慶次郎縁側日記2
 高橋英樹 主演   05年10月7日〜12月9日   NHK 金曜夜9時15分から

各回のコメント

第10回「祝言」(12月9日放送)
 
前回の慶次郎と皐月(安達祐実)の言葉で、明るくなったおぶん(邑野みあ)。だが慶次郎と晃之助(比留間由哲)の手前、辰吉(遠藤憲一)と一緒になることができない。
 慶次郎の中では少しだけ片がついたものの、気持ちをどう持っていったらいいか分からない晃之助。その彼の精一杯の言葉が「おまえたちはおまえたちを生きろ」だった。
 常蔵の悲しい事件があって、晃之助と皐月(安達祐実)は出会い、八千代も生まれた。辰吉とおぶんも出会った。すべては「三千代の縁」。どんな悲しい出来事でも、生きてる限り世界は回る。そんなお話。
「あの子見ていると楽しくなる。まっすぐ伸びる木みたいで」とお登世(かたせ梨乃)に形容された矢作(河相我聞)は、年を24ごまかしている遊女に惚れたりと、微笑ましい笑いを提供。

第9回「花の下にて」(12月2日放送)
 
次回への布石のような今回。事件としては、娘を痴情のもつれで殺された父親が、その仇の男を刺し殺してしまう。まるで自分と同じ状況に、慶次郎は心乱される。そして辰吉(遠藤憲一)と一緒に暮らし始めたおぶん(邑野みあ)を祝福することができない。
 そんな中、元凶のおぶんの父で、娘の仇の常蔵(若松武史)が死ぬ。その直前に会いに行った慶次郎。彼の中で何かが決着する。そして父の死を悲しむことのできないおぶんにも、「もう逃げるな、生きろ」と告げる。
 一方『花ごろも』では、金も職も生きる気力もない矢作(河相我聞)を助ける。お登世に一目ぼれ(!?)した矢作は、花ごろもに置いてくれと頼み込む。しっぽを振る子犬のような矢作に、お登世も呆れ半分で半笑い。でもまんざらでもない? これに気づいた慶次郎が、対抗心を燃やして頑張ってくれればいいのですが。

第8回「昔の女」(11月25日放送)
 
辰吉(遠藤憲一)が昔、無頼者だったころの弟分の妹・おもん(島崎和歌子)が、暴力夫・千助(加納幸和)と離縁をするために駆込寺(鎌倉の東慶寺)に連れて行ってほしいと、辰吉を頼ってくる。
 20年前に色恋のもつれで殺された愛妻おたか(国分佐智子)の回想を含めて、三人の女から想いを寄せられるという、辰吉モテモテの話でした。これがまた、辰吉がいい男なんです。
 鎌倉への道中、おもんに「おまえはだれにも殺させねえ」と言う辰吉。しびれる程いい男ぶりなんですが、おもんは、おたかと自分を重ね合わせているだけだと嫉妬。辰吉がおたかと一緒になってからも、ずっと辰吉を忘れられなかったおもんは、その想いを憎しみに変えて辰吉を襲う。それを体を張って守ろうとしたのがおぶん(邑野みあ)。
 でもきっと辰吉は、おもんのことも大事に想っていたと思いますよ。
 おぶんはその夜、辰吉の家に泊まって行く。辰吉、おもんはダメでも、おぶんはいいのか?

第7回「あたりくじ」(11月18日放送)
 
金の無駄遣いやら心臓に悪いやら、慶次郎に富くじの悪口を並べ立てる佐七(石橋蓮司)。けっきょく何が言いたいかというと、自分じゃ結果を見に行く勇気がないので、代わりに見に行ってほしいとのこと。
 というわけで、今回は富くじの話。現代で言うと、年末ジャンボ宝くじというとこだろうか。
「花ごろも」の女中・お秋がぞっこんなのは、富くじだけが生きがいの病持ちの貧乏浪人・小野崎源三郎(佐野史郎)。何一ついいところのない源三郎に、お登世(かたせ梨乃)は大反対するが、二人は相思相愛。「あの人といると楽しいんです」と言うお秋に、お秋に会えるとほんとにうれしそうな笑顔を見せて無邪気に喜ぶ源三郎。恋して、好き合ってるっていいよなあ、とおそらくテーマとはかけ離れた感想をもってしまいました。でもあれって、もしかして釣り橋効果(釣り橋の上で出会った男女は、恐怖のドキドキと恋のドキドキを勘違いして恋に落ちる。正式名称は知らず)にだまされてる?

第6回「再会」(11月11日放送)
 蝮の吉次(奥田瑛二)の話。手入れの時に助けた若い女郎・お蝶(柳沢なな)にそれからも頼られ、まんざらでもない吉次。それが証拠に身づくろいに気を使うようになり、佐七(石橋蓮司)にも「どうしたい、やけにこざっぱりして!」と驚かれる始末。
 が、お蝶との出会いは導入で、14年前に子供を連れて男と逃げた女房・おみつ(石田えり)との再開が本筋。お互いに曲がったままじゃ、うまくいくわけないのですが…。
 目に鮮やかな赤色が効果的に使われる、珍しい演出でした。もみじに、襦袢、吉次の着物の裏地(と、これはもとからか)。そして、流れる血。
 辰吉(遠藤憲一)と、おぶん(邑野みあ)が少しずつ距離を縮めているのが救いでした。

第5回「親心」(11月4日放送)
 
今回は親子の話。親子といえば慶次郎と晃之助(比留間由哲)と思いきや、皐月(安達祐実)とその乳母・おしづ(梅沢昌代)の話と、おしづの妹・お稲(秋本奈緒美)と亭主の連れ子・浜吉(山内颯)の話。
 作品中、かなりできた人間の皐月が、珍しく晃之助と夫婦喧嘩。その喧嘩の原因となった、「おまえは先回りするところがある」という晃之助の言葉。これがどんぴしゃりで、良かれと思ってしたことで、おしづを傷つけてしまうという大失敗。ずっと一緒に過ごしてきた仲でも、相手が望むことはなかなか見えていないものです。
 血のつながらない妹に「おにいちゃん」と呼ばれて、最後に見せた浜吉の笑顔がかわいくて印象的でした。皐月とおしづも手をつないで仲良く帰宅で一件落着。
 慶次郎と佐七(石橋蓮司)のじいちゃんコンビは、預かっていた浜吉の世話で腰を痛めて、互いにシップを張り合う姿がほほえましかったです。

第4回「佐七の笛」(10月28日放送)
 
ずっと会っていなかった幼馴染の半次(高橋長英)と再会した佐七(石橋蓮司)。二人は笛吹きにと笛職人になりたいという夢を持っていたが叶えられなかった。
 半次は慶次郎の口利きで、酒問屋の山口屋で働くことになるが、その後酒が盗まれるという事件がおきる。慶次郎は「小僧が小遣いほしさにやったのかもしれないが」と前置きをして、半次に聞いてほしいと佐七に頼むが、佐七は慶次郎が幼馴染を疑っていることと、元小僧で何かあるたびに疑われていた自分の過去を重ね合わせ、二重に傷つく。夫婦のように長年連れ添った佐七を何気ない一言で深く傷つけてしまう、相変わらずまだまだの慶次郎。
 役人に追われる半次を、『元同心』ではなく、「今はただの寮番だ」と、逃がそうとする慶次郎。いや、その寮番として雇っているのは山口屋で、半次は山口屋の酒を盗んだ下手人なんだから、よけいにダメなのでは。
 普段はお互いに「辛気臭い奴」と呼ぶ吉次(奥田瑛二)が、佐七のピンチに現れ、得意の石蹴りで悪党どもを追い散らす。アクション皆無の作品中、唯一の派手な動作。毎回かっこいいです。 

第3回「逢魔ヶ時」(10月21日放送)
 
今回のゲストは万引き常習犯の主婦、じゃなかった老舗のお内儀・お俊(古手川祐子)。現代的な内容を目指している、の意はこういうことかと、感心。
「花ごろも」の女将・お登世(かたせ梨乃)は、そんなお俊を諭そうと、四苦八苦。
 一方で、慶次郎はお登世に距離を置こうとし、さみしい気持ちを素直に表せないお登世はイライラ。そんな二人に自然と素直な気持ちを取り戻させたのが、佐七(石橋蓮司)。さすがは年の功(?)。
 久々に慶次郎と佐七の掛け合いも多めに。庭掃除の途中でほうきを置いて、縁側で物思いにふける慶次郎。それをみつけた佐七は慶次郎ごと庭掃除。文句を言う慶次郎に「あんまり静かなんで冥土へ行っちまったかと」の皮肉が利いてます。
 次回はそんな佐七の過去の話。

第2回「正直者」(10月14日放送)
 
前回から、一年後。慶次郎の孫・八千代も一気に数えで二歳。
 巡礼の旅に付き添っていた辰吉(遠藤憲一)も江戸に帰ってきてた。ということは、娘の仇の常蔵と、その娘・おぶんも帰ってきているわけで。
 慶次郎の養子で同心の森口晃之助(比留間由哲)は、六年前に許した常蔵が再び罪を犯したことについて、自分を責め、悩んでいた。
 辰吉は、自分を見れば常蔵のことを思い出すと、晃之助に会いに行くことができない。一方で晃之助も、自分を見ればおぶんが父親の罪を思い出すと、辰吉を再び自分のお手先に戻すことができない。慶次郎の一言でお役御免になっていたとは辰吉も大変だ。
 慶次郎も慶次郎で悩みあり。飯炊きで女房役の佐七(石橋蓮司)の飾らない言葉と、皐月の純真な言葉で、それぞれが丸く収まるが。
 隠居の身でありながら今だ迷い、成長する慶次郎。路上でぶつかった人物がスリだと分かってもすんなり逃げられてしまったりと、桃さんや殿様で慣れ親しんできた高橋英樹のそんな姿を見るのが辛いと感じるのは、私だけでしょうか?

第1回「雪の夜のあと」(10月7日放送)
 
娘の仇・常蔵(若松武史)が、再び慶次郎の前に現れる。実はお手先の辰吉(遠藤憲一)が、住むところや仕事の世話をしていたのだ。昔と変わっていない常蔵に、慶次郎は苦悩する。
 この常蔵、ダメ人間っぷりがなぜか女性の母性本能をくすぐるらしく、もてにもてまくる。
 最終的に改心した常蔵。そしてその父に泣かされ続けてきた娘・おぶん(邑野みあ)。慶次郎は二人を守ってやってくれと、辰吉に言う。場面変わって、巡礼に出る常蔵親子と辰吉の三人。慶次郎の一言で長期出張(ある意味左遷?)とは、辰吉も大変だ。
 皐月(安達祐実)は無事に女の子を出産。死んだ慶次郎の娘・三千代の分までも生きてほしいと「八千代」と命名。救いようのない重い展開の中流れる、皐月のかわいらしい声の語りは、ひと時の清涼剤です。

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