有吉佐和子の同名小説を原作に、NHK大阪放送局がドラマ化。語りは益岡徹。かぶき踊りの祖と言われる出雲の阿国の生涯を描く作品。
全六回で生涯を描くため、話がやや詰め込みすぎな感じもしますが、逆に言えばエピソードが多く、テンポの良い作品でした。
阿国は、踊ることと、惚れた男の側にいることが望みの、野心とは無縁の欲のない女性。だけれどもその踊りの発想と実力は見る者の心を虜にする、神の才を持つ天下一の踊り子。そして惚れたら一途になる性格から、惚れた男にいいように扱われることもあり、名声を得たがその人生は太く短く、他人の目からはあまり幸せとは言いづらい。だがそれでも情熱的に生きた天才踊り手・阿国を菊川怜が演じました。
また、野心の男・三九郎を堺雅人が、控えめでいい人な傳介を鈴木一真が、と対極な雰囲気を持つ男優が共演。阿国の妹分のお菊を演じた原田夏希も美人で、キャスティングは見ごたえがありました。
全体的に、着物の柄などパステル調の独特な明るい雰囲気で、語りの益岡徹の丁寧で落ち着いた声と合わさって、話はドロドロした色恋沙汰が多かったのですが、重くなりすぎずさわやかな印象を残す不思議な印象の作品でした。(06.3.3改稿)各回ごとのコメントはこちら
主人公・根岸求馬は、南町奉行・根岸肥前守(田村高廣)の孫で、正義感あふれて、腕も立つ若者。ある日、祖父の詮議に納得いかなかった求馬は、直談判。勘当を食らう。……のですが、求馬は困った人を見るとほっとけない性格で、がんがん事件に首を突っ込み、解決に大貢献! 実は勘当は、自由になった求馬を使って表では調べられない事件を調べさせようという芝居だった。という、奉行所のアウトロー的存在・求馬の活躍を描く作品です。
『水戸黄門』の時間枠で突然始まった上に、今でこそ助さんでおなじみだけど当時は時代劇に関しては素人の原田龍二を一人主役にするなど、かなりの冒険に出た作品。でも、内容はからっとさわやかで、ストーリーも肥前守失脚を狙った陰謀から、暗号を使った謎解きなど、深すぎず面白いものが多くて、いわゆる子供から老人まで楽しめる作品。なにせタイトルどおり、原田龍二が元気よく暴れてくれるし。
好評だったらしく、ほぼ二年後に、シリーズ二作目も放送されました。いつの間にか求馬は正式に隠密同心の地位を得、着物もちょっとかっこよく。最後の奉行所お白州でしらばっくれる悪人に「馬」の文字が入った黒い将棋の駒(桂馬と求馬を掛けている?おそらく鉄か石製)を投げつける、というお決まりの見せ場も確立。
一応、見所的に最後に殺陣もあるのですが、初めのころこそ殺陣に振り回されてる?という下手さ加減だったのですが、二シリーズ終わるころにはメキメキ上達。その成長の過程も注目です。(06.1.29)
フジテレビの大奥シリーズの二作目。
だ徳川政権が固まっていない頃から、ゆるぎないものになるまでの時代を、春日局の生涯を追いかける形で描いた物語。女性同士のドロドロ半分、大河ドラマ的な歴史の追いかけ半分なので、トレンディードラマ好きも、歴史ドラマ好きも楽しめる描き方になっていると思います。
序盤は、春日局になる前のおふくの方主役。後に三代将軍となる竹千代の乳母になるところから、竹千代の実母・お江与の方(高島礼子)との確執の話。春日局といえば「やり手の実力者」というイメージがあるのですが、まだ人間として成長しきってない若々しい(といっても三人の子持ちですが)彼女が、新鮮でした。
中盤は、晴れて将軍になった家光が、はじめて好きになった女性・お万の方(瀬戸朝香)の話。尼であった彼女を、春日局が拉致して、監禁、還俗させるという、荒業がメイン。
終盤は、将軍の後継ぎを作る場としての大奥の基盤を整えあげる春日局と、女性たちの人間性をまったく無視したそのやり方に、反対を唱えるお万の方の対決がメイン。
恋愛よりも、母性や慈愛といった広い意味での愛が描かれた作品です。
ストーリーテラーの位置にある、お万の方を一途に慕うお玉(星野真里)の頑張り具合など、ギャグに走らない程度の笑いもあり、迫害されたキリシタンをストーリーに絡めるなどの暗い部分もあり、家光の「わしは男狂いじゃ」との問題発言ありと、エピソードふんだん。松下由樹を含め、きれいで演技力のある女優さんが勢ぞろいなので、見ごたえあります。(06.2.19)
大奥シリーズ三作目にして最終章。
時は花の元禄時代。豪華絢爛な背景に花の園・大奥で繰り広げられる五代将軍・徳川綱吉を中心とした女の戦いと、政権争い。
絶対権力者であり、わがままお坊ちゃまな綱吉(谷原章介)によって実母を陵辱された上に自殺に追い込まれた牧野安子(内山理名)。あろうことか、既婚の安子までも大奥入りを命じられる。
この安子、はじめこそ綱吉に恨みを持つが、真の悪は別にいることを知る。彼女を中心に、一見華やかに見える大奥で巻き起こる、正室・信子(藤原紀香)と世継ぎを産んだ側室・お伝の方(小池栄子)の確執、それに権力を持つ綱吉生母・桂昌院(江波杏子)と、貪欲に上を求める柳沢吉保(北村一輝)をはじめとする、入り乱れた愛と権力の争いを描く。
毎回びっくりするような展開に、最後近くに起きる強烈な次回への引きに、思わず毎週目が離せなくなってしまう、時代劇というよりトレンディドラマのような作りの作品。配役が見事にはまっている上に、みんな体当たりの演技で見ごたえあります。(06.1.19改稿)
同時期に公開の映画『大奥』の関連作品で、映画のストーリーの三年前の話。
六代将軍・徳川家宣の時代、武家の娘・三枝ゆき(深田恭子)は大奥へ奉公に上がることになった。「まん」と名を改められ、先輩女中のテレビシリーズでもおなじみの三人組に教えてもらいながら働くが、慣れない仕事とあって失敗も多い。そんな中、優しくしてくれたおしの(貫地谷しほり)と親しくなる。
そんな中、お毒見役が体調を崩す。新たなお毒見役を探していると聞いて名乗り出た、浦尾(久保田磨希)。山海の珍味が食べられると張り切る浦尾だが、毒見の最中に胸を抑えて倒れる。その知らせを聞いて、上様に運ばれる膳を止めるため走ったおしのは、途中で上様とぶつかってしまう。
浦尾はいもをのどに詰まらせただけだったが、おしのは大奥取締の滝川(浅野ゆう子)に呼び出される。お手打ちになるかと思いきや、上様に見初められたと、閨の相手を申し付けられる。だがおしのは、奥女中の下男の伸吉(吉沢悠)に恋文をもらって以来、彼に恋していた。おしのから話を聞いたおまんは、恋していた男への想いを断ち切って大奥に上がった自らに重ね、おしのの文を伸吉に届ける約束をする。
大掃除の最中、おまんは、滝川が隠されていた毒薬を見つけるのを見てしまう。毒薬の入っていた袋に、おしのの好きな侘助の花びらが入っているのを見て心配になったおまんは、こっそりと袋の中身を確かめに行くが、そこを滝川に見つかってしまう。
滝川に詰問されたおまんはとっさに嘘をつくが、滝川に見抜かれ、上様を狙う者がいることを聞かされる。おしのの身の潔白を証明するためにおまんは、滝川の部屋子となり、伸吉を調べることに。
だが元は武士だった伸吉こそが上様の命を狙う者だった。五代将軍・徳川綱吉の時代に犬小屋の普請を命じられたが、将軍が代わり、財政建て直しのために普請費用を踏み倒された主君の恨みを晴らすため、名を変え、大奥にもぐりこんだのだった。
伸吉に頼まれたおしのは、上様の膳に毒を盛る。伸吉にお鈴廊下に追い詰められたおまんは、鈴の紐を引く。鈴の音で大事に気づいた滝川により、将軍毒殺は未然に防がれた。
手に手を取り逃げた伸吉とおしのは、追っ手によって殺される。それから二年後、家宣は病で他界。滝川は御年寄となり、大奥取締には新たに絵島(仲間由紀恵)が就く。
NHK金曜時代劇です。平岩弓枝原作のこの作品は何度もあちこちでドラマ化されているんですが、このシリーズでは三回目です。
元・同心の娘で、旅籠かわせみを営む、るいと、与力の家の次男・神林東吾との恋物語を中心とする、江戸の市井の人々の悲喜こもごもの人情話。
この三章では、身分違いの偲ぶ恋だった二人が、祝言をあげるまでを描いています。
脇役陣には、NHK好み(?)のサッパリスッキリ男前が多いです。(05.8.28改稿)
タイトルどおり、旅回りの芝居一座、夢之丞一座が毎回悪人を見つけては退治するという、お約束ものの勧善懲悪時代劇なのですが、その懲らしめ方がなにせ普通じゃない。彼らは芝居一座、だから退治の仕方も芝居仕立てなのです!
まず悪の全貌が明らかになると、座頭の宇津井健が筋書きを書く。そして必要な小道具をそろえて、各人(一座の役者たち)自分の役割を覚える。そして準備完了でカメラに向かって、時には全員集合、時には綺麗どころと子役のアップの見得を切り、「支度は上々、あとは仕上げをごろうじろ」で、CM入り。(セリフは間違ってるかも)
あとはみんな本職役者なのでお手の物。変装して芝居して、悪人たちをだましていく。
そして最後には、現場にリンドウの花を置いて去っていくのですが、放送当時の私はキキョウとの違いもよく分かっていなかったため、まさか「倫道」と掛けているなんてことは気づきもしませんでした。というか、分かりにくいよ!
全体的に芝居仕立ての上、へんてこりんアイテムも平気で登場の、遊び心満載の作品でした。
三田村邦彦は看板役者役だし今度こそ正真正銘の主役かと思いきや、一番えらいのは宇津井健だし、アクションはアクロバットのできる若手二人に持っていかれるし、マスコット的存在の女子役はしっかりしてるし、三枚目はしっかり地井武男が抑えるしで、登場人物多すぎて、主役としてせいぜい最後のおいしいところを持っていけるぐらいで、本当に目立たなかった。その後時代劇から遠のいてしまった彼だが、作品には本当に私好みのものが多かったので、ぜひまた似たような作品で戻ってきてほしいと切に思います。(05.12.21)
幕末の長岡藩にいた実在の人物・河井継之助の生涯をつづった歴史ドラマ。日本が薩長を中心とする官軍と、会津を中心とする旧幕府軍とに分かれて戦っていた時代、先進的な目を持った継之助は、長岡藩をスイスのような中立国として存続させようと奮戦する。
時代劇というより、淡々と歴史を追ったドキュメンタリーのような側面が強い作品でした。その分、登場人物が多くて豪華な感じはしましたが、ドラマとしては物足りない感じがしました。坂本竜馬(唐沢寿明)に銃の重要性を教えた、という演出は少しだけ嬉しかったですが。
「民は国の本 吏は民の雇い」を信条とし、身分のない時代が来ると予見していた継之助。その意思を尊重し、ロールエンドが50音順だったのは、なかなかうまいと思います。
司馬遼太郎の原作を、正月恒例の10時間ぶっ続けドラマ化。
戦国時代ものというと、よく織田信長に焦点をあてがちで、斎藤道三というと、その信長を最初に認めた武将で序盤で死亡、明智光秀は途中でいきなり出てきて信長の家来になり謀反を起こす、という描かれ方が多いと思いますが、この作品はまったく逆。三人の焦点のあて方の比率が、多いほうから道三、光秀、信長となってます。また役者の力量もちょうどその順番なので、気持ちよく見れました。
道三は昔から英傑だと言われてたわりにあまり描かれてなかったのがしっかりと、また光秀が斎藤家に深い縁があったというのが、勉強になりました。私は信長好きなので光秀は嫌いなんですが、この作品に限っては光秀にもけっこう感情移入できて、いい奴だと思っちゃいました。
北大路欣也が英傑・道三を貫禄たっぷりの安定した演技でかっこよく演じているのはもちろん、『北条時宗』で不遇の兄を好演していた渡部篤郎の、才能はありながらも恵まれなかった光秀がまたぴったり。伊藤英明は若さで勝負、うつけ者時代の信長が年齢的に無理がないのがうれしかったです。(05.12.19)
昨年放送された『慶次郎縁側日記』の続き。原作は北原亞以子の「慶次郎縁側日記」です。
森口慶次郎(高橋英樹)は元・南町奉行所定町廻り同心。同心時代の彼の哲学、『同心は下手人を捕まえるのが役目じゃない、下手人を作らないのが役目だ』から、ついたあだ名が『仏の慶次郎』。現在は隠居して、寮番(管理人)をしている。
一人娘・三千代が、祝言の直前に乱暴されたことが原因で自害したという過去を持つ慶次郎。その彼と、その事件に関わった人たちの心情と流れていく時間を描いて、「生きる」とは、そして「罪を許す」の意味を考える作品。
今回は、慶次郎の養子夫婦、晃之助(比留間由哲)と皐月(安達祐実)に子が生まれ、八千代と名づけるところから、三千代に乱暴した犯人・常蔵の娘・おぶん(邑野みあ)が幸せになるまでが、描かれました。またそれぞれの登場人物の過去にスポットを当てた回が多かったのも、ファンにはうれしい作りでした。(05.12.24改稿)
同名シリーズ三作目。今作のテーマは、『人は人を、本当に救えるのだろうか?』でした。
養子夫婦の家を訪れた慶次郎は、その帰り道に襲われ怪我を負います。襲ってきたのは、慶次郎が11年前、隠居する前に手がけた事件で、自暴自棄になっていた下手人を、慶次郎自身が「生きて償え」と島送りにした男だった。その彼と因縁深い「仏の喜兵衛」と呼ばれるもう一人の「仏」も登場したこのシリーズでした。
また、慶次郎の養子・晃之助(比留間由哲)の嫁・皐月(安達祐実)の母が気鬱の病になり、皐月が実家に帰ることが多く、二人の仲がぎくしゃくしたりといった話もありました。
慶次郎と、同居の佐七(石橋蓮司)との仲も、お互いがお互いを必要とする間柄に進展。二人の掛け合いの息もぴったりです。(07.1.11改稿)先週までのあらすじはこちら
NHK大河ドラマ初とも言える、戦国ホームドラマ。原作は司馬遼太郎の同名小説。
戦国時代、一介の浪人から最後には土佐の領主にまでになった山内一豊の出世を、影に日向に支えて助けた、「内助の功」の代名詞も言うべきその妻・千代の話。とはいうものの、戦国ものを女性視点だけでは描くことは困難だったのか、主役の千代より、夫の一豊や、他のヒーロー的戦国武将、信長、秀吉、家康の出番が多い回も多数。
女性の脚本(大石静)だったせいか、全体に恋愛の話が多く、秘めた恋仲の明智光秀とお濃や、相思相愛の信長とお市の兄妹、愛に飢えた悪女な淀君、そして臨終の言葉が愛の告白だった竹中半兵衛や、千代の幼馴染の六平太など、際立った役が目立つ作品でした。また、主軸が夫婦愛だったこともあり、主役が等身大の人物だったことと重なって、女性や若い社会人といった新たなの視聴者を集めたのか、昨今のテレビ低迷化の中、高視聴率をキープしました。
本能寺で銃撃戦をやった舘ひろしの織田信長や、千代をずっと好きだったのに千代が一豊に恋したため、一生を千代を守るために捧げた忍・六平太(香川照之)など、NHKの大河ドラマとは思えないような、民放に負けない突飛な面白さが走った作品でした。
反面、歴史の重大シーンに一豊をもぐりこませるため、やや強引な展開があったり、合戦シーンなのに個人戦しか描かれなかったりと、歴史ドラマとして見ると、やや見劣りする点もありましたが、楽に楽しく見れる大河ドラマという、新たなジャンルを切り開いたある意味革命的な作品だと思います。(07.1.2改稿)
二日に分けて放送された、前後編合わせて五時間の大作。題材が題材だけに、時代劇というより、和風ファンタジーという感じ。妖怪とか普通に出てきますし。
主役は犬塚信乃ですが、八犬士全員(佐藤隆太・小澤征悦・押尾学・照英・山田優・勝地涼・山下翔央)がほぼ均等に描かれてます。この八犬士、年齢は若いですが、アクションも芝居もきっちりばっちりです。脇役も豪華ですが、悪役に使うなど思い切った配役。特に菅野美穂が妖艶でしたたかだけど、どこか悲劇的な玉梓を怪好演。武田鉄矢も殺陣ありの悪役を憎たらしげに好演。
ワダエミが衣装デザインをしたことと、中国ロケでエキストラと馬を大量に使ったことでも、話題を集めましたが、そのせいか全体的に中華テイストが混じっているのが、少し残念。でもその合戦シーンの迫力はすごいです。
全編とにかくアクションが多くて、ワイヤーアクションも含めて皆動きが美しいので、見ごたえはたっぷり。ファンタジーなのでCGも多用されているのですが、これも本当に綺麗にできていて、全然気になりません。特に八犬士の持つ玉と、抜けば水がほとばしる宝剣・村雨の処理が美しく、ため息が出るほどです。
滝沢馬琴の原作に忠実に作ったとのことですが、犬の八房が出てこなかったのはなぜなんでしょう?
五時間もありますが、その分ストーリーも細かく、でも、あんまり分からなくても面白く見れる、本当に子供から大人まで楽しめる娯楽大作に仕上がっていると思います。
記念すべきシリーズ一作目! すべてのお話はここから始まりました!
ただし、始まり始まりっぽいのは一回目のみ。二回目からは後のシリーズのノリと大きな違いはありません。一回目の星空の下であだ名を付けるシーンはファン必見ですよ! このシーン以外に仲良くなっていく『過程』は見れませんから。
浮世離れした思想と家柄の良さを感じさせる物腰から『殿様』と呼ばれる矢坂平四郎(高橋英樹)。夢は剣の腕を千石で買ってもらうこと、の浪人『千石』こと久慈慎之介(役所公司)。「たこの吸出し」を売っていたから付けられた『たこ』こと、実は甲賀忍者の末裔、燕陣内(春風亭小朝)。この三人に、全国のおいしい物を覚えて料理屋をするのが夢のお恵(杉田かおる)を加えた珍道中。
まだ各役のイメージが固まっていないようで、殿様が袴だったり、たこが着流しだったり、千石が悪人っぽかったりと、模索の跡が見えて新鮮です。EDの画像も毎回変わるし、たこも弱そうだし(笑)、千石の笠も新しいし(笑)。(05.8.26改稿)
あまりに有名で、人気のあった番組なので説明はいらないかと思う『三匹が斬る!』シリーズの3作目。ヒロインは、お蝶(長山洋子)です。
今でも思い出の時代劇話をしたら、知らない人同士でも20代後半より上は必ず名が上がり、盛り上がること受け合いの名作です。
3作目というとで、キャラクターイメージも固まり、見せ場のパターンも決まり、なおかつ毎回の話のネタに勢いがある、というシリーズ中もっともバランスのとれた作品だと思います。私事ながら、流之介のもっとも好きな時代劇です。コメント書くのに手が震える作品は、きっと後にも先にもこれだけでしょう(笑)。
今回、執筆に当たって検索かけたら出るわ出るわ、数年前に見たコアなファンサイトも残ってました。十年以上前の作品ですよ。すごいことです。(05.7.7)
闇奉行ものと必殺シリーズとを足したようなこの作品。
番組冒頭でオープニング代わりに流れるナレーションによると、将軍家には17の組の隠密がいるそうで、その正規の隠密では裁けない悪を成敗するため密かに作られたのが、一橋宗尹公が管轄する、十八組目の隠密、この影十八。もともと隠れた秘密組織である隠密のさらに影って、どこまで隠れれば気が済むんだ?とツッコミたくなる秘密組織です。
彼らは普段は医者だったり板前だったり軽業師(裏の仕事の隠れ蓑にしては際どすぎると思う職業)だったりと普通の江戸の住人なのだが、一度、悪の匂いをかぎつけると、捜査に乗り出し、表からでは裁けないと分かると、闇にまぎれて繰り出しそれぞれの得意技で始末する。その技が「刺のついたメリケンサックで殴り殺す」だったり、「2、30センチぐらいある針を首に貫通させる」とまあ、給金の出どこが違うだけで、どこかで見たような展開。
今までコロッケや西岡徳馬と組んでの主役だった三田村邦彦、初の一人主役か!とや思いきや、一橋宗尹役の里見浩太朗が準レギュラーでした。
全体的にチープな雰囲気が漂うものの、そこそこ面白かったと思うのだが、『必殺シリーズ』のぱくりっぽいのがいけなかったのか、わずか一シリーズで終わってしまったかわいそうな作品。(05.12.15)
ご存知、清水の次郎長の半生記です。侠客の話というよりは、人情ものに近い感じで、次郎長の幼少時から丁寧に描いた作品です。
この次郎長、侠客の親分でありながら、威張ることなく控えめで、それでいてここぞというときにはしっかりとその役目を果たす、理想の長像といった感じで、好感が持てました。いわゆる人間の魅力あふれる人でした。
子分もなかなかいい味のある人たち揃いで、特に次郎長のブレーンの大政(草刈正雄)と、若いながらも次郎長の兄弟分の親分となった仁吉(安田顕)が、男として惚れ惚れするかっこよさでした。
全十回と、NHK木曜時代劇の中では長いほうでしたが、毎回非常に展開が早く、コメディ部分もありで、途中だれることなく楽に気持ちよく見れる作品です。
原作は、山本一力の「背負い富士」。主題歌は、男ばかりの登場人物だからということで、中島みゆき作詞作曲で華原朋美が歌うという女性の歌でした。このエンディングの背景が、パッチワーク手芸のコマ撮り風の、三度傘の旅がらすが旅をするアニメーションで、とてもかわいらしく好評でした。(06.9.26改稿)各回ごとのコメントはこちら
「新吾十番勝負」と言えば、過去何度も映像化されているんですが、あえて真田広之のものを上げてみました。
ご存知、主役の葵新吾は、実は八代将軍・吉宗のご落胤。ですが生まれてすぐ、ある不幸により親のない子として育ち、天才剣士となる。出生の秘密を知った後も、一人の剣士として生きる道を選ぶという設定。いわゆるお血筋ものと剣客ものを合わせた話。この新吾がまた、強いだけでなく、気持ちのよい若者なんです。
最初のころは元服前(幼名・美女丸)で、その後もポニーテールで若さ丸出しの演技をしてくれるんですが、真田広之が本当に若いので違和感まったくなし。殺陣もうまいし、顔もいいし、精神的に成長しきれてないところもかわいいんです。高貴というよりは野性味強い感じですが、まあ、そこは捨て子ですし。
三人姉妹の姫君がそろって新吾のファンになってしまったり、新吾の偽者(中村トオル)が現れたり、笑いも盛りだくさんの楽しい作品。もちろん勝負シーンは、まじめに良いですよ。
この中では三番勝負までしか描かれてないのですが、この作品だけ、近年続けて二回ほど放送されたところを見ると、続きは作られてないようです。残念。別局での放送で見たので、放送日があやふやです。ごめんなさい。(06.1.6)
04年のNHK大河ドラマ『新選組!』の続編として作られたスペシャル版。
放送終了から約一年、「待たせたな」のセリフで登場した土方歳三は、本編よりもかっこよさに磨きがかかって、まことに良い男ぶりが丸々楽しめました。
親友であり、同志であり、そして仕えるべき隊長である、自分の中で大きすぎる人物・近藤勇を亡くした後、死地を探して戦い続けた土方歳三。その彼が新しき夢を得て、生きるために戦う決意を見出した日、凶弾によって倒れるという皮肉な結末ながら、すさまじい生き様を堪能できました。
本音をぶつけ合う討論によってドラマを展開する三谷幸喜得意の芝居のような展開が、本編よりも色濃く出ていて、彼の作品好きなら絶対に楽しめる作り。
また本編レギュラーの出演者が島田魁(照英)しかいないものの、新選組結成以前の回想シーンを新撮りという、ファンには嬉しい場面も。続編なのに全編再録シーンがないのはすごいことです。一方で、主題歌は同じ。これがまた懐かしかったです。
おなじみ、村上弘明の銭形平次。さすがはミスター時代劇中堅・村上弘明(?)、動きもセリフも見ていて安心できます。
そして元々の長身に加えての、なぜか全身から噴出す威圧感。新米同心なんてなんのその、上司の笹野新三郎(西岡徳馬)様はもちろん、他の与力の旦那に対してだって一目置かせる貫禄は、誰よりも頭が切れることと、人間できてるっていうだけじゃ説明がつきますめぇ。
腕っ節もめちゃくちゃ強く、刀を振り回すお侍にも強気に飛び掛り、十手でバシンとねじ伏せる無敵のヒーロー!
恋女房・お静に東ちずる。子分、八五郎にはアリtoキリギリスの石井正則という、超デコボココンビ。石井の相方、石塚義之は、平次をライバル視する三輪の万七親分(渡辺哲)の子分・清吉役という、凝った配役。(05.9.28改稿)
演習中の自衛隊が戦国時代にタイムスリップ、というコンセプトで過去二回映画化した作品を、二回に渡って約四時間半のテレビドラマ化。
富士山近くで演習中の自衛隊、伊庭明義(反町隆史)、嶋村卓也(渡部篤郎)の両小隊、計26人は突然、光に襲われて、1600年の関ヶ原の合戦間近にタイムスリップしてしまう。そこで伊庭は若き武将・小早川秀秋(藤原竜也)に出会う。この三人が物語の中心。
自衛隊の兵力に目を付けた、東軍大将・徳川家康(津川雅彦)はしつこく協力を求めてくるが、伊庭は断固として断る。一方の嶋村は病で余命少なく、どうせ死ぬなら歴史に名を残したいと、西軍大将・石田三成に成り代わって歴史を変えるために動き出す。そして両軍に情と恩があり、どちらに味方するかで苦しむ小早川。また、戦国時代の女と恋に落ちる者や、各隊に一人ずついた女性隊員の話など、エピソードは盛りだくさん。
一番の見所の戦国武者たちと自衛隊との戦いもあります。ただ、四時間半という時間を消費しきれなかったのか、テレビだからなのか、映画に比べると迫力不足で、全体的に散漫な感じがしました。作品の雰囲気は旧作似で、1549の歴史上の人物に成り代わるというエッセンスを入れてみたけど、消化不良に終わっている気がします。個々の役者陣がみないい演技をしている分、もったいない仕上がりだと思いました。(06.2.23改稿)
NHK大河ドラマ『功名が辻』の後追いのような形で放送されたこの作品。『太閤記』という大作を、全6回の8時間で描いたせいか、非常に展開が早い印象でした。また、話題性を狙ったのか、『功名が辻』で秀吉を演じた柄本明が、渥見侘助役でナレーションでした。
秀吉と信長の妹・お市の方(相田翔子)が両思いという新解釈に、驚いた作品でもありました。織田信長に村上弘明、明智光秀に風間トオルは、役を押さえた演技で似合っておりました。また秀吉を上役と思わない態度の蜂須賀小六(的場浩司)が小気味よく、片耳だけのドクロのピアスがかわいかったです。足利義昭の京本政樹は、周りの武将から浮いている感じがぴったりでした。(07.1.5改稿)各回ごとのあらすじはこちら
大河ドラマ。鎌倉幕府滅亡から南北朝時代に掛けての覇者・足利尊氏の一代記です。
若く頼りなげな青年から、勇猛な武将、苦悩する壮年と、まだ幼さの残る顔から貫禄のある顔まで、真田広之が見事に演じました。もちろん立ち振る舞いも乗馬も刀さばきもお手の物。
共演陣も、高嶋政伸、柄本明、萩原健一、根津甚八、武田鉄矢、大地康雄など見ごたえある人ばかり。中でも若き尊氏と駆け落ち騒動を起こす芸人一座の娘に宮沢りえ、彼女の義兄で侍嫌いの忍(?)に柳葉敏郎、そして傾き者(当時はバサラ大名というらしい)以外の何者にも見えなかった佐々木道誉役の陣内孝則が、子供心に大好きでした。
苦悩も多い話ですが、うじうじせずに、決めるときには決めて、歴史の流れもしっかりと抑えつつ、それぞれの人間ドラマもおなざりにしないという、非常にバランスの取れた見ていて気持ちいい作品です。オープニングもとてもかっこよく、さすが大河と言うべき、他のドラマとは一線を画した良作品です。(06.5.2)
大火事で両親も店も失ってしまった大工の若棟梁と、孤児になった九人の子供たちとの交流を描いた、人情時代劇。
頑固で一本気で反骨精神の塊のような「大留」の若棟梁・茂次を小沢征悦(ゆきよし)が好演。はじめは距離があった子供たちとも、次第に打ち解けていき、互いに成長していきます。
そして彼を巡る二人の女性。一人は茂次に黙って九人の子供の面倒を見始めたりつ(上原多香子)。茂次の幼馴染で、やはり火事で身内をなくし、大留で下女として働くことになる。誰よりも子供たちのことを考える、若いながらも母のような優しい娘。もう一人が、老舗の質屋の娘・ゆう(奥菜恵)。茂次とは親が決めた許婚同士で、子供たちの教育を担当する。この二人の、茂次をはさんだ恋模様も見どころの一つです。
九人の子供たちも、それぞれに事情を抱えており、子供どうしの世界でもいろいろあることがうまく描かれています。その子供たちを演じたのは、全国から選ばれた子たちというだけあって、彼らだけでもなかなか見ごたえあります。
背景は重いながらも、どこか心温まる、和みのある微笑ましい時代劇です。
原作は山本周五郎の同名小説。全五回の短編でした。(06.10.14改稿)各回ごとのあらすじはこちら
新春恒例の10時間ぶっとおし時代劇。浅野内匠頭の妻・瑤泉院を主役に、原作『瑤泉院 三百年目の忠臣蔵』を、ジェームス三木が脚本にした、討ち入りの首謀者を瑤泉院という新見解を示した作品。
浅野内匠頭(高嶋政伸)が溺愛した美しく賢い妻・阿久利の愛に包まれた幸せな生活は、夫が刃傷に及んだことで一転する。幕府は内匠頭の言い分をろくに聞かず、即日切腹を申し渡す。吉良上野介(江守徹)は内匠頭の乱心だと言い張るが、髪を下ろし瑤泉院となった阿久利は、遺恨だと信じ、「内匠頭が刃傷に及んだのは遺恨」、「ご政道は間違っている」、「浅野は善、吉良は悪」との噂を市中に広め、浅野が吉良に斬りかかったというマイナス部分をうまく覆い隠し、浅野家家臣の敵討ちの気運を高めさせる。
また、奥女中の喜世(吹石一恵)が、柳沢吉保(高橋英樹)の側室・正親町町子(萬田久子)と親しかったことを通じて、吉保に会う。そして大石内蔵助(北大路欣也)と吉保の面会を実現。その腹のうちを探り合った内蔵助は、時期将軍には甲州家が有望と聞き出し、喜世を側室として送り込む。
その後も瑤泉院は、自ら同志の一人と名乗り、赤穂浪士たちの討ち入りに尽力する。殿の無念を晴らすため、美しき主君の妻の心の平穏のためにと、同じ目的に邁進する大石と瑤泉院は、いつしか信頼する主従関係からほのかな愛を芽生えさせる。
討ち入り後、将軍となった家宣(磯部勉)は、綱吉(津川雅彦)の代に乱れた政道を正し、彼の嫡男を産んだ喜世は、遠島となっていた赤穂浪士の遺児たちの救済を行う。
よく知られた『忠臣蔵』ですが、瑤泉院が積極的に関与、世の風評を味方につけ、時の最高権力者・柳沢吉保にまで会ってしまうという、斬新な展開でした。また吉保と風呂に入る内蔵助という珍しい場面や、幼児言葉の綱吉も見所です。
見方によっては悪女とも思える瑤泉院を、稲森いずみが美しく、しとやかでかわいらしい女性として演じており、10年後に再開した喜世と、『忠臣蔵』の人形浄瑠璃を見て、「あれでは吉良様がかわいそう」と微笑みあう笑顔に、女の強さとしたたかさを見た作品でした。
また、全編通して狂言回しに、浄瑠璃調のナレーションを入れたところが、だらけがちな長丁場のドラマのアクセントとなって、良い感じでした。
桜吹雪でおなじみの、説明も不要な国民的時代劇、『遠山の金さん』が久々に復活。演じたのは松平健。『暴れん坊将軍!』のイメージが強すぎて、はじめのころは遊び人姿はともかく、お奉行様の正装では、どう見ても将軍の変装にしか見えなかった、カルト色強い作品でした。
今回の金さんは、表向き、口入屋で仕事を紹介してもらうも、どの仕事も長続きしないという遊び人。それを恰幅の良すぎる松平健が演じているのが、かなりミスマッチで絵的面白さ満載。
唯一金さんの正体を知っている、口入屋兼料理屋「つるや」の女将・おまきに萬田久子、いつも奉行所からお奉行様に逃げられてしまう役人・東条八太夫に森本レオと、重要な役にベテランを、その一方で、おまきの娘・おいとに、時代劇の娘役で実力を伸ばしている芳賀優里亜、見習い同心・三浦真次郎に、『功名が辻』で加藤清正を演じた金児憲史、岡引・松吉に中村繁之と、脇役も充実。
パターンが、お奉行自ら事件の捜査のために、口入屋を通じて潜入するというものなので、毎回職業を変える金さんの七変化も見所でした。また、重要な鍵を握る女性から情報を聞き出すときの、金さんのくどいているとしか思えないセリフや、桜吹雪を見せる時の決めゼリフが毎回変わっていた(凝りすぎて変なのものも多数)のも、楽しみの一つでした。もう一シリーズぐらい見てみたかったです。
毎回、側近の目を盗んで町に出て行ってしまう、松平健。将軍から奉行に変わっても、やっていることは、今回も同じなのですね。(07.4.14改稿)各回ごとのあらすじはこちら
次期将軍候補の、紀州の殿様・治貞公(三田村邦彦)と、尾張の殿様・宗睦公(西岡徳馬)。ところが二人とも「将軍なんてやりたくない」と勝手に城を抜け出し旅に出てしまう。
浪人に化けた治さんと、町人(渡世人?)に化けた宗さん。それに二人を慕う、素性を知らないお供たちも加えての、お互い「おまえが将軍になれよ」と言い合う、付かず離れずの珍道中。彼らの後ろには、城に連れ戻そうとするそれぞれのじいたちも追いかけて来るが、所詮はじい。すぐに二人にまかれては、じいどおし慰めあったり。でも大丈夫、二人は謎の色男隠密・村垣市蔵(京本政樹)がちゃんと見守っているから。
そんな二人も根は善人。旅先で、苦しんでいる人を見ると、手助けし、その背後に悪政ありと分かるや、二人して乗り込んでいく。
見栄を切り、名を問われた二人が、ばっ!と着物を脱ぐと、紫と緑の殿さま装束に身を包んだ二人が現れる!着物は元より、下着、髷、さらに武器までもが変わっている大変身!
ばったばったと敵を退治した後は、また何事もなかったかのように、旅に戻る。最後には水戸の殿様まで家出(城出?)してきて合流するという、国の政治が心配になる一作。
余談ながら、西岡徳馬はこのときの殿様装束とそっくりの格好で、『暴れん坊将軍』で将軍職を狙って、吉宗を暗殺しようとする尾張の殿様を演じてました。実は将軍になりたかったのか?(05.9.11)
唐突に復活したテレビ東京系の時代劇。しかも三ヶ月間放送が主流の中で、いきなり半年間の長丁場、さらに主役は時代劇はもちろんドラマ初主演の女性、原作なしという、チャレンジ精神全開の作品でした。しかしこれがなかなか、内容もチャレンジ精神溢れるもので、昨今はなくなってしまったエンタメアクション時代劇の歴史に、新たな一ページを刻み込んだ大作となりました。
時代は、九代将軍・徳川家重の御世、御庭番頭領が八代将軍・吉宗を暗殺したことにより、御庭番は解散、変わって将軍を守るために作られたのが暗殺集団『手鎖人』。御庭番頭領を父に持つおりんは、追跡者から身を守るため、この手鎖人に入れられる。しかし、手鎖人頭領・植村道悦が、実は天下を狙っていると知ったおりんは、手鎖人を脱走。道悦に乱暴されて産み落とした子が、殺されずに生きていると知って、その子に会うために、逃亡の旅に出る、というストーリー。
おりんを追って、毎回、道悦の放った刺客が登場するのですが、なにせ忍者のようなやつらなので、とてつもなく個性的。金棒振り回したり、水の中から現れたり、フリスビー型爆弾を投げてきたり。対するおりんの武器は、小太刀と、右手首の鎖。この鎖、普段はただの鉄の輪ですが、ひとたび腕を振るえば、相手を串刺しにしたり、首を締めたりと変幻自在。一体、材質はなんなのか、最後まで謎でした。その上、おりんの戦闘服はなぜか黒のレオタード(片肩出し)。お色気もばっちりです。
はじめのころは、アクションや演技、CGの下手さ具合が気になってしかたなかったのですが、回を追うごとにめきめき上達。最終回は、興奮して眠れないほどの面白さでした。
共演者は、宅麻伸、あおい輝彦、左とん平、梶芽衣子、倉田てつを、田中健と時代劇ベテランばかり。特に悪役は初めてと言う榎木孝明演じる植村道悦は、その憎々しさと不死身加減がかなり楽しめました。
「逃亡者」と書いて「のがれもの」と読ませたりと、セリフや演出もなかなか興味深く、おりんの刺客を倒した後の決め言葉「闇の鎖、また一つ切りました」は、ひそかに流行らないものかと期待してみたり。続編の製作も決まっていないのに、最終回で新たに伏線を張ってみたりと、作り手は続編やる気満々。なんとしてでも続編を作ってもらいたいものです。(07.4.15)
各回ごとのあらすじはこちら
番組公式サイト http://www.tv-tokyo.co.jp/orin/
本能寺の変後、見つからなかった織田信長の遺体を巡る、後に『信長公記』を書くこととなる太田牛一を主役に据えた歴史ミステリーです。原作は、首相を務めた小泉純一郎が愛読書と語ったことで脚光を浴びた、加藤廣の同名小説。
信長の配下で書き役を務める大田牛一(松本幸四郎)。彼の仕事は各地から届く戦況の報告書を、それぞれの土地で使われている暦や地名の間違いを直して信長に提出することだった。
安土城を完成させ、天下掌握まであと少しとなった信長(松岡昌宏)に呼ばれた牛一は、密かに命を受け、五つの箱を預かり、それを京に届けるよう命じられる。だがその直後、わずかな小姓だけをつれて京に向かった信長は、本能寺で明智光秀(小日向文世)に討たれてしまう。
知らせを聞いた牛一は、これまでに書き溜めた信長に関する記述物を持って城を抜け出すが、途中で襲われ、ひなびた浜辺の村で身を隠しつつ傷の養生をすることに。
十ヵ月後、城に戻れた牛一を待っていたのは、信じられない事実だった。信長が愛した安土城は焼け落ち、牛一が「調子が良すぎる」と好ましく思っていなかった秀吉(中村梅雀)が跡を継いでいた。そして焼かれた本能寺からは、信長と森蘭丸の遺体だけが見つからなかったという噂を聞く。
敬愛する信長の遺体を探し出そうとする牛一を襲う影。光秀の謀反を促した裏の人物、秀吉の破格の出世を裏で支えた者たち、そして信長が牛一に託した箱の中身と耳打ちした話に隠された信長の果たせなかった夢。数々の謎を新見解で暴いています。歴史好き、信長好きにとっては興味深く見れた作品でした。
人情厚いことから「仏の旦那」と呼ばれる北町奉行所町方同心・仏田八兵衛(片岡鶴太郎)と、「剃刀」と呼ばれる切れ者与力・青山久蔵(村上弘明)、そして八兵衛の同僚五人で「八丁堀の七人」。
シリーズ七作目にして最終シリーズ。(たぶん。少なくても放送時の公式サイト発表ではそうなっていた)。全七話の短いものでしたが、最後だけあって全体に見ごたえたっぷりの話ばかり。
シリーズ初めこそ、上司青山対部下たちの構図があったものの、すっかり強い絆で結ばれてしまった七人。そこにさらに厳しい上司・年番方与力黒沢左門(平泉成)が赴任。同心が本来は世襲制でないことを上げ、北町奉行所のてこ入れを計る。だが、そこには別の思惑もあるようで、青山の右腕である八兵衛にことさら強くあたり、いきなり物書き同心に左遷命令。
一方、このシリーズの裏のメインストーリーでもある、八兵衛と、同居中の女医の弥生(萬田久子)の恋仲に発展しそうでしないラブコメ。前シリーズ末で預かっていた少女・おやいもいなくなり、いよいよ進展かと思ったところに、なんと弥生に思いを寄せる男出現! しかもその正体は黒沢左門!
とまあネタ盛りだくさんな設定を、毎回派手なあおり文句をつけて進展させるという、一話完結の時代劇では難しい手法を使ってくれました。しかも最終回残り五分が、時代劇ではおそらく初めてだろうと思われるような誰の予想も裏切る衝撃的なラスト!
元々、時代劇というより、刑事もの、もしくは平会社員と中間管理職の会社ドラマという感じのハードボイルドな作品色が、さらに洗練されたようなシリーズでした。(06.3.24改稿)各回ごとのコメントはこちら
過去に二度放映されたシリーズの、三年ぶりの第三シリーズ。
公事宿『鯉屋』に居候する田村菊太郎は、京都奉行所の同心組頭を務める田村家の長男でありながら、正妻の子である弟に家督を継がせるために出奔した、心優しい男。人情にも厚く、それでいて腕も立つ菊太郎が、現代で言うところの宿泊所つきの弁護士事務所な公事宿を舞台に、熱く奔走するという、人情探偵もの。
第二シリーズの最後で「すぐに戻る」と言い置いて、江戸に旅立った菊太郎が、三年ぶりに帰ってくるところから話は始まります。三年も音沙汰がなかったことに、菊太郎の恋人・お信(南果歩)を取り巻く人々は怒り、お信を隠れさせてしまいます。その上、そこに江戸から菊太郎を追いかけてきたという娘・お凛(星野真里)まで現れて、三角関係のまま、菊太郎とお信は会えずに最終回までもつれこむ、恋愛話が今シリーズ通しての筋になっています。
京都が舞台の、京都で撮影された作品。原作は澤田ふじ子の『公事宿事件書留帳』シリーズです。全八回でした。各回ごとのあらすじはこちら
藤沢周平の同名小説が原作の金曜時代劇。
石橋銀次郎(内野聖陽)は剣のこととなると、子供のようになってしまう青年。それだけに剣の腕は神道無念流の免許皆伝。彼が浅沼半十郎(段田安則)とともに、伯父の小出帯刀(近藤正臣)に、家老の暗殺に使われた、馬の首を一撃で落とす剛剣『秘太刀 馬の骨』の使い手を探すように命じられたことから話は始まる。ところが、話は藩政を揺るがす意外な方向へと発展していく。
みどころは、「馬の骨」の創始者がいたという矢野道場の門弟との試合で使われる、いわゆるチャンバラとは違う、木刀を使った実戦に近い迫力ある殺陣。
CGを多用する一方で作り物の蝶を飛ばしたり、不思議な舞台装置、場面転換の演出など、実験的な演出を精力的に取り入れていた。またEDは和装のトランペッター。この過剰なまでの迷走する演出に、賛否両論。同じ時間帯に放送された、同じ藤沢周平原作・内野聖陽主演の『蝉しぐれ』が原作のイメージを忠実に再現し、好評だったために比較されて、一部で大論争を巻き起こしました。
演出の影に隠れがちだが、主役の内野聖陽がとてもいきいきと楽しげに銀次郎を演じており、とても魅力的。他の出演者もベテランぞろいで、とてもいいキャラクターがそろっている。
全六回という短い放送でしたが、時代劇史上に残る(と私は思う)迷作。(05.10.7改稿)
他の地域では知りませんが、関西では再放送でもないのに平日の朝(金曜の8時半からだったと思う)からやっていた。しかも日光江戸村で撮影、製作されていたというカルトな番組です。
主人公は天秀尼といって、豊臣秀頼の子・千姫の養女、つまり豊臣と徳川両家を親戚筋に持つ、スーパー高貴血筋の尼さん(実在の人物)。なのに徳川家康より天下世直し勝手の印を受け、旅に出ちゃうというとんでもないおてんば娘なのです。
普段は男装のはではでしい侍の格好で、お供にお付の尼さんやら柳生十兵衛(!)を引き連れ、若い娘らしく甘い物をぱくついたり(尼さんなのにいいのか?)しているが、ひとたび悪政や悪人に悩まされているか弱き庶民を見つけると、原因究明に乗り出し、時には天秀尼みずから太夫に変装して色仕掛けで真相を探る。そして最後にはお決まりの悪の本拠地へ殴りこみ。要するに水戸黄門そっくりの筋立てなのだが、最後の見せ場がすごい!
悪人たちに誰だと問われれば「上野のお山の姫天狗。そなたらの悪行明々白々」と神々しい尼さん姿で登場。逆切れ悪人たちを錫杖で殴りまくる。免許皆伝の腕前とやらで、強い強い。しかもアクション俳優だから、高飛びやらアクション激しい殺陣するものだから、時々太ももチラリ(これの前番組「細川隆一郎の天下御免」の看板コーナー『世直し天秀尼』では毎回、丸見えだったのだが、この番組に昇格するにあたり、大幅に減らされた)。最後には「この方をどなたと心得る!」の決まり文句に、はらりと一枚脱ぐと、印籠代わりに家康公直々にいただいた「葵の袈裟(赤地の袈裟にどど〜んと胸に金で葵の紋の刺繍!)」が現れる!
アクション得意で殺陣も完璧、容姿もスタイルも良し、お色気も厭わない、の三拍子揃った江戸村劇団一押しの本倉さつき。久々に大河ドラマ(タイトルど忘れ。ごめんなさい)に女中役で一回だけ出てきてトンボを切った後、とんと見ていない。今は、どうしてるんだろう? 埋もれさせるには惜しい人材だと思うのだが。(05.7.14)
悲劇の最期を遂げた会津の少年隊・白虎隊を、ジャニーズの少年たちを中心に、二夜連続の約5時間で描いた大作。
白虎隊の直系の子孫・酒井新太郎(山下智久)は、朝帰りしたところを会津から来た祖母・敏子(野際陽子)に見つかり、こっぴどく叱られそうになる。新太郎は、運悪く訪ねてきた篠田雄介(田中聖)とともに、祖母がいないところ、会津へと逃げる。ところが頼った優しい祖父・峰男(伊東四朗)は、二人を白虎隊記念館に連れて行く。そこには二人にそっくりな肖像画が飾られていた。
会津藩では、幼少の頃から「什の教え」と呼ばれる教訓を叩き込まれ、会津魂を持つ武士になるようにと厳しく育てられる。酒井家の次男として生まれた峰治(山下智久)もまた、病弱な母・しげ(薬師丸ひろ子)から「立派に生き、立派に死ね」と育てられ、藩一の名門の藩校・日新館に、幼馴染の篠田儀三郎(田中聖)とともに入学する。
だが幕末の動乱は、会津魂を貫き通そうとする藩主・松平容保(東山紀之)の会津藩を過酷に追い詰める。孤立無援となった会津藩は、峰治たち16、17才の少年たちだけで結成された白虎隊をも、戦場に送り込むことを余儀なくされる。
什の教えによって、母や家族以外の女と口を利いたことがなく、初陣がはじめての泊りがけの外出になるような少年たちは、藩のために命を賭けて戦えることを誇りに思い出陣していく。だが猛攻撃を受け、散り散りになった隊士たちは、負傷し、疲弊し、ある者は倒れ、ある一団は街が燃やされた煙に包まれた城を見て、城が落ちたと思い自刃する。また生きて城に撤退した隊士も、日夜銃弾の撃ち込まれる城内で女子供関係なく篭城し、命をすり減らしていく。
今からたかだか140年前の時代に、これほど気高く戦い死んでいった少年たちがいたとは。そんな少年たちの日常の風景も織り交ぜ、涙を誘った作品でした。
日光江戸村で撮影された一回30分の時代劇。
主人公は将軍になったばかりの徳川家光。まだまだ遊びたい盛りのお年頃の彼は、市中見回りと称して、春日局の隙を見てはお忍びで江戸の町にふらふらと出て行ってしまう。
超世間知らずな家光のサポートをするのは、専属のお庭番役を仰せつかった美雪(杉浦幸)と小太郎(片桐光洋)の姉弟。普段は芝居一座の座長と、女形もできる看板役者(元チビ玉ですから!)として暮らす彼ら。その芝居小屋に城を抜け出した家光が遊びに来るとこから、だいだい話は始まる。
もともと正義感が強く、剣の腕もひそかにお庭番二人よりも強いっぽい家光。事件に巻き込まれることもあれば、自分から関わっていく場合もあり、周りの人間は心休まるときがない。しかし30分でしっかり解決する手腕は、ひそかに歴代時代劇ヒーローよりも上かも。
主役三人がとにかく若い。こっそり家光と美雪は恋に落ちてる様子もあり、ナレーションでやたらと「まだまだ青春したい家光……」やら「青春真っ盛りの家光」等々、『青春』が強調される。
一方で、忍装束になったとたんに量と長さが増える小太郎の髪の毛や、雪の降る中、防寒具なしで素足の将軍・家光(痛々しいほど寒そう)等のチープさ加減もなかなか笑わしてくれます。時代村作品おなじみの、池上公司の柳生十兵衛も時々出てますよ。(05.9.23)
第35部は、印籠も新しく豪華にずしりと重くなって、水戸光圀の実子が養子に入った高松藩からスタート。そのまま四国、九州を回りました。
新しくなったのは印籠だけでなく、徳川に恨みを持つ闇の商人・闇の布袋(遠藤太津朗)と、その血を引くくノ一・北斗の桔梗(原史奈)が率いる忍者軍団との対決というストーリー上の新風もあったのですが、なぜか闇の布袋側の刺客が回を追うごとにしょぼくなり、黄門様との絡みもなく鬼若に一蹴されたりする始末。そして半年の放送期間真ん中で、闇の布袋の恨みは誤解であることが発覚し、部下の裏切りで自滅。せっかくの新くノ一・北斗の桔梗も行方不明に。後半三ヶ月は、普通にいつもどおり世直し旅をした黄門様たちでした。
レギューラー陣は、前回から変更なし。おなじみ黄門様に助さん(原田龍二)、格さん(合田雅吏)。疾風のお娟(由美かおる)、よろず屋の千太(三波豊和)、風の鬼若(照英)。アキ様(斉藤晶)は少し強くなって戦いに参加するようになりました。(06.3.28改稿)各回ごとのコメントはこちら
第36部は、黄門様の姉・明芳院(淡島千景)から、孫の加賀藩前田家の若君・利久(渡辺大)が婚礼を上げる知らせがきたところから始まりました。明芳院の文には、簡素に執り行いたいから出席無用と書いてあったにもかかわらず、かわいがっていた利久の門出を祝いたい黄門様は、加賀に向けてお忍びで出発します。
レギューラー陣は、よろず屋の千太が抜けて六人からスタート。おなじみ黄門様に助さん(原田龍二)、格さん(合田雅吏)。疾風のお娟(由美かおる)、風の鬼若(照英)。アキ(斉藤晶)は今回もさらに少し強くなって戦いに参加しました。
準レギュラーの八重さんや、鳴神の夜叉王丸、助さんの母上・静枝さん、助さんのお見合い相手の美加さんも健在です。また十話から、江戸出身のお調子者、おけらの新助(松井天斗)が、レギュラーに加わりました。
中盤に到着した加賀から、後半は西日本を回り、最終回の京では、利久と新妻の菊姫(藤井麻衣子)が再登場しました。(07.1.11改稿)各回ごとのコメントはこちら
中井貴一主演の映画の方ではなくて、テレビ東京系で正月時代劇として10時間ぶっ続けで放送された方です。放送中に、映画の方のCMバンバン流してて、ちょっと大丈夫なのか?とか思いました。原作は浅田次郎。
「新選組で一番強かった男」吉村貫一郎(ちなみに実在の人物です)。南部藩の極貧足軽だった彼は、京の新選組の噂を聞き、妻子を養う金を稼ぐために脱藩、新選組に加わる。そして手当てが出る仕事を好んでやり、「金の亡者」とののしられながらも、自分は生活を切り詰めて金を家族に送り続ける。しかし時代の波は、新選組にも、そして身分を越えた親友と家族の待つ南部藩にも、容赦なく襲い掛かる。
剣の腕は一流なれど、心優しい南部藩訛りのさえない男を、渡辺謙が熱演。素朴な人柄がにじみ出る演技も、ひとたび刀を抜いたときの悲痛な気迫も、さすがは世界の渡辺謙(当時はまだハリウッド行く前だけど)と素直に思える実力です。特に後半、ボロボロになる貫一郎を、「けっこう大物俳優の謙さんがそこまでしなくてもいいんじゃないの?」と心配になるぐらい、体当たりで怪演しています。またこのシーンが泣けるんですよ。
全四話構成で、最後は子供の世代の話になるので、渡辺謙は出てこなくなってしまうのですが、これまた、子供たちが切ないいい演技をするのです。
他の新選組隊士の配役も、なかなか似合っていると思います。特に近藤勇役の伊原剛志は、私の中でベスト近藤です。斎藤一役に竹中直人は、乙女心には複雑ですが、人斬りのキラギラした感じは上手いなあ、と。
10時間という長丁場ですが、時間を忘れて見入れる大作。武士と家族の切なさが詰まって、こんなに泣けたドラマは初めてです。ぜひ、食料と涙対策のティッシュかハンカチを用意して、一気にどうぞ。(05.10.5)※あとで分かったのですが、伊原剛志は近藤勇役ではなくて、土方歳三役でした。すいませんでした。
越前さんというと、どうしても加藤剛さんの真面目であくのないイメージが強いのですが、ここの越前さんは一味違います。
お酒が大好きで、毎夜ふらふら飲みに出かけては、翌朝、二日酔いでお白州に出るのを嫌がって駄々をこねて娘に怒られたりしています。
作品の雰囲気としては、どっちかというと推理中心で「名奉行 遠山の金さん」に似てます。同じ「名奉行」だしね(笑)。時々、「本格推理もの?」というような話もあって、面白いです。
与力たちが調べ上げてもう判決直前の事件に疑問を持っては、出かけていって自分で調べる。味方は内与力の池田大介くん(富田翔)だけ。この若い大介くんが一生懸命で、またかわいいんだ。で、大岡様の聞き込みはもちろん居酒屋で、飲みながらw。相手が勝手に貧乏旗本やら八丁堀やらと間違えてくれます(笑)。そして最後のお白州では、お天道様もびっくりのはちゃめちゃなお裁きをやってくれます。このお裁きを予想するのも、また楽し。6月20日に早、十回目にして、最終回となってしまいました(泣)。
金曜時代劇といい、最近の時代劇の入れ替わりの早さにはびっくりさせられます。
ちょうど一年ぶりに放送されたシリーズ二作目。キャッチコピー「火曜の夜は、サプライズお裁き。」が示すとおりの、ワンマンとんちお白州は変わらず健在。他のまじめな大岡様イメージをぶち壊す、型破りな大岡越前です。
レギュラー陣の配役そのまま。世話女房のような勝気で怒りっぽい娘・香織(水橋貴己)。そして今シリーズでは越前さんよりも香織に振り回されっぱなしの内与力の池田大助(富田翔)。でも部下を率いて捕り物の指揮を取ったりと、仕事の面ではしっかりとした一面も。二人とも若くてかわいいです。門番の与平(奥村公延)も犬のさくらも重要な役回り。そしてお奉行様に振り回されっぱなしだった筆頭与力の笹倉さん(金田明夫)も、すっかり越前さんに感化されて、北町の筆頭与力と渡り合ったりの成長振り。きれいどころの、実は元・雲霧仁左衛門の女だった密偵・おりん(涼風真世)も、尾行に変装にと大活躍です。
少しチームワークにまとまりが出たものの、やっぱり相変わらずな越前さんのワンマン振りと掛け合いが、楽しい作品。越前さんがお白州で裁く前に、事件の真相を考えて当てるのも、楽しみ方の一つです。(06.7.29改稿)各回ごとのコメントはこちら
あの『桃太郎侍』を、高島政宏主演でリメイク!…と思いきや、その内容は、山手樹一郎の原作とも、高橋英樹版ともまったく違う別物だったこの作品。ひとまず『桃太郎侍』というタイトルは忘れてしまったほうが、楽しめます。
桃太郎こと桂木新二郎は、彼を溺愛する母の元を飛び出し、浅草奥山にある矢場「あたり矢」で用心棒兼、居候をする浪人。用心棒とは言っても、昼間からダラダラごろ寝して、矢場の女将のお葉(富田靖子)に怒鳴られるだらしない、粗野で、喧嘩っ早く、美人に弱くて惚れっぽいお調子者だが、その実は正義感が強く、涙もろくてまっすぐな男。女の手一つで育ててくれた母・千代(中村玉緒)を誰よりも大切に思う一面も。剣の腕も一流。
実は桃太郎は、四国・丸亀藩の若君の双子の弟、そして千代は元女中であり、母子に血のつながりはない。また高嶋二役による、そうとは知らないもの同士の双子の対面お約束は顕在。
やたらと桃太郎が、母上になんでも結びつけるマザコン振りを発揮するため、ストーリーは親子の情に絡めたものが多めでした。
知り合った美人が事件に巻き込まれ、善人が心無い悪人によって殺され、桃太郎が奮起するという、勧善懲悪パターンもの。この事件解明には、千代にひそかに思いを寄せる桂木家の使用人・伊之助(左とん平)が、元「ましらの喜十」という義賊だったことを生かして大活躍。やたらと悪党に詳しく、武家屋敷に忍び込むなんてことも平気でやってくれます。
そして悪人の正体を突き止めるやいなや、桃太郎は着物を裏返し、赤地に桃の絵の夜目にも鮮やかな着物に、薄物をかづきにし、白マフラーで口元を隠して、夜の町をひた走る。そして祝いの宴を開く悪人の屋敷の庭に飛び降り、白マフラーを剥ぎ取り、名乗る口上が、「桃から生まれた桃太郎、天に代わって鬼退治に参上!その方らの悪事、天は許すまじ!」
自慢の大ぶりの刀・天魔不動剣を振り回し、豪快すぎる(美しさは皆無)殺陣で、悪人たちをばったばったと一刀の元に切り伏せる。そして最後に残ったボスを前に、上段に構えた刀をゆっくりと下段に回転移動させ、返した刃に写った相手の顔を、「鬼に見えたり」とズバンッ!
血をぬぐった懐紙をばらまき、天を見上げて桃太郎。「母上、斬り捨てたのは、皆、人の顔をした鬼でございます」。
ここまでの一連のラス殺陣の演出が、セリフは同じながら毎回違うことをするという、なかなか気合の入った作りになっておりました。
母上への心の声にはじまり、母上とのコントで終わる、時代劇一のマザコン侍と、大げさすぎる芝居が売りの、この作品。おそらく歴史に残る超迷作なのは間違いありません。ちなみに主題歌は吉川晃司の「サバンナの夜」。要するに、時代劇の枠を越えたニュー時代劇にしたかったのだと思うのですが、ちょっと空回り感は否めませんでした。もったいない。(06.9.26改稿)各回ごとのあらすじはこちら
千葉真一・十兵衛の代表作は『柳生一族の陰謀』だと思うのですが、こっちのほうがコメディタッチで私は好きです。
主役は十兵衛となっていますが、どっちかというと影の役回りで、表の主役は妹の縫之介(志穂美悦子)。というのも、十兵衛は巡検使として全国を回ること言い付かるも、乱心のため、妹・茜が男装して縫之介と名乗り、代わりをすることに。
実は十兵衛の乱心は、お忍びで全国を回るためのお芝居。かくして、縫之介一行を影で追っていく一人旅になるのだが…。
公儀の使いと言えど、むしろ公儀だからこそ旅先では悪代官等に狙われる縫之介一行。それなりに善戦するも、柳生の娘とは言え所詮は女、ピンチに陥ってしまう。そこに現れるのが夜目に鮮やかな蛍光塗料の布を足に巻いた馬に跨り、同じく蛍光塗料のテングの面を被った(格好は違うこともあり)我らがヒーロー十兵衛! かっこよく悪人退治! だけどその格好、夜道で出会ったらかなり怖いと思うのですが…。
十兵衛がかっこいいのはもちろん、男装の女剣士・縫之介もお決まりの派手めの衣装にポニーテールでかっこいいですよ。お約束の、男に間違われて女の子に惚れられる話もあります。(05.8.2)
『柳生十兵衛七番勝負』シリーズの三作品目にして、タイトルどおり最後の作です。前回、前々回と、幕府転覆を企てる者の黒幕に見え隠れしていた由比正雪(和泉元彌)と、とうとう全面対決。なのですが、正雪の出番が多くなった分、正雪の主張や生い立ちなんかも語られる機会が増えたわけで、三シリーズ中、一番いい人っぽく、ことごとく十兵衛に計画をつぶされる彼があわれにさえ見えます。黒幕なのに。
十兵衛が本来なら争いたくない人たちと闘わざるをえなくなり、最後には斬ってしまうという十兵衛苦労の旅は、今シリーズも健在。特に今回は、十兵衛に逆らえない命令を下していた父・宗矩が死んだというのに、死んでいると思っていた母が生きていて人質にとられていたり、いることさえ知らなかった実の弟と斬りあったりと、さらに心の苦しみ倍増。修羅の道を歩くしかなかった十兵衛は、最後にどこにたどり着くのか。
でも何よりも見どころは、正雪の腹心でありながら、十兵衛とも心を通わせあってしまう丸橋忠弥。善悪で言えば悪側なのに、どこまでもさわやかでいい人な彼に、照英がぴったりでした。十文字槍もかっこよかったです。
全八回。(07.6.7改稿)
各回ごとのあらすじはこちら
05年4月に同じNHKの金曜時代劇で放送された『柳生十兵衛七番勝負』の続編。
前作品で幕府転覆をもくろむ計画を、一人奔走し、事前に防いだ柳生十兵衛。今度は島原の乱を舞台に、やはり国家安寧のために幕府転覆を防ぐために戦う。
今回の黒幕は公家。幕府というより、幕府の柱である柳生宗矩の失脚を狙って、島原の乱を起こすように仕向けるという、大胆解釈。初めは父の命令で動いていた十兵衛だが、次第に父の暗黒面に気づき、民のために乱を収めようと一人奔走することになるという、ある意味、十兵衛の苦労話です。しかしこの十兵衛、いじいじと悩んだりしない、男惚れするような気持ちのいい性格なので、見てて暗くならないのが良いです。
毎回、さまざまな事情で戦うことになる剣客たちも、正統派から中国拳法まで、バラエティーに富んでる上、うまい人たちばかりなので、安心して見れます。
そしてなんと言ってもすごかったのが、黒幕の円条寺業平(杉本哲太)。悪知恵の思いつき具合もなかなかのものながら、性格も公家にしては即物的な残虐さを持っていて、その上公家なのに強いのなんの。独特の剣の使い手で、対決シーンでは十兵衛さえ苦戦させる技量の持ち主。それでいて公家特有のおほほ笑いもあの顔でしてくれるという、一歩間違えばお笑いになってしまいそうな強烈な人物でした。側にいた前回から引き続きの黒幕の一員、後の由比正雪(和泉元彌)の影がなくなるぐらいに。
そして忘れてはいけない荒木又右衛門(嶋政宏)が、十兵衛の兄弟子であり、敵方に付くというおいしい話も盛り込まれています。
昨今の時代劇では珍しい硬派な話で、古き良き時代のファンにもおすすめです。全七回という短さが残念ですが、その分内容が凝縮されてテンポよく見れたとも言えるかも。(06.6.1改稿)各回ごとのコメントはこちら
NHK大河ドラマ・最年少主役を迎えたこの作品。タイトルどおり、源義経の話。
伝説的なヒーロー、源義経をジャニーズ事務所の「タッキー」こと滝沢秀明が熱演しています。その優しげで少しさびしげで高貴な香りのする顔が、義経のイメージにぴったりな上に、回を重ねるごとにその目に強さと険しさが加わるという成長ぶり。
女性の原作のせいか、軍記ものというよりは、義経主従を家族に見立てるぐらいの強き絆が中心に描かれていたのが印象的でした。義経から見れば敵となる平家の面々や、源頼朝も好意的に丁寧に描かれており、いわゆる悪役がいなかったのも興味深かったです。
また、大河ドラマにしては珍しく、個人戦の殺陣シーンが多かったり、ワイヤーアクションを取り入れたり、また金粉舞い散る中での決闘など、エンターティメントな演出が多かったのも、今までとは違った形で面白かったです。(05.12.28改稿)
主人公・河合順庵は元御家人の町医者。長崎でシーボルトに学んだというのだが、針治療もできるマルチ医者だったりする。日ごろの心がけが悪い患者に対して、「おまえさん、手遅れだ」というのが口癖で、『手遅れ先生』と呼ばれて親しまれている。
北町奉行所の与力の長谷部総十郎(島田順司)と元道場友達だったり、弟子のおみつ(中村瑠璃亜)の父親・吉松(内藤剛志)が岡っ引で、かつ飲み友達(恋のライバル?)だったりする関係か、監察医も勤めている。
そんな彼のところには、事件の話も舞い込んでくるわけで。町奉行所が手を出せない悪人の存在が明らかになると、彼は針を持って出かけていく…。
必殺仕事人を意識した一作。
最近、ケーブルテレビで放送しておりまして、見直してます。
主役の橋爪淳といえば、最近では『水戸黄門』の柳沢吉保役で有名ですが、お小姓上がりの美青年が違和感なく演じられちゃうきれいな顔は、ここでも健在。しかも若い分、より良いですよ!
主人公の結城小太郎くんは、水野忠邦(山村聰)を親代わりとする孤児。十歳の時から神田・お玉が池の千葉周作(加藤武)の道場、玄武館に預けられ、現在は師範代を勤める腕前。正義感の強い好青年。
講武所風の髷(縦一本線のような細い月代にポニーテール。沖田総司イメージです)も初々しく、あれだけの器量良し、女の子にもモテモテなんだけど、真摯に接するも決して溺れたりはしない。どこまでもさわやかな好青年。水野様の女密偵・お遊(片平なぎさ)にからかわれて、本気で怒ったり。
しかし一度事件が起これば、自分から首を突っ込んで行ってしまう、お人よし。
そして、その事件、法では裁けない黒幕を見つけてしまったならば、千葉先生と別れの杯を交わし、決死の覚悟で乗り込んでいく。そのとき名乗るのが『隅田の小天狗 結城小太郎!』。って本名名乗ってどうするねん!
このときの大立ち回りは、小天狗を名乗るだけあって元気いっぱい。飛んだり跳ねたり、大きく動き回ってくれます。オープニングも殺陣尽くしです。
勝小吉(橘田剛)が出てくるので、もしかしたらと思っていたら、途中から幕末ネタも絡んできます。息子・麟太郎(生駒恭明)はまだ子供。
そうそう、昔の時代劇らしく、主題歌も歌ってますよ、橋爪淳。
わっか〜い竹中直人がおちゃらけ同心役で出てるのもミソ。若すぎて、テロップ見るまで気づきませんでした。
(05.7.1)参照 アスペクト発行『みんなのテレビ時代劇』