恩を売って仕官した後、青木の口利きをすると約束する。
板垣は、信虎の側女を駿河まで送り届けに来ていた。その帰り道を、青木は人間違いの振りをして襲い掛かる。策略どおり勘助が助けに入り、もみ合いながら茂みの中へと移動した二人。ところが青木は勘助に襲い掛かる。腕を切られながらも勘助は、知略で青木を討ち取る。
再び板垣の元へ戻った勘助は、武田家に仕官したいと平伏する。だが板垣は、勘助の謀をすべて見抜いていた。勘助を討とうとする板垣に、勘助は、自分は一度、海ノ口城で死んでいると言う。その勘助の命を取らずにおいたのが晴信であることを思い出した板垣は、甲斐に戻り、晴信の判断を仰ぐ。晴信は、勘助が板垣が自分を討てないことを見越して、命がけでこの芝居を打ったことを看破し、また板垣の、仕官をしたいと願う心は真だったとの言葉を信じ、勘助を召抱える決断をする。
勘助の元に伝兵衛(有薗芳記)が、百貫与えるから甲斐に来いと、使いに来る。勘助は世話になった庵原忠胤(石橋蓮司)に礼を言い、また忠胤も快く勘助を送り出してくれる。四十二になって、やっと勘助は念願の仕官が叶ったのだった。
武田家重臣が居並ぶ中で、勘助は晴信に対面する。晴信は勘助を二百貫で召抱えると宣言、足軽頭を命じ、「晴」の字を与える。家臣たちは破格の待遇に危惧を抱き、勘助の過去の実績を問い、何一つ実績を持たない勘助に不信の目を向ける。だが晴信は、海ノ口城を落としたのは勘助のおかげ、その後今まで駿河に潜んでもらい、信虎を迎えに来てもらったのだと説明し、家臣たちを黙らせる。
だが家臣たちの疑念はそれで終わらなかった。勘助の剣術を見たいと城中に呼び出し、立ち会うようにと強制する。真剣でしかやる気が起きないと言った勘助に、晴信は鬼美濃の異名を持つ原虎胤(宍戸開)と立ち会うように命じる。第11回「信虎追放」 (3月18日)
武田信虎(仲代達矢)が駿河に出向いた後の甲斐では、晴信が家臣一同と弟・信繁(嘉島典俊)を集め、父・信虎をそのまま追放することを宣言する。晴信は信繁に、力で押さえつけるのではなく心で従ってもらいたい、力を貸してほしいと頭を下げる。信繁は、父を背いた晴信を称え、これで晴れて兄上に従いたいと臣下の礼を取る。信繁の言葉で、晴信につくことに難色を示していた家臣も決意を固める。
また、晴信の決意を聞いた母・大井夫人(風吹ジュン)は、出家を決め、晴信には「父を越えて行きなされ」と励ます。
そんなこととは知らずに駿河で機嫌よく過ごした信虎を見送った今川義元(谷原章介)と寿桂尼(藤村志保)は、勘助を召し出し、信虎を傷つけることなく迎えることを命じ、身なりを整えるよう眼帯と着物一式を取らす。準備をする勘助に、庵原忠胤(石橋蓮司)の嫡男・幸正は、命を落とせと言っているようなものだと勘助の身を案じる。そこに駿河での仕官を望む青木大膳(四方堂亘)が現れ、自分も連れて行けと言い出す。
国境では、晴信と武田家の家臣団、そして信虎が目をかけていた信繁が、信虎を待ち構えていた。武田の兵たちは信虎に槍を向け、晴信は信虎に追放を宣言する。そこに追いついた勘助は、信虎に迎えにきたと告げる。家臣たちと信繁の顔を見て、帰るべき国がないことを悟った信虎は、勘助に大儀であると答え、引き返す。
だがその帰路の途中、ミツの仇として信虎を見る勘助の殺気を察した信虎は、突如馬を走らせ、勘助に襲い掛かる。袖を切られた勘助もまた、信虎に向かう。だが二人が対峙する中、青木が信虎に襲い掛かり、信虎は落馬、額を切られる。地にひざをついた信虎に、刀を突きつける勘助。信虎は死を覚悟するも、「わしを斬ってもなんにもならぬ。武田には晴信がおる」と。信虎も心の底では晴信の器を認めていた。その後、信虎は隠居し、すぐに出家する。第10回 「晴信謀反」 (3月11日)
伝兵衛(有薗芳記)が今川家の軍師・雪斎(伊武雅刀)に持ってきた手紙には、晴信が、父・信虎(仲代達矢)の悪行を上げ、そのため甲斐から追放するので、その身を駿河で預かってほしいという旨が書かれていた。今川家にはもう一通、信虎からの、晴信の身を預かってほしいという手紙も届いていた。二通を前に、雪斎と今川義元(谷原章介)、寿桂尼(藤村志保)はどちらにつくべきかを相談し、若い方が今後御しやすいと、晴信に味方することを決める。
一方、板垣信方(千葉真一)は、他の武田家の重臣たちに、晴信の決意を告げ、晴信に味方するよう説いて回っていた。そうとは知らない信虎は、信濃に出兵。小豪族を次々と滅ぼし、快勝する。真田幸隆(佐々木蔵之介)も落ち、関東管領・上杉家を頼り上州に逃れる道中に、勘助が現れる。幸隆は勘助に一緒に来るかと誘うが、勘助は頷くことができない。そんな勘助に幸隆は、武田はいつか自分が滅ぼすと宣言し、去っていく。
晴信の元に、義元から委細承知の文が届く。そして凱旋した信虎は、義元からの、嫁いだ娘の顔を見にお訪ねくださいとの誘いの文を受け取り、なんの疑いもなく、駿河に出向く。
一方、今川義元は、誰に信虎を迎えに行かすか頭を悩ませていた。裏切られたと知った信虎を宥められる器量を持ち、なおかつ死んでも惜しくない者という注文に、雪斎は一人心当たりがあると。再び庵原忠胤(石橋蓮司)の世話になっていた勘助は、庵原からその使者を頼まれ、引き受ける。庵原は、信虎も勘助も血を流さないようにと言い含める。第9回 「勘助討たれる」 (3月4日)
海ノ口城を攻め落とした晴信は、兵を殺さず生け捕りにする。屋根裏に潜み、晴信軍の追随から逃れた勘助と平蔵(佐藤隆太)だったが、板垣信方(千葉真一)と話す晴信を、平蔵は弓で狙う。だが矢は板垣に防がれ、見つかった勘助は、晴信の前に引き出される。
勘助を家来にした自分が始末をつけると言う板垣を、晴信は制す。だが平賀の兵に、勘助は軍師をしていたと告げ口され、ますます板垣は憤る。晴信は自らが手を下すと、板垣を下がらせ、勘助の首に刃を当てる。だが晴信は刃を振り下ろさず、寸止めで「偽軍師・山本勘助の首討ち取ったり」と勝鬨を上げ、引き上げて行く。残された勘助は、生き恥だ、殺せと訴えるが、板垣は「自ら地獄へ参れ」と去って行く。
帰国した晴信を、信虎(仲代達矢)は誉めようとはしなかった。そして三年が過ぎ、晴信にも嫡男・太郎(後の義信)が生まれる。
信虎は、諏訪家と同盟を結び、晴信の妹・禰々(桜井幸子)を諏訪頼重(小日向文世)に嫁がせる。そして自らも諏訪家を訪ねる。そこには、失意の勘助に別れを告げられ、行き倒れていたところを諏訪家の家臣・矢崎十吾郎(岡森諦)とその娘・ヒサ(水川あさみ)に助けられた平蔵が居た。だが平蔵は信虎を討とうとはせず、今は命の恩人の十吾郎とヒサのために生きると考えを改めていた。
信虎は、頼重が婚姻前に側室に生ませた娘・由布姫(柴本幸)を見初め、妾に差し出すよう、頼重に言う。
新年の祝いの席で、信虎は晴信の弟・信繁(嘉島典俊)に杯を取らせ、晴信には駿河へ行くように勧める。
飢饉に苦しむ領民を省みることなく、新たに戦を起こそうとする父・信虎に、晴信は謀反を決意。板垣にその意を伝え、もし父に味方するつもりならば今ここで自分を斬れと背を向ける。
板垣は駿河の今川家の軍師・雪斎(伊武雅刀)に文をしたため、伝兵衛(有薗芳記)に渡す。駿河に着いた伝助は、晴信に完敗したことで気力を失い無為に日々を過ごす勘助を見つける。第8回 「奇襲!海ノ口」 (2月25日)
真田幸隆の使者として海ノ口城を訪れた勘助。城主・平賀源心(菅田俊)は、勘助が戦に通じていると知って、城を見た感想を求める。勘助は、火矢を射掛けられても燃えないように城壁に泥を塗ることを提案する。
一方、武田信虎(仲代達矢)は八千の兵を率い、力攻めを仕掛ける。一日で落とせると豪語した武田勢だか、少数ながら海ノ口城の守りは固く、三日経っても落とすことができない。勘助と源心は、雪が降り出し武田軍が引くまで持ちこたえるつもりだった。
信虎は井戸の水の道を切る作戦を取る。しかしそれを見抜いた勘助は、甕や壷を用意させ、水を蓄えると同時に、水の入った甕をあちこちの地面に埋めさせる。甕の水の揺れから、地中を掘り進んでくる武田軍の居場所を突き止めた勘助は、こちらからも穴を掘り、奇襲をかける。
そうこうするうちに一ヶ月が過ぎ、雪が降り始める。兵糧の尽きた武田軍は、撤退を決意。戦の間、後詰を命じられ、まったく出番のなかった晴信は、しんがりを願い出る。
圧倒的兵力の差に屈することなく武田軍を追い払った城内では、勝利の宴が開かれる。しかし勘助は、しんがりが晴信だと聞いて、奇襲があると見る。だが勘助の注意を源心は一笑。
雪の中を十里も撤退した晴信の軍は、そこで休憩を取る。そして晴信は、ここから引き返して奇襲をかけることを宣言。兵が油断しきっていた海ノ口城は、晴信のわずか三百の兵に落とされる。第7回 「晴信初陣」 (2月18日)
北条氏康(松井誠)に勘助は、武田への恨みを晴らすために花倉の戦に加わり、受けた恩を返すために今川に味方したことを説明し、縄は解かれる。氏康は勘助を酒席に誘い、恨みは私欲、戦は欲のためにするものではないと説く。だが勘助をそのまま去らすのは惜しいと、間者にする。「恨みを忘れ、大望だけを抱け。さすれば本当の敵が見えてこよう」と言い、その真実が見えるようになったら戻って来いと命じる。
今川と和睦し、後顧の憂いがなくなった武田信虎(仲代達矢)は、冬になったら信濃を攻めると宣言。晴信の初陣が決まる。妻の三条夫人(池脇千鶴)に心配される程、信虎の晴信に対する不信は強く、晴信はこの戦で手柄を立てようと強く心に誓う。
一方、小田原を出た勘助も、山伏姿で諸国を流れ、信濃へと入っていた。そこで馬を逃がしてしまい必死で追いかける平蔵(佐藤隆太)を見かける。勘助は手際よく馬を捕まえ、平蔵を助ける。それを見ていた近くの郷士・真田幸隆(佐々木蔵之介)は、諸国の話を聞きたいと勘助を屋敷に誘う。
平蔵は武士になってミツの仇を討ちたいと、幸隆の家来になっていたのだった。勘助が浪人だと聞いた幸隆は、その多才振りを見抜き、近々武田と戦になるので力を貸してほしいと勘助に申し入れる。そして恨みは戦で力になる、要は使いようだと笑う。
いよいよ海ノ口城に武田の兵が迫る。幸隆の使者として海ノ口城に向かう勘助に、平蔵もついてくる。第6回 「仕官への道」 (2月11日)
甲斐の武田信虎(仲代達矢)は家臣たちに、敗戦した福島家の落ち武者狩りを命じ、また福島の家臣を匿うことを禁じる。そしてよしみを通じていた福島越前守(テリー伊藤)を匿った武田家家臣の前島(塩野谷正幸)の家に、小山田信有(田辺誠一)を差し向け、福島を討ち取るとともに、前島も処分させようとする。家臣を処分することに反対の意見を述べた晴信は、信虎の怒りを買うが、婚儀を控えていることもあり、許される。今川家当主の寿桂尼(藤村志保)の紹介で、京の公家・三条夫人(池脇千鶴)と晴信の婚儀が行われる。
一方、勘助は伝助を締め上げ、武田が出陣しなかった裏には、雪斎の暗躍があったことを知る。また、寿桂尼と今川義元(谷原章介)に呼ばれ、今回の働きに対し望むだけの恩賞をやると言われ、勘助は恩賞の代わりに今川家の家臣となることを望む。だが義元は「世にその顔を見て過ごせと言うか」と恫喝。家臣の道は閉ざされるが、駿河から出ることも許されず、見張りをつけられる。
勘助は今川が武田と和睦したと知り、今川にいても武田を討てないと分かる。そんな中、外出先で花倉城攻めの時に見知っていた青木大膳(四方堂亘)と出会う。今川の援軍に来ていた北条家の家臣だった青木は、乱取りを叱責され、北条家を辞めていた。北条は上杉の間者に気づかない阿呆だと罵った青木は、勘助に今川家への取り成しを頼む。だが勘助は逆に青木を利用して、追っ手をまき、北条家の小田原へ。間者の情報を持って、北条家の嫡男・氏康(松井誠)に会う。だが氏康はすでに間者に気づき、飼いならしていた。氏康の眼力を知った勘助は、家臣にしてほしいと頼み込む。しかし北条に逃れ落ちていた福島越前守の嫡男・彦十郎(崎本大海)が勘助の顔を見て、今川の手下だと叫び、勘助は捕らわれてしまう。第5回 「駿河大乱」 (2月4日)
駿河では、正妻の子と妾の子の家督争いが起ころうとしていた。勘助が身を寄せる庵原忠胤(石橋蓮司)の元に、雪斎(伊武雅刀)が訪ねてくる。京で僧をしていた彼は、忠胤の腹違いの弟で、今川家当主の寿桂尼(藤村志保)に呼び出されたのだった。雪斎は、すべて自分と寿桂尼の実子・梅岳承芳(後の今川義元/谷原章介)に任せておけと、忠胤に告げる。
忠胤は勘助を寿桂尼に会わせる。勘助は寿桂尼に、今川家の中に武田家に内通する者がいると話し、また襲われる寿桂尼を身をもって助ける。
忠胤は勘助が寿桂尼につくことにより、勘助が、対立する福島越前守に仕える兄・貞久(光石研)と敵どうしになることを心配するが、勘助はいざとなれば兄を討つ覚悟だった。母の墓の前で貞久に出会った勘助は、福島を裏切ることを勧めるが、貞久は聞き入れない。
一方、雪斎は、密かに武田信虎(仲代達矢)の元を尋ね、嫡男・晴信の縁談を勧める。京の公家の出の寿桂尼を通じて公家の姫を娶り、今川家と武田家のよしみを通じたいと言う。
いよいよ花倉の乱と呼ばれる戦が始まる。武田の援軍を待ち、花倉城に立てこもる福島勢。勘助たち庵原勢は、その武田の援軍を討つ役となる。ミツの仇の信虎を討とうと待ち構える勘助だが、待てども武田軍は来ない。信虎は雪斎の申し出を受け入れ、福島を裏切ったのだった。
孤立した花倉城は炎上。逃げ出す福島越前守(テリー伊藤)を追う勘助だが、その前に貞久が立ちふさがる。主を逃がすことができた貞久は兜を脱ぎ、勘助に山本家を継ぐように告げ、自害する。第4回 「復讐の鬼」(1月28日)
キジを射止めて帰ってきた勘助は、ミツが死んだことを知らされる。武田信虎(仲代達矢)が放った矢は、ミツが首から下げていた摩利支天の像に当たり、ミツは無事だったが、信虎はミツに近づき、腹を刺したのだった。敵討ちに逸る伝助たち。そこに武田家の重臣・板垣信方(千葉真一)たちがやってくる。
板垣は伝助に、自分に仕える気はないかと、言い出す。隠れて様子を見ていた勘助は堪らずに飛び出し、板垣に襲い掛かる。板垣と渡り合った勘助だったが、最後には板垣に首に刀を押し当てられてしまう。勘助は平伏し、自分を家来にしてほしいと頼み込む。
平蔵(佐藤隆太)は、ミツの仇の武田家に仕える気はないと憤るが、勘助は武田家に仕え、戦を待ち、謀略を巡らし、信虎を討ち死にさせ、内から仇を取ると。
一方、守役の板垣から話を聞いた晴信(市川亀治郎)は、勘助に興味を示し会いたいと言い出す。
板垣の屋敷を訪れた勘助と、伝助(有薗芳記)、太吉の三人は、着替えをさせられ、晴信の前へ。晴信は勘助に、抜き打ちに刀を突きつけ、その反応で勘助の考えを見抜く。そして勘助に、「失望の中にこそ、本物の大望は生ずとは思わぬか」と問い、伝助にミツの悔やみを述べ、三人に甲斐をよくするために働いてほしいと頭を下げる。
板垣は、勘助に今川家の間者になり、謀反を企てている福島の動きを探れと、命を下す。今川家の家臣である大叔父・庵原忠胤(石橋蓮司)の元を再訪した勘助は、今川家の主君と後継ぎの息子二人が死んだことを聞く。今川家は家督争いで真っ二つに割れることになる。第3回 「摩利支天の妻」 (1月21日)
勘助を出迎えたミツ(貫地谷しほり)は、勘助の子を孕んでいた。しかし勘助はあくまで仕官を望み、ミツの兄たちの大将に会わして欲しいと頼む。だが、武田の直臣の赤部を殺したことで勘助は追われており、反対にミツを連れて三人で逃げろと言われてしまう。
ミツがかばったおかげで勘助は、ミツの家に匿われる。ミツは、勘助一人ぐらい面倒を見ると笑うが、甲斐はその年も飢饉で、食べるものさえ十分でない。勘助はミツに、「いざとなったらわしを突き出せ」と告げる。今の勘助は、自分の子を受け入れる気はなかった。
一方、武田家では、元服した嫡男・晴信(市川亀治郎)の小賢しさを、父の信虎(仲代達矢)は疎んじて、評定の席にも出させていなかった。晴信は遊興三昧、怠惰な日々を過ごしていた。そんなある日、晴信は以前に領地で出会った摩利支天の像を首から下げた女を女中として召し出せと命じる。
村に武田の武将が現れ、勘助のことがばれたのかと恐れるミツの兄たち。武将は、呼び出したミツのお腹を見て、父親は誰かと尋ねてくる。とっさに平蔵(佐藤隆太)が自分だと名乗り出る。武将は「惜しいことをしたな」と笑って去って行った。
武田家に、今川家の家臣・福島の使者として、勘助の兄・貞久(光石研)がやってくる。福島が謀反を企てていると聞いた信虎は、力を貸すことを約束する。畑に出ていた勘助は、帰っていく貞久の姿をたまたま見かけ、「駿河に謀反の風が吹き始めた」とほくそえむ。
夜更けに、月明かりの中で城の模型を作っている勘助に、ミツは「ここにいていいだか?」と問い掛ける。だが勘助は、「こなたがわしの城じゃ。人は求められる場所で生きるのが一番だ」と答え、ミツを抱きしめる。
葛笠村の近くの山で、武田家の鹿狩りが行われた。狙っていた鹿に逃げられた信虎は、近くを通ったミツに弓を向ける。第2回 「さらば故郷」(1月14日)
勘助は故郷の三河の牛窪に、15年ぶりに戻ってきた。だが勘助を出迎えたのは、初陣から戻った実子・勘兵衛を出迎えていた勘助の養父・大林勘左衛門(笹野高史)だった。
駿河の山本村の郷士・山本家の次男として生まれた勘助は、12才の時、両親から出家を命じられる。片目が見えず、足が悪い勘助には武士になるのは無理と思ってのことだったが、勘助は嫌がり、兄の藤七と剣の勝負をして勝ったら出家を取りやめてほしいと頼む。勝負には惜しくも負けた勘助だったが、彼を迎えにきていた父の友人・勘左衛門は不憫に思い、子のなかった自分の養子にしたのだった。
だが元服した勘助は、大林の主君に仕官させてもらえず、20才で武者修行の旅に出る。ところがその間に、勘左衛門には子ができていた。勘助が仕官のために持って帰ってきた武田の直臣・赤部の首を、勘左衛門は勘兵衛の手柄として主君に渡す。自分の居場所がないことを知った勘助は、大林家とは縁を切り、以後、山本姓に戻る。
母の墓参りに山本村に戻った勘助は、そこで貞久と名を変えた兄(光石研)と出会う。貞久は仕官を望む勘助に、「武士を捨てよ」とあくまで出家を勧める。
勘助は駿河の今川家臣の大叔父・庵原忠胤(石橋蓮司)に会いに行き、武田家の領内で盗み聞いた、今川家の家臣の福島越前守(テリー伊藤)が武田家に内通していることを伝え、仕官を願う。だが忠胤は、勘助に今は動くなと命じ、そのまま仕官の話もなく時だけが過ぎる。
焦る勘助は、竹薮で襲われる。勘助の命を狙ったのは、福島に仕えていることを知って勘助が心配していた貞久だった。勘助を追い詰めた貞久は、「駿河から出て行け」と言い捨てて去っていく。
一年後、武田の若君・勝千代(後の信玄・池松壮亮)は元服し、晴信(市川亀治郎)と名を改める。その頃、勘助は葛笠村に戻ってきていた。第1回 「隻眼の男」 (1月7日) 60分拡大版
時は天文4(1535)年、まだ大林勘助と名乗っていた山本勘助は浪人で、兵法の奥義を修行するため旅の途中だった。三河へ向かう勘助は、甲斐の葛笠村という寒村で村娘のミツ(貫地谷しほり)に施しを受ける。ちょうど近くでは、武田軍と今川軍の小競り合いが続いていた。勘助は今川の間者に間違われ、捕らえられてしまう。
その夜、今川軍の兵が近隣の村から兵糧を強奪する乱捕りが行われた。夜陰に紛れて逃げ出した勘助は、ミツが覆面の侍に襲われそうになっているのを見て助けに入る。剣の腕はそれほどでない勘助だが、侍に切られて眼帯が外れ、その下の濁った目に睨まれ恐れをなした侍は逃げていく。そこを武田の雑兵となっていたミツの兄たちに見つかり、誤解されて傷を負わされ川に落とされる。
勘助を介抱したのはミツだった。ミツは勘助の疱瘡でつぶれた目を怖がることもなく、侍の嫁になりたいと言う。ミツは勘助が首から下げていた戦神・摩利支天像を欲しがるが、勘助は、これは高野山でいただいた物で地獄に落としても取りに行かないといけない大事なものだからと、断る。
傷の癒えた勘助は、戦を見に行くと出て行く。ミツは自分も連れて行ってほしいと無理についてきてしまうが、その道で北条の兵に会い、間者に疑われる。とっさに勘助は農民の振りをするが、女を置いていけと言われてしまう。素直に従い、ミツのすがる声を捨てて逃げる勘助。
ミツを連れて休憩する北条の兵たちに、味方の旗を立てた騎馬が駆けてくる。だがそれは北条の兵に化けた勘助だった。大将を射抜き、勘助はミツを救い出す。
山小屋まで逃げてきた勘助とミツ。だがそこに一人の侍が襲い掛かってくる。それはミツを襲おうとし、勘助を恨みに思い執拗に追ってきた、実は武田の直臣の赤部下野守(寺島進)だった。勘助は逃げながら赤部の油断を誘い、赤部を討ち取る。勘助はそれを手土産とするため、赤部の首を取る。
ミツが目を覚ました時、勘助の姿はなかった。しかし変わりに摩利支天像が置かれていた。
放送中の時代劇に戻る