前回までのあらすじ
第7回「柳生の剣」(5月24日)
十兵衛が紀州へ向かっていると知った母・りん(富司純子)は、松下兵衛(大沢樹生)が十兵衛を自分の目の前で斬ると言ったことを懸念して、来るなと伝えてくる。が、もう逃げないと誓った十兵衛の決意は固い。
和歌山城に入り、徳川頼宣(西村雅彦)に謁見した十兵衛は、正雪の決起のことを問い詰め、考え直すように諫言する。だが頼宣は、これが答えだと槍を持った兵たちに十兵衛を取り囲ませる。それでも顔色一つ変えない十兵衛に呆れた頼宣は、母に会えと。
自分を捨てた理由を聞く十兵衛に、りんは「帰られよ」とそっけない態度をとり続けるが、十兵衛のたまりたまった一途に母を慕う気持ちをぶつけられ、「気持ちを分からず浅はかな母であった…」と泣き崩れ、謝る。
そこに兵衛が現れ、十兵衛に刀を向ける。なぜ自分を恨むのかと問う十兵衛に対し、兵衛は「おまえは柳生の頭領として何もかも持っている。母だけは自分のものだと思っていたが、その母の心もおまえのものだった」と。りんが柳生家を出た発端が、自分が宗矩に告げ口をしたためだと思っている寛平(苅谷俊介)は、十兵衛を庇って前に出て兵衛の気持ちを鎮めようとするが、斬られてしまう。りんが止める中、兵衛と十兵衛は闘い、死闘の末、十兵衛は兵衛を刺す。兵衛は十兵衛の腕の中でりんに見守られながら絶命する。
十兵衛はるい(牧瀬里穂)の前で、実の弟を殺したことを深く後悔し、剣を捨てることを決意する。
正雪の決起が四日後の24日にと決まる。それに向け、頼宣は船で江戸に向かった。十兵衛も急ぎ向かう。しかしそのころ正雪は、信用の置ける者だけに決起は23日の夜明けに起こすと打ち明ける。頼宣を待たず、夜明けとともに江戸に火を放つと。自分は駿府で待つ本軍の指揮を取り、駿府城から天下に号令を下す、江戸の指揮は丸橋忠弥(照英)に任すと。
江戸に向かう忠弥の元に、十兵衛が現れる。忠弥は江戸を火の海にすることにためらいを感じていた。どうすればいいかと問う忠弥に、十兵衛は「お心のままに」と答える。
江戸の町と民を守るため、再び正雪に会う忠弥だが、長年の夢が叶うと無邪気に喜び、忠弥を疑わず礼を言う正雪を、忠弥には斬ることはできなかった。忠弥は十兵衛に、真の決起が23日だと漏らし、江戸を守ってくれと頼む。第6回「祈りの剣」(5月17日)
十兵衛は、正雪が味方につけようとしている山の衆と呼ばれる者たちを訪ねて、金剛山に入る。その山中で、十兵衛は父の幽霊を見る。父の姿を追ってさまよった十兵衛は、山の衆に取り囲まれる。襲われそうになったところを、彼らの間から出てきた丸橋忠弥(照英)に助けられる。
忠弥は十兵衛に、山の衆のことを何者にもまつろわぬ生活をしていると説明。十兵衛はその生き方に惹かれるが、それは忠弥も同じ思いだった。だが山の麓の奉行たちは、お上のご意向に従わぬ彼らに手を焼いており、十兵衛に加勢を頼む。
一方、るい(牧瀬里穂)は一人、紀州にいる十兵衛の母・りん(富司純子)に会いに来ていた。そしてりんに、十兵衛は母に捨てられたと思っていると話す。だがりんは、十兵衛こそが自分を捨てたと思っていた。両者の誤解が解けたところでるいは、お役目のために人を斬ることに苦しんでいる十兵衛を助けてほしいと、頼む。
十兵衛がいない間に、山の衆の炭焼き小屋が侍たちに襲われ、子供をかばった忠弥が腕を切られる。「油断した」と話す忠弥だが、忠弥ほどの人物が油断などするはずがないと、十兵衛は正雪の仕業を疑う。奉行の所業だと信じている山の衆たちは怒り、仕返しに行こうとするのを、十兵衛は自分が話をつけてくるから待つようにと懇願。彼らの頭である槐(白竜)は、十兵衛を信じて待とうと、仲間をなだめる。
正雪の元を訪れた十兵衛は、正雪に多くの犠牲を出す決起を止めるように迫る。だが正雪は徳川頼宣(西村雅彦)のお墨付きを見せ、頼宣の元にいる母の命を取るか、父と同じように政(まつりごと)を取るかと逆に十兵衛に迫る。精神的に追い詰められた十兵衛は刀を抜き正雪に突きつけるが、そこに忠弥が助けに入る。忠弥は自分にとって正雪は、四年前の何もない自分を唯一見込んでくれた人、よりどころだと話し、正雪を逃がす。
そのころ、山の衆の住処が、奉行たちによって襲われていた。戻ってきた十兵衛に、槐は十兵衛を信じた責任をとると、勝負を挑む。槐の「刀を抜け」という言葉に、父の幽霊の「情を捨てて戦え」という言葉が重なり、十兵衛は刀を抜き、槐と戦い、槐を斬り捨てる。
るいからすべてを聞いたりんは頼宣の元へ乗り込み、真偽を問いただす。りんを人質に十兵衛を斬るという頼宣に、松下兵衛(大沢樹生)も賛同して意気込むが、りんは自分も死なず、みなで生きる道を十兵衛は取ると言い切る。一方の十兵衛も、みなを生かすためにと決意を固め、紀州に向かう。第5回「緋の剣」(5月10日)
由比正雪(和泉元彌)の次の目当てが尾張だと気づき、十兵衛たちも尾張へと向かう。自分と同じ徳川御三家の一人、徳川光友を味方につけることが、頼宣(西村雅彦)の狙いだった。
駕籠が襲われているのに出くわした十兵衛たち。そこに女剣士が助けに入る。彼女の剣は、かなりの使い手と思われた賊の頭らしき若者とも対等に渡り合えるほどだった。彼女は笙(水野美紀)といい、尾張柳生の当主・柳生厳包(吉田栄作)の腹違いの妹でありながらも、妾の子としてさげすまれており、柳生の一員として認められたい一心で修行に励むも、その願いはいまだ叶ってはいなかった。
佐山寛平(苅谷俊介)は十兵衛の心を少しでも癒そうと、十兵衛に黙ってるい(牧瀬里穂)を呼び寄せる。尾張に着いたるいは旅の疲れから足を滑らし崖から落ち、偶然、笙に助けられる。
十兵衛は頼宣が尾張にいると知って、会いに行く。そこで初めて、紀州に松下兵衛(大沢樹生)という弟がいることを知る。駕籠を襲っていたのが、その兵衛だった。兵衛は母を捨てた父と、その息子の十兵衛を恨んでいた。
一方、光友に謁見を拒否された頼宣は、正雪と相談し、光友が頼宣を次期将軍に推薦するという偽の印状を作らせる。
正雪は、笙に十兵衛を討たせようと企み、笙に、十兵衛を討てば武芸者として名を上げることができ、認められると吹き込む。笙に自分と同じものを感じていた兵衛は、笙を止めようとするが、笙は十兵衛に勝負を挑む。戦いを回避しようとする十兵衛だったが、追い詰められ、最後には笙を斬ってしまう。駆けつけてきたるいは、笙の認められたいという思いを汲み取り、十兵衛に伝え、笙は十兵衛の腕の中で息を引き取る。
偽の印状は寛平によって燃やされ、江戸では正式に家綱が次期将軍にと決まる。これで頼宣が将軍になるには、正雪の反乱しか手がなくなった。第4回「悔恨の剣」(4月26日)
自分がいても役に立たないと悟ったるい(牧瀬里穂)は、足手まといになるからと、一人柳生の里に帰る。
一方、将軍家光が亡き後の江戸では、わずか十歳の家光の嫡男・家綱に対し、頼宣(西村雅彦)が自分の存在を幕閣に誇示する。反乱など起こさなくても将軍職に付けるかもと考え始めた頼宣に、由比正雪(和泉元彌)は危機感を覚え、決起のお墨付きを書いてもらう。
京に着いた十兵衛は、同じく旅装束の侍・志賀清兵衛(石橋蓮司)と出会う。清兵衛は改易になった織田家の家老だったが、この度、三千石でお家再興となる兆しがあり、これを機に息子にお役を譲ろうと、京で道場を開いている息子・次三郎(浜田学)を迎えに来たのだった。
しかし清兵衛が訪ねた次三郎の道場には丸橋忠弥(照英)が来ており、正雪の決起の京の拠点になっていた。次三郎は自分を連れ戻しに来た清兵衛に、幕府が新たになれば、お家再興など関係がなくなると、正雪の計画を話し、清兵衛にも仲間に加わるように言うが、拒否される。その話を西岡大次郎(高野八誠)は盗み聞き、十兵衛は正雪の黒幕に頼宣がいることを知る。
正雪は計画を知った清兵衛を、次三郎に斬るように命じるが、息子が父を斬ることはできず、正雪は代わりに十兵衛を斬るように命じる。そして斬らなければ、京の拠点を別の者に任すと脅す。一方、清兵衛は織田家再興の障害となりそうな次三郎を斬る決意を固める。それに気づいて止めさせようとする十兵衛に、代わりに斬ってほしいと頼み込む。
次三郎から十兵衛に果し合いの申し込みが届く。出向いた十兵衛は、刀を抜かず、「国許に帰られよ」と次三郎に頭を下げ頼み込むが、次三郎は聞き入れない。切りかかる次三郎を、十兵衛は素手のまましのぎ続けるが、窮地に陥いる。十兵衛をかばって割り込んできた清兵衛を救うため、十兵衛は次三郎を斬る。第3回「孝養の剣」(4月19日)
駿府にさしかかった十兵衛は、由比正雪(和泉元彌)の生家が近くにあると知り、訪ねる。紺屋を営む正家を伺っている十兵衛たちに気づいた吉岡又五郎(モロ師岡)は、正雪の実の兄であり、剣術が好きで子供のころに吉岡家に養子に行き、今はそこの道場主となっていた。又五郎は、自分が養子に行ったために弟が紺屋の後継ぎにさせられたと語り、兄が勝手をすると弟に苦労をかけると、同じ境遇の十兵衛の笑いを誘う。
吉岡道場に、正雪の教えを受けた浪人たちが押し寄せ、弟子を志願する。困惑する又五郎の元に現れた正雪は、駿府で暴動を起こし、その間に江戸を襲って江戸城に登り、徳川頼宣(西村雅彦)を将軍につけ、自らは執権となると夢を語る。
十兵衛は、家光の病回復を久能山東照宮に参り、正雪に出会う。そこに丸橋忠弥(照英)が家光死亡の知らせを持って現れる。
一方、十兵衛の妻・るい(牧瀬里穂)は十兵衛の役に立とうと、一人で正雪の生家の紺屋に着物を染め直してほしいと訪れていた。そこに正雪のことをよく思わない侍たちがやってきて、正雪は紺屋の子で侍ではなかったのかと、ののしり始める。正雪の母・かつ(吉行和子)は、自分はここの奉公人で、正雪はれっきとした侍だとかばう。正雪は家業を捨てて家を出た親不孝者だとぼやいていたかつが、本当は軍学者となった正雪を誇りに思っていることを知り、物陰から成り行きを見ていた又五郎は、正雪の邪魔者を排除する決意を固め、るいを人質に取り、十兵衛に果し合いを申し込む。
るいを助けるために現れた十兵衛と又五郎の戦いを、るいは身を呈して止めようとするが、二人は聞き入れず、死闘の末、物陰から見ていた正雪の目の前で、十兵衛は長巻を使う又五郎を斬る。第2回「恩義の剣」(4月12日)
十兵衛が死んだとの知らせが届き、又十郎(森岡豊)と佐山寛平(苅谷俊介)は驚き、落胆する。尾張徳川の藩主も亡くなり、将軍・家光も病に倒れ、世には浪人が溢れていた。幕府は江戸に集まってきた浪人を厳しく取り締まり、浪人たちの中には憤懣が募っていた。そんな中、由比正雪(和泉元彌)は行き場を失う浪人たちを助け、人望を集めていた。正雪は全国のあちこちで幕府に不満を持つ者を奮起させ、幕府が鎮圧に人を裂いて手薄になった江戸で浪人たちを決起させようと企てていた。
貧困に苦しむ浪人の一人、矢口新八(永澤俊矢)の元に、かつての友人・丸橋忠弥(照英)が現れ、正雪を頼ることを薦めるが、新八はそれを潔しとしなかった。その忠弥の前に、妻のるいと西岡大次郎(高野八誠)を連れた十兵衛が現れる。刺客の目を欺くため、十兵衛は死んだと嘘の知らせを送ったのだった。また、忠弥は四年前、十兵衛に手合わせを願い、敗退し、五年後の再試合を約束していた人物だった。
正雪の弟子である忠弥は、正雪から十兵衛暗殺の話を聞いていたが、十兵衛の人柄を好いていた。忠弥は、十兵衛と正雪を会わせ、十兵衛を仲間に引き入れようと考える。だが浪人たちに武士を捨てて野に下ることを薦める十兵衛と、浪人には武士であることしか残されていないと庇い、それを助けようとしない幕府を弾劾する正雪との話し合いは、決裂する。
十兵衛は徳川頼宣に呼び出される。頼宣は十兵衛の母が生きており、紀州にいるから迎えに来てほしいと告げる。父・宗矩亡き後、将軍家を守る松平伊豆守(西郷輝彦)は、紀州へ行きがてら、幕府に反感を持つ者たちを取り除いて来いと、十兵衛を送り出す。
一方、矢口新八の息子が熱病に倒れる。だが浪人の新八の子を診ようとする医者はなく、新八は正雪を頼る。正雪はすぐに医師を呼び子供を助け、感謝する新八に、人を一人切ってほしいと頼む。
紀州に旅立とうとする十兵衛たちの前に、新八が立ちふさがる。そして死闘の末、十兵衛は新八を斬る。第1回「母恋(ははこい)の剣」(4月5日)
島原の乱より八年の月日が流れ、十兵衛は妻にるい(牧瀬里穂)を娶り、柳生の里で静かに暮らしていた。そんなおり、柳生家家臣・西岡大次郎(高野八誠)が、十兵衛の弟・又十郎からの文を携えてきた。そこには、父・宗矩が亡くなったことが書かれていた。
十兵衛は幼き日の思い出を、るいに語る。幼き日より父に厳しく鍛えられてきた十兵衛は、その父の手ほどきの最中に左眼を失った。大名になることを望む父は、十兵衛を城勤めに出そうとし、十兵衛を庇う母・りん(富司純子)につらくあたる。十兵衛は母を守るために、城勤めに出るが、その間に母は失踪していた。十兵衛は、子供ができたら自分も同じことをしてしまうのではないかと恐れ、子を作らなかったと、るいに漏らす。
父が死んだことで、将軍に呼び出された十兵衛は、弟と家禄を分け合い、八千三百石の旗本となるよう申し付けられるが、これを辞退。その後も柳生の里で、庵から道場に通う日々を過ごす。
しかしその裏では、何度も幕府転覆を企んできた由比正雪(和泉元彌)が、新たな計画を立てていた。そして幕府を倒すには、十兵衛を殺すことが先決と、一同に説く。
十兵衛の元に、匿名の文が届く。そこには、宗矩からは死んだと聞かされていた母が生きていると書かれていた。呼び出された先に待っていたのは、母の従者で、母とともに姿を消した茂平(俊藤光利)だった。茂平は「りん様の恨み、はらし奉る」と、十兵衛に襲い掛かる。やむなく茂平を切った十兵衛だが、最後の力を振りしぽった茂平に羽交い絞めにされたところを鉄砲で撃たれ、二人は谷底に落ちる。
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