前回までのあらすじ
第七話「浮草の女〜望郷〜」(6月8日)
明石がまたもや共同出資で道場をやろうと持ちかけてくる。北見は乗り気だが、平四郎はまた明石が金を持ち逃げしないかと疑いの目を向ける。実は明石は、今の仕事がうまくいかず、新しい仕事が必要になっていたのだった。
歩いていた平四郎は、元・許婚の早苗(北川弘美)と出会う。夫の菱沼惣兵衛(石丸謙二郎)が捕まったことで、身を案じていた平四郎に、早苗は菱沼が御役御免になり貯めた金を没収されたと告げる。「でもよいのです。これでもう私のような人が出ないのですから」と。実は早苗の実家は菱沼に多額の借金があり、それを帳消しにする代わりに、菱沼の元に嫁いだのだった。平四郎は「いっしょに逃げよう」と誘うが…。
仲裁業の客として平四郎を、雪駄屋・筑波屋の娘・おなみ(水橋貴己)が訪ねてくる。父の弥助(火野正平)に女ができ、店の金を二百両も使い込んでいるという。平四郎はさっそくその女がいるという、居酒屋に出向く。
その店では、非合法に二階で女が客を取っていた。若い女もいるのに、弥助が会っているのはおまつ(芦川よしみ)という年増女だった。閉店後、おまつの後をつけた平四郎は、おまつが遊び人風の若い男に金を貢いでいるのを見る。
平四郎は、その事実を弥助に話す。弥助がそれであきらめるだろうと平四郎は考えていたが、弥助は平四郎を外へ連れ出し、とんでもない事実を話す。実はおまつは別の男と逃げた女房で、おなみの母親だという。たとえ別れても女房だったおまつを見捨てるわけにはいかないと、弥助は分かっていて金を渡していたのだった。
こうなったらおまつから金をせびる男を引き離すしかないと、平四郎は男の身元を洗う。男は元女衒の作蔵(浜田学)といい、昔世話した女から金を巻き上げて暮らしているという悪党だった。平四郎は作蔵の元へ乗り込み、脅して痛めつけ、おまつから手を引かせる。
家に戻った平四郎を、早苗が訪ねてくる。しばらく話をし、もう帰らねばと立ち上がった早苗を、平四郎は思わず抱きしめる。二人の気持ちを確かめようとしたところに、戸を叩く音が。おなみが、おまつがいなくなったと平四郎に助けを求めてきたのだった。おなみはおまつと会って話し合い、おまつは戻ってくることになっていたのだが、住んでいた長屋にも、店にもおまつの姿はなかった。作蔵も関わっていなかった。第六話「暁の決闘〜父子鷹」(6月1日)
平四郎が仲裁業の客と話していると、明石が「北見が果し合いをすることになった」と飛び込んでくる。商談がまとまったところだった平四郎は、北見のことは後回しにし、まずは客の家へ。
客は大店・山城屋の善助(丸岡奨詞)で、伜の万之郎(谷口知輝)が女郎屋の女将・おくみ(江口ナオ)とねんごろになったところ、おくみには旦那がいて、脅されているという。手打ち金として千両出すと言う善助に、そんなに出すことはないと平四郎は張り切って引き受ける。
北見の家に話を聞きに行った平四郎。そこには離縁した妻・高江(高橋かおり)と息子の保之助(河本竜志)が来ていた。以前の北見は塚原家に婿入りし、仙台藩の勘定方に勤めていたのだが、河川改修費用の上納金が蔵から百両なくなるという事件が起きる。金を運んだのは野瀬金十郎(斎藤歩)という男だったが、彼の血筋には上役がおり、北見が罪を被せられ浪人となったのだった。北見がいなくなった後、野瀬は高江に言い寄り、高江は親類を頼って江戸に逃げてきていたものの、この度野瀬も江戸に配置換えになったという。
果し合いに応じた野瀬は、尋常に勝負する気などなく、北見を闇討ちしようとする。北見たちを心配する明石にせっつかれた平四郎は、義姉の里尾(田中好子)に北見たち一家を実家に匿うように頼む。そして兄の監物に、仙台藩の上役に尋常な果し合いができるように取り計らってほしい口を利いてくれと頼む。だが監物は、北見は罪人となっているので難しいと。
いざ果し合いの日取りが決まり、いざというときには助太刀できるようにと準備をした平四郎が出かけようとしたところに、山城屋から使いが来る。店に今、おくみの旦那の代理人が来て脅しているのですぐ来てほしいと。急ぐからと断ろうとする平四郎を、使いはむりやり店へと引っ張っていく。
山城屋に来ていた代理人とは枡六(石橋蓮司)だった。手打ち金千両を望む枡六に、平四郎は急いでいるからと威圧的に出て、五百両と枡六の取り分五両にまでまけさせ、それで押し切る。
多数の野瀬の助太刀に囲まれ、苦戦する北見と明石の元に駆けつけた平四郎が助けに入る。だがそれでも多勢に無勢。そこに監物と仙台藩の目付けが現れ、戦いを止める。野瀬の所業には仙台藩も手を焼いており、彼らの見守る中、一対一で戦った北見は、野瀬の汚い手にも引っかかることなく、見事、野瀬を討ち取り、禍根を断つ。
高江は十年後、保之助に家督を継がせた後は、また江戸に戻ってくると北見と約束し、仙台へと帰って行く。第五話「一匹狼〜父娘の絆」(5月25日)
友人の明石から小料理屋・あずま屋の美人女将・おこま(有森也実)を紹介された平四郎。おこまは、借金の取立て業をしている吉次という男に、商売替えして、自分の店で働くように告げて欲しいと、平四郎に頼む。吉次には亡くなった妻との間に三人の子がいるが、おこまは子供たちの面倒を見てもいいと話す。吉次とおこまは昔、好き合う仲だった。だが、おこまが妾奉公に出た後、吉次はぐれて、今では評判の悪い金貸し「山幸」の元で、無体な取立てをしていると知り、おこまは心を痛めていたのだった。
吉次の家を訪ねた平四郎。しかし吉次は留守で、長女のおはる(野村美緒)を筆頭に礼儀正しい三人の子供たちが迎えてくれる。お茶を出したり、家事をしたりと甲斐甲斐しく働くおはるに、平四郎は感心する。ところが夜になって帰ってきた吉次(遠藤憲一)は、平四郎の話をうますぎると信用せず、おこまの名前を出すと、女の世話にはならねぇとすごんで聞く耳を持たない。
翌日、吉次の跡をつけていた平四郎は、夜道で吉次が襲われているのを見る。相手は吉次に恨みを持つ者らしかったが、吉次は腕に怪我をしながらも場慣れした様子で三人もの相手を負かす。
平四郎は義姉の里尾(田中好子)に相談に行き、家事を取り仕切る子供たちがかわいそうだと話す。しかし里尾は、きっと子供たちは喜んでやっていると言う。ただ傷の手当てだけはできればしたくないだろう、子供は子供なりに家の事情を分かってはいるだろうけど、と。
平四郎は吉次のいない間に、おはるをおこまに会わせる。おこまはおはるを心底歓迎する。
一方、鳥居耀蔵(本田博太郎)による市中の取締りが厳しくなっていた。山幸は違法な利息での金貸しの証拠を消すため、吉次を殺そうと企む。刺客に襲われた吉次は、平四郎の助けもあり命拾いする。しかし翌朝には、山幸から狙われていると知った吉次は子供たちともども姿を消していた。
おこまに時間がかかってもいいから吉次を探してほしいと頼まれた平四郎だが、手がかりはない。そんな時、おはるが弟と妹を連れて、吉次に黙っておこまの元に遊びに来る。おはるから聞いた住所はあずま屋のすぐ近くだった。平四郎は吉次を訪ね、子供たちがおこまのところにいることを伝え、近くに越してきたのは心が弱っている証拠だと、吉次を諭す。
帰ってきた平四郎は、兄の監物から呼び出され、早苗(北川弘美)の夫の菱沼惣兵衛(石丸謙二郎)が、違法な金貸しをした咎で捕まったと知らされる。第四話「亡霊〜闇夜の激闘」(5月18日)
朝早くから仲裁業の客が平四郎を訪ねてくる。糸問屋の臼杵屋の番頭だと名乗ったその男は、店が脅されているとだけ話し、詳しいことはいずれ主人から話があると言い、帰ってしまう。兵四郎は長屋の住人たちと、値踏みしに来ただけかと落ち込む。
が、数日後、臼杵屋から使いが来て、平四郎は主人の待つ料理屋へ。だがそこにいたのは、先日、番頭だと名乗った男だった。彼が実は主人の徳兵衛(金田明夫)で、だまされたと気を悪くする平四郎に、信用してすべてを話すと謝る。
25年前、ある店に五人組の泥棒が入り、二百両を盗み出した。だが逃げる途中で怪我をしたそのうちの一人・弥之助が、かかった医者から足がつき、捕まり遠島になる。他の仲間で前科のある吉次と仙助は捕まるのを恐れて江戸を出、かたぎだった安太郎と、そして当時は別の名だった徳兵衛は、金を預かり江戸に残った。それから時が過ぎたが、江戸を出た三人は戻ってこない。所帯を持った安太郎と徳兵衛は金を山分けし、徳兵衛は糸問屋を始め、安兵衛も新しい商売を始めるがうまくいかず、十年前に死んでしまう。そして今、その弥之助からの使いだという枡六という男が臼杵屋に現れ、千両を要求してきたという。
徳兵衛の依頼を受けた平四郎は、兄の配下の仙助に枡六のことを調べてもらう。枡六は闇の仲裁人と言われる男だった。平四郎は枡六(石橋蓮司)に会いに行き、二百両で手を引かないかと持ちかけるが、枡六は千両からはまけられない、払わなければ臼杵屋を皆殺しにすると取り合わない。
平四郎は友人の明石と北見とともに、毎晩、臼杵屋の警護につく。そして襲撃してきた黒覆面の男たちに木刀で立ち向かい、見事に追い返す。今度のおどしは枡六一人が仕組んだことではないかと平四郎は怪しんでいたが、男たちに引くように命じた声が弥之助のものだったと徳兵衛は話す。
平四郎は再び枡六に会いに行き、今度襲って来た時は斬るとおどし、二百両で枡六に手を引かせる証文を書かせる。だが平四郎の帰り際、枡六は「あなたとはまた会うような気がします」と意味ありげにつぶやく。
一方、兄の監物は、平四郎に自分を狙う者がいると話し、連絡の取れる場所にいるように言いつける。第三話「道楽息子」(5月4日)
早苗(北川弘美)の夫の菱沼惣兵衛(石丸謙二郎)は、副業で金貸しをしており、その情けのない商売の仕方に、早苗は心を痛めていた。
一方、平四郎の家では米びつが空になり、いよいよのっぴきならない状態になっていた。そこに明石半太夫が仕事を取ってきたと訪ねてくる。明石が紹介したのは紙問屋の橘屋甚兵衛(田山涼成)。甚兵衛の息子・庄次郎(蟹江一平)はたいへんな道楽者で、三年前の妻の葬式の日に出て行ったまま帰ってこない。しかも岡場所上がりのおもん(星野真理)という女と暮らしている。そのおもんを庄次郎から身を引かせてほしいという。礼金は三両。
引き受けた平四郎は、さっそくおもんに会いに行く。ところが、庄次郎の近所では、このおもんと一緒になってから庄次郎がまじめになったという評判で、実際に会ったおもんも、甚兵衛が用意した金には手をつけようとせず、とてもいい人だった。平四郎は甚兵衛に、とにかく一度おもんに会って、その人柄を知るように言う。
その翌日、橘屋に脅迫状が届く。不安になった甚兵衛は、平四郎に用心棒を頼み、平四郎はその仕事を北見十蔵にまわす。
平四郎が橘屋に行っている間に、兄の神名監物が見晴らせていた田島耕作が戻ってくる。だが田島は監物の配下の者が保護しようとする目の前で、監物と争っている鳥居耀蔵(本田博太郎)の手下にさらわれてしまう。その場に平四郎がいなかったことで、平四郎は監物から怒られてしまう。
おもんと直接会った甚兵衛は、おもんを気に入り、庄次郎を頼むと頭を下げる。しかし甚兵衛がおもんと別れさせようとしていると誤解していた庄次郎は、悪い仲間に橘屋に押し込みに入るよう頼んでしまっていた。慌てて取りやめを頼みに行った庄次郎だが、痛めつけられてしまう。それを聞いた平四郎と北見が助けに行き、甚兵衛の出した金で収める。
田島が捕らえられている場所が分かる。監物は平四郎と、彼の助太刀を申し出た北見、部下たちに踏み込ませ、無事に田島を奪還し、手記を手に入れる。第二話「逃げる浪人・仇敵」(4月27日)
平四郎は元許婚の早苗(北川弘美)のことを、同じ旗本の末弟の友人・伊部金之助(井之上チャル)に相談する。伊部は早苗のことを調べるとやたらと張り切って引き受ける。
一方、北見から明石の居場所が見つかったと話される。何か訳があるのだろうと言う北見に対し、客が来ずに窮地の平四郎は絶対に金を取り返すと意気込んで出かけていく。明石は本所で親子ともども元気に暮らしていた。乗り込んできた平四郎に、明石は借金があり、借金取りが道場にまで取り立てに来たので、迷惑を掛けないように身を隠したと説明。平四郎の五両は妻の病に遣ったと話すが、どう見ても妻は元気そう。
明石の家から帰ってきた平四郎を、客が待っていた。戸田勘十郎(平田満)と名乗ったその浪人は、ある藩の納戸役を務めていたが、上役を斬って逐電した敵持ちだという。追っ手の古沢武左衛門(佐戸井けん太)と戦って勝つ自信はあるが、古沢には妻子があり、自分にも一緒になりたい女性ができたので、談合に持ち込みたいというのが、依頼内容だった。
平四郎は戸田から聞いた古沢の世話になっているという旗本の岸本安知の屋敷に出向き、古沢を呼び出す。平四郎から戸田の申し出を聞いた古沢は、言葉では武士の面目が立たないと言いながらも、戸田の剣の腕前を知っており、また戸田の居場所もいまだ掴めておらず、二、三日考えさせてほしいと返答する。
平四郎の話に乗り気になっていた古沢だったが、平四郎が古沢に会いに来たのを見ていた岸本の家臣・寺田重兵衛(谷口高史)は、それでは岸本の家の面子が立たないと、古沢に加勢を申し出、敵討ちを強行させる。寺田は部下に平四郎の跡をつけさせ、戸田の家を見つけ、古沢に襲わせる。
平四郎が駆けつけた時には、すべてが終わった後だった。戸田は一緒になると約束した女・おふじ(山下容莉枝)の目の前で追っ手たちを切り、逃げた後だった。おふじからその話を聞いた平四郎は、戸田はいつか必ず戻ってくるから、待っているようにと慰める。
伊部が早苗の現状が分かったとやってくる。菱沼惣兵衛(石丸謙二郎)という書物同心の妻になっているという。平四郎は菱沼の年齢を聞いて驚く。52歳だというのだ。第一話「江戸の揉め事仲裁業 辻斬り・月下の襲撃」(4月20日)
平四郎は、肥後浪人の明石半太夫と仙台浪人の北見十蔵から、三人で道場を経営しようと持ちかけられる。そのための資金に一人五両と言われるが、千石旗本の家とはいえ、冷や飯食いの平四郎には、家に無心することもできない。そんな時、兄の監物から呼ばれる。
目付の監物は、平四郎に、辻斬りの旗本を、人知れず始末するように命じる。平四郎は、事情を話し、手当てに五両欲しいとお願いするが、監物は聞き入れない。
月夜の晩を好んで人を斬るという辻斬りを待ち伏せ、見事斬り捨てた平四郎だが、監物は道場に通わせたのだからそれぐらいはできなければ困ると、お褒めの言葉さえなし。だが後日、義姉の里尾(田中好子)から呼ばれた平四郎は、監物から聞いたと五両と心づけを手渡される。
里尾からもらった五両を持って、さっそく平四郎は明石たちの元へ。明石が見つけていた空き道場を借り、平四郎はこれを機に居辛い家を出て自立しようと、その近くに長屋を借りる。着々と道場の準備は進み、平四郎も長屋の主婦たちからかわいがられ、一人暮らしを満喫しはじめた頃、北見が血相を変えて飛び込んでくる。明石が夜逃げしたと。
実は明石は道場の家賃も、そろえた道具の代金も何一つ払っておらず、平四郎と北見の金を持ち逃げしたのだった。道場は取りやめになり、借金だけが残った平四郎は、家に帰ることもできず、絶対に明石から金を取り返すと息巻く。それを見て北見がつぶやいた「世の中に争いの種は尽きまじだな」という言葉から、妙案を思いついた平四郎。家の前に「よろずもめごと仲裁つかまつり候」という看板を掛ける。
そんなおり、里尾が早苗(北川弘美)を町の茶屋で見かけたと、平四郎に話す。早苗はかつて平四郎の許婚だったが、早苗の家が取り潰しになり、破談になったのだった。平四郎は早苗を探しにその茶屋に通う。
仲裁業の初めての客が現れる。竹皮問屋・栗野屋の妻・おとわ(床嶋佳子)は、金のことしか頭になく、乱暴する夫・角左衛門(渡辺哲)と別れたいから離縁状を取ってきて欲しいと言う。栗野屋に乗り込んだ平四郎だが、角左衛門は別れる気はないと、取り付くしまもない。おとわから、角左衛門が毎晩、遊女のおてる(大路恵美)の元へ通っていると教えられた平四郎は、おてるを買収して、栗屋に乗り込ませ、「角左衛門は私を妾にしてくれると言ってだました」と暴れさせ、彼女をなだめる代わりに離縁状を書かせる。
またも監物から呼び出された平四郎は、老中の堀田正篤の家へ連れて行かれ、獄中にいる蘭学者・高野の手記を手に入れて欲しいと命じられる。その手記は、高野と懇意の田島が持っているという。監物の配下の者が行方をくらました田島の家を見張っており、もし田島か戻ってきたときには、蘭学者を憎む者から守るのが平四郎の役目だった。
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