新はんなり菊太郎
  内藤剛志 主演   07年1月11日〜3月1日   NHK 木曜夜8時から

各回ごとのあらすじ

最終回「おかえり菊さん」(3月1日)
 お凛(星野真里)が二人組の遊び人に駕籠に乗せられさらわれるのを見たお信(南果歩)は、駕籠の跡をつける。そして彼らのアジトを突き止め、戻ろうとするが、そこを仲間の用心棒の三嶋源内(福本清三)に見つかり、お信も囚われの身に。
 一方、お凛がかどわかされたことに気づいた鯉屋には、役人たちがやってきて、捜査が始められる。そこにお信の娘・お清(石川夢)が、おかあちゃんが帰ってこうへんと、やってくる。そこで初めて菊太郎は、お信も捕まっていることを知る。
 お凛は、遊び人たちに、親は自分のためには金は払わないと言う。お凛は三歳の時に母を亡くし、父は母の三回忌を待たずに再婚。そして産まれた妹ばかりを両親はかわいがった。それでもお凛は、父が店をお凛に継がせると言ったことを励みに生きてきた。しかしその父に嫁入りの話を薦められ、本当は店を妹に継がせたいのだと分かり、家を飛び出してきたのだった。
 菊太郎たちは、お凛のことを二、三日前から聞き回っている男がいたと聞いて、取り押さえる。しかしそれは、江戸からお凛を迎えに来た、お凛の実家・和泉屋の奉公人・清吉(野田晋市)だった。清吉は、お凛のかどわかしのことは何も知らなかったが、和泉屋が商売のことで、目的のためには手段を選ばない平野屋と張り合っていたと言う。平野屋が怪しいと睨んだ菊太郎。そこに仕事で江戸に行っていた源十郎(渡辺徹)が帰ってくる。
 源十郎は、江戸の和泉屋で話を聞いてきていた。和泉屋は平野屋と争った商談からはすでに手を引いており、そのことを平野屋も知っていた。話を聞いた菊太郎は、下手人はそのことを知らずに平野屋に恩を売ろうとしており、値打ちのなくなったお凛が危ないと気づく。
 そこに、お信のお守り袋が見つかったと知らせが入る。それはお信が三嶋に見つかったときに落とした物だった。下手人のアジトが分かり、菊太郎は銕蔵(石本興司)率いる役人、そして応援に来ていた父・次右衛門(宍戸錠)とともに、駆けつける。
 そのころ、お凛が金にならないと分かった遊び人たちは、二人を殺そうとしていた。お凛は、自分はどうなってもいいからお信を逃がしてほしいと言い出し、お信は死んでいい命なんて一つもないと諭す。そこに役人たちが到着する。
 外で見張っていた剣豪の三嶋を菊太郎は引き受け、中の二人は銕蔵と次右衛門に任す。次右衛門は気合で二人を脅し、お凛とお信を救出。一方、三嶋と立ち合う菊太郎は、お信とお凛が無事に助け出されたことを知り、三嶋に「このまま続ければどちらかが死ぬ。死んだらもったいから止めだ」と刀を捨てる。菊太郎の説得で、三嶋もおとなしくお縄を受ける。
 お凛は、源十郎から、父が店を継ぐことがお凛の負担になっていると思い縁談を薦めたことを聞く。誰も自分のことを嫌っていないと分かったお凛は、清吉とともに江戸に帰る。
 そして菊太郎は、やっとお信に会える。「お信がいてんと生きていかれへん」と言った菊太郎に、お信は「おかえり」と。

第7回「大黒様飛んだ」(2月22日)
 冬の嵐が吹き荒れた夜、お信(南果歩)が身を寄せる料理屋・美濃屋に、箱入りの大黒様の絵が飛び込んでくる。美濃屋の主人・徳兵衛(ばんばひろふみ)は大黒様が飛んでくるなんて縁起がいいと喜び、譲ってもらうため、箱の表にあった伊賀屋忠兵衛を探すが、そんな名の店は見つからない。話を聞いた多佳(東ちづる)は、自分に任せて欲しいと引き受ける。
 多佳は菊太郎に、伊賀屋を探し、見つかってから美濃屋に行くように言いつける。そこでお信に再会させるつもりが、その場でお信が美濃屋にいると口を滑らしてしまう。それを聞いてしまい、落ち込むお凛(星野真里)に、菊太郎は「俺はお信に会いたい。けど、おまえがそんなに辛いなら、おまえの気が済むまで会わへん」と。お凛はお信からも、まったく同じ言葉を言われていた。
 菊太郎は多佳に言われたとおり、先に伊賀屋を探しに行く。伊賀屋は、新しく主になった米蔵(遠藤憲一)の飲む打つ買うの放蕩で潰れていた。探し出した米蔵は、美濃屋と堀川を挟んだ長屋に住んでいた。菊太郎が持ってきた絵を見た米蔵は、確かに先代が大事にしていたものに間違いないと言い、大黒様がこんな自分に呆れて飛んで行ったのだろうと話す。そして美濃屋が欲しがっているのならただで譲ると、菊太郎が持ってきた金には手をつけなかった。
 美濃屋には飛んできた大黒様を見ようとする客が押し寄せ、大繁盛。ところがそのうちに、美濃屋は儲かっても元の持ち主にはびた一文払わない非道だという噂がささやかれるようになる。菊太郎は米蔵を美濃屋に呼び出し、噂を流したのは大金をせしめようとした米蔵だろうと詰め寄るが、米蔵は逆に証拠があるかと菊太郎に問う。菊太郎は、米蔵の心の中にあると。菊太郎は、その知恵を使ってまっとうに暮らせと諭す。
 一方お凛は、菊太郎の実家を訪ねていた。母の政江(香川京子)は、お凛が悪い人間でないことはよく分かるが、菊太郎の嫁はお信と決めているから、仲良くすることは筋が立たないからできないと言いつつも、お凛を暖かく迎える。
 徳兵衛との縁談を断ったお信は、美濃屋にはいられないと、店を辞め、元いた長屋に戻る。そして鯉屋に向かう途中、鯉屋の近くで豆腐を買いに出たお凛がさらわれるのを見てしまう。

第6回「秘密」(2月15日)
 鯉屋に大店のお嬢様らしい若い女(浅見れいな)が訪ねてくる。だが名も名乗らず、金で厄介事を解決してほしいという態度に、源十郎(渡辺徹)も困惑。娘は怒って出て行ってしまう。
 菊太郎は、お凛を連れ出し釣りへ。お凛の江戸を出てきた訳を聞き出そうとするが、お凛は「私ではお信さんの代わりになれませんか」と迫る。その帰り道、二人は、身重の竹篭の行商の娘・おまさ(竹村愛美)から花篭を買う鯉屋に来た娘を見かける。娘はお代に財布ごと押し付け去ってしまう。おまさに頼まれ娘を追いかけた菊太郎だが、娘は「恵んであげた」とそっけない。娘の正体は油問屋土佐屋の娘のお琴。おまさはお琴が死んだ母に似ていたと漏らす。
 お琴のことを、お凛は自分に似ていると気にかける。そのお琴が産婆のおたつ(絵沢萌子)からお金を脅し取られているのを見る。実は二十年前、外出中に突然産気付いた土佐屋の女主人の娘を取り上げたおたつは、その直前に取り上げた隣の部屋に寝ている赤ん坊の顔を見て、貧乏人の子は生まれたときから貧乏人という空しい気持ちになり、いたずら心を起こす。
 おたつから、本当は身重の体で必死に働くおまさが、自分の姿だったことを知らされたお琴は、悩んでいたのだった。菊太郎は、おたつを奉行所に突き出す代わりに、すべてを忘れる約束をさせる。だがお琴は、おまさに本当のことを話そうと決意。菊太郎は、土佐屋に出向き、お琴の両親に昔話として二人の娘の話をする。二人は涙を流しながら、娘が二人になったと、喜んで事実を受け入れる。
 お琴の決意に、菊太郎は、お凛にも逃げずに本当のことを話すように諭す。だがお凛は「誰にも大事にされなかったら、逃げるしかない」と。
 一方、お信(南果歩)は、お信を匿っている料理屋・美濃屋の主人・徳兵衛(ばんばひろふみ)の叔父夫婦から、徳兵衛との縁談を進められていた。

第5回「怪談・冬の蛍」(2月8日)
 菊太郎は父の次右衛門(宍戸錠)から幽霊騒ぎを解決してほしいと頼まれる。怪談の類が苦手な菊太郎だが、解決したらお信の居場所を母の政江(香川京子)から聞き出してやると言われ、断れない。
 幽霊騒ぎが持ち上がっているのは、川魚屋の但馬屋。主人の清太郎(吹越満)は、元は奉公人の入婿で結婚してすぐに亡くなった妻・お夏の幽霊が出るという。山伏に化けた菊太郎は、店の前で祈祷を上げ、清太郎と話そうとするが、たかりだと思われ、追い出されてしまう。が、そこで出会った口の軽そうな奉公人のお花(久保田磨希)に菊太郎は団子をおごり、話を聞き出す。井戸の釣瓶に女の髪が絡まっていたり、お夏の茶道具が勝手に並べられていたりしたとのことだが、肝心の幽霊の姿を見た者はいなかった。ただ、清太郎が「堪忍してくれ」とお夏に謝っているのを聞いたことがあると。清太郎はお夏の死に目に祇園に遊びに行っていて、会えなかったとも。
 菊太郎は、清太郎が懐に入れていたお菓子・豆平糖を売っている店を訪ねる。主人の話では、清太郎とお夏は仲睦まじい夫婦だったと話す。だから幽霊の話は信じられないと。また、お夏の最期を看取った医者も、清太郎はよくお夏に尽くしていたと話す。また、清太郎が臨終の時にいなかったのは、お夏が見たいと言った蛍を取りに行っていたからだと。
 一方、鯉屋に政江が訪ねてきて、多佳(東ちづる)に明日、お信が来ると話す。二人は、お信の長屋で菊太郎と二人きりで話させようと画策。
 翌日、菊太郎は出かけようとして多佳にお信の長屋に寄るかと聞かれる。後で寄ると答えた菊太郎が向かった先は、お夏の墓。そこには清太郎が墓参りに来ていた。菊太郎は清太郎に、お夏になぜ謝るのかと聞こうとするが、清太郎が倒れてしまう。
 清太郎を但馬屋に送った菊太郎。清太郎は心労だった。清太郎は菊太郎の正体を聞いて、助けて欲しいと頼む。
 そのころ、長屋に戻ってきたお信(南果歩)を待っていたのはお凛(星野真里)だった。鯉屋に戻った菊太郎は、初めてお信が戻ってきていたことを知り、急いで長屋に駆けつけるが、そこにいたのはお凛だけ。お凛は思いつめた顔で、お信には会っていないと繰り返す。
 夜、銕蔵(石本興司)とともに但馬屋に張り込んでいた菊太郎の前に、お夏の幽霊が現れる。が、その正体は、お夏付きの奉公人だったお重(押谷かおり)と、古くからの奉公人の松三(井之上淳)だった。後から現れた清太郎に身代を取られたことを妬んで、清太郎を自殺に追い込もうとしていたのだった。
 清太郎は、本当はお夏を愛していなかった、計算尽くでお夏に尽くしたのだと、菊太郎に告白する。そこにお夏の幽霊が。お夏は清太郎に微笑むと、蛍となる。お夏は本当に清太郎が好きで、一緒にいれて幸せだったのだ。
 次右衛門は菊太郎に、政枝の機嫌が悪くお信の居所は聞き出せないと謝る。一方、お凛は、菊太郎に「私、本気ですから」と告げる。

第4回「黒猫の婆」(2月1日)
 菊太郎は、いなくなったお信(南果歩)を待って、お信の長屋に通う毎日。そんなある日、お信の家の向かいに、黒猫を抱いた老婆・お里(淡路恵子)が越してくる。大店の古手屋(古着屋)伊勢屋のご隠居だというが、どうにも偏屈で口が悪く、長屋の住人たちは辟易する。お里のことを何かと面倒みる、伊勢屋からのれん分けされた重助(南条好輝)によると、お里の養女で今は伊勢屋の女主人の和歌(楠見薫)にいびられ、家を出てきたという。
 重助はお里に、店の株を取り返すように訴えを起こすように勧めるが、お里はもういいと言う。
 一方、鯉屋になじもうとするお凛(星野真里)は、認めてもらおうと菊太郎の跡をつけて、お信の長屋へ。そこで猫を通してお里のさびしい気持ちを知ったお凛は、お里と仲良くなり、なにかと手伝うようになる。お凛にも勧められ、訴えを起こす気になったお里。だが、奉行所を通す前に本当の気持ちを言い合ったほうがいいと感じた菊太郎の提案で、お里と和歌は鯉屋で対面する。
 貧乏が原因で伊勢屋に里子に出された和歌は、幼少の頃よりお里に厳しく当たられ、お里を疎んじていた。菊太郎はお里にも本当の気持ちを言うように言うが、お里は何も言わない。そこに銕蔵(石本興司)が飛び込んできた。伊勢屋の商品の中から盗品が見つかったという。
 お里は商品を改めに来た役人に、全部自分一人がやったことだと、罪を一人でかぶる。だがそこにあった花嫁衣裳も盗品だろうと言われたお里は、それは15年前からここにあったものだと言い張る。その掛け襟には、和歌が何かあったときに困らないようにと、一分銀が縫いこまれていた。
 お里が和歌のために縫い直してくれた花嫁衣裳を来た時のことを思い出した和歌は、お里の気持ちを知って涙する。
 後の調べで盗品は、伊勢屋が最近雇った店員一人の仕業だと分かる。
 一方、お信が縫ってくれた着物を、母の政江(香川京子)を通して受け取った菊太郎は、その掛け襟にお守りが縫い付けられていたのを見つける。

第3回「凄(すご)い男」(1月25日)
 菊太郎がふざけているところへ、鯉屋に客が。奈良の大工・吉野屋四郎右衛門(伊吹吾郎)は、彦根の大名・井伊家から京屋敷の普請を頼まれていたのを、急に取りやめられたことで、訴え出たいと言う。京屋敷留守居役の杉原に何度理由を聞いても答えてもらえず、手付の三百両を渡されたきり。一年も前から準備を進めていた四郎右衛門は、すでに一千両を使っていた。四郎右衛門は、お金の話ではなく、これでは筋が通らないと。大工が大名を訴えるなど、下手をすれば店が取り潰されるかもしれない。だが四郎右衛門の話を聞いた鯉屋の主・源十郎(渡辺徹)は公事を引き受ける。
 そのころ菊太郎の母・政江(香川京子)がお信(南果歩)を匿った伏見の料理屋・美濃屋では、政江と多佳(東ちづる)が、お信の前でお凛の悪口を言い合っていた。そこに、盆栽泥棒が入る。
 一方、鯉屋には、銕蔵(石本興司)がお信のことで菊太郎を呼び出しに来ていた。菊太郎が二股を掛けていると知った四郎右衛門は、「筋が通らん」と怒り出し、菊太郎とともに田村家に。ところがその田村家に盆栽泥棒が入る。捕まえた泥棒は与吉(小藪千豊)と言い、家にいる捨て子だった九人の弟妹たちと病の母を養うため、盗みをしていると告白する。
 井伊家が急に普請を取りやめた裏には、別の大工・近江屋がただ同然で普請を引き受けたことがあった。近江屋はすぐ近くである工事を一緒に引き受けることで、利益を得ていたのだ。四郎右衛門の訴えを取り上げた奉行所では、名門の井伊家と気まずくなるのも、大工の訴えを聞かずに評判を落とすのも困ると頭を抱えていた。
 四郎右衛門の用心棒をしていた菊太郎は、襲われた拍子に名案を思いつく。四郎右衛門には、京屋敷と同じ大きさの建物を広い土地に作ってもらい、その建物を親のない子や身寄りのない年寄りを助ける施設として使い、その普請費用は井伊家に持ってもらう、と。井伊家の家老・今川は、その条件を快諾。与吉の話に感銘を受けていた四郎右衛門にももちろん異存はなく、訴えは丸く収まる。

第2回「濡れ足袋の女」(1月18日)
 菊太郎と結婚するために来たと言うお凛(星野真里)の言葉に、お信(南果歩)は走り去ってしまう。江戸の大店札差の娘のお凛は、親から言われた結婚が嫌で、江戸からたった一人で京に来たのだった。江戸に帰れと言われても、京に居座ろうとするお凛は、鯉屋の女主・お多佳(東ちづる)とたちまち不仲に。表面では笑って、嫌味を言い合う。
 菊太郎は雨の中、お信の長屋へ。だがお信はいない。角で雨宿りをする女(池上季実子)を見かけた菊太郎は、お信と間違え声をかけ、お信の家で二人、雨宿りをする。
 翌日、蝋燭問屋・だいこくやの女主、お志乃(池上季実子)の刺殺体が川原に上がる。そのお志乃の足袋がお信の長屋にあると目安箱に付文が。同心の銕蔵(石本興司)は、兄の菊太郎の不貞を怪しんで尋ねに来る。お志乃は、菊太郎が昨日会った女だった。お志乃はお信の家で雨に濡れた足袋を脱いだのだ。
 菊太郎は、お志乃を殺した下手人を探すため、昨日のお志乃の様子を思い出す。お信の娘の下駄を気にしていたが、お志乃に娘はいなかった。お志乃が持っていたまんじゅうから、お志乃が毎月会っていたお鈴(前田亜季)という娘に行き当たる。
 お鈴は、お志乃が嫁入り前に好き合っていた下駄の歯の挿げ替え職人・さだきちとの間にできた、お志乃の子だった。お鈴は半月前に、江戸から来た政吉という男に、お志乃が自分を捨てたことを聞き、以来、お志乃を恨んでいたという。
 お鈴のことを知った、政吉のゴロツキ仲間は、お鈴のことをだいこくやにばらすと、お志乃を脅していた。お志乃は思い悩んだ末、今の身分を失っても娘に名乗り出ることを決意。「もう大事な物はお鈴に渡してある」と言ったのを、ゴロツキたちは店の宝だと勘違い。お志乃を刃物で脅し、弾みで刺してしまう。お鈴を襲ってでも宝を手に入れようとするゴロツキたちと、お鈴を守ろうとする政吉は争いになり、政吉は刺される。
 お志乃がお鈴に渡したのは、へその緒の入った守り袋だった。お志乃がお鈴を思う気持ちが分かったお鈴は、お志乃を許す。

第1回「三年ぶりの京」(1月11日)
「ちょっと江戸に行ってくる」と出て行った菊太郎から音沙汰がないまま、三年が過ぎていた。菊太郎の帰りを待ち続けるお信(南果歩)は、たった一回菊次郎から届いた文を入れていたお守りを、誤って着物と一緒に洗濯してしまい落ち込むが、菊太郎が帰ってくるという知らせかもしれないと、思い直す。
 その頃、菊太郎は京に入り道を急いでいたが、公家と侍の喧嘩で突き飛ばされた老婆(タイヘイ夢路)を見かねて助け、家まで送ることに。老婆との会話で、「母親はいつまでも待っていてくれるが、女子は怖いで」と脅かされ、菊太郎は実家よりも先にお信のところへ行くことにする。
 ところがお信の家に向かった菊太郎は、母の政江(香川京子)がやってくるのを見て逃げ出し、ひとまず鯉屋へ。その鯉屋から知らせを聞いた政江は怒り、お信にしばらく身を隠すように言う。
 一方、弟の銕蔵(石本興司)が菊太郎に、父が浮気をしていて帰ってこないと相談に来る。
 父・次右衛門(宍戸錠)の浮気相手は料理屋の女・妙(遠藤久美子)だった。二階で客を取る妙に、店の外から鏡で合図を送る若侍(黄川田将也)がいた。妙は実は貧窮の公家の娘で、家を救うため、金持ちの妾として売られるために料理屋にいたのだった。妙の家に仕える一蔵は、妙を助けたいと思いながらも、どうにもできなかったのだ。
 妙の父に昔、世話になった次右衛門は、妙を救うために金を用意する。だがその倍の値で売れたと、料理屋の女将は、菊太郎と次右衛門を追い返そうとして、二人は用心棒たちと乱闘になる。次右衛門は、妙の経歴を傷つけないよう口止めする代わりに、多額の紹介料を取っていた女将を不問にし、この一件を事件にはしなかった。
 次右衛門が家に戻り政江は機嫌を取り戻す。お信がいなくなったと知って放心する菊太郎の前に、お信が現れる。近づき言葉を交わそうとした二人の間に、江戸からやってきた娘(星野真里)が入り込み、菊太郎に抱きつく。

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