次郎長背負い富士
  中村雅俊 主演   06年6月1日〜8月31日   NHK 木曜夜8時から

各回ごとのコメント

最終回「荒神山の対決」(8月31日)
 安濃徳(岡田正典)と黒駒の勝蔵(大河内浩)と戦うため、清水港を出ようとしている次郎長の船に、役人たちが駆けつけてくる。強引に荷をあらためられ、鉄砲と玉が見つかり、問い詰められるが、小政(水橋研二)が時勢にかこつけて、「九州のお旗本へ応援に駆けつける」と言いぬける。
 吉良の仁吉(安田顕)のところへ集合した次郎長一家と長吉(松井範雄)。近々、笠砥神社の祭礼の日に安濃徳が賭場を開き、そこに勝蔵もやってくると聞きこむ。気合を入れる次郎長だが、大政(草刈正雄)と小政は、「親分は富士山のようにでんと構えていてくだせえ」と出入りに参加しないように言われ、「俺はお荷物だと言いたいのか」と拗ねる。
 夜、仁吉に次郎長は、子分たちの言うことを黙って聞いていたらいいということは分かっているが、それでは威厳がなくなるので、時々反抗するのだと漏らす。
 次郎長一家たちは、大政を大将に船で四日市に向かい、笠砥村に入る。だが、「年に一度の祭礼を血で汚すわけにはいかねぇ、明後日、荒神山で決着をつけよう」と伝えられ、対決は先延ばしに。
 その間、勝蔵側は手下をかき集め、80人にもなり、大筒まで用意しているという。それに対し次郎長側は22人。びびる長吉に、小政たちは戦は数じゃないと楽観視。
 銃撃戦から始まった戦いは、途中、仁吉が陰から狙った鉄砲に胸を撃ち抜かれ、その他二名を失うも、大政と小政が大将を討ち取り、また勝蔵側に多くの死傷者を出し、形の上では勝ちを収める。
 だが戻ってきた小政たちに、次郎長は安濃徳と勝蔵に逃げられたことを叱りつける。弔い合戦を決意した次郎長は、近隣の親分たちに義ある者は三河に集合するよう呼びかけ、それに応じた者たちが480人程も集まる。これにはさすがに恐れて、勝蔵の仲介を申し出てきた安濃徳に、次郎長は譲る気のないことを伝え、震え上がる安濃徳は集まった全員に手間賃を払うことで許される。
 時代は明治となり、遠州藩から直々に沿道警備隊を命じられた次郎長。街道見回りの最中、官軍の兵を率いる隊長となった黒駒の勝蔵とばったり出会う。官軍に道を開けろと命令する勝蔵に、「ここは次郎長一家の縄張り、黒駒の勝蔵を通すわけにはいかねぇ」と次郎長は凄み、勝蔵は尻尾を巻いて逃げ出す。

第9回「義理と人情」(8月24日)
 はな(田中美里)をお蝶と呼び、妻に迎えた次郎長は二人でお蝶の墓参りに行く。次郎長ははなをお蝶の生まれ変わりと信じて嬉しそうだが、今まで別の人生を生きてきたはなは、愛されることは嬉しいが少し複雑な思いだった。
 清水の近隣では、あこぎなことをやっている黒駒の勝蔵一家が勢力を伸ばしていた。次郎長は懇意の一家を助けるため、小政(水橋研二)たちを助っ人に出すが、逃げられてしまう。
 一方、吉良の間之助親分の具合が悪いと知った次郎長は、預かっていた仁吉(安田顕)に戻るように言う。勝蔵との一件が片付くまでと遠慮する仁吉に次郎長は、間之助がきっと跡取りに仁吉を望んでいると言い、いい親分になる秘訣はいい子分といい女房を持つことだと教え、送り出す。
 勝蔵一家に気をつけるよう花街に注意喚起に出かけた次郎長に、物陰から「親の仇」と切りかかってきた女郎がいた。彼女は都島の吉兵衛の娘・たみ(水町レイコ)だった。次郎長は敵討ちには限りがない、自分が父親なら娘に敵討ちなど望まないと諭し、身の立つように世話をしてやる。
 仁吉は吉良一家を継ぎ、次郎長に言われたように女房にきく(板谷由夏)を迎え、新婚の幸せな日々を過ごしていた。そこに間之助の兄弟分だった長吉(松井範雄)が、安濃徳(岡田正典)の一家に賭場を盗み取られたから次郎長に口利きをして助っ人をしてほしいと言ってくる。仁吉は、自力で賭場を守りきれなかったのは長吉の落ち度としながらも、安濃徳が汚い手を使ったのも事実、しかも安濃徳は恋女房の腹違いの兄であり、義理と身内の間で悩む。しかも安濃徳の後ろには、甲州から信州まで周到に逃げ回りながらも勢力を広げていっている黒駒の勝蔵が付いていた。
 仁吉からの手紙を読んだ次郎長は、大政(草刈正雄)を相談役に行かせる。大政は安濃徳に賭場を返すように仲裁に行くが、勝蔵の後ろ盾で調子付く安濃徳は次郎長のあしざまにののしり、安濃徳と勝蔵との戦いは避けられないものとなった。大政は仁吉にこの戦いには関わらないように言うが、仁吉はきくと涙の離縁をする。

第8回「撃て、都鳥」(8月3日)
 フグの毒にあたって寝込んでしまった次郎長一家。次郎長は回復に向かうものの、子分が二人死んでしまう。次郎長は体面を気にせず、葬式を派手にやることに決める。子分の死を無駄にしたくはない、次郎長一家が皆寝込んでいると噂を流し、都島一家をおびき出す考えだった。
 狙いどおり江尻に出てきた都島一家。仲間が揃うのを待っているところを、次郎長たちは襲う。見事、石松の仇を取った次郎長は、またもやお尋ね者となり、その足で旅立つ。
 三河の間之助親分(池田勝)のところで世話になる次郎長たち。そこに京の岩倉具視の家来だという侍・刈谷弁之丞(大谷亮介)が訪ねてくる。岩倉たっての願いで、次郎長に京に来て用心棒をしてほしいと言うのだ。渡世人の自分は天主様の家来になる気はないと渋る次郎長に、刈谷はしつこく頼み込み、次郎長は返事を保留にする。
 悩みながら船釣りに出た次郎長たち。ところがそれを役人に見つかり、捕まってしまう。牢に入れられた次郎長に、勤皇派の脱藩浪士を捕らえる手伝いをするなら解放してやろうと役人が言う。そうでなければ打ち首になると言われ、次郎長は大政(草刈正雄)の反対を押し切り条件を飲む。
 だが次郎長も本心は役人の手先になるのはご免だった。牢から出た後は何もせず時間を稼ぎ、浪士を追うという名目で京へと逃げる。だが岩倉は追放となり、次郎長は肩透かしを食らう。
 駿河に戻ってきた次郎長は、亡くなった妻・お蝶にそっくりな芸者(田中美里)と出会う。彼女の名は、はな。
 清水に帰った次郎長は、仏前でお蝶に「生まれ変わりなのか?」と問うが、もちろん答えてはくれない。次郎長は小政(水橋研二)にはなを身請けしてくるように言いつける。やってきたはなを見て、子分たちもあまりのそっくり加減にびっくり。次郎長は、はなに、お蝶と呼んでもいいかと、問う。

第7回「石松代参」(7月27日)
 将軍の代替わりの恩赦で、清水に帰ってきた次郎長。
 子分の中で一番足が速く、体の丈夫な石松(山本太郎)を呼び、一家再興が叶ったお礼参りに金毘羅さんまで行くように命じる。ただし、条件として付けられた、道中酒を一滴も飲まないことに、一度はできないと断る石松。だが、大政(草刈正雄)からこっそりと、帰りは飲んで謝ればいいと知恵をつけられ、了承。お布施50両と旅費15両を持って出発する。
 無事参詣を終え、お札を報告の手紙とともに飛脚で送った石松。帰り道、故郷の遠州森村を通ったとき、幼馴染だった都島一家の常吉(吉見一豊)と梅吉(関貴昭)に呼び止められる。急いでいるからと断ったものの、強引に引き止められ、熊五郎の兄弟分の親分からお蝶の香典25両を預かってからは再び絶っていた酒を飲ませられる。
 酔って眠り込んでしまった石松は、25両を都島一家の親分・吉兵衛(石田登星)に貸したことにされてしまう。取り返しに行こうとした石松を、吉兵衛の子分が客分の保下田の久六の身内と待ち伏せ、取り囲む。暴れる石松だが、多勢に無勢、左目を切られ、逃げ出す。
 次郎長の兄弟分、小松村の七五郎親分(大橋吾郎)に匿ってもらった石松。無茶はするなと止められるも、そのままでは帰れないと、石松は竹槍を作り、一人金を取り返しに行く。
 都島一家を相手に大暴れする石松。しかし逆に吉兵衛に竹槍で腹を突かれ、わざと苦しむようななぶり殺しにされる。
 七五郎から知らせを受けた次郎長。好敵手でありながら石松を認めていた小政(水橋研二)はすぐにでも敵討ちをといきり立つが、港に逃げ込んだ吉兵衛に対し、大政は持久戦を薦める。
 そして年が明け、次郎長の理解者である宏田和尚(神山繁)からフグが差し入れられた。喜んでてっちりにする一家。だが毒に当たってしまう!

第6回「蝶に雪」(7月20日)
 追っ手から逃れるためばらばらに、次郎長たちは以前世話をした名古屋の保下田の久六(天田益男)を頼りに行くが、久六はもうすぐ相撲興行をするので次郎長たち十人もの面倒は見れないとつれない。仕方なく次郎長たちは、ぼろぼろになりながらもう一足伸ばし瀬戸の岡一(不破万作)のところへ。
 大政(草刈正雄)はお蝶(田中美里)を迎えに清水へ。清水の家には小政(水橋研二)を残し、次郎長に合流すべく旅をするが、途中、お蝶は暑気あたりになり、背負われて瀬戸に着き、次郎長の顔を見て「会えてよかった」と涙を流す。
 お蝶は床に付いたまま日々やつれ、医者代薬代がかさむ。だが相撲興行が終われば迎えに来ると言った久六からは何の便りもない。岡一に迷惑の掛けっぱなしで居心地が悪くなり、役人にも目を付けられそうだと知った次郎長は、名古屋に住む大の次郎長贔屓という一匹狼の長兵衛を頼るように岡一に勧められる。
 子分半分は清水に帰し、お蝶を連れて次郎長は長兵衛の家へ。長兵衛は快く受け入れ、次郎長の子分になりたいと頭を下げる。だが次郎長たちの看病もむなしく、お蝶は31の若さで亡くなってしまう。
 ひっそりと行われたお蝶の葬式に、子分合わせて四、五十人もの近隣の親分たちがお忍びで参りに来る。その話を聞いた久六は、次郎長を恐れ、役人にたれ込む。
 次郎長は長兵衛へ寺への御布施を届けるように言い、自分の羽織を貸してやる。長兵衛が表に出た途端、役人が駆けつけてくる。長兵衛が身代わりに捕まっている間に、次郎長は無事に逃げることができた。
 そのまま次郎長はお蝶が行きたがっていた讃岐の金毘羅参りに出かける。長兵衛も人違いだと分かれば解き放たれるだろうと踏んでいたが、名古屋に戻ってきた次郎長に、長兵衛の妻が長兵衛が牢屋で責め殺されたことを告げ、仇を取って欲しいと頼みこむ。
 久六の居場所を聞き出した次郎長。知多半島の乙川で、賭場帰りの久六と決闘。見事、お蝶と長兵衛の仇を討ち果たす。

第5回「浮世双六」(7月13日)
 次郎長は父親が病で自分に会いたがっていると聞くが、母の葬式に来るなと言われたのに、自分が弱ったときには手の平を返すような態度に怒る。次郎長は幼いときに養子に出されたことを恨んでいた。だが大政(草刈正雄)に逃げるな、逃げればあんたの負けだと言われ、渋々会いに行く。
 だが父・三右衛門(小林稔侍)は次郎長のことを嫌ってはいなかった。養子に出したのも、次男の次郎長が主になれるようにとのことだった。三右衛門は次郎長の手を握り、「道を踏み外したのは親のせいだ。許してくれ」と謝る。
 次郎長を海辺に呼び出すお蝶(田中美里)。彼女は子供ができないことを気にしていた。渡世人に子供はいらないと言う次郎長だが、万が一のことを考えて、小政(水橋研二)を仮養子にする。
 甲州の江尻で一家を構えていた熊五郎(信太昌之)が、祐典一家に子分を三人殺され、次郎長に助っ人を頼んでくる。心配するお蝶を残して、次郎長は子分を連れて旅立つ。
 熊五郎たちと祐典一家に話し合いに乗り込んだ次郎長。だが親分ではなく隠居の六右衛門(稲川淳二)が対応に出てきて、次郎長が出した手打ちの条件の下手人を出すことも、詫び状と葬式代を出すこともできないと言う。いきり立つ熊五郎たち。そこに鉄砲が打ち込まれる。たちまち乱闘となり、次郎長たちは人を殺してしまう。
 祐典一家は、十手を預かる身分だった。たちまち御尋ね者となり、捕まることを恐れた次郎長たちは、清水には戻らず、名古屋へ向かい長い旅に出ることに。

第4回「心意気」(7月6日)
 居合切りの達人の小政(水橋研二)も一家に加わり、ますます大所帯になる次郎長一家。しかも一宿一飯の恩を求めてやってきた渡世人も気前良く泊めてもてなすので、台所事情は厳しくなっていた。だがそれを知らない男たちは、石松(山本太郎)を筆頭に、ケンカはするは、酒を盗み飲みするは、夜もなかなか寝ずに騒ぐはで、まるで子供のよう。
 町を歩いていた次郎長は、偶然別れた前の妻・きわ(松尾れい子)と出会う。次郎長は、彼女を不幸にしたことを詫び、何かできることはないかと問うが、「私は堅気の女です」と断られる。
 一方、次郎長の元に実の母と姉が訪ねてくる。母のとよ(伊藤榮子)は次郎長が金に困っていると噂に聞き、工面してきた金と自ら縫った袴を手渡してくれる。
 一家の大きな収入源である賭場を開いている最中、役人が手入れに来るという連絡が。事前に十両もの賂を渡しているはずなのにと、怒りを隠せない一家の面々。無事に逃げることはできたが、腹立ちの収まらない熊五郎(信太昌之)はその役人を襲い、腕を折る。
 役人に怪我をさせた自分がいては一家に迷惑がかかると、旅に出る決意を話す熊五郎。次郎長はその志を汲んだ上で、二、三年してほとぼりが冷めたら帰ってきて、熊五郎一家をかまえろと言う。はじめは遠慮していた熊五郎だが、礼を言い広吉(相場貴晴)と共に旅立つ。
 次郎長の兄が、母が死んだことを知らせに来る。だが葬式に来ることは許さない、花も香典もよこすなと、父が言っていると伝える。実家は次郎長とは他人なのだと。後日、次郎長はとよの墓の前で泣き崩れる。やくざ者になった今でも自分のことを変わらず心配してくれた母は、次郎長にとってかけがえのない人だった。
 時は移り、安政の大地震が起きる。直撃した江戸の民を救うため、米を二百俵贈ると次郎長は宣言し、米と金を集めるが、手持ちの金は少なく、商人たちに人助けだから米を出してほしいと話すが、みな渋る。
 思うように集められず焦る次郎長の元に、堅気のころの家の甲田屋の主人と姉が訪ねてくる。「うちは米問屋だよ。なぜうちに来ないんだい」と二人は百俵出すと申し出る。甲田屋の話はたちまち伝わり、他の商人たちも競うように米を出してくれ、あっというまに集まった米を船に乗せ、次郎長たちは自ら江戸へ。その評判を上げる。

第3回「次郎長一家旗揚げ」(6月29日)
 武一(有川博)から「故郷に帰って一家を構えろ」と言われた次郎長。まだ恩を返していないと断ろうとするが、強く勧められ、熊五郎(信太昌之)と広吉(相場貴晴)を連れて清水に帰る。途中、熊五郎の姉夫婦の家に寄り、熊五郎と広吉に様子を見に行かせる。
 一人残った次郎長は、熊五郎の妹のお蝶(田中美里)と出会う。気性の激しいお蝶は博打打が嫌いで始めは反発していたが、次郎長が薪割を手伝いコツを教えたおかげで打ち解ける。
 熊五郎からの報告で次郎長は、妻が再婚し、店も繁盛していることを知る。そして川をはさんで兄弟分の太左衛門(秋間登)と文吉(頭師佳孝)の一家が喧嘩をしようとしていることを聞く。
 出かけていった次郎長。太左衛門に助太刀すると言い、会って原因を聞くと、太左衛門は文吉が理由なく因縁をつけたきたと言う。大義名分なく戦っては奉行所にも申し開きできないとなだめ、次郎長は文吉への使者に立つ。
 一人丸腰で文吉に会いに行った次郎長。文吉は太左衛門が役人にタレコミをしたと言う。だが実は太左衛門のところにいた三馬政(寺門ジモン)が両親分の共倒れを狙って仕組んだことだった。次郎長のおかけで二人は手打ちをし、次郎長とも三兄弟の契りを交わす。
 名を上げた次郎長は、いよいよ清水に一家を構え、堅気から離れる覚悟を決める。噂を聞いてやってきた子分も増え、姐さんが必要だと熊五郎に嫁取りを勧められた次郎長は、それならばと家のことを手伝いに来てくれていたお蝶をもらう。
 祝言の祝いに駆けつけてくれた武一から、祝儀にと大政(草刈正雄)を軍師にもらう。彼は役人に目をつけられ吉良にいられなくなっていたのだ。
 一家に、成長して腕っ節も強くなった石松(山本太郎)も押しかけてくる。

第2回「涙の別れ」(6月8日)
 叔父から「次郎衛門」の名を継いだ長五郎は、略して次郎長と名乗るようになり、立派な米問屋の主となる。
 そんなある日、次郎長はやくざ者たちに苛められている石松(園部豪太)という名の子供を助ける。
 次郎長の前に、音吉(菊池均也)が、博打で負けて借金取りに追われていると助けを求めてきた。次郎長は子供の頃から親友の危機に、仇を取ってやると賭場に赴く。客の振りをして参加した次郎長は、サイコロを入れ替えるいかさまを見破り、襲い掛かる彼らをねじ伏せる。
 その帰り道、夜道を歩く次郎長と音吉を呼び止める声が。石松が、二人が待ち伏せされていることを教えに来たのだ。石松から武器になりそうな棒を受け取った二人は、待ち伏せの連中と渡り合い、追い払うことに成功。ところが中に倒れたまま動かない者が。次郎長はその二人殺してしまったと思い込む。
 真っ青になって帰った次郎長は、事情を話し、妻を離縁。実家に店のことを頼み、勘当を受け、その夜が明けないうちに、涙の別れを済ませ出奔する。音吉は自分も行くと言ったが、次郎長は殺したのは自分だと、石松を預け、一人、旅に出る。
 あてのない道中、賭場での一件を聞きつけた熊五郎(信太昌之)と広吉(相場貴晴)が弟分になりたいと慕ってくる。世事に詳しい熊五郎の案内で、途中置き引きにあったりと珍道中を繰り広げながら、三人は吉良の武一親分(有川博)の一家にたどり着く。
 世話になりたいという次郎長を、武一は大政(草刈正雄)と立ち会わせる。剣をまともに習ったことのない次郎長は、まったく歯が立たないが、その心意気が認められて、一家に加えられる。
 大政に剣を習い、一家の中で修行を積む次郎長。そして三年が経ったある日、殺したと思っていた二人が生きていたことを知る。自分がすべてを捨てたのはなんだったのかと、次郎長は悲観にくれる。

第1回「春の嵐」(6月1日)
 裕福な炭問屋の子として生まれた長五郎(小清水一揮)は、子供の頃に米問屋の叔父の元へ養子に出される。だが長五郎はなかなかなじめず、成長してからも喧嘩に博打にといっこうにまじめにならない。養父に叱られる長五郎(忍成修吾)を影でかばい、喧嘩の傷を手当てして、心配してくれるのは養母のふな(烏丸せつこ)だった。
 しかし養父には愛人がいたようで、ふなはたくましく成長した長五郎を段々と男を見る目で見てくるようになる。居づらくなった長五郎は、実家に帰りたいと訴えるが取り合ってもらえず、とうとう家から百両盗んで出奔する。
 浜松で米相場を張って大もうけした金を持って、実家に戻ってきた長五郎。だが実父・三右衛門(小林稔侍)は激怒。叔父からも勘当をくらい、長五郎は三右衛門から「人に喜んでもらうのが商いだ。富士のお山に顔向けできるようなまっとうな商人になれ」と商いの基本を厳しく叩き込まれる。
 やがてまじめになった長五郎は、病で倒れた叔父から再度呼ばれる。だがふなの元に戻りたくない長五郎は、嫁取りを条件に出す。長五郎に相手にされず面白くないふなは嫁いびりをし、役者遊びを始める。
 そしてある夜、店に強盗が入る。長五郎が暴れて追い出したものの、彼らはふなが恋人を通い入れるために開けていた扉から入ってきたのだった。反省したふなは、恋人とともに家を出て行き、長五郎は亡くなった叔父の跡を継ぐ。

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