各回ごとのコメント
第十話(最終話)(7月18日)
登城の帰り道、越前は徒党を組んだ浪人者たちに襲われる。駕籠に乗っていた越前があわや斬り殺されるという時、飛んできた鈴によって助けられ、駆けつけてきた大番組頭の岩戸軍兵衛(山西道広)の加勢もあり、越前は腕を斬られただけで済んだ。
浪人たちの首領だった井坂和馬(甲斐将馬)を見つけた南町だったが、井坂は自害していた。
四、五日は安静にと言われた越前。だが看病疲れで香織と大助が寝てる間に抜け出し、見咎めた笹倉に「お奉行は重態で床を離れることもできない」と表向きしておくように伝え、怪我をおしておりんに会いに行く。
真の首謀者の心当たりはありすぎて検討がつかない越前だったが、気になるのはあの命を救った鈴だった。おりんと話す越前を、じっと見つめる娘がいた。
娘の名はおふさ(遠野凪子)。人里離れた一軒家で隠居生活をする左兵衛(長門裕之)という老人の世話をする下女だった。左兵衛は格好は町人だが、武家の出のようだと言われている。
左兵衛の顔を見た越前は、「どうやら亡霊を見てしまったようだ」とつぶやく。その顔は、元老中筆頭・安藤対馬守で、息子の邦信に家督を譲った後、死んだとされていた。越前の襲撃の話を大笑いしながら話す左兵衛。彼にとって越前は、老中時代にもっとも対立していた者で、命を狙っていてもおかしくなかった。
薪拾いをするおふさに話し掛けた越前。だがおふさは何も話すことはないと逃げ出す。その拍子に落とした鈴を見て、越前はあの夜助けてくれたのはおふさだと確信する。その鈴は安藤家の家紋が付いた袋に入っていた。
左兵衛の家を見張っていたおりんは、忍び込もうとする黒装束の怪しい男を見つける。おりんの放った小柄に頬を掠められた男は逃げ出す。
奉行襲撃の首謀者として左兵衛を捕らえた越前。関係者として岩戸も呼び、白州を開く。元老中の自分をこんなところで裁くのは無礼だ、江戸城へ連れて行けと言う左兵衛に、越前は安藤邦信からの書状を見せる。そこには左兵衛なる老人は当家と一切関わりなしとあった。安藤家としては葬儀まで出した父を、家を守るためにも生きていることにはできなかったのだ。
越前は左兵衛と井坂の間を取り持った者がいると、岩戸を指す。否定する岩戸に、頬の傷が証拠だと。岩戸は公金を使い込み、それを越前に咎められ、殺害を思いつく。そして左兵衛に話を持ちかければ、自分の手を汚さず実行できると考えたのだった。襲撃の夜、駆けつけたのは井坂を逃がすため。井坂を口封じのため殺したのも彼だった。そして最後に左兵衛を殺そうとしたのだった。
左兵衛は井坂に操られていたと知り、うなだれる。そしてここに自分を呼んだのは、力のなくなった自分を笑うためなのかと越前に問う。越前は首を振り、大切に想っている人がいることを知らせたかったと話す。
おふさの鈴を見せられた左兵衛は、昔、契りを交わすも一緒になれなかった市井の女を思い出す。おふさはその女の娘だった。おふさは父を人殺しにしたくない一念で越前を助けたのだった。
越前は左兵衛に所払いを命じ、おふさとともに暮らせるようにする。次週からは高島政宏主演、『新・桃太郎侍』が始まります!
第九話(7月11日)
ふと目に入った一膳飯屋に入った越前。酒を頼もうとしたら、女将のおもん(多岐川裕美)に昼間から飲んではいけないと明るくたしなめられる。とその影で亭主の弥助(井上高志)が湯飲みに酒を入れてこっそり出してくれた。二人は近所でも有名なおしどり夫婦だった。
その弥助が、惨殺される。そしてその場には自らの血で書いた「おろち」の文字が。
さっそく調べはじめた越前たち。弥助は昔、巽の政五郎という盗賊一味を追っていた北町同心の密偵で、十四年前に足を洗い、おもんと一緒になり店を開いたことが分かる。政五郎は十四年前に追い詰められ、自ら火を放って死んでいた。
おりんはおもんの顔を見たことがあった。昔、彼女がまだ雲霧仁左衛門の元にいたころ、政五郎のイロだと聞いたのだ。おもんの跡をつけていたおりんは、墓参りをする彼女に声を掛けてきた男の顔を見たとたん、彼女の顔色が変わるのを目撃。男は上方から江戸に訴訟のためにやってきた堺屋五郎兵衛(西田健)といった。
越前は五郎兵衛が政五郎だと見抜き、身分を隠して公事宿に出向く。だが五郎兵衛も越前を只者ではないと見抜き、その後行方をくらます。
五郎兵衛は十三歳になるおもんの息子・新太郎(谷野欧太)を盾に、おもんに押し込みの手伝いを迫る。新太郎のために引き受けるおもん。新太郎の丁稚奉公先の大店に新太郎を訪ねていき、裏木戸をこっそりと開けておく。
その帰り道、おもんの前におりんが現れる。おりんは自分の過去を話し、おもんに息子が大切なら過ちを犯さないようにと伝えるが、おもんは答えない。
夜、おもんの開けておいた裏木戸から忍び込んだ五郎兵衛の一味。だがそこにはおもんが短刀を持って待ち構えていた。五郎兵衛を狙うおもんだが、逆に組み伏せられたところに、大助が配下を連れて駆けつける。お白州で、政五郎はとっくに死んだとシラを切る五郎兵衛。だがその五郎兵衛の着物をはだかせる越前。そこには大蛇の刺青があった。越前は密偵だった弥助は、おもんから政五郎の情報を得ていて、その符号として政五郎を「おろち」と呼んでいたのだろうと言い当てる。
越前は五郎兵衛が政五郎だろうとおもんに確かめるが、おもんは答えない。おもんは新太郎が実は政五郎の子であり、そのことが公になるのを恐れていた。それに気づいていた越前は五郎兵衛に、「巽の政五郎がそんな小者だったとは見くびっていた」と挑発し、「男気を見せろ」と言い放つ。
怒った五郎兵衛は、「巽の政五郎はこの渡世にはなんの関わりもない。俺のガキがいてたまるか」と啖呵を切ってみせる。越前は、その証言を自分が政五郎だと認めたと取り、落着。おもんには、自分で解決しようと体を張ったことで無罪を下す。次回、最終回。
第八話(7月4日)
香織に「浅草お稲荷堂に幽霊が出た」と起こされた越前。自分が雇った用心棒に金目当てに斬り殺された呉服屋の井筒屋清兵衛(峰蘭太郎)の幽霊だともっぱらの噂だった。その用心棒・松井弥十郎(大谷亮介)はその場に駆けつけた北町同心・今岡軍兵衛(春田純一)に斬られ隅田川に落ちたが、死体は見つかっていなかった。
その事件が起きたのは北町の月番だったが、越前は笹倉に再吟味を申し付ける。月番を超えての越権行為はご法度だったが、真実の追究に北町も南町もないと、越前は言い切る。
越前は涙を流しながら折鶴を隅田川に流す若い娘を見かける。その後、物陰から懐刀を抜き、今岡を狙おうとした娘を見つけた越前、その腕を取り、事前に止める。娘はお京(前田愛)といい、松井の娘だった。お京の話では、父・松井はまじめな男で金目当てに人を殺すような人間ではないという。
一方、北町の年番方与力・権藤平八郎(谷口高史)に笹倉が呼び出され、再吟味の件で苦情を言われた。聞き込みをした井筒屋の妻・お紺(大家由祐子)か番頭のどちらかが口止めしたにも関わらず北町につながりがあり、もらしたと越前は考える。
お紺を尾行した大助は、お紺が今岡と密会している現場を見る。お紺は元芸者だった。
おりんに預けられたお京は、おりんに止められていたにも関わらず、今岡の岡っ引・源三(草川祐馬)の跡をつける。だがそれはかぎまわるお京を始末しようとする罠だった。取り囲まれたお京を助けに入った越前は、源三を捕らえる。
夕方、南町奉行所に付け文が届いた。それを読んだ越前は、「今夜、白州を開く」と。雷をバックに夜の廊下を通り、白州に出座した越前。篝火の焚かれた異様な雰囲気の中、源三とその下っ引きの紋次(宮下直紀)、お紺と今岡が呼び出されていた。北町同心の今岡は、自分を裁くなら評定所でないとおかしいと反抗するが、事前に笹倉が権藤に、評定を開き権堂も監督不行き届きで罰せられるよりは、今岡一人を罷免にするよう話をつけていた。
だが、井筒屋を殺したのは松井だと突っぱねる一同。紋次だけが何か言いたげだったが、源三に睨まれる。そのとき風が吹き、篝火の火が小さくなり、暗くなった中、不気味に扉が開く。そして静々と出てきたのは、死んだと思われていた松井だった。この演出に紋次が震え上がり、謝りだす。
薪が足され、明るさを取り戻した白州で、松井は、重症のところを川下の漁師に助けられ、今日まで隠れて療養しながら一人で調べていたと話す。松井の証言と紋次の自白で今岡の有罪が確定する。第七話(6月20日)
毎日出かけていく香織を、越前は不信に思う。だが香織は「毎日でも会いたい人がいるのです」とそっけない。それを聞いた大助も、口では平静を装いながらも、内心気が気でない。
そんな中、薬種問屋丹波屋の内儀おみね(志水季里子)の死体が土に埋められていたのが見つかった。男がいたり遊び好きだったりと周りの評判が悪い女だったが、殺しとして捜査が開始される。
与力の岡村(安藤一夫)と探索に出ていた大助は、年配の女性と仲むつまじく歩く香織を見かける。香織から越前に黙っていることを条件に、その女性がおふじ(浅茅陽子)といって小間物の行商人で、雨の日に鼻緒が切れたところを助けてもらい、自分が母を亡くしたのと同じ頃に同じ年頃の娘を亡くしているという縁で、それ以来親しくしていることを聞いた大助。だがその後、安心したことで顔が緩みっぱなしで、越前に酒を勧められ、ばらしてしまう。
おふじの亡くなった娘は、実は十年前におみねの娘と間違えられてかどわかされ、殺されていた。しかもかどわかされたとき、おみねは現場に居合わせており、下手人に「お前の娘か」と聞かれ、頷いていた。その後下手人から身代金の要求があったが、とてもおふじの用意できる金額ではなく、おみねに頼むが、無下に断られた過去があった。そのことから、おみね殺しの下手人は恨みを持つおふじだと疑いがかかる。
香織はおふじに母の面影を重ねて慕っており、おふじを信じていた。だがそれを聞いたおふじは、香織に「二度と来るな」と冷たくなる。捕らえられたおふじのお白州が開かれる。おみねを殺したことを認めたおふじ。その死体を埋めたおみねの男でもあった遊び人の弥助(橋本さとし)も白州に呼ばれていた。
おみねと下手人しか知らないかどわかしの現場のことを、おふじは弥助から聞いたと言う。弥助は前に小さな罪で捕まったときに一緒になった男に聞いたと、越前に答える。だが名前は思い出せないと。
また、娘の形見のかんざしで刺したと言うおふじに、越前は、おふじの傷はもっと深かったと言い、おふじを逃がした後、弥助がとどめを刺したことを当てる。また、十年前の下手人も弥助で、おみねにばれたことで、おふじを使い命を狙ったと看破。弥助を捕らえる。
おふじには八丈島送りを命じる越前。おふじが殺人を犯していないことを知り、香織は救われる。第六話(6月13日)
おりんの店で他の客たちと庄屋拳をして盛り上がる越前。一人で飲んでいた浪人に、「静かにしろ」と怒鳴られる。越前は香織と大助に迎えに来られての帰り道、村松藩の侍たちに追いかけられるその浪人を見かける。
おりんの調べで、浪人の名は佐竹宗次郎(吉田智則)で、元は村松藩士で脱藩していたことが分かる。
両替商・菱屋庄兵衛が何者かに殺される事件が起こる。現場には下手人が落としたと思われる大事に袋に入れられた、おしどりの根付が落ちていた。
笹倉の調べで、根付が村松藩家老・蛯沢助左衛門(小沢象)の娘・藻世(小西美帆)の物だと分かる。だが相手が大名の家老では手が出せないと、笹倉は困り顔。
蛯沢に会いに行った越前は、その根付が、藻世が婚約者の柴田利一郎(高橋和也)に渡して欲しいと佐竹に預けた物で、佐竹がそのまま持ち逃げした物だと知る。佐竹は一年前に菱屋を使い公金を横領して逃げたという。また佐竹は柴田と幼馴染で、藻世を懸想していた。
神社で、藻世は斬り殺されている父・蛯沢と、刀を持ち立ち尽くす佐竹を見る。佐竹を恨みのこもった目でにらみつける藻世。そこへ知らせを聞いた大助が南町同心を率いて駆けつける。
捕らえた佐竹は、菱屋も蛯沢も自分が殺したと認める。が、越前は「二度も同じ過ちを繰り返すか」とつぶやき、白州を開く。白州には村松藩留守居役の柴田と、藻世も検分役として同席させる。
罪を認める以外何も話さない佐竹に、柴田は藩を取り潰さないことを越前が約束してくれたと言い、その裏に隠された事実を話す。実は公金を横領していたのは蛯沢であり、藩のために表向き自分が罪を被って脱藩しようとしていたところを、藻世の婚約者である自分の代わりに佐竹が罪を被ってくれたのだと。そして証人となる菱屋も斬ったと。父の不正に驚く藻世。
だが、越前はまだ納得いかない様子で、根付の入った袋を佐竹に持たせ、どのように菱屋を斬ったのかと、実演させる。佐竹は藻世と自分を繋ぐだった一つの物である大事な根付の入った袋の紐を落とさないように首に掛け、懐に入れていた。そして刀を振るってみせるが、その程度では根付は落ちない。誰かが故意に置いたのだと越前は言い切る。
そして佐竹が隠れていた宿に、事件の前日に柴田が訪ねてきていたことを当てる。柴田はその時に佐竹から根付を見せられ渡されたが、佐竹の気持ちを思い受け取らなかったと言い張る。しかしその後、根付がなくなったと宿中探し回った佐竹が目撃されていた。
真相は、公金横領には柴田も加わっていたのだ。米相場に使い込み損失を出した柴田は、人のいい佐竹をだまし、罪を着せた。そして佐竹が江戸に戻ってきていることを知り、生き証人の菱屋と、用済みになった蛯沢を殺し、また罪を着せたのだ。
柴田を引っ立てさせた越前は、残った藻世に、なぜ佐竹がそこまでしたのかを考えさせる。佐竹は柴田の罪を薄々気づいていたが、ただ藻世のことだけを思って罪を被ったのだと。「許してください」と泣いて謝る藻世に、佐竹は逆に「私はこの一年、この根付に救われました。このおしどりのように夫婦のような気持ちだった」と幸せそうに告げる。
越前は佐竹を無罪とする。それは今後の二人のことを考えてのことだった。第五話(5月23日)
人気役者・瀬川銀之丞(岡本竜汰)が斬り殺される。その側には「瀬川銀之丞、受難の図」と書かれたその情景とそっくりな浮世絵が。筆遣いから絵師・川喜多俊斉(橋爪淳)の名が上がる。
訪ねた越前に俊斉は犯行を否認。その時間は、墨問屋・備後屋の寮で大奥年寄の尾島の絵を描いていたと言う。相手が大奥年寄では、越前たちも簡単に確かめることができない。
備後屋長左衛門(鶴田忍)の元に、首を矢で射抜かれ「備後屋長左衛門、悶死の図」と書かれた長左衛門の絵が届けられる。長左衛門は俊斉とは面識がないと言う。聞き込みの最中に弓で狙われた長左衛門。与力たちが追いかけるが、狙った相手は覆面をしており顔は分からず、逃げられる。
粗末な墓の墓参りをする俊斉。越前はおりんに調べさせ、そこに眠るのが、正吉という版木彫りと、おふさいう船宿の下働きだったことを知る。若い二人は祝言を約束した恋人どうしで、半年前に心中をしたことになっているが、その理由が見当たらない。またなぜか二人の体には外傷があった。
会いに来た越前を、俊斉は呑みに誘う。俊斉が案内した店は、以前おふさが働いていた店で、備後屋の寮のすぐ近くだった。越前は俊斉が、元・直参旗本で剣も弓も凄腕だったことを上げ、絵師になった理由を聞く。が、俊斉も越前の正体を言い当てる。
登城した越前は、尾島(辻沢杏子)と会う。尾島は越前の出世の口利きをする代わりに、銀之丞殺しを調べるのをやめるよう告げるが、越前はきっぱり断る。また俊斉のことを尾島は知らないと言う。
自宅で浮世絵の下書きを燃やす俊斉。その中には、銀之丞、長左衛門、そして「年寄尾島入獄之図」の絵があった。そこに俊斉の命を狙って、備前屋に雇われている三人組が押し入ってくる。俊斉が応戦しているところに南町が駆けつけ、三人を捕縛。
三人の尋問から、正吉とおふさを殺したのが、彼らであることが分かる。銀之丞殺しの証拠がないと心配する笹倉をよそに、越前は俊斉を呼んでお白州を開く。正吉とおふさは、備後屋の寮で銀之丞と逢引をする尾島を見てしまったために、心中に見せかけて殺された。二人と知り合いだった俊斉は、二人の死の真相を調べ、敵を討ったのだろうと、越前は推測する。そして動機はそれだけではなく、武士だった頃の俊斉は大奥に上がる前の尾島と許婚であったが、出世した尾島に振られたことで、越前を使い尾島の失脚を狙ったのだと言い当てる。
証拠がないと否認する俊斉に、越前は端の焦げた紙を見せ、俊斉の家のかまどから見つけた燃え残りだと言う。俊斉は観念して罪を認めるが、その紙は白紙、越前のハッタリだった。第四話(5月16日)
いつものお忍びの最中、北町奉行所の役人に捕まった越前。蝋燭問屋・肥前屋殺しの下手人だと、目撃証言があったと言うのだ。理不尽な取調べに、越前は素性を名乗らない。
越前が帰ってこないと心配する香織。もしやと思い、おりんに会いに行くが、おりんも行方を知らない。ただ、越前と似た背格好の浪人が北町に捕まったという話を聞いたと言う。
香織から大助、そして笹倉と話は伝わり、「南町の代表」とおだてられた笹倉が北町奉行所まで出向くことに。北町の牢の中に居たのは、間違いなく越前だった。捕らえた浪人の正体が南町の奉行と知って、平謝りする北町与力たち。だが越前は笹倉のことを知らないと言い、居座り続ける。与力たちに相談された北町奉行(有川博)は、「ただの浪人」として追い出せと命令。
二日ぶりに家に帰ってきた父親に喜ぶ香織。だが越前は嘘の目撃証言をした酌婦・おしま(奥山佳恵)と、彼女と知り合いのようだった吟味方与力の鳴海太一郎(天宮良)が気になり、また出て行ってしまう。
浪人姿で一人探索を進める越前に、大助が手伝いを申し出るが越前は、今は北町の月番だから表立って探索はできないと追い返す。おりんの協力もあり越前は、おしまが貧しく苦労して育ったこと、鳴海が元は正義感に燃える若者だったことを知る。また酔いつぶれた振りをして北町奉行所に連れて行かれ、その詫びに奉行の部屋を訪れ、賄賂の品々を目撃する。
一方、見張っていた大助が目を離した隙に、おしまが鳴海に刺される。越前の役宅で手当てを受け一命を取り留めたおしまは、月番の変わった越前に、肥前屋殺しの自首をする。北町奉行と鳴海を立会人として呼び、越前は肥前屋殺しのお白州を開く。
越前はおしまがある男を庇って嘘の証言をしたと言い当て、おしまが大事に持っていた狛犬の根付を取り出す。その根付を見て驚く鳴海。越前はおしまにすべてを話すように命じる。
おしまがまだ少女だった頃、根付の万引きで捕まり袋叩きにされていた彼女を、「おまえのような娘が万引きのはずがない」と助けてくれたのが、まだ与力見習いの鳴海だった。だが、本当は貧しいおしまは万引きをして幼い兄弟や母を食べさせていたのだった。そんな自分を信じてくれたことで改心したおしまは、それ以後その根付を心の支えにまっとうに生きてきた。そして肥前屋を殺す鳴海を見てしまったおしまは、鳴海を信じて自分が罪を被ろうとしたのだった。
おしまの話を聞いた鳴海は、金のために動くようになっていた自分に恥じ入る。越前はおしまの清い心が鳴海に自分を取り戻させたと言い、また部下をそのようにさせてしまった北町奉行を批判する。第三話(5月2日)
越前は香織の茶道の先生・宮部波津(池内淳子)に挨拶に伺う。凛とした感じが生家の母に似ていると感じる越前。波津の義理の弟・宮部市之丞(福本清三)の斬殺死体が見つかる。
越前たちは二人の面倒を見ていたという元武士の味噌屋の諏訪屋左兵衛(佐野浅夫)から、二人は波津の夫を殺した浦沢源之助(川津祐介)を仇として追っており、市之丞は返り討ちにあったのではないかと、聞く。
浦沢を捕らえた笹倉たち。だが浦沢は病で体が弱っており、また刀も竹光だった。市之丞の死体は血染めの刀を握っていたが、浦沢の体には傷もなく、そして浦沢自身も犯行を否認する。
越前は波津に、敵討免状を出せば返り討ちとして認められ浦沢は無罪、弟と夫の仇を討ちたいなら黙っていれば、浦沢は死罪となると告げる。そして白州を開く。以下、ネタバレ。免状を持ってきた波津に、越前は己の裁量で今ここで仇を討つことを許すと、浦沢と立ち合わせる。そして左兵衛に立会人として爪印を求める。
黙って斬られようとする浦沢に、越前はちゃんと戦えと竹光を返す。だが波津は自分にはできないと、崩れ落ちる。波津と浦沢は以前は恋仲であった。そして二人は十日前に偶然再会し、浦沢は波津の夫を斬ってはいないと言っていたのだ。波津からその話を聞いた市之丞は、すぐに出かけ、そのまま帰ってこなかった。
越前は、市之丞の血染めの刀についた指紋が左兵衛と同じものであることを上げ、市之丞の向かった先は左兵衛の元であると指摘。そして左兵衛に斬られたと。左兵衛は元は同じ藩士であり、御用金の使い込みを隠すため波津の夫を斬り、浦沢に罪を着せたのだ。
越前は左兵衛を捕らえ、波津と浦沢に、これからは共に手を携えて生きていけと申し渡す。次回は大岡越前、北町に捕まる!?
第二話『夢裁き』(4月25日)
扇屋「玉扇堂」の主、義兵衛の誘拐事件が起こる。
一方、越前は、おりんの店で、越中のコキリコ節を歌う、人足の源助(竜雷太)と知り合う。源助は江戸に出てきて40年働き、もうすぐ故郷へ帰ると、機嫌よく話す。
誘拐事件の探索をする笹倉たちと大助。しかしこれといった手がかりはない。そこに「300両の身代金を用意し、女中のお咲(秋山莉奈)に持たせろ」という内容の投げ文が届く。義兵衛の妻・お幸(東てる美)と息子は、道楽に使う金はあっても、旦那に払う身代金は出し渋るという守銭奴。
再開した源助は、越前に、侍はなぜすぐ腹を切れと言うのかと、愚痴る。話を聞くと、命の恩人である侍の息子が、勤め先の旗本・酒井帯刀の大事な刀をなくし、探し出せない時は弁償金300両を用意するか、腹を切れと言われているらしい。
夜回りに出た越前は、金欲しさに辻斬りをしようとしている若侍・篠原和馬(川岡大次郎)を見つけ、それを未然に止め、酒井にも「失態を犯した家来こそ大切にしろ」と説く。
投げ文の指示どおり300両を持って待つお咲の元へ、源助から仕事を手伝ってほしいと頼まれたおりんが近づき、耳打ちをする。おりんの正体を知らない笹倉たちが追いかけるが、角を曲がってすぐの古着屋に入り早変わりをしたおりんに、巻かれてしまう。一方のお咲は、指示された橋の上から、覆面をした源助の操る船に、300両の箱を投げ落とす。
だが義兵衛は戻ってこない。奉公人に優しく立派な主である義兵衛の身を心配するお咲に、300両の心配をするお幸。そして念願が叶ったと喜ぶ源助に、越前は「江戸で暮らした何もかもを捨てて、越中に帰る。本当にそれでいいのか?」と問い詰める。以下、ネタバレ。翌日、見つかっていない義兵衛の身を案じる笹倉をよそに、白州を開く越前。
まずは篠原和馬に話を聞く。和馬はある商人が匿名で届けた300両で、命を救われていた。これが義兵衛と何の関わりがあるのかと問うお幸に、越前は反対に篠原という名前に聞き覚えがないかと、問う。そして源助が呼び出す。
源助の顔を見て、驚くお咲とお幸。源助は、昔、親子三人で侍たちに絡まれ切り殺されそうになったところを、和馬の父に命がけで助けてもらったことを話し、やっとその恩が返せたと。越前は、受けた恩を忘れたお幸を叱り、この度の事件は、玉扇堂の主・義兵衛が店の金を使い込んだだけのこと、下手人はなし、うまい酒に酔うて見た夢だったのだと、締めくくる。第一話『五つの顔を持つ女』(4月18日)
相変わらず朝から二日酔いの越前。娘の香織に酔い覚ましに濃茶を頼もうと思ったら、いない。その香織は、おりんのところへ、父とどういう関係なのかを問いただしに出かけていたのだった。
と彼女たちと、奉行所から抜け出した越前は、川原で肩口を斬られて気を失っている女(三浦理恵子)を見つける。女は記憶を失っていた。
女の身元を捜す南町奉行所に、三組の申し出があった。汁粉屋の親子は通い奉公に来ていたお澄だと言い、いずれは息子の嫁にと思っていると話す。飛脚は自分の女房のお君だと言い、泊り込みの用心棒を仕事にしている浪人も自分の妻のお薗だと言う。お白州を開くが、三者とも自分と半年前から一緒にいたと言い、結論が出ない。
越前は女をおりんの居酒屋に預け、様子を見ることにする。が、香織は自分が面倒を見ようと思っていたのに、と怒りまくり。
働く女を見つめる怪しい男(中丸新将)が現れる。無役の旗本だと言って近づいた越前に、男は駿府の岡引きで五郎蔵と名乗り、女は半年前の亭主殺しで自分が追っている下手人だと言う。
越前は五郎蔵の言い分に引っ掛かりを感じ、半年前の事件の調書を読み、お白州を開く。
何も覚えていないという女に対して、越前は亭主を殺して逃げ、三組の善良な人々をだました性悪女であると断言。お白州の直前に逃げだそうとしたことを上げ、再び五郎蔵と出会ったことで記憶が戻っていることを言い当てる。しかし呼び出されていた半年間女と暮らした人々が口々に、性悪女なんてとんでもない、良い人だったと庇うのを聞いて、女は心を打たれて自白する。元夫はとんでもない悪人で、逃げ出すには殺すしかなかった。だから包丁で刺したと。
だが女の夫は溺死だった。元手下で自分の悪行を知っている元夫に、五郎蔵が止めを刺したのだ。越前は女を捕まえるのではなく、殺そうと傷を負わせたことを指し、五郎蔵に沙汰を下す。そして女に対しては、四人の嘆願もあり、江戸所払いに。また新しい名でやり直せと沙汰を出す。過去の時代劇に戻る