前回までのあらすじ
最終回「峠の果て」(12月21日)
おぶん(邑野みあ)が身ごもったと皐月に報告に来る。常蔵の孫だと不安になるおぶんに、皐月は、辰吉(遠藤憲一)とおぶんの子だと優しく励ます。
一方、慶次郎と晃之助(比留間由哲)は、11年前に女を殺したが、今は改心している宗七を捕らえるかどうかで口論になっていた。罰を受けさせることが救いだと言う晃之助に対して、慶次郎は「罰するだけが救いじゃない」と。
宗七(塚本晋也)が見張られていることに、宗七を「仏の喜兵衛」と信じる宗七の店の者たちが心配し始める。追い詰められた宗七は、深夜、見張っていた慶次郎を11年前の火事の現場におびき出す。
「一度だって殺したいと思ったことはない。いつだって、死にたくないと思っていた」と、殺した時の心境を叫んだ宗七は、慶次郎に向かって短刀を振り上げる。だがそれを振り下ろせない宗七を後ろから、宗七をずっと探していた女房のお継が刺す。そこに晃之助たちが駆けつける。
自宅で療養となった宗七は、慶次郎たちに昔のことを打ち明ける。外に作った女の家で厠に入っている時にやってきた押し込み強盗の藤次(宮坂ひろし)に女を殺され、藤次に見つかった宗七は、殺されたくなかったら女にとどめを刺せと脅される。無理やりとどめを刺させられた宗七は、そのままそれ以降、藤次の言いなりに。藤次と強盗を繰り返していた宗七は、11年前、火事に紛れて藤次を殺し、逃走したのだった。
晃之助の口添えで、宗七は住追放となり、宗七と再会して話したことで四方吉(パクソヒ)も生きる意味を見出す。そして子が生まれるおぶんに付きっ切りの辰吉に代わり、四方吉が晃之助のお手先となる。慶次郎もまた、皐月の言った「人は誰かその者を知るものが一人でもいればそれでいいのです」という、亡くなった娘と同じ言葉に、はっとさせられる第9回「大つごもり」(12月14日)
「花ごろも」で働いていたおかつ(橋本真実)がお登世(かたせ梨乃)からのれん分けされて、新しくを出した。ところがそのまん前に、同じく花ごろもで働いていたお秋(泉沙池)までもがこっそりと店を出す。高くてもいい素材を使った凝った料理を出すおかつの店に対抗するように、味よりも値段で勝負のお秋。花ごろもにいたころは仲のよかった二人だが、次第に険悪に。とうとうお客の前でつかみ合いのケンカになる。二人を娘のように思うお登世は心を痛める。
一方、こつこつとお金を貯めていたおかつに対して、お秋が店を出すのにお金を借りた古着屋の主・喜兵衛(塚本晋也)。彼は身寄りのない子を引き取って育てたりと、「仏の喜兵衛」と呼ばれていた。花ごろもに来た喜兵衛を見た女中のお継(福森香加織)は、彼が行方不明になった夫・宗七だと言う。宗七は11年前に慶次郎が関わった事件で死んだはずだったが…。慶次郎から話を聞いた辰吉(遠藤憲一)は、唯一、宗七の顔を見たことのある四方吉(パクソヒ)に、喜兵衛の顔を見せる。(宗七と四方吉の詳しい話は第一回「峠」を参照してください)
物入りの師走ということもあり、値の張るおかつの店には客足が遠のくようになる。お秋の店は繁盛するが、そこに借金取りの荒くれ者が来て暴れる。お秋が雇った板前・文太(小宮孝泰)は、博打で借金を作っていたのだった。お登世のとりなしで、その場はなんとか収まる。文太を追い出したお秋に、店が苦しいおかつはここで働かせてほしいと申し出るが、お登世は「女将はそんなに簡単になったり辞めたりできるものじゃない」と叱りつける。
その後、おかつの店は軌道に乗り、お秋は店を閉め、行方知れずに。そして大晦日。花ごろもに集まってきたかつての奉公人たち。そこにお秋も現れる。第8回「蝮の恋」(12月7日)
吉次(奥田瑛二)が死ぬ夢を見て飛び起きた慶次郎。翌日、慶次郎のところに吉次の妹夫婦がやって来て、吉次のところに、越中島から使いが来たと言う。
吉次の別れた女房・おみつ(石田えり)が女郎屋をやっているのが、越中島の岡場所だった。そこで吉次は、おみつの店の女郎が客の若侍に殺されたのをもみ消しにしたことでおみつが成り上がっているのを知る。おみつは若侍の父親の若年寄・山口伊豆守(坂西良太)と、両替商の檜屋(陰山泰)の力を使い、いまや岡場所を取り仕切るまでになっていた。
おみつの回りを調べる吉次を、怪しげな侍が後をつけるようになる。また、山口は欲望の(竹田寿郎)尽きないおみつを邪魔に思うようになり、妹夫婦のことを持ち出し吉次を脅し、おみつを殺させようと仕向ける。
おみつと会った吉次は、おみつに命を狙われる。隠し持っていた石をおみつに掏り取られ、二人はもみ合いになる。そこに二人を始末しようとやってきた侍を、二人は力を合わせて倒す。
一連の話を聞いた慶次郎は、古くからの知り合いの大目付・石河信濃守(中山仁)に女郎殺しの真実を知ろうとしたお手先が命を狙われていると申し入れる。山口は閉門蟄居となり、檜屋は闕所、そしておみつは行方をくらませる。第7回「意地」(11月30日)
母の世話をしに実家に戻っている皐月の元に、指物師の親方・栄五郎(山田辰夫)の娘のおちせ(前田亜季)が、硯箱を持って謝罪にくる。晃之助(比留間由哲)が皐月を喜ばせようと、指物師の直吉(本田大輔)にこっそり注文して、おちせに持ってくるように言ったというのだ。だが、飾り彫りの入ったその硯箱には、直吉の意地の匂いがするからと、おちせは持って帰って直助に作り直させると言う。
直吉は腕の良い指物師で、栄五郎の弟子だったが、生活の道具には飾りはいらないという栄五郎に反発して、栄五郎に追い出されていた。直吉と恋仲のおちせのためにも、栄五郎と直吉を仲直りさせようと、取り計らった晃之助だったが、皐月があっさりと硯箱をおちせに持って帰らせたと知って、ため息をつく。皐月は、最近すれ違いの多い自分のために晃之助が贈り物をしてくれたと思っていたのに、おちせのためだと知って怒り出す。だがおちせは病だった。
おちせの様態が急変する。おちせを直吉に会わせたいと皐月は思うが、栄五郎の手前、直吉は意地を張って会いに来てくれないと考え、晃之助に頼もうと思うが、肝心な時に晃之助は御用でいない。皐月は慶次郎に頼む。
慶次郎に尻を叩かれ会いに来た直吉に、おちせは病床でも使える軽い鏡台を作ってほしいと頼む。栄五郎ではなく直吉に作ってほしいと言われ、直吉は悩みながら鏡台を作る。
数日が過ぎ、危篤のおちせに持ってきた直吉の鏡台は、おちせが使いやすいようにと工夫のこらされた良い物だった。直吉と栄五郎は仲直りをし、おちせは皆に看取られ逝く。
おちせの弔いも終わり、直吉が皐月のところへ、作り直した飾り気のない硯箱を持って訪れた。直吉から、晃之助からの注文に「思いをこめてほしい」と言われたが、前に作った時にはすっかり忘れていたと聞いて、皐月の心は和らぐ。そして、皐月の実家に来た晃之助は、皐月に「一日も早く戻って来てほしい。皐月と八千代のいない家は、自分の家ではない」と告白。よい女中も見つかり、皐月と八千代は晃之助の家に戻ってくる。第6回「ふたり」(11月16日)
子供夫婦の家に泊まりに行った慶次郎が帰ってくると、家の中が荒らされている。慌てて佐七(石橋蓮司)を探すと、佐七は慶次郎の金も慶次郎が大切にしていた茶碗も、自分が使った売ったの一点張り。
慶次郎が辰吉(遠藤憲一)に相談に行くと、近頃一人暮らしの年寄りに取り入って、窃盗をする者がいるという。だが被害に遭ったどの家の年寄りも、話を聞くと「あれはあげた物だ」と訴え出ないという。佐七も話し相手になってくれたのが嬉しくて一晩泊まっていってもらおうとしたところ、被害にあったらしい。そこに辰吉の女房のおぶん(邑野みあ)が女に土手から突き落とされたと連絡が入る。
幸いおぶんは足をひねっただけだった。辰吉たちには何も言わなかったが、おぶんは突き落とされる時に女の言った「恨むなら常蔵を恨みな」という言葉が気にかかっていた。女の着ていた物から女を探し出したおぶんは、跡をつけていたところを気づかれ、反対に襲われる。そこに駆けつけてきた辰吉。だが辰吉にかばわれるおぶんを見て、女は「それが気に食わないんだよ」と。女はおれん(小嶺麗奈)といい、おぶんと同じ常蔵の娘だという。そのおぶんが幸せそうなのが気に入らないと言うのだ。
おれんの母は、お初(北原佐和子)といい、木綿問屋の娘だったが、常蔵にそそのかされおれんを身ごもり、捨てられた。おれんはおぶんの二つ年上の腹違いの姉だった。おれんはいまだに見栄っ張りでわがままなお初を疎ましく思っていたが、「女たらしの男の子、だまされた女の子」と言われるのが怖く、いい子を演じていた。そして自分より不幸なおぶんを見て、自分を慰めていたのだ。そのことを告げてから、おれんはおぶんの前に現れなくなる。
一方、慶次郎の家に入った泥棒の身元が判明する。小間物問屋をしている政吉(小林高鹿)という男だ。その報告を聞いたおぶんは、おれんに声を掛けていた男が政吉と呼ばれていたことを思い出し、おれんの元に駆けつける。辰吉たちも駆けつけ、政吉は捕まる。
お登世(かたせ梨乃)の手回しで慶次郎の茶椀も戻ってくる。捕まった政吉は、誰も訴えを出さず、しばらくしてお解き放ちに。おぶんはおれんにはもう会わないと心に決めるが、二人の間にあったわだかまりはなくなった。第5回「可愛い女」(11月9日)
見回りの途中、夫の源次(長谷川朝晴)に殴られているおさき(黒川芽以)を助けた晃之助(比留間由哲)。その場は源次も反省し、何かあれば力になると言って別れた晃之助だったが、数日後、源次の元を逃げ出したおさきがすがり付いてくる。
十七歳の器量よしで純情なおさきを、一回りも違う源次は力ずくで妻にしていた。だが源次はろくに働かず、酔っては暴力をふるい、とうとうおさきの着物を酒に変え、耐えられなくなったおさきは衝動的に家を飛び出したのだった。おさきは友達のおしな(矢沢心)の助言にしたがって、晃之助に一度だけ自分の男の振りをしてほしいと頼む。
源次の前で、晃之助は「おさきはもらっていく」と宣言。行くところがないと言うおさきを、晃之助は、母の世話をしに皐月が実家に帰っていない、自宅に連れ帰る。
森口家で暮らし始めたおさきは、だんだんと晃之助に好意を寄せる。二人の関係に辰吉(遠藤憲一)たちは心配する。しかしある夜、雷を怖がって抱きついてきたおさきを、晃之助は抱きしめてしまう。
自分の心に恐れを抱いた晃之助は、慶次郎のところにおさきを預ける。だが晃之助に会えなくなったおさきはさびしくてしかたない。その様子を見たおしなはおさきに、晃之助あてに十五夜に待っているという文を書くように薦める。
だが、それは幸せそうなおさきに嫉妬したおしなの罠だった。おしなは源次に二人が逢引すると、待ち合わせの場所を教える。晃之助を待つおさきの前に現れたのは、嫉妬に狂った源次だった。一緒に死んでくれと首を締められるおさきを助けに現れたのは、おさきが待っていた晃之助ではなく、辰吉だった。晃之助の本心を知ったおさきは、働き口も見つかり、晃之助の元から去っていく。第4回「蜩(ひぐらし)」(11月2日)
まむしの吉次(奥田瑛二)の妹・おきわ(近藤結宥花)と菊松(阿南健治)夫婦には子供がおらず、養子を欲しがっていた。その話がまとまりかけたところで、養子の親を吉次が強請ったことが原因で、流れてしまう。おきわは吉次が聞いているのを知った上で、「まむしの妹になんか生まれるんじゃなかった」と愚痴る。それを聞いた吉次は出て行ってしまう。
町を歩く吉次に助けを求めてきた女が。弟と仕掛けた美人局(つつもたせ)が失敗して、追いかけられていたのだ。そうとは知らずに吉次は助ける。女の名はおもと(高岡早紀)といい、ちょっといい女。おもとの方も吉次を気に入り、二人はそのまま一緒に暮らし始める。
一方、おきわは昔の友人のおふゆ(西尾まり)を訪ねる。おふゆは17才になるのにふらふらしている弟の早太に頭を悩ませていた。
おもとの弟の円次郎(白川裕二郎)は、義兄となった吉次の子分面をして、小銭を稼いでいた。賭場で使い走りをする早太に目をつけた円次郎は、まむしの吉次の子分になれば金が稼げると言葉巧みに誘い、吉次に紹介するための挨拶金を用意しろと言う。
早太は高利貸しから金を借り、事情を知ったおふゆは、おきわのところに怒鳴り込む。おきわと菊松の店も吉次が強請りとった金で建てたんだろうと言われたおきわは、慶次郎に兄を捕まえてくださいと頼み込む。
吉次のところに出向いた慶次郎。円次郎が自分の名を騙っていたことは気づきつつも、おきわの友人を苦しめたと初めて知った吉次は、円次郎の首を締める。その吉次におもとは剃刀を突きつける。元はすべておもとが仕組んだことだった。みんな「この世に用のない人間」という三人に、駆けつけたおきわは「生きててくれないと困る」と吉次に叫ぶ。
開き直って番屋に行こうとするおもとを、吉次は所払いにして、吉次もおきわの家に戻ってくる。第3回「三姉妹」(10月26日)
慶次郎は傷にかこつけて、佐七(石橋蓮司)にわがままばかり。そこにお登世(かたせ梨乃)がやってきて、甘えさせるものだから、佐七は怒って「今日は帰らない」と、出て行ってしまう。
実は「花ごろも」にも、亭主からうすのろだと言われて家出してきたお梶(野川由美子)がいて、お登世は彼女の世話先を慶次郎に相談しにきたのだった。
行き着けの店は休みで、カラスには糞を落とされと、佐七はやることなすことついてない。そんな佐七に声を掛けてきた女がいた。女郎姿の女に、強引に連れ込まれた家には、彼女を含めて、佐七と同じぐらいの年のおこと(淡路恵子)を筆頭に、おさよ(中原ひとみ)、おきょう(角替和枝)の三姉妹の女郎が。化け物じみた高齢の女郎に恐ろしくなった佐七は、金だけ払おうとして、「こけにしやがって」と怒鳴られ、追い出されてしまう。
一人で酒を飲みながら、慶次郎の悪口をぼやく佐七の耳に、「一人でやれるもんならやってみろ」と同じようなくだを巻く男の声が。お互いの相方の悪口で意気投合する佐七と安右衛門(江原真二郎)。安右衛門の「こけにしやがって」とのぼやきに、佐七はおことを思い出し、安右衛門を連れて謝りに行く。
おことの家で、酒に歌にと盛り上がる五人。おことたちのおねだりで、深川の海辺へ出かける。そこは三姉妹にまだ両親がいたころ、潮干狩りをした思い出の地だった。五人は夜通し飲み明かし、夜明けの海を見つめ、「海のあっち側へ行ってみたいねぇ」とつぶやく。
朝帰りした佐七。慶次郎にはどこに行っていたか言わなかったが、機嫌が良い。慶次郎から花ごろもまでお梶の世話先の書付を持って行ってほしいと頼まれた佐七は、安右衛門を見かける。お梶の亭主は安右衛門だった。安右衛門の態度は変わっていなかったが、花ごろもで自分がしっかりと働けることを確認したお梶は気が済み、安右衛門の元に帰っていった。
一方、おことたちは、お上の手入れにあって行方が知れなくなっていた。行方を心配する佐七だったが、おことの「生きるが勝ちだよ」という言葉を思い出し、あっち側に行ったのかもしれないと思い直す。第2回「空蝉(うつせみ)」(10月19日)
慶次郎が傷の養生でなかなか訪れない中、「花ごろも」の女将・お登世(かたせ梨乃)は、突然の夕立にのれんをしまおうとして、雨の中、蝉の羽化を見ている男と出会う。彼は刈谷清玄(津田寛治)といい、娘・弥生(加地千尋)の占いのお告げを伝える生業をしている者だった。清玄の「蝉はこの姿を捨てる時が美しい」という言葉に、お登世は心惹かれる。
慶次郎の所に晃之助(比留間由哲)が、「花ごろも」に男が住み着いたと伝えに来る。だが慶次郎はお登世が決めたことならと、意地を張って会いに行かない。
弥生の占いは確実で、それを伝える清玄の言葉は説得力があると評判になり、花ごろもには連日占いの客が詰め掛ける。だが弥生は、日々、霊感が弱まってきていると悩んでいた。霊感は次第に弱まり、占いが外れ、怒った客が押し寄せるようになる。
清玄は、元は武士である藩主の学友で藩の重鎮でもあった。しかし歌舞音曲好きの藩主に諫言したことで不興を買い、浪人に。江戸に出てきて妻が死に、その後、霊感を身に付けた弥生の占いで生計を立てるようになったのだった。
清玄は、悪どいことで有名な口入屋の佐兵衛から、呉服屋・備前屋に嘘のお告げをするように持ちかけられるが、断る。しかし生活のことを心配する弥生は、一人で受けてしまう。佐兵衛は弥生に、備前屋の荷入れの船が水難に合うと予言させ、船を襲わせるつもりだった。
備前屋の前で清玄は、船が襲われると伝える。その日から、清玄と弥生は誰にも告げず、姿を消した。
三日後、お登世の前に現れた清玄は、予言の礼に備前屋が世話をしてくれるようになったと告げ、やっと最期が見えたとつぶやく。お登世の前から去った清玄は、刺されてしまう。
慶次郎の元を、一人の少女が訪ねてくる。「何か私に言ってください」と頼まれた慶次郎は、彼女が弥生だと気づく。慶次郎は弥生に、「生きろ。己の言葉を持て」と言う。第1回「峠」(10月12日)
皐月の母が病になり、実家に戻っていた皐月と、その娘・八千代を訪ねた慶次郎。その帰り道、慶次郎は襲われて切り付けられる。命は取り留めたものの、そのまま深く眠ったままになり、周りの人々は心配する。
慶次郎は11年前の夢を見ていた。当時まだ同心だった慶次郎は、富山から出てきたお継(福森香加織)から、帰ってこない薬売りの夫・宗七を探してほしいと頼まれる。だが見つけた宗七という男は、慶次郎を見るなり逃げ出す。その上、捕まえ、お継に会わせると、別人だと言う。
富山では、もう一人、四方吉という帰ってこない薬売りがいた。宗七と名乗った男を調べるうちに、慶次郎は彼を強請る「蝮の吉次」(奥田瑛二)と出会い、「なんでも真実を暴けばいいってもんじゃねえ」と、悪態をつかれる。
実は宗七と名乗る男が、四方吉(パクソヒ)だった。四方吉は富山に帰る途中、峠で追いはぎ(塚本晋也)に遭う。もみ合ううちに、二人とも崖から落ちそうになり、四方吉は自分の足に掴まった追いはぎを落とし、助かる。人を殺したことが怖くなった四方吉は、逃げ、いなくなったと噂に聞いていた同じ富山の薬売りの宗七の名を名乗るようになる。だが、四方吉が殺したと思った追いはぎこそが、宗七だった。
一連の話を告白した四方吉に、慶次郎は「生きて償え」と。自首した四方吉は島送りとなった。
慶次郎は目覚める。慶次郎を襲ったのは、島から帰ってきた四方吉だった。なぜ今ごろ、四方吉が自分を殺しに来たのかと、慶次郎は怪我を押して四方吉に会いに行く。
四方吉が島で思い知らされたのは、世の中は金と力だということだった。そして戻ってきても、島帰りの四方吉を待っていたのは、つらい現実だった。どうしたらいいのかわからなくなり、慶次郎のところに行った四方吉は、そこで八千代を抱いて笑う慶次郎を見て、襲ったのだった。
「俺はあのとき、死ねばよかったのか」と問う四方吉に、慶次郎の答えは、「生きろ」と変わらない。そして自分を切った匕首を「いつでも使え」と四方吉に返す。
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