過去の単発時代劇

 
シガールSP
   黒島結菜 主演   18年12月24日放送   NHK 夜9時から
 昨年放送された連続ドラマのSP版。ラプコメらしく、クリスマスイブの夜に放送です。
 憧れの若君・忠清(伊藤健太郎)との結婚を五日後に控えた唯。ところが、隣国の高山が、織田信長の軍とともに攻めてきます。若君は、唯に城の皆を頼み、式までに戻ると言い残して、国境の城を助けるために出陣。敵の軍勢に囲まれた黒羽城では、領主の忠高(石黒賢)を筆頭に徹底抗戦一辺倒なのを、唯は生き残ることこそ勝ちだと説き伏せ、残っていた尊(下田翔大)の発明品を使って、全員を無事に城から脱出させます。
 捨てたはずのタイムマシンを若君が拾い、託されたと母上様(ともさかりえ)から渡された唯は、一人、若君の元へ走り出します。ところが高山の兵にあっさり捕まり、忠清と唯に好意を寄せる領主の息子・高山宗熊の口添えで城に降伏を勧める使者として立つことに。
 降伏の前夜、唯と若君は結婚式をあげます。そして二人きりになった夜、唯はあと一回だけ使えるタイムマシンで若君を逃がそうとしますが、逆に諭され、絶対に死なないという約束と引き換えに、唯は現代に帰ってきます。
 現代で、若君のお墓を見て、若君がその年のうちに自刃したと知った唯は驚きます。今すぐになんとしてでも戦国時代に戻りたい唯ですが、タイムマシンのエネルギーを貯めるのにはまだ何年もかかります。大好きな食事すらも取らなくなってしまった唯に、尊は、考え抜いた末、新しいタイムマシンを完成させた未来の自分からタイムマシンを送ってもらうことを思いつきます。今度は二人で移動できるタイムマシンを手に、唯は再び戦国時代へ。
 唯の着いた先では、黒羽城の人たちが隠れながらもたくましく生きていました。そこに、降伏したのちに織田軍の大将だった相賀一成(西村まさ彦)に気に入られ家臣となった若君から、相賀の娘と結婚するという文が届きます。婚儀の宴に、芝居一座の女形・あやめ(森優作)の協力で祝いの舞の踊り子として登場した唯は、月から婿を取り戻しに来たと名乗り、若君と手を取り合って、相賀の兵に囲まれた中、タイムマシンで現代へ。
 現代で唯は、制服デートなど、若君とやってみたかったことを次々に堪能。しかしそこには、二人で戦国時代へ帰るという意志が隠れていました。12月23日の満月の夜、唯の家族とともに一日早いクリスマスパーティを開き、二人は戦国時代へと帰ります。
 連続ドラマの時は一人しか移動できなかったため実現できなかった、現代での高校生姿の二人のデートや、今度こそ結ばれるのかというドキドキ感満載だった、このスペシャルドラマ。唯の一直線な性格と、涼やかな若君とのきゅんきゅんするラブコメはそのままに、戦国武将にとって「生きる」という意味などより深いテーマと、より深まった二人の絆が見どころでした。
連続ドラマの紹介はこちら
 
 
 
あんみつ姫2

   井上真央 主演   09年1月11日放送   関西 夜7時から

 昨年同時期に放送された『あんみつ姫の大冒険』の第二弾!
 甘辛国のおてんば姫・あんみつ姫は、今宵もデコ長刀(なぎなた)片手に街に出ては、悪人退治。立場をわきまえなさいと怒った母のてん茶(和
久井映見)から外出禁止令が出されるが、いつも一緒のけなげな小姓・甘栗の助(今井悠貴)の死んだとされていた母親が実は生きていると知っ
て、母を訪ねて300里、甘栗の助と吉良吉良国へと向かう。
 吉良吉良国の入口・かがみ藩では、町の人たちが我滅猪生(がめついのう・竹内力)の重税に苦しみ、笑顔を失っていた。藩主が死に、嫡男が
行方不明になってから、ずっとこの状態だと言う。そこに、阿久田偉観(あくだいかん・中尾彬)が我滅一味を倒せる人材を集めるために天下一武
闘会を開くとお触れが。優勝者にはなんでも願いをかなえてくれると聞き、あんみつ姫は甘栗の助の母親を探してもらうため、出場。そこには、姫
たちを我滅から救ってくれた無愛想な武芸者・野牛九兵衛(内田朝陽)もいた。姫と九兵衛は順調に勝ち進んでいく。
 ところが我滅と阿久田、そして甘栗の助の母候補の高級宿・比留豚(ヒルトン)の女将・錦玉(杉本 彩)は、裏でつながっていた。甘栗の助の母の
形見である懐刀には、吉良吉良国の宝のありかが隠されており、3人は甘栗の助を狙う。藩主の父を殺され、武芸者に身をやつして敵討ちの機会
を伺っていた九兵衛とともに、あんみつ姫はここでも悪人退治。
 あんみつ姫をひそかに助ける謎の遊び人(実は隠密同心)・金つばのリュウ(京本政樹)等おなじみメンバーに、はるな愛やら前田健等ゲストも多
数登場。水戸黄門や必殺等々おなじみ時代劇や、ドラゴンボール等のパクリもふんだんに取り入れて、時代劇ファンもそうでない人も、楽しく笑っ
て見れる、まさに正月向けお祭り作品。皆を笑顔にするため、「スマイル(正式発音は「ス、マィ〜ル」byカステラ夫人(夏木マリ))」合言葉に、あんみ
つ姫は今日も行く!

番組公式サイト http://wwwz.fujitv.co.jp/anmitsu2/index.html

家康、江戸を建てる
   佐々木蔵之介 柄本佑 主演   19年1月2日、3日放送   NHK 夜9時から
 正月時代劇として、『前編〜水を制す〜』、『後編〜金貨の町〜』と、2日間に渡って、それぞれ73分の作品でした。
 徳川家康(市村正親)が江戸に町を作ろうした時、江戸はまだ村が少しあるだけの湿地でした。町作りには、洪水が起きないようにすることと、そこに住む人たちの飲み水が肝心だと考えた家康は、重臣の伊奈忠次(松重豊)に利根川の流れを変えることを、そして飲み水の確保には菓子司の大久保藤五郎を抜擢します。美味な菓子を作る藤五郎ならば、美味しい水も利き分けられると考えてのことでした。戦で家康をかばって足を怪我して後は戦働きができなかった藤五郎は、この命令に感動し、自分一人に任せてほしいと意気込みます。勝五郎は、家康から、勝五郎が作った菓子は毒味を通さず食べていたほど信用されていた人物でした。
 勝五郎は江戸周辺を歩き回り、神田明神辺りの湧き水と赤坂溜池の水が良いことを見つけ、小石川上水として江戸まで水を引きます。江戸の町の飲み水が心配なくなったのもつかの間、人口が増えるに従い、水が足りなくなってきます。新たな水源を探す勝五郎は、家康が武蔵野の名主・内田六次郎(生瀬勝久)に上水道作りを命じたという話を聞き、自分への信用がなくなったのかと落ちこみます。しかし江戸の民に飲み水を届けるためにと思い直し、六次郎と対立しながらも協力して井の頭池から水を引く神田上水を、江戸の町の端まで完成させます。そこにまた、家康から命を受けたという学者風の技術者・春日清兵衛(千葉雄大)が現れます。三人は対立しながらも清兵衛の技術によって、町の地下に上水道を流す工事が進みます。徳川家の金庫番である大久保長安(高嶋政伸)の妨害も乗り越え、上水道は完成。そこで勝五郎は、家康が後々のことまで考えて自分以外の若い者たちにも上水作りを命じたのだと気づきます。
 一方、江戸を日の本一の都にしてみせると、心ひそかに決意する家康は、太閤秀吉から褒賞に使われる大判の金貨作りを一手に任されてる京の後藤家に目を付けます。後藤家では、使用人として虐げられていた橋本庄三郎が、当主・徳乗(吉田鋼太郎)に呼び出されます。庄三郎が憧れている、徳乗の娘・早紀(広瀬アリス)と結婚させる代わりに、弟の長乗(吹越満)とともに一年間、江戸に行くようにと、徳乗は庄三郎に命じます。家康に乞われ、江戸で大判作りを披露した長乗たちでしたが、長乗は庄三郎との約束を反故にして、庄三郎を残して京に帰ってしまいます。見事な作りの大判が長乗ではなく庄三郎の作だと見抜いた家康は、流通に使える金貨・小判の製造を庄三郎に命じます。貨幣の世界からひそやかに天下取りを狙う家康でしたが、企みが露見。庄三郎は責任を追わされ詰め腹を切るように迫られます。庄三郎は再度の機会をと願い、後藤の名でより質の良い小判を作れば状況を覆せると進言。早紀との結婚を成立させるべく京へと向かいますが、早紀はすでに別の家へと嫁いでいました。だまされていた庄三郎は、徳乗を脅し、後藤家の猶子となります。それから時は過ぎ、関ヶ原の戦いで勝利した家康は、天下の覇者となります。豊臣の庇護を受けていた京の地では大混乱となり、後藤家も逃亡することに。混乱の中、庄三郎と早紀は再会し、言葉を交わします。
 江戸の町を作った人たちの歴史ドラマというよりは、人間ドラマな作品でした。特に前編では、対立する藤五郎と六次郎のセリフの掛け合いが見どころでした。
 原作は、門井慶喜の同名小説です。
 
 
 
遺恨あり
〜明治十三年最後の仇討
   藤原竜也 主演   11年2月26日放送   ABC 夜9時から

 明治13年に起きた公的に記録されている最後の仇討ちの実話を元に作成されたドラマスペシャルです。
 十月には明治となる年、九州の秋月藩で、維新派の執政・臼井亘理(豊原功補)とその妻が、過激攘夷派の志士たち暗殺された。その子・六郎
(藤原竜也)は、無残に斬り殺された母と、首を斬り落とされた父の亡骸を前に、幼きながら仇討ちを誓う。しかしその時代、国は武士の時代から
法治国家へと大きく変わろうとしていた。六郎の成長を待たず、武士は士族という名の失業者となり、“仇討禁止令”が発布され、廃刀令が出され
る。仇討ちは武士の美徳ではなく、ただの殺人だとみなされたのだった。
 この作品の面白いところは、仇討ちが達成できたところで話が終わらず、それを裁く裁判へと続くことでした。時代がほんの少し前ならば、美談と
して名誉が与えられた仇討ちという行為、それをただの殺人として裁くのか、そしてその裁判を世間はどのように注目するのかが、調査を進める東
京上等裁判所判事・中江正嗣(吉岡秀隆)の目を通して語られます。初めは法の定めるとおり、殺人として裁こうとしていた中江が、六郎の剣の師
であり最後の武士と言われた山岡鉄舟(北大路欣也)との面談で心が揺れるところが見事でした。
 また、六郎の父母が惨殺される場を見てしまった臼井家の下女・なか(松下奈緒)の、六郎に対する献身的な援助も好感が持てました。
 幕末の混乱期に思想の違いから人を殺した者の罪は問われず、時代が少し違っただけで名誉と称えられた仇討ちが罪となる、その悲劇が重厚
に描かれた興味深い作品でした。

番組公式サイト http://www.tv-asahi.co.jp/ikonari/
 
 幕末、慶応三年。江戸では薩摩藩の非正規部隊・御用盗による狼藉が横行していました。
幕府は取り締まろうにも、それが薩摩に開戦のきっかけを与えてしまうことが分かっているため、手を出せません。そこで勝海舟(尾美としのり)が考え出したのが、
農民からなる同じく非正規の戦闘部隊。勝の命を受けて島田幸之介(松田龍平)は、近隣の農村から機敏で力持ちの者を選び出し、侍への取り立てと給金を餌に、
一撃必殺の剣術の訓練をさせ、ゲリラ部隊・一撃必殺隊を発足させます。普段から侍に虐げられていたウシこと丑五郎(染谷将太)たちは、大嫌いな侍を斬れるとあって奮起。
初陣で、わずか七人で四十人の御用盗相手に華々しい戦果を上げます。一方、御用盗の首領だった薩摩藩士の伊牟田(杉本哲太)は、かわいがっていた部下を殺され、
一撃必殺隊に激しい恨みを持ちます。
 ただの百姓だったウシたちが人斬りを続ける葛藤や、しょせんは非正規の捨て駒として勝や、伊牟田の上役、相樂総三(じろう)から扱われる悲哀なども織り交ぜ、
神田伯山の講談にのって描く、活劇ストーリーです。
 原作は永井義男の小説『幕末一撃必殺隊』、それを原案にした松本次郎の漫画『いちげき』。脚本は宮藤官太郎。


 
 幕末、松浦武四郎は蝦夷地の詳細な地図を作るため、単身、調査に乗り込みます。そして函館の商人のツテで、アイヌのウテルク(木村彰吾)を雇い、彼の案内で蝦夷を調査しながら横断します。武四郎は行く先々で蝦夷地の豊かで壮大な自然に感動しますが、一方で虐げられているアイヌに心を痛めます。当時の蝦夷は松前藩の管轄で、松前藩は厳しい課税をし、アイヌを奴隷のように虐待していました。
 旅の途中、熊に遭遇した武四郎たちをウテルクは身を呈して守り、片手を犠牲にして武四郎を救います。怪我をしたウテルクを連れて、ウテルクのコタン(集落)に身を寄せた武四郎は、アイヌの人たちの素朴で優しい人柄に触れ、暮らしの窮状を知ります。そしてウテルクの妹で、悲しい過去を持つリセ(深田恭子)と、その息子のイチニカと心を通わせます。
 江戸に戻ってきた武四郎は、蝦夷の実状を書いた本を出版。幕府に、西洋列強に蹂躙された清のようにならないためには、アイヌの協力を得てロシアから蝦夷を守るべきだと説きますが、内情を知られたくない松前藩から命を狙われます。そのことで幕府の信用を得、正式に雇われます。しかし妨害が入り、武四郎は蝦夷へ向かうことができないまま、時は過ぎます。
 政権が代わり、再び蝦夷に赴いた武四郎は、アイヌの家々を周り、人別帳を作ります。しかしそこで見たのは、以前と変わらない、それどころかさらにひどくなっていたアイヌの窮状でした。リセとも再会しますが、彼女は刺客から武四郎をかばい、命を落とします。彼女の息子イチニカは、成長して一蔵(正垣湊都)と名を改めており、江戸に行くことを望みます。
 新政府から蝦夷の新しい名前を付ける相談を受けた武四郎は、いくつかの案を出し、蝦夷は北海道と名を変えます。目まぐるしく時勢の変わる中、武四郎は江戸で多くを学んだ一蔵に、これからのアイヌの救済と北海道の発展を託します。
『嵐』の松本潤主演で、北海道の命名者であり、漢字表記の地名など、詳細な調査を元に今の北海道の基礎を作った松浦武四郎を描いた83分の作品でした。北海道では先行放送も行われました。
 

 

 


大江戸捜査網2015
   高橋克典 主演   15年1月2日放送   大阪 夕方6時から
 
「死して屍拾う者なし」のナレーションでおなじみの、テレビ東京で1970年から1992年まで放送された連続テレビ時代劇が、新春ワイド時代劇で5時間の長編時代劇として復活です。
 天明の大飢饉で、江戸の町では米が変えない町人による米問屋の打ち壊しが行われていた。それを厳しく取り締まろうとする同心・秋草新十郎(松岡昌宏)たちに対し、侍が大嫌いな遊び人の珊太郎(本当の名は十文字小弥太)は町人たちを助けるために歯向かい、牢屋に入れられる。そこで、その剣の腕と熱い義侠心を買われ、時の老中・松平定信(加藤雅也)に密命を受けた内藤勘解由(里見浩太朗)から、江戸の庶民を守る隠密同心になってほしいと頼まれる。隠密同心の仲間には、大盗賊の娘の不知火お吉(夏菜)、浪人の井坂十蔵(村上弘明)、芸者の玉竜こと稲妻お竜(藤原紀香)、蘭学医の榊原長庵(柄本時生)がいた。
 中洲新地で白塗りの男たちが女をさらうという事件が起き、珊太郎たちは探索に当たる。珊太郎たち隠密同心の活躍で解決するが、多くの罪なき者たちの血が流された。そしてその半年後、吉原でも事件が起きる。自ら探索に当たっていた珊太郎は、中洲で会った娘・早苗(波瑠)と再会する。一方で、同心の仕事に精を出していた秋草は、上司に裏切られたことで自分の生き方を見つめなおす。
 謎を秘めた早苗の正体は、そして本当の悪は、事態は思わぬ方向に向いていき、江戸城を揺るがすほどの大きさとなります。おなじみの演出とナレーションをバックに、隠密同心たちの活躍をご覧あれ。
 
 
大江戸ロボコン
   岸優太 主演   17年12月2日放送   NHK   夕方4時20分から
 ロボコンが開催されてから30年目を記念して、今年の高専ロボコンのテーマが『大江戸ロボット忍法帳』ということで、制作されたタイムスリップ時代劇です。11月27日から4日間連続でEテレの『Rの法則』の中で20分のドラマを放送。12月2日にNHK総合にて一挙放送されました。
 高専のロボコン部に所属する将也。しかし初めから勝つのは無理と負けた時のことしか考えないやる気のない態度で、「トライアンドエラー」が口癖の顧問・岩渕(山口達也)から追い出されてしまいます。ふてくされてこもった部屋で、古い和時計を見つけた将也は、中から「まさひさ」と書かれた紙片を見つけます。気がつくと、そこは江戸の人形師、源蔵(和田聰宏)の家。天保の改革で、からくり人形が贅沢品と見なされ禁止され、借金をかかえた源蔵は、からくり人形の勝負に挑もうとしていました。対戦相手の面堂麿郎左衛門(村上新悟)は、源蔵の娘・ひさ(吉本実憂)に惚れており、勝てなければ借金の肩代わりをする代わりにひさとの結婚を迫られます。面堂は、部下の忍者・まつ(矢島舞美)を使って源蔵たちを妨害してきます。しかもその勝負の裏には、人形嫌いの南町奉行・鳥居耀蔵(前川泰之)の陰謀が絡んでおり…。
 将也は元の時代に帰る鍵が和時計にあると考え、手掛かりを探して、金さん(実は北町奉行遠山金四郎・つるの剛士)に相談。和時計は鳥居が持っているようなのですが、近づけません。
 将也は面倒を見てくれた源蔵を手伝い、元気で明るいひさと話し、まつに脅されているうちに、だんだんと自分が見失っていたものに気づいていきます。
 
 

スペシャルドラマ大奥
   沢尻エリカ 主演   16年1月22日、29日放送   関西 夜9時から

 フジテレビの人気ドラマシリーズが、11年ぶりに復活しました。二週連続の、二部構成で11代将軍・徳川家斉の時代を描きます。第一部『最凶の女』は主演・沢尻エリカで、第二部『悲劇の姉妹』でも主演は沢尻エリカと蓮佛美沙子。沢尻エリカが正反対とも言える二人の女性を演じたことで話題の作品でした。
 第一部は、将軍徳川家の中で最多の子どもを作り、精力甚大なオットセイ将軍と呼ばれた家斉(成宮寛貴)の壮年期の話で、大奥史上最強の側室と言われたお美代が主役。智泉院の住職・日啓(田中要次)の娘として育ったお美代は、実は陰謀によって殺された先代将軍の娘でした。美しく育ったお美代は、その事実を知り、復讐のために大奥へ上がります。器量と、要領の良さと捨て身の度胸で、家斉の心をとりこにし、ゆるぎない地位へと上りつめますが、この世の栄華
を手に入れたはずのお美代の心には虚しさが巣食っていました。その虚しさを埋めてくれたのが、大奥の女中の中にありながら男女の色ごとに冷めているお志摩(渡辺麻友)でした。お志摩と過ごす時間で生きる幸せを感じられるようになったお美代でしたが、そのことで彼女の人生は思わぬ最期を迎えます。
 第二部は、性欲旺盛なれどもいまだに子に恵まれない家斉の青年期の話。美人姉妹と評される酒井忠康(温水洋一)の娘、梅(沢尻エリカ)と歌(蓮佛美沙子)は、家斉の前で舞を披露することに。控えめで優しい性格の梅は家斉に気に入りられ、激しい気性の歌は姉に強い対抗心を燃やします。大奥に召しだされ、やがて懐妊した梅。姉を見舞いに行った歌は、大奥で家斉に出会い、取り入ります。そして大奥に入った歌は、家斉の心を自分一人のものとしようと画策し、上りつめていく。だけどその強い嫉妬心はやがて自分の身も滅ぼしていきます。

 女の園・大奥のドロドロとした世界を描いて高視聴率を取ったこのシリーズ。今回も華やかな衣装や、荘厳な曲やナレーション、そしておなじみの鷲尾真知子山口香似「久保田磨希の奥女中トリオ「スリーアミーゴス」も登場しました。(16.4.22改稿)

番組公式サイト http://www.fujitv.co.jp/oh-oku/introduction.html

 
大奥〜最終章〜
   木村文乃 主演   19年3月25日放送   関西 夜8時から
 フジテレビ開局60周年記念作品として、2003年から続く『大奥』シリーズの最終章を3時間スペシャルで復活。
 久免は、紀州藩主・徳川吉宗(大沢たかお)の側室でありながら、次々と亡くなった吉宗の正妻や側室に代わって遺児たち三人の母として、吉宗の妻として、仲睦まじく暮らしていました。しかし七代将軍・家継が幼くして亡くなったため、吉宗が将軍になることに。向かった江戸城では、大奥という伏魔殿が、久免と吉宗を待ち構えていました。
 大奥を仕切っていたのは、六代将軍・家宣の正室だった天英院(鈴木保奈美)と、家宣の側室で家継の生母・月光院(小池栄子)。権力を手放したくない天英院は、吉宗に自分の息がかかった京から正室を迎えるように勧め、月光院は吉宗を篭絡しようと近づいてきます。また、見目麗しく政治手腕もある吉宗は、長らく成人男性を見ていない大奥の女性たちの憧れの的に。そんな中、吉宗は五代将軍の養女でひっそりと暮らす竹姫(浜辺美波)に心を寄せ、一方で、はずみで女中の多喜(岸井ゆきの)を懐妊させます。それはまた、新たな陰謀を引き寄せることになります。
 最終章ということで、過去のシリーズに出演した浅野ゆう子、谷原章介、北村一輝なども出演。おなじみの鷲尾真知子、山口香似「、久保田磨希の奥女中トリオ「スリーアミーゴス」ももちろん登場。豪華絢爛な衣装と居並ぶ美女に圧巻の、大奥シリーズの最後を飾るにふさわしい作品でした。
 
 
 
大奥スペシャル〜もうひとつの物語〜

  深田恭子 主演   06年12月29日放送   関西 夜9時から
 同時期に公開の映画『大奥』の関連作品で、映画のストーリーの三年前の話。
 六代将軍・徳川家宣の時代、武家の娘・三枝ゆき(深田恭子)は大奥へ奉公に上がることになった。「まん」と名を改められ、先輩女中のテレビシ
リーズでもおなじみの三人組に教えてもらいながら働くが、慣れない仕事とあって失敗も多い。そんな中、優しくしてくれたおしの(貫地谷しほり)と親
しくなる。
 そんな中、お毒見役が体調を崩す。新たなお毒見役を探していると聞いて名乗り出た、浦尾(久保田磨希)。山海の珍味が食べられると張り切る
浦尾だが、毒見の最中に胸を抑えて倒れる。その知らせを聞いて、上様に運ばれる膳を止めるため走ったおしのは、途中で上様とぶつかってしま
う。
 浦尾はいもをのどに詰まらせただけだったが、おしのは大奥取締の滝川(浅野ゆう子)に呼び出される。お手打ちになるかと思いきや、上様に見
初められたと、閨の相手を申し付けられる。だがおしのは、奥女中の下男の伸吉(吉沢悠)に恋文をもらって以来、彼に恋していた。おしのから話
を聞いたおまんは、恋していた男への想いを断ち切って大奥に上がった自らに重ね、おしのの文を伸吉に届ける約束をする。
 大掃除の最中、おまんは、滝川が隠されていた毒薬を見つけるのを見てしまう。毒薬の入っていた袋に、おしのの好きな侘助の花びらが入って
いるのを見て心配になったおまんは、こっそりと袋の中身を確かめに行くが、そこを滝川に見つかってしまう。
 滝川に詰問されたおまんはとっさに嘘をつくが、滝川に見抜かれ、上様を狙う者がいることを聞かされる。おしのの身の潔白を証明するためにお
まんは、滝川の部屋子となり、伸吉を調べることに。
 だが元は武士だった伸吉こそが上様の命を狙う者だった。五代将軍・徳川綱吉の時代に犬小屋の普請を命じられたが、将軍が代わり、財政建
て直しのために普請費用を踏み倒された主君の恨みを晴らすため、名を変え、大奥にもぐりこんだのだった。
 伸吉に頼まれたおしのは、上様の膳に毒を盛る。伸吉にお鈴廊下に追い詰められたおまんは、鈴の紐を引く。鈴の音で大事に気づいた滝川に
より、将軍毒殺は未然に防がれた。
 手に手を取り逃げた伸吉とおしのは、追っ手によって殺される。それから二年後、家宣は病で他界。滝川は御年寄となり、大奥取締には新たに
絵島(仲間由紀恵)が就く。

   市川海老蔵 主演   21年3月26日放送開始   関西 夜9時から
 十三代目市川團十郎白猿襲名記念特別企画として制作発表されたこの作品。本当ならば昨年の襲名披露公演に合わせての放送予定でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で公演が延期になったことに伴い、放送も延期になりました。その間、タイトルも何度か変更がありました。
 永禄3年5月19日、尾張の織田家領地である丸根砦を今川義元(三上博史)が攻撃します。織田家の総力二千ほどに対し、今川軍は二万五千。圧倒的な戦力差に、織田信長はどう作戦を立てて行ったのか。そして奇跡の大逆転劇はどのように起こったのか。桶狭間の戦いを時間経過順に描きながら、合間に織田信長の特徴的な過去のエピソードを挟み、覇王となる織田信長を描いた作品です。

 
鬼平犯科帳スペシャル〜雨引きの文五郎〜
   中村吉右衛門 主演   09年7月17日   関西 夜9時から

 おなじみ池波正太郎の人気シリーズの新作です。なんとシリーズ20年目突入。
 火付盗賊改方に、日本橋の足袋問屋「大野屋」に盗みに入るという文が届く。差出人の名は雨引文五郎(國村隼)。文五郎は仲間内から「すきま
風」とあだ名されるほどの凄腕の盗っ人で、盗った証に書付を残したり、以前にも江戸から離れる時に長谷川平蔵(中村吉右衛門)に文を送りつけ
てきたりと、人を食った盗っ人として、平蔵も知っていた。平蔵は大野屋の警護を固めてさせていたが、やってきたのは急ぎ働き専門の、落針の彦
蔵(菅田俊)一味だった。文は予告状ではなく密告だったのだ。平蔵は盗賊たちの仲間割れだとにらむが、理由が分からない。
 実は三年前、先代のお頭の跡目にと盗っ人たちから望まれた文五郎に、集会の後、跡目を狙っていた彦蔵が斬りつけたのだった。文五郎は逃
れたものの、すみかに帰ったとき、病の女房はすでに亡くなっていた。
 平蔵は、密偵の舟形の宗平(伊東四朗)の手を借りて、文五郎を捕まえる。宗平のたっての望みと、文五郎の人柄に触れた平蔵は、文五郎を密
偵にし、文五郎も平蔵に忠誠を誓う。だが文五郎は、平蔵たちが捕らえた盗っ人・犬神の権三郎(田中健)を牢から逃がす。裏切りか、訳があるの
かと悩む平蔵。
 文五郎は逃がした権三郎に、話をつけようと、待ち合わせ場所を伝える。2人は文五郎が三年前、人と組んだ最後の仕事の時の仲間だったの
だ。権三郎はその時、盗んだ金額を誤魔化しこっそり上前をはねており、それが文五郎にばれたのだと思い、文五郎を殺そうと、助っ人を雇う。そ
れを知った権三郎の女房で、文五郎の人柄に惚れているおしげ(賀来千香子)は、文五郎を助けるために、宗平を頼る。宗平は病と歳で弱った体
を押して、平蔵に知らせに行き、息を引き取る。
 突然、権三郎に襲われ、応戦しながら逃げる文五郎。文五郎の話とは、実は三年前亡くなった女房の最期に三両の金を都合してくれた権三郎に
恩を返し、火付盗賊改方の密偵になったことを伝えてけじめをつけることだったのだ。そこに平蔵ら火付盗賊改方が駆けつけ文五郎は助けられる
が、自分のせいで宗平を死に追いやり、また平蔵を裏切ったことを恥じて、自害する。
 今回の話は、実は第2シリーズ(1990年)に放送された『雨引の文五郎』と第5シリーズ(1994年)に放送された『犬神の権三郎』を2時間スペシャル
用にアレンジしたものでした。
 義理に厚く、水際立った技術を持ち、しゃれっ気のある雨引きの文五郎が文句なしにかっこよかったです。他の密偵たちも、おごらず、くさらず、
でも芯を持っていて、相変わらずかっこいいです。もちろん、彼らを信じて、盗っ人たちはもちろん部下たちをも出し抜く奇抜な作戦を考え付く鬼平
も、かっこよいです。
 
鬼平犯科帳スペシャル〜一寸の虫〜
   中村吉右衛門 主演   11年4月15日放送   関西 夜9時から

 大捕り物の最中、火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を狙った銃弾が放たれる。とっさに身を呈して鬼平を守ったのは、密偵になってまだ二年の仁
三郎(寺脇康文)だった。仁三郎の忠義に感動した鬼平は、命に別条はなかったものの身動きままならない仁三郎に、おまさ(梶芽衣子)をつけて
身の周りの世話をさせる。しだいに回復し、歩き回れるようになった仁三郎だが、ある日を境に様子がおかしくなる。実は昔の仲間である鹿谷の伴
助(北見敏之)から、昔の親分だった舟影の忠兵衛(三國連太郎)を襲うのに誘われたのだった。忠兵衛は、仁三郎にとって、鬼平と並んで大恩あ
ると感謝している人物。だが伴助は仁三郎の幼い娘を使って脅してくる。恩人二人と、娘の命に挟まれ、仁三郎は誰にも相談できずに、苦悩する。
 仁三郎の様子を心配するおまさは、密偵仲間の五郎蔵(綿引勝彦)に相談する。悩みを打ち明けない仁三郎に、五郎蔵は「迷った時は己を捨て
てしまうんだよ」と助言する。それを聞いて仁三郎はある決意を固める。
 一方、密偵の粂八(蟹江敬三)は、鬼平から命じられ、同心の富田庄五郎(原田龍二)を見張っていた。剣の腕を見込まれ三か月前に同心となっ
た富田には、病床の妻がおり、その薬代のために鹿谷の伴助の押し込みの手助けをしようとしていたことが、粂八の調べで分かる。
 突然いなくなった仁三郎を探すおまさたちは、粂八の話から、仁三郎の身に起きていることに気付く。だが鬼平たちが駆けつけたときには、すで
に手遅れだった…。
 仁三郎のまっすぐで義理がたい生き様が、悲劇の話ですが、清々しいとさえ感じられる作品でした。そんな仁三郎を育てた舟影の忠兵衛も、犯さ
ず殺さずの大盗賊として、出番は少なかったですが存在感がありました。

鬼平犯科帳スペシャル〜御厩河岸〜
   中村吉右衛門 主演   15年12月18日放送   関西 夜9時から 

 大滝の五郎蔵(綿引勝彦)と伊三次(三浦浩一)は袋叩きに遭っている老人(左とん平)を助ける。あとでその老人が伏木の卯三郎といい、大盗賊と知られる海老坂の与兵衛の一味だったことを思い出した五郎蔵。鬼平に報告し、今は鬼平の密偵になっている卯三郎の息子・岩五郎(田辺誠一)へ、何かあれば知らせるようにと言い含める。海老坂の与兵衛は押し入られたことに被害に遭った店が何日も気づかないほどきれいな仕事をし、まだ一味の誰も捕まったことがないという大盗賊だった。
 鬼平の密偵たちは卯三郎に近づき、次の仕事の情報を聞き出そうとするが、卯三郎は体を壊して引退しており、何も知らなかった。
 一方で岩五郎には、卯三郎を通じて海老坂の与兵衛(田村亮)から一度会いたいとのつなぎがあった。料亭で待っていた与兵衛は、岩五郎に、一味の錠前破りが仕事ができなくなり、代わりに次の仕事を手伝って欲しいと頼む。岩五郎は、与兵衛の懐の大きさと、与兵衛の示した珍しい錠前へ挑戦したいという思いが高まり、五郎蔵や鬼平に報告を怠ってしまう。
 岩五郎は、昔、世話になり、捨て子同然に丁稚奉公に出した親以上に恩を感じている五郎蔵に問いただされ、一度は与兵衛のことを告げ、与兵衛への手助けは断ろうとするが、与兵衛の丁寧に接してくれる人柄と、悪人しか狙わない矜持に惚れ、手伝うことを決めてしまう。
 そしてついに決行の夜が来る。岩五郎の作った鍵と腕で、見事に金蔵の錠前を外した海老坂一味。店の者に気づかれることなく、鮮やかに金を盗み出す。だが翌朝、彼らを待っていたのは鬼平の手下たちだった。与兵衛は見苦しい態度を見せることなく、静かに捕えられる。鬼平もまた、与兵衛ほどの盗賊を仕事の最中に捕えては名に傷が付くと考えての翌朝の捕物にしたのだった。
 海老坂の与兵衛の、密偵である岩五郎をも取り込んでしまう人柄の良さと、盗みの手口の鮮やかさが見事な話でした。

 番組公式サイト http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/pub_2015/151019-382.html

 

鬼平犯科帳スペシャル〜高萩の捨五郎〜

   中村吉右衛門 主演   10年6月18日放送   関西 夜9時から

 鬼平を恐れて今まで江戸では仕事をしなかった盗賊の頭・妙義の團右衛門(津川雅彦)がとうとう江戸にやってくる。鬼平にひと泡吹かせようと策
謀をめぐらす團右衛門に、鬼平は痛恨のミスを犯す。
 大店の内情や建物を調べて盗賊に売り渡す嘗め役を家業とする高萩の捨五郎(塩見三省)が江戸にいるのを偶然見つけた鬼平。跡を付けてい
る時に、捨五郎は侍に襲われている百姓を助けに入り、大けがを負う。鬼平は足が不自由になった捨五郎を自分の役宅に引き取り、養生させる。
やがて自分を助けた鬼平が火付盗賊改方の長官だと知った捨五郎は、命の恩人であり、見張りも付けずにいた鬼平に恐れ入り、密偵になると自
ら申し出た。
 3年後、捨五郎に、昔、組んで仕事をした團右衛門が声をかけてくる。最期の大仕事に江戸に出てきた團右衛門は、捨五郎を仲間に引き入れよ
うとしたのだが、ねぐらを聞いた時に捨五郎が一瞬言い淀んだのをいぶかしがり、捨五郎が鬼平と通じていることを知る。團右衛門は逆にそれを
利用して、鬼平の鼻を明かしてやろうと策を弄する。
 鬼平と團右衛門、捨五郎を挟んでの化かし合いは意外な結末を迎える。
 この團右衛門、肝の据わり方や頭の回転もなかなかのものながら、そうとうの女好き。老齢でありながら、茶屋の娘(遠山なぎこ)をべた惚れ(金
銭的な意味でも)にさせる手腕の持ち主。その濡れ場は、二人の演技も含めてなかなかの見どころでした。
 今回の話は第2シリーズ(1990年)の『盗賊二筋道』(原案『高萩の捨五郎』)と、第3シリーズ(1992年)に放送された『妙義の團右衛門』を2時間ス
ペシャル用にアレンジしたもので、ストーリーの妙味もさることながら、熟練の俳優陣の安定感と渋みのある演技が光る作品でした。

鬼平犯科帳スペシャル〜盗賊婚礼〜
   中村吉右衛門 主演   11年9月30日放送   関西 夜9時から

 大店から780両もの大金が盗まれる。店の者は朝になるまで誰も盗賊の侵入に気付かなかったという見事な手際だった。現場に残された傘の
絵から、12年前にも現れた傘山の弥兵衛という盗賊の仕業だと判明する。
 その傘山の2代目・弥太郎(市川染五郎)のところに、長嶋の久五郎(松平健)が訪ねて来る。名古屋を拠点とする鳴海の繁蔵(布施博)からの
使いで、旧知の間柄だった先代傘山の弥兵衛と鳴海の先代とが、自分の息子と娘を許婚とする約束をしたことについての返事を求めてきたのだ
った。父から遺言として許婚のことを聞いていた弥太郎は、繁蔵の妹・糸(黒川智花)を娶ることを承諾する。ただし、「殺さず、犯さず、貧しきからは
盗らず」を守っていた先代と違って、悪いうわさのある繁蔵とは、仕事の付き合いはしないと言い切る。
 立派に成長した弥太郎の姿を見て、返事を聞いた久五郎は人心地つく。久五郎はかつて先代傘山の女・お津世(白石美帆)と深い仲になってし
まい、それを許された恩があったのだ。今は足を洗い、お津世とひっそりと暮らしていたが、今度の件で一肌脱いで恩義に報いようとしていたの
だ。そしてその時こそ、晴れて自分たちも堂々と暮らせることになると。
 ひょんなことから盗賊宿を見つけ、江戸に来ていた久五郎とすれ違った鬼平。なにかを感じて調べて行くうちに、今度の婚礼のことを知り、一網
打尽にしようと婚礼の日まで泳がせておくことに。さらに調べるうちに、花嫁の糸は、すでに死んでいることが分かる。今度の婚礼は、傘山の一味
を乗っ取ろうとする繁蔵が糸の偽物を仕立てあげ、企んだことだったのだ。
 それを知った久五郎は、繁蔵の配下に斬られる。鬼平の密偵たちに助けられ手当てを受けるが、だまされている弥太郎の身を案じ、出て行って
しまう。久五郎のことを調べるうちにお津世の身の上に同情した伊三次(三浦浩一)の、お津世の元に帰ってやれという説得も虚しく…。
 鬼平の密偵を長らく務める伊三次をして、ただ者じゃないと言わしめた久五郎役の松平健が、さすがのはまりっぷりでした。大人しげで可憐な嫁
入り前の娘から、正体がばれた後のあだっぽい姐さんまで演じ分けた黒川智花もよかったです。

鬼平犯科帳スペシャル〜泥鰌の和助始末〜
   中村吉右衛門 主演   13年1月4日放送   関西 夜9時から

 腕のいい大工だった和助(石橋蓮司)は実は、盗られた本人が気付かない程見事にどこにでもするりと忍びこむすることから泥鰌の和助と二つ
名を持つ盗賊だった。今は引退し、子供の玩具を作って売っているはずが、盗賊の惣七(寺島進)に近づき、仕事の相談を持ちかける。
 和助の顔を見た鬼平は、昔の出来事を思い出す。若い頃グレて盗賊の仲間に入ろうとした鬼平を、すんでのところで止めたのが、和助だった。
 和助が狙っていると思われるのが大津屋。五年前に辞めた和助が盗賊に戻ってまで狙うわけは。
 盗賊でありながら、人間らしい心を持つ和助の人柄と、大工として大店に入り、人知れず仕掛けを施し、そして盗みに入るという何年もかけた鮮
やかな盗みの手口が見どころの作品でした。


鬼平犯科帳スペシャル〜引き込み女〜
   中村吉右衛門 主演   08年10月17日放送   関西 夜7時57分から

 1年半ぶりの新作です。今回の見どころは、なんといっても中村吉右衛門の甥・市川染五郎との初共演。染五郎は御典医の息子・玄庵を演じま
す。持前の正義感で、捕り物に半分押しかけ協力をするという役どころ。
 事件は、関東一円を荒らしまわっている盗賊の弥太郎(石倉三郎)の引き込み役の女・お元(余貴美子)を、平蔵の密偵の五郎蔵(綿引勝彦)が
見かけたことから始まります。ちょうど弥太郎一味が江戸に入るかもしれないから警戒を強めるよう触れが出た直後でもあり、お元が勤める袋物
問屋・菱屋が次の標的かと見て、平蔵らは見張りをつけるが、一向に尻尾を出さない。菱屋に潜り込んだ、同じく平蔵の密偵のおまさ(梶芽衣子)
は、お元を見ているうちに、菱屋の主人に言い寄られ苦悩する彼女に共感を覚え始めてしまう。そしてお元もまた、おまさに共感を覚えていく。
 繋ぎのつけ方が分からず、こう着状態のまま、時が過ぎる。焦り始めた平蔵だったが、奥方の一言でひらめきが。弥太郎の真の狙いは別の店、
両替商で、菱屋は目くらましだったのだ。
 お元が本当に引き込み女なのか、そうならば繋ぎは誰なのか、弥太郎の狙いは?という謎解きの面白さと、そして引き込み女というつらい職業
に身を置くお元とおまさの心の通い合い、そして鬼平の密偵の親分さんたち大集合が豪華な魅力の話でした。

鬼平犯科帳スペシャル〜密告
   中村吉右衛門 主演   15年1月9日放送   関西 夜9時から
 
 前作から約1年半ぶりの新作です。
 鬼平の手元に、盗賊が押し込む店の名を書いた密告が届く。届けたのは年増のいい女だった。お百(高島礼子)というその女は、鬼平が若い頃よく通っていた団子茶屋に勤めていた少女で、鬼平はなにかと気にかけてやっており、遊び人の侍にだまされて身ごもってしまったお百を、鬼平は持参金を持たせて農家に嫁がせた過去があった。そんなお百が、盗賊の押し込み先を知っていたのには訳があった。その後も不遇の人生を歩んだお百は、知らずに盗賊の頭に助けられ、彼女の一人息子は盗賊の二代目になっていたのだ。
 鬼平への恩義と、先代と違って急ぎ働きを好み、鬼平のいる江戸を荒らす息子(高橋光臣)への思いのはざまで苦しむお百に対し、鬼平はどう行動するのか。一人の女の悲しい生き様を描いた作品でした。
 
 
鬼平犯科帳〜見張りの糸〜
   中村吉右衛門 主演   13年5月31日放送   関西 夜9時から

 旧友の稲荷の金太郎(渡辺いっけい)と出会った小房の粂八(蟹江敬三)は、仕事の誘いを受ける。今、金太郎が仕えている二代目の貉の豊蔵
(木下ほうか)が押し入った先の人間を皆殺しにする極悪な盗賊だと知った鬼平たちは、豊蔵の一味を捕まえるため、金太郎が利用している盗人
宿の向かいの仏具屋の二階を借り、金太郎を見張る。そんな鬼平たちに困惑したのが、仏具屋の隠居・忠兵衛(中村嘉葎雄)。彼は実は昔、上方
で盗賊の頭をやっていた「堂ヶ原の忠兵衛」だった。
 金太郎が人殺しをするのではと心配な粂八は、金太郎の後を付けている時に見つかり、監禁されてしまう。粂八の行方が分からなくなり、焦る鬼
平たち。彼らに早く出て行って欲しい忠兵衛は、鬼平たちをひそかに手助けする。だがそんな彼を、過去の逆恨みから狙う者たちがいた。
 鬼平たち、貉の豊蔵一味、忠兵衛たちと、三組の思惑の絡み合いと、粂八と金太郎の友情の行方が、最後まで目を離せない面白さの作品でし
た。

 鬼平犯科帳 THE FINAL
   中村吉右衛門 主演   16年12月2日、3日放送   カンテレ 夜9時から
 28年という長きに渡り続いてきたシリーズでしたが、今回の二夜連続の前後編によってファイナルとなるそうです。原作者の池波正太郎の、原作にない話を作らないという希望のとおりに作ってきましたが、これ以上作り続けるのは難しいことや、出演者の高齢化などが理由のようです。
 前編は『五年目の客』。夏の暑い日、鬼平こと長谷川平蔵は、おまさ(梶芽衣子)と伊三次(三浦浩一)を連れて、船で涼みがてら市中見回りに出かけていた。そこで伊三次が見かけたのが、遠州の大盗賊・羽佐間の文蔵(吉澤健)の手下で、引き込み役の江口の音吉(谷原章介)。おまさが跡をつけると、音吉は船宿に入って行き、そこで丹波屋という旅籠の女将・お吉(若村麻由美)と逢引していた。鬼平は、文蔵が江戸で盗みを働くのではと、音吉を見張ることに。だがお吉との関係が分からない。おまさは、お吉が何か思い詰めているようだと感じ取るが…。
 畜生働きを主とする羽佐間一味には珍しく、性格の丸い男だと伊三次に称された音吉の、人懐っこくお調子者に見えるその本性の謎と、辛い過去に追い詰められるお吉の苦しさ、そして鬼平の名裁きが光る作品でした。
 後編は『雲竜剣』。前編にあった、鬼平の部下たちが襲われたり、斬られたりした事件に続いて、鬼平自身も襲われる。その刺客の剣法を、鬼平は昔、牛久で見たことがあった。そして翌日、鬼平の屋敷の門番までが切り殺されます。警戒を強め、対策に奔走する鬼平たちの心の隙を突くように、市中で凶悪な押込みが起こります。
 一方、一本うどん屋で、五郎蔵(綿引勝彦)は、近江に住む鍵師の助治郎(中村嘉?雄)と出会う。助治郎の跡をつけた鬼平たちは、助治郎が牛久の報謝宿に入って行くのを見る。貧しい者や行き場のない者を無償で泊めるその宿は、元武家の医者、堀本伯道(田中泯)が建てたものだった。
 鬼平を狙う刺客・石動虎太郎(尾上菊之助)と、堀本伯道とのもつれた関係、押込みの真相が絡み合う事件に、鬼平は粋な裁きを下します。
 最終回を飾るにふさわしい、中村吉右衛門と尾上菊之助の義理の親子対決など、重厚な見どころがたっぷりの作品でした。 
 
 
   松本幸四郎 主演   24年5月6日放送   関西 昼2時45分から
 新たに火付盗賊改め方に就任した長谷川平蔵。見回りに出かけた本所は、彼がまだ若く「本所の銕」と呼ばれた悪童だったころを過ごした土地でした。
そこで当時同じ道場で剣の腕を磨いていた岸井左馬之助(山口馬木也)と出会います。左馬之助は、道場の隣の屋敷に住んでいた娘・おふさのことを案じていました。
平蔵は同じく本所で出会った、昔の悪い遊び仲間だった相模の彦十(火野正平)に、おふさの行方を調べるように頼みます。
 実は平蔵と左馬之助は、かつて彦十に盗賊の助っ人に誘われたことがありました。彦十に連れられて会った、きれいな仕事をすると評判の盗賊の頭は、道場で二人に
剣を教えてくれている松岡重兵衛(松平健)でした。松岡は二人を叱り飛ばしてまっとうに生きるように諭し、道場から姿を消しました。
彦十が調べてきたところによると、おふさの家は金に困っており、おふさは大店・近江屋へ嫁に行ったものの、なかなか子ができず、やっとできた子は死産で、その後まもなく
店の主だった夫が亡くなり、跡を継いだ義弟に追い出されたとのことでした。行き場をなくしたおふさ(原沙知絵)は、やがて御家人の家へ嫁ぎますが、その家では賭場が開かれ、
人相の悪い男たちがたむろしているなど、不穏な雰囲気が流れています。そしてそこに松岡重兵衛がやってきました。昔、おふさは、左馬之助から松岡の話を聞いていたのでした。
 平蔵は松岡が新たに盗みばたらきをすると踏んで、見張りを続けます。平蔵は松岡たちを捕らえることができるのか。そしておふさへどのような裁きを下すのか…。
 時代劇専門チャンネルで1月8日に放送された鬼平の新シリーズ。主演を含めてキャストを一新し、火盗改めの与力たちに、佐嶋忠助(本宮泰風)、酒井祐助(山田純大)、木村忠吾(浅利陽介)、
沢田小平次(久保田悠来)、小野十蔵(柄本時生)、平蔵の妻・久栄(仙道敦子)などを配役。
 原作は池波正太郎の同名小説です。


 
御鑓拝借〜酔いどれ小藤次留書〜
   竹中直人 主演   13年1月1日放送   NHK 夜7時20分から

 若生藩の大名行列に突如乱入した一人の男(竹中直人)。『御鑓拝借』と掲げた男は向かい来る家臣たちを巧みにさばき、一直線に御鑓の元へ
向かい、その先を奪って逃亡する。
 御鑓は大名家の象徴ともいうべきもの。奪回を命じられた古田寿三郎(藤木直人)は、この事件の発端に、藩主が江戸城の控の間で同席の他
藩主に言った中傷があると知る。同じように御鑓を奪われた布杵藩家老・村瀬次太夫(高橋英樹)とともに、事件の解決を図る。
 一方、御鑓を奪われた時から男を追い続けた若生藩の下級武士・黒崎小弥太(辻本祐樹)は、男の行動を見ているうちにどうしても仇だとは思え
なくなっていた。男の正体は元・九重藩名江戸下屋敷の厩番の浪人、赤目小藤次。黒崎が聞き出した彼の目的は? 何を企んでいるのか?
 底辺の武士でありながら、たった二度言葉を交わしただけの藩主のため、命を賭けて三藩の大名家相手を敵に回した、一途な男の痛快かつ感
動の物語です。
 原作は佐伯泰英の『酔いどれ小藤次・御鑓拝借』です。

番組公式サイト http://www.nhk.or.jp/drama/oyari/

女信長
   天海祐希 主演   13年4月5日、6日放送   関西 夜9時から

 信長は女だった…?大胆な仮説の佐藤賢一の小説「女信長」をドラマ化。二夜に渡っての4時間を越える放送でした。
 母・土田御前(高畑淳子)の陰謀で、女でありながら嫡男として育てられた信長。しかし父の信秀(西田敏行)は、太平の世を築きたいと言った信
長の女ならではの発想に期待を寄せる。天下を取ることが自分の天命と信じ、必死に男として生きていく信長だが、次第にその重圧に耐えきれな
くなっていく。その時に彼女が選んだ道は? そしてそれを受け取った光秀が出した答えは?
 女でありながら男として生きた信長を、元タカラジェンヌの天海祐希が熱演。さすが惚れぼれとする男っぷりでした。そして妻として彼女を支え続
けた御濃に小雪、初恋の相手の浅井長政に玉山鉄二、野心を抱き信長の秘密を知った秀吉に伊勢谷友介、同盟の相手として幼少時より絆を結
んでいた家康に藤木直人、彼女の想いを受け止めた明智光秀に内野聖陽と、美男美女の多いキャスティングでした。
 信長の子供が出てこなかったりと、史実から大きく外れている部分もありましたが、娯楽作品として見ればツッコミどころ盛りだくさんで楽しく見れ
る作品だと思います。


隠密秘帖
   舘ひろし 主演   11年1月1日放送   NHK 夜7時20分から

 時は田沼意次の全盛時代。幕府内を収賄で汚し、息子・意知までを要職に就けた横暴ぶりに、反発勢力の陰謀が企まれる。江戸城内で意知が
切りつけられ、八日後に死亡。この刃傷事件の捜査に指名されたのが、下位の役職である御小人目付の中でも昼行燈と思われている神谷庄左
衛門。出世を望む性質ではないが、実直な庄左衛門は、命を賭けてこの役目をまっとうすると奮い立つ。真相は意知に遺恨ある佐野善左衛門の
乱心の末の横行と大方は見られていたが、庄左衛門が調べていくうちに、その裏にある陰謀が隠されていることに気付く。だがそんな庄左衛門に
は刺客がさし向けられていた。
 神谷庄左衛門、昼行燈と思われてはいるが、それは出世を望まず分をわきまえた勤めをしていたためで、実はかなりの切れ者であり、剣の腕も
立つ。信条もなかなかのもので、まだ幼子の次男・又十郎(濱田龍臣)への教えのシーンはなかなかの見どころでした。
 特殊な力を持つわけでもない主人公たちが淡々と調査を重ね、事件の真相へと迫っていく話の進め方が、非常に面白く見れました。
 この話で生き残った神谷庄左衛門の遺子・又十郎を主役に35年後の話として、主演・舘ひろしそのままで土曜時代劇『隠密八百八町』へと続きま
した。(11.2.16改稿)

 

陰陽師
   
市川染五郎 主演   15年9月13日放送   ABC 夜9時から

 長年に渡る夢枕獏の大ベストセラーを、市川染五郎主演で映像化。陰陽道の天才でありながら世間とは離れた暮らしを好む安倍清明を演じます。その相棒であり、あまりの力に人ではないと噂される清明が唯一の友とする、武家でありながらも音曲を愛する笛の名手・源博雅には堂本光一。妖しげで茶目っけのある声明と、繊細そうな外見と俊敏な殺陣が得意な博雅、今までにない斬新な『陰陽師』コンビでした。
 村上天皇の座する平安京。火事で焼失した内裏の再建を祝う宴で笛を奏でる博雅と、博雅に誘われ出席した清明。博雅たちの奏でる曲に合わせて舞を見せた白拍子・青音(山本美月)の美しさに、博雅は心を奪われる。
 青音に会いたいと家に伝わる橘林の笛を吹く、博雅の前に、笛の音に誘われるように青音が現れる。青音の住まいを聞き出した博雅だが、そこには牛車が押し寄せていた。青音に一目惚れしたのは博雅だけではなかったのだ。宴に列席したいた時の権力者・藤原の一門に連なる人々もまた青音に焦がれ、住まいに押しかけていた。だが彼らが次々と不穏な死を遂げていき、その解明を、清明は頼まれる。そんな清明の前に、蘆屋道満(国村隼)が現れ、邪魔をするなと脅す。
 清明は藤原一門が次々と殺される事態を収め、藤原氏に縁のある博雅の命を救うことができるのか。悪霊や怨念が渦巻く平安京を舞台に、清明と博雅の活躍が描かれます。

番組公式サイト http://www.tv-asahi.co.jp/onmyoji/

 
 
   佐々木蔵之介 主演   20年3月29日放送   ABC 夜9時から
 世界中で人気があり、過去に何度も映像化されている夢枕獏の怪奇小説。テレビ朝日では5年ぶりのドラマ化です。
 安倍清明のところに、怪異の相談が舞い込みます。被害に遭っている人たちの共通点は、20年前に起こった平将門の乱で将門(菅田俊)討伐に関わった者だと気づいた清明。蘆屋道萬(竹中直人)の、このままだと都を滅ぼす程の被害が出るという忠告を受け、清明は友人の源博雅(市原隼人)とともに、事件解明に動きます。20年経った今、なぜ将門の関係する事件が起きているのか、そしてその目的は…?
 人並外れた陰陽師の力を持つ安倍清明を佐々木蔵之介、まっすぐで優しい心を持つ笛の名手の源博雅を市原隼人が演じました。そして二人に関わり、また将門とも大きな関わりを持つ娘を剛力彩芽など、その他適材適所な配役でした。超常現象の演出も違和感なかったです。
 原作は夢枕獏の小説『陰陽師』シリーズの中の『瀧夜叉姫』です。
 


新・御宿かわせみ
   真野響子 主演   19年1月1日放送   サンテレピ 昼1時から
 1980年から1983年までNHKで放送された『御宿かわせみ』の続編にあたる単発ドラマです。2013年にBSスカパー!、時代劇専門チャンネルで放送された作品の地上波放送です。
 御一新から5年、かわせみは変わらず営業を続けていました。ある夜、医者の神林麻太郎(渡辺大)と畝源太郎は切られた若侍(三浦貴大)を助けて、かわせみで養生させることになります。若侍は初めは事情を話しませんでしたが、るいの夫である神林東吾(小野寺昭)が、幕末の戦の時に榎本武明の命令で乗りこんだ輸送船・美賀保丸が遭難し行方不明になっていることを知ると、心を開き、小林嶋次郎と名乗ります。彼の母親は使用人と密通し、それを知って激怒した父親を返り討ちにして、家を出ていたのでした。嶋次郎は父の仇を討とうとし、切られたのでした。その一方で、源太郎は、元同心だった父親が銃撃された事件をずっと探っていて、その下手人が嶋次郎の仇と同一人物だったことが分かります。
 一方で、るいは、幕軍として戦に加わっていた嶋次郎から、遭難した美賀保丸から助けられた兵士たちが手当されていた寺の話を聞きます。その寺に向かったるいは、東吾が生きており、頭に怪我をして記憶を失ったらしいことを知ります。
 登場人物たちの抱えている悲願が、絡み合いながら解決していく話でした。
 
 
影武者・徳川家康

   西田敏行 主演   14年1月2日放送   大阪 夕方6時から

 徳川家康は関ヶ原の合戦の前と後とでは性格がずいぶんと変わっている。もしかすると別人と入れ替わったのでは?という大胆な仮説を元に描
かれた作品。原作は隆慶一郎の『影武者徳川家康』です。
 関ヶ原の合戦の直前、西軍の島左近(高橋英樹)から、東軍の大将・徳川家康の暗殺を頼まれた甲斐の六郎(高橋光臣)。東軍の兵に変装し家
康の陣幕に入った六郎は、家康が二人並んで座っているのを見る。二人は瓜二つだが、一人は影武者。六郎は、家康は苛立つと爪をかむ癖が
あると聞いたことがあるのを思い出し、本物の家康を強襲する。家康の側近・門奈助左衛門(石倉三郎)はとっさに、討たれたのは影武者だと言
い、影武者だった世良田次郎三郎に本物のふりをすることを命じる。おかげで合戦はなんとか東軍の勝利で終わる。
 戦が終わり、次郎三郎は本物の家康を演じるという重役に耐えかね、もう辞めたいと主張するが、本多正信(目黒祐樹)ら重臣に、今、家康が死
ねば世の中は関ヶ原の前の戦国時代に戻ってしまうと説き伏せられ、その後も家康を演じ続けることに。だまし続けることが不可能だと思われた、
お梶の方(観月ありさ)を初めとする側室たちと、息子の秀忠(山本耕史)にだけは打ち明ける。側室たちは次郎三郎の飾らない人柄を知り、変わ
らず側室を続け力になってくれるが、元々偉大な父を恐れていた秀忠は次郎三郎を父とは認めず、野心を抱き始める。
 次郎三郎は、敗軍の将となり捕らえられた石田三成(及川光博)の遺言もあり、幼い豊臣秀頼を殺すには忍びないと考えるが、秀忠は違った。天
下を二分する豊臣家が滅びれば家康が生きていなければいけない理由もなくなり自分も殺されると悟った次郎三郎は豊臣との共存を目指すが、
天下を我がものにしたい秀忠は豊臣の滅亡と次郎三郎を亡き者しようと暗躍し始める。次郎三郎と、側室たち、豊臣家、真相を知る島左近、秀忠
と、出世を望む柳生一族と、それに忍びの風魔一族まで出てきて、それぞれの駆け引きが絡み合い、時代は進み始める。果たして次郎三郎の運
命は?
 よく知られた歴史を、仮説を元に裏側から再構築した大河ドラマ。一挙5時間の放送でした。


かげろう絵図
   米倉涼子 主演   16年4月8日放送   関西 夜9時から
 
 松本清張原作の時代サスペンスをドラマ化した、松本清張スペシャルの作品です。
 徳川家斉(津川雅彦)は、将軍を退いた後も大御所として政権を握っていた。その家斉からもっとも寵愛を受けていた側室・お美代の方(中村優子)と養父・中野石翁(國村隼)は、権勢を欲しいままにしていた。
 縫の父親は中野に目をつけられ無実の罪を着せられ処分され、身を寄せていた島田新之助(山本耕史)の父親もまた同じ目に遭う。不正のはびこる大奥を粛清したいと考える脇坂安薫(竹中直人)は、縫を大奥へと入れ、不正の証拠を手に入れようとする。一方で、武士の道を諦め、三味線の師匠・豊春(夏川結衣)の元で闇医者をしていた新之助も、中野の陰謀へ近づいていく。
 愛しく思う新之助への恩返しのため、機転を利かせ、身体を張って大奥で出世し、陰謀に近づいていく縫の活躍を描いた作品でした。
 
 
陽炎の辻・スペシャル
   山本耕史 主演   09年1月3日放送   NHK 夜9時から

 11月まで放送されていた『陽炎の辻〜居眠り磐音江戸双紙』の90分スペシャルです。
 時は今津屋吉右衛門(渡辺いっけい)がお佐紀(北川弘美)と再婚する少し前なので、ちょうど第2シリーズ中の話になります。
 街中で難癖をつけて暴れていた旗本を諌めた磐音とおこん(中越典子)たちは、その騒動で怪我をしたお絹(檀れい)という女を助ける。ところが
顔を見てびっくり、彼女は吉右衛門の亡くなった愛妻のお艶に瓜二つだった。
 一方、江戸城の石垣修理を命じられた藩から借金の申し入れを受けた今津屋は、伊豆の石切り場まで出向くことになる。旅の途中だったお絹
が、伊豆に向かっていたと聞いて、吉右衛門は同行を申し入れ、貸金六千両の運搬に用心棒に雇われた磐音、品川柳次郎(川村陽介)、竹村武
左衛門(宇梶剛士)、そしておこんの6人で伊豆に向かうが…。
 お佐紀との縁談が決まっている吉右衛門が変な気を起こさないように気をつけるよう、元締めの由蔵(近藤正臣)から言い含められていたおこん
だったが、お絹はもっと大きな秘密を持っていた。石切り場にはびこる不正の影や、六千両を狙う盗賊など、旅は大波乱となる。 
 伊豆への旅がメインの話とはいえ、レギュラー陣総出演の今回のスペシャル。30分に短縮となった通常シリーズにも劣らない密度の濃い90分
で、まさにスペシャルな見ごたえでした。今宵も坂崎磐音の居眠り剣法が光る! しかもスペシャルらしく3回も。

陽炎の辻スペシャル 海の母
   山本耕史 主演   10年1月1日放送   NHK 夜7時20分から

 昨年夏に放送されたシリーズ三作目の続編であり、正月時代劇に二年連続登場となる『陽炎の辻』のスペシャルドラマ。
 佐々木玲圓(榎木孝明)の養子となり、おこん(中越典子)とともに佐々木道場で暮らすようになった、坂崎改め、佐々木磐音。髪型も変わり、剣
の修業に励む平穏な日々。
 だが、御家人である品川家の家督を継いだ柳次郎(川村陽介)が訪れた旗本の設楽家で、惨事が起こった。かねてから酒乱の夫から浮気を疑
われ、暴力を振るわれていたお彩(水野美紀)をかばった、彼女の幼なじみである佐江傳三郎(山口馬木也)が、主に斬りかかられ、返り討ちにし
てしまったのだ。お彩はその場で切腹しようとした傳三郎の命を助けるため、その手を取って出奔してしまう。残されたのは設楽家の嫡男、13歳の
小太郎(須賀健太)。設楽家を存続させるためには、小太郎は父の敵となる、実の母・お彩と、彼の剣の師匠・傳三郎を討ち取らねばならない。小
太郎を助けるように申しつけられた磐音は、柳次郎、竹村武左衛門(宇梶剛士)とともに、小太郎を連れて敵討ちの旅に出る。母への思慕と、むご
い宿命と、旗本の使命との間で悩む小太郎に、磐音は、武士にはやらねばならぬときがあると、道を諭す。
 金兵衛長屋の住人たちなど、おなじみの面々も登場です。
『陽炎の辻』シリーズは、今回でいったん終了との噂。磐音は、小太郎は、この始末をどう付けるのか。75分の拡大版です。
 
 
陽炎の辻・完結編
   山本耕史 主演   17年1月2日放送   NHK 夜9時から
 坂崎磐音は、結婚したおこん(中越典子)との間に空也という息子もでき、道場主として息子や多くの門弟たちに剣を教える日々を過ごしていました。その道場に、徳川吉宗の孫である松平定信(工藤阿須加)がやってきます。剣の腕に自信のあった定信は、磐音に手合わせを願い、軽々と打ちのめされ諭されたことで、磐音に弟子入りをします。しかしそのことが、定信を政敵として疎ましく思っていた、時の権力者・田沼意次(長塚京三)の耳に入ります。磐音にとって田沼意次は、剣の師である佐々木玲圓(榎木孝明)の仇とも言える人物でした。そして田沼からの刺客が、磐音の道場に送られてきます。
 そのころ、田沼意次の嫡男・意知(滝藤賢一)から家系図を理不尽に奪われた佐野善右衛門(山崎銀之丞)は、外出中の意次に直談判に出ました。意次の家来に切り殺されようとなったところに、磐音は偶然通りかかり、助けます。そして命を狙われている佐野を、定信が屋敷に預かることに。しかし田沼親子に恨みを持つ佐野は、定信に、共に田沼を成敗したいと語りかけます。師である磐音に逸ってはいけないと諭されていた定信も、繰り返し佐野から乞われ、竹光しか持たない佐野へ自分の脇差を貸し与えてしまいます。佐野は城内で、意次に切りつけ、かばった意知が命を落とします。定信の付き人・弥助(小林隆)から事態を聞かされた磐音の機転で、定信への害は免れます。そして磐音は単身、田沼意次の元へ赴きます。
 妻と子、守り育てていくものを手にしたことで、より強さと優しさが深くなった磐音と、次々に襲い来る田沼からの刺客との死闘、そして磐音が師として説く本当の強さなど、完結編にふさわしい見どころの詰まった作品でした。
 
 
 
風の市兵衛SP〜天空の鷹
   向井理 主演   20年1月3日放送   NHK 夜9時から
 2018年5月から放送された『そろばん侍 風の市兵衛』のスペシャル版です。
 目付の家に産まれ、剣の達人ながら、幼少の頃から上方で商人の修業を積んだ変わり者の唐木市兵衛。そろばんの腕を活かし、期間限定で武士の家の家計を預かる渡り用人として生計を立てています。
 いつものように市兵衛が、懇意にしている用人斡旋所である「宰領屋」の矢藤太(渡辺いっけい)の店にいると、陽光を背に1匹の鷹が。鷹と見間違えたのは、老侍・中江半十郎(寺尾聡)でした。彼はそろばんのできる者を探していますが、その仕事には剣呑な事案があり、難航していました。市兵衛は自ら志願して中江の家に仕えます。
 かつて「相馬の鷹」と呼ばれ、剣術道場を開いていた中江は、北相馬藩の勘定方をしていた息子の急死した真相を探ろうとしていました。中江と市兵衛は、残された帳簿と関係者から話を聞くうちに、北相馬藩の陰謀に近づいていきます。そして罠と分かりながら飛び込んでいった先では、死闘が…。
 推理あり、殺陣ありの90分スペシャルでした。
 
連続ドラマの紹介はこちら
 
 番組紹介サイト https://www4.nhk.or.jp/P5966/
 

 

 

十八代目・中村勘三郎大型時代劇
河井継之助〜駆け抜けた蒼龍・激動の幕末、北国にいたもう一人の坂本竜馬
 中村勘三郎 主演   05年12月27日放送   読売   火曜夜9時から
 幕末の長岡藩にいた実在の人物・河井継之助の生涯をつづった歴史ドラマ。日本が薩長を中心とする官軍と、会津を中心とする旧幕府軍とに
分かれて戦っていた時代、先進的な目を持った継之助は、長岡藩をスイスのような中立国として存続させようと奮戦する。
 時代劇というより、淡々と歴史を追ったドキュメンタリーのような側面が強い作品でした。その分、登場人物が多くて豪華な感じはしましたが、ドラ
マとしては物足りない感じがしました。坂本竜馬(唐沢寿明)に銃の重要性を教えた、という演出は少しだけ嬉しかったですが。
「民は国の本 吏は民の雇い」を信条とし、身分のない時代が来ると予見していた継之助。その意思を尊重し、ロールエンドが50音順だったのは、
なかなかうまいと思います。

国盗り物語
 北大路欣也 伊藤英明 渡部篤郎 主演   05年1月2日   テレビ大阪
 司馬遼太郎の原作を、正月恒例の10時間ぶっ続けドラマ化。
 戦国時代ものというと、よく織田信長に焦点をあてがちで、斎藤道三というと、その信長を最初に認めた武将で序盤で死亡、明智光秀は途中で
いきなり出てきて信長の家来になり謀反を起こす、という描かれ方が多いと思いますが、この作品はまったく逆。三人の焦点のあて方の比率が、
多いほうから道三、光秀、信長となってます。また役者の力量もちょうどその順番なので、気持ちよく見れました。
 道三は昔から英傑だと言われてたわりにあまり描かれてなかったのがしっかりと、また光秀が斎藤家に深い縁があったというのが、勉強になりま
した。私は信長好きなので光秀は嫌いなんですが、この作品に限っては光秀にもけっこう感情移入できて、いい奴だと思っちゃいました。
 北大路欣也が英傑・道三を貫禄たっぷりの安定した演技でかっこよく演じているのはもちろん、『北条時宗』で不遇の兄を好演していた渡部篤郎
の、才能はありながらも恵まれなかった光秀がまたぴったり。伊藤英明は若さで勝負、うつけ者時代の信長が年齢的に無理がないのがうれしかっ
たです。(05.12.19)

眩(くらら)〜葛飾北斎の娘〜
   宮アあおい 主演   17年9月18日放送   NHK 夜7時30分から
 江戸の天才浮世絵師・葛飾北斎(長塚京三)。その娘・お栄は、母の小兎(余貴美子)には女としての幸せをと望まれますが、なにより絵筆を持つことが好きで、嫁ぎ先から戻ってきてしまいます。父のそばで仕事の手伝いをしながら絵の修練を続ける、その身なりを構わない姿に、小兎は嘆きますが、お栄は気にしません。絵師の名声を欲しいだけ手に入れた北斎ですが、それでも飽きることを知らず、もっとうまくなりたいと貪欲に上を目指し続け、卒中で倒れてもその意欲は衰えません。そんな父のそばで、父の技量には届かないと思い知らされながらも、お栄もまた修練を重ねていきます。やがてお栄は光を描きたいと願うようになり、「影が万事を形づけ、光がそれを浮かび上がらせる。この世は光と影でできている」と気づきます。お栄にとって父親は眩しくて手の届かない存在でしたが、お栄自身もまた、そんな存在へとなっていました。
 起伏に富んだ物語ではなく、派手な殺陣もない作品ですが、目を離せない、引き込まれる力のある作品でした。絵でなくても何かに打ちこんだことのある人なら、葛飾親子の純粋でひたむきな生きざまに、感じるところがあると思います。
 
 番組公式サイト http://www.nhk.or.jp/dsp/kurara/
 
剣客商売スペシャル 道場破り
   藤田まこと 主演   10年2月5日放送   関西 夜9時から

 ご存じ池波正太郎の、太平の世において剣は商売と割り切り飄々と生きる老剣士・秋山小兵衛を描いた代表作『剣客商売』、約二年ぶりの新作
です。
 出入りの大工・正吉(本田大輔)が病に伏せ、雨漏りに悩ませられる大治郎(山口馬木也)と三冬(寺島しのぶ)の夫婦。正吉を見舞った三冬は、
正吉とその妻・おしの(星野真里)の生活が苦しいことを知る。一方、大治郎が旧交のある道場を訪ねている時、道場破りが現れる。鷲巣見平助
(中村梅雀)という珍しい名のその浪人は、かなりの腕であったが、大治郎と立ち会った後、潔く負けを認める。そのころ小兵衛もまた鷲巣見と出
会っていた。
 本名を隠して話をする小兵衛に、鷲巣見は道場破りをして稼いだ金をおしのに渡してほしいと頼む。おしのは夫の薬代の借金で身を売られそう
になっていた。実は鷲巣見はおしのの父親だと話す。昔、剣の道を志した鷲巣見は、妻と幼いおしのを残して剣術修行の旅に出たのだった。身を
立てて帰ると約束しながらも、月日は流れ、苦労を重ねた妻は亡くなり、おしのは父のことを恨んでいた。
 心残りだった娘を助けることができた鷲巣見は、名高い剣客の息子・秋山大治郎に果たし合いを申し込む。だがその鷲巣見に、以前道場破りを
され恥をかかされたことを恨みに思う道場の者たちが徒党を組んで迫っていた。
 大治郎と三冬、正吉とおしの、その両親夫婦、そして小兵衛と大治郎、鷲巣見とおしのという、二組の親子夫婦の物語と、そして温和な人柄の奥
に剣客の心と後悔を秘めた鷲巣見平助という男の生きざまを描いた話でした。

剣客商売 御老中暗殺
   北大路欣也 主演   12年8月24日放送   関西 夜9時から

 おなじみ池波正太郎の代表作『剣客商売』の映像化四作品目です。以前から主役・秋山小兵衛を演じていた藤田まことが亡くなったのに伴い、
全キャスト一新となりました。
 小柄という設定のある小兵衛を演じるのに、北大路欣也では貫録があり過ぎるのではないかと見る前は思っていましたが、色気も洒落っ気もあ
る老剣客のイメージにうまく合わせてました。さすがです。その息子・秋山大治郎(斎藤工)も、剣のことしか頭にない世間知らずの純真青年といっ
た風で、なかなかいい感じでした。男装のヒロイン・佐々木三冬(杏)も、プライドが高く素直でないが、かわいい一面もある感じがよく出ていました。
おはる(貫地谷しほり)、四谷の弥七(山田純大)、田沼意次(國村隼)は、文句なしの安定感です。
 ストーリーも最初に戻って、小兵衛と田沼意次が出会うきっかけとなった事件の話でした。
 武者修行から帰って来た大治郎は、御前試合で活躍をする。その大治郎の道場を、後日訪ねてきた侍があった。用件は、ある者の両腕をへし
折ってほしいとのこと。大治郎はその場で断る。大治郎からその話を聞いた小兵衛は、気になって事情を調べる。それは今をときめく老中・田沼意
次の隠し子・佐々木三冬の縁談に関わるものだった。女だてらに剣を遣う三冬は、縁談相手に自分より強いことという条件を出していたのだ。彼女
の身を案じた小兵衛によって、三冬は危ないところを助けられる。
 その一件から、小兵衛を慕うようになった三冬は、薬の包みを持って小兵衛に相談に現れる。その包みは毒薬で、父が命を狙われているかもし
れないというのだ。突然通ってくるようになった三冬に、小兵衛のお手付きとなっていた下女のおはるは気が気でない。小兵衛に祝言を迫る。
 弥七の手伝いもあって、田沼の命を狙っているのが徳川御三卿の一つ、一橋治済(神保悟志)だと付きとめた小兵衛は、あとの処理を田沼に任
せ、事件は収束する。田沼は小兵衛に礼を言いに現れ、そこで小兵衛は、おはるを嫁になる者だと紹介したのだった。

剣客商売〜剣の誓約
   北大路欣也 主演   13年12月27日放送   関西 夜9時から

 主演が北大路欣也に変わってからの二作目です。
 秋山小兵衛の同門で、大治郎(斎藤工)の武者修行先での師だった嶋岡礼蔵(林隆三)が、大治郎の道場を訪ねてくる。彼は二十年前に交わし
た真剣での試合の約束を果たすために江戸に出てきたという。嶋岡の使いで、試合の相手・柿本源七郎(金田明夫)を訪ねた大治郎だったが、柿
本本人には会えず、弟子の伊藤三弥(浜田学)を通して手紙の返事をもらう。実は柿本は病で床に伏していたのだった。
 老齢の身から死を覚悟して試合の日までを過ごす嶋岡が、襲撃され、殺される。襲ったのは、敬愛する柿本を死なせたくないあまり卑怯な行動
に出た三弥だった。それを知り自害した柿本を、秋山親子に殺されたと誤解した三弥は、二人を仇として恨みを募らせる。
 小兵衛とおはる(貫地谷しほり)が熱々だったり、 三冬(杏)のいる田沼道場に大治郎が師範代として出向くことになったりと、二世代の恋愛模
様も少し進展しました。

剣客商売〜鬼熊酒屋〜
   北大路欣也 主演   14年8月8日放送   関西 夜9時から

 池波正太郎の人気同名小説の、北大路欣也のシリーズ三作目です。「鬼熊酒屋」と「三冬の縁談」をベースにした話でした。
 自分より強い男としか結婚しないと公言した三冬(杏)に、立ち会いが申し込まれる。相手は、身分申し分ない相手で、剣術修行に出るほどの剣
術好き。三冬から立ち会いの話を聞かされた大治郎(斎藤工)は、心穏やかではないが、それを口にはしない。小兵衛はそんな大治郎にやきもき
する。一方、三冬の父の田沼意次(國村隼)も、三冬に心に決めた男がいるようだとは思うが、本人が口にしないので、やきもきしている。
 立ち会いの日が迫る中で、小兵衛は友人の小川宗哲(古谷一行)から、面白い酒屋があると教えられる。店の親父の口が大層悪いが、味もいい
ため、人気の店だと言う。その店は評判どおりで、小兵衛も気に入るが、その親父・熊五郎(石橋蓮司)が、人知れずせき込み、血を吐いていると
ころを見てしまう。だが熊五郎は娘夫婦に意地を張り、病を隠していた。そこには熊五郎が墓まで持って行くと決めた深い事情があった。
 大治郎の道場を訪ねた小兵衛は、たまたま大治郎の名を訪ねてきた大久保平蔵(平岳大)という剣客に、大治郎と間違われ、一手立ち会いを申
し込まれる。その平蔵こそ、三冬の縁談相手だった。小兵衛は平蔵を打ち負かしてしまう。
 お互いに憎からず思っているのに、進展しない三冬と大治郎に対し、小兵衛が何もしないことをおはる(貫地谷しほり)に怒られ、小兵衛はあっち
にこっちに忙しい話でした。

 
剣客商売〜陽炎の男〜
   北大路欣也 主演   15年9月11日放送   関西 夜9時から

 北大路欣也の剣客商売、第4弾です。
 三冬(杏)が寝起きしている母親の実家の和泉屋の寮に、押し込みが入る。撃退したものの、理由がわからず、三冬は大治郎(斎藤工)に相談。大治郎が泊まり込みで警護することとなる。一方、小兵衛はごろつきに襲われている若侍を助ける。彼は、昔、小兵衛の道場の門弟だった村松左馬之助の息子・伊織(
窪塚俊介)だった。伊織は甘味処で知り合った娘・お照(小林涼子)と恋仲になったが、彼女は、仲間からも一目置かれる香具師の元締め・鎌屋辰蔵(柄本明)の一人娘だった。お照を傷物にされたと、辰蔵から伊織は命を狙われていた。
 いい加減な気持ちで付き合い始めたわけではないけれど、腰が座らない伊織と、お互いを想いながらも全然通じない大治郎と三冬、若者たちのために一肌脱いだ小兵衛の話でした。
 原作は、池波正太郎「陽炎の男」・「嘘の皮」です。

番組公式サイト http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/pub_2015/i/150821-i153.html

 
 
剣客商売〜手裏剣お秀
   北大路欣也 主演   18年12月21日放送   関西 夜9時から
 北大路欣也の剣客商売、三年ぶりの五作目です。
 梅雨の季節、小兵衛は家の雨漏りに困りながらも、おはる(貫地谷しほり)と仲良く暮らしていました。そんな梅雨の合間のある日、田沼意次(國村隼)の屋敷に立ち寄った小兵衛は、桑名藩主の松平下総守(市川右團次)と出会います。下総守は、八年前に自国で起こった二つの剣術の流派の決闘の仕置きが正しかったのか悩んでいると、小兵衛に漏らします。
 一方、大治郎(斎藤工)の弟子・粂太郎(内野謙太)は、友人の長屋に泊まった夜、隣の部屋で男数人が、道場主の女を襲う計画について話し合っているのを聞いてしまいます。粂太郎から相談を受けた大治郎は小兵衛に相談し、小兵衛はその女剣客に会いに行きます。そして彼女が、桑名藩で八年前に起こった決闘で勝った、一刀流の杉原佐内の娘・秀(比嘉愛未)であることを知ります。お秀は数か月前に亡くなった佐内の跡を継いで、剣術道場の師範をしていました。その一方で大治郎は、お秀を狙っているのが、彼が出稽古に行った三木道場にいた、加藤勝之助(松田悟志)たち旗本の三人だと気づきます。実は数日前、町人や百姓たちに剣術を教えている女がいるという噂を聞いた加藤たちは、道場破りに行き、お秀の放った『蹄』という手裏剣で、三人とも返り討ちに遭ったのでした。
 目明しの弥七(山田純大)と共に、お秀の道場を守ろうとしていた小兵衛。しかし襲撃に現れたのは、加藤たちではなく、八年前に杉原に敗れた東軍流の野口甚太夫の長男・野口平馬(波岡一喜)と門弟たちでした。
 八年前の遺恨が交錯するストーリーと、かわいい顔をして恐ろしい手裏剣を使うお秀の凛々しい姿が見どころでした。
 原作は同名の「手裏剣お秀」です。
 
 
 

   北大路欣也 主演   20年3月13日放送   関西 夜8時から
 浅草まで友人の墓参りに出かけた小兵衛は、四谷の弥七(山田純大)から近くで起こった僧侶の辻斬り事件の話を聞きます。近頃、空き家になっている百姓家に怪しい浪人たち集まっており、彼らが下手人だと思われるとのこと。弥七の手下たちが彼らを見張っていると、浪人たちは大治郎(高橋光臣)の道場を訪ねた男を狙っているとの話が聞こえてきます。
 狙われている男は、大治郎が諸国を修業の旅で回っていた時に、大坂の道場で出会った浅岡鉄之助(内田朝陽)という剣客。明朗で細かいことを気にしない気のいい人物で、話を聞いた大治郎は、人から恨みを買うような人間ではないと言い切ります。浅岡は、今江戸で食客をしている道場主から養子縁組と仕官の勧めを受け、その相談に大治郎を訪ねたのでした。大治郎は自分を親友と呼んでくれた浅岡を守るため、金をかき集め、懇意にしている出稽古先の三冬(瀧本美織)からも五両もの借金をして、その金で弥七に浪人たちを調べてくれるように頼みます。そして浪人たちの首謀者である平山市蔵(谷田歩)が、まだ腕の立つ浪人を集めていると知り、浪人に化けて仲間に入り込みます。平山は元は大坂の名のある道場にいましたが、強姦しようとしたところを浅岡に止められ奉行所に付き出されたことを逆恨みしていたのでした。
 小兵衛はすべてを大治郎に任せ、今回の事件には手を出しませんでしたが、影ながら見守り、決着の時には駆けつけ助太刀します。
 浅岡は無事に道場の高弟の娘と祝言を上げ、養子となります。祝いの席に呼ばれた小兵衛は、帰り道、大治郎に三冬を送って行くように言いますが、浅岡も心配している大治郎の嫁取りは、まだ先になりそうな気配でした。
 約一年三カ月ぶりの新作。小兵衛とおはる(貫地谷しほり)のラブラブっぷりも健在でした。三冬と大治郎はキャスト一新。
 原作は池波正太郎の同名シリーズの「婚礼の夜」です。


 
幻十郎必殺剣SP
   北大路欣也 主演  09年4月10日放送   大阪 金曜夜7時から

 昨年放送され、今年再放送された連続ドラマのスペシャル版。今宵限りの死神復活です。
 楽翁(中村敦夫)の手により、斬首刑となるところを救われ、名を変え、妻の仇を討ち果たした死神幻十郎。だが彼が妻の仇の黒幕として殺した
のは、将軍の実父・一橋治斉(鶴田忍)。彼の腹心であり、若年寄の田沼意正(中原丈雄)は、将軍実父が一介の浪人に斬り殺されたという事実
が世間に洩れては国の一大事と、影武者を立て、幻十郎の抹殺を図る。
 田沼の命を受け、幻十郎抹殺に動き出した黒鍬者の頭領・更科軍兵衛(内藤剛志)は、幻十郎をあぶり出すため、彼を慕う志乃(戸田菜穂)をさ
らい、拷問にかける。その一方では、一橋治斉死亡の事実を知った出石藩家老・滝沢頼母(本田博太郎)が藩主の座を手に入れようと田沼に近づ
いていた。出石藩に不穏な動きがあると察した楽翁は、幻十郎に出石藩を探るように命じるが、幻十郎は志乃のために動き出す。
 水戸黄門で風車の弥七を演じている内藤剛志の、同一人物とは思えないふてぶてしい演技が見ものです。

シリーズの紹介はこちら

木枯らし紋次郎
   江口洋介 主演   09年5月1日放送   関西 金曜夜9時から

「あっしにはかかわりねぇこってぇ」のセリフで大ブームを起こした無宿渡世人、口にくわえた長楊枝がトレードマークの木枯らし紋次郎が金曜プレ
ステージで15年ぶりの復活です。しかも放送当時あまりの高視聴率ぶりに、朝日放送が起死回生を狙い作られたという因縁の必殺シリーズに、ぶ
つけての放送というところに、意気込みを感じます。かつての紋次郎役だった中村敦夫も出演。今回の紋次郎との絡みはないものの、渋い演技と
殺陣を見せてくれました。
 甲州を旅する紋次郎は、小判鮫の金蔵(小澤征悦)から、この先の鰍沢の切石の仙造親分(成瀬正孝)のところで草鞋を脱ぐよう勧められる。人
と関わりを持つことを避ける紋次郎だが、金蔵はしつこく、仙造のところで世話になることに。また、大店の後添え・お市(若村麻由美)から、その腕
を見込まれ、離れたところで暮らす先妻の娘・おまん(ともさかりえ)と子どもたちをここに連れてきてほしいと頼まれる。子のできない自分に代わっ
て、その子を跡取りにしたいと。一度は断った紋次郎だが、知らぬ間に礼金を忍ばされ、おまんたちの元に向かうことに。
 ところがそのころ何者かに仙造が殺される。、その場に残されていた長楊枝から、下手人の濡れ衣を着せられた紋次郎に、仙造の子分・源之助
(渡辺いっけい)を始め、生え抜きの追手がかかる。そこに現れた金蔵。自分はその追手の助っ人だと言いながら、紋次郎を助ける。金蔵の真意
がつかめない紋次郎。仙造を殺したのは誰なのか、何のために殺したのか? そしてお市を憎む源之助、一度は追い出したおまんを呼び寄せる
お市の目的は? 事態は意外な展開を見せる。
 本当に最後の最後まで本音がつかめなかった金蔵を演じた小澤征悦の怪演、見事憎まれ役にはまった渡辺いっけいの演技力、そして高貴な色
気とその奥に潜む差別意識を匂わせた若村麻由美と、悪人を演じた脇を固める俳優の演技が印象に残った作品でした。
 間引きされかけた過去を持ち、飢饉が蔓延していた世を、故郷を持たない無宿渡世人として、どこで死んでもかまわないという覚悟を持って旅し
た紋次郎。身長がありすぎて渡世人姿は似合わないかと思った江口洋介でしたが、中村敦夫も長身でしたし、思ったより似合っておりました。ニヒ
ルだけど、その奥底に情を忘れていない紋次郎のイメージも壊すことなく、過去の作品の良さと新しさをうまく出せている作品だったと思います。

桜ほうさら
   玉木宏 主演   14年1月1日放送   NHK 夜7時20分から

 上総国搗根藩の小納戸役の次男として生まれた古橋笙之介は、剣よりも文字や書物が好きな青年。両親と、剣術道場の師範代を務める兄・勝
之介(橋本さとし)と平和に暮らしていた。が、ある日、実直を絵に描いたような父・宗左右衛門(桂文珍)が、賄賂を受け取った罪に問われる。もち
ろん本人に覚えはないが、証拠の証文には本人も見間違えるほど同じ筆跡の名があった。古橋家は取りつぶしになり、総左右衛門は自害。
 失意の笙之介に、江戸留守居役の坂崎重秀(北大路欣也)から声がかかる。坂崎は裏に藩を揺るがす陰謀が潜んでいると考えていた。坂崎の
江戸で父を陥れた者を探せという誘いにのって、笙之介の江戸暮らしが始まる。そこで桜の精かと見間違える女性・和香(貫地谷しほり)と出会う。
和香の手助けもあって、筆跡を真似ることができる代書屋を探すことになるが…。
 宮部みゆきの同名小説が原作。犯人はとても意外なところから出てくる時代劇ミステリーです。
 初の4Kカメラを使った美しい映像も見どころの作品です。

番組公式サイト http://www.nhk.or.jp/drama/housara/

里見八犬伝
 滝沢秀明 主演   06年1月2日、3日放送   毎日   夜9時から
 二日に分けて放送された、前後編合わせて五時間の大作。題材が題材だけに、時代劇というより、和風ファンタジーという感じ。妖怪とか普通に
出てきますし。
 主役は犬塚信乃ですが、八犬士全員(佐藤隆太・小澤征悦・押尾学・照英・山田優・勝地涼・山下翔央)がほぼ均等に描かれてます。この八犬
士、年齢は若いですが、アクションも芝居もきっちりばっちりです。脇役も豪華ですが、悪役に使うなど思い切った配役。特に菅野美穂が妖艶でし
たたかだけど、どこか悲劇的な玉梓を怪好演。武田鉄矢も殺陣ありの悪役を憎たらしげに好演。
 ワダエミが衣装デザインをしたことと、中国ロケでエキストラと馬を大量に使ったことでも、話題を集めましたが、そのせいか全体的に中華テイスト
が混じっているのが、少し残念。でもその合戦シーンの迫力はすごいです。
 全編とにかくアクションが多くて、ワイヤーアクションも含めて皆動きが美しいので、見ごたえはたっぷり。ファンタジーなのでCGも多用されている
のですが、これも本当に綺麗にできていて、全然気になりません。特に八犬士の持つ玉と、抜けば水がほとばしる宝剣・村雨の処理が美しく、ため
息が出るほどです。
 滝沢馬琴の原作に忠実に作ったとのことですが、犬の八房が出てこなかったのはなぜなんでしょう?
 五時間もありますが、その分ストーリーも細かく、でも、あんまり分からなくても面白く見れる、本当に子供から大人まで楽しめる娯楽大作に仕上
がっていると思います。

 
忍べ!右左エ門
   内村光良 主演   18年12月19日放送   NHK 夜10時から
 江戸時代中期、右左エ門たち忍びは、雇い主の熊本藩の阿久井光利(國村隼)から、突然、財政難から解任を言い渡されます。
 十年後、江戸で居酒屋の親父になっていた右左エ門ですが、家賃の支払いも滞るような貧乏暮らし。そこにかつての忍び仲間の長治(古田新太)から呼び出しが。長治の跡取り息子・序助(中村大志)のもうすぐ嫁になる奉公人の娘・おこと(永野芽郁)の、行き別れた父親・久兵衛を探してほしいという。断ろうとした右左エ門だったが、商売に成功している長治から金を払うと言われて、渋々引き受けることに。探索を続けるうちに、久兵衛にそっくりな人物が、江戸城に罪人として捕らわれているという情報を得ます。長治は江戸城に久兵衛を助け出しに行くと言い出し、忍びに憧れる序助と右左エ門の三人は江戸城へ忍び込むことに。右左エ門が腕利きの忍びだったのは、はるか十年前。江戸城には現役の忍びである甲賀忍者たちが待ち受けている。はたして右左エ門たちは無事に帰って来れるのか? 捕らわれ人は久兵衛なのか? 久兵衛がおことの前から姿を消した理由は? そして明らかになる驚きの事実!
 コントバラエティ『LIFE!〜人生に捧げるコント』のスタッフ、キャストが手がけた、本格忍者アクション時代劇コメディ。笑えるシーンもありましたが、甲賀忍者の組頭・桔梗数馬(伊藤健太郎)との対決シーンは、アクションも見ものでした。
 
 
 
忍べ!右左エ門
   内村光良 主演   19年12月26日放送   NHK 夜10時から
 昨年放送された、コントバラエティ『LIFE!〜人生に捧げるコント』のスタッフ、キャストで制作された本格忍者アクションコメディ時代劇の新作です。
 元忍び、今は居酒屋の親父の右左エ門。元同僚で、今は大きな呉服屋の長次(古田新太)から、跡取り息子の序助(中川大志)が間違えて二束三文で売ってしまった高価な反物を盗み出して欲しいと頼まれます。金のために引き受けざるをえなかった右左エ門。買い手の万生目屋仁兵衛(向井理)を探して神奈川宿へ行くと、そこはどこも万生目屋ばかり。一方、前作で右左エ門たちに敗れて公儀隠密を首になった甲賀忍者の日向(ムロツヨシ)と数馬(伊藤健太郎)は、万生目屋の用心棒になっていました。そして仁兵衛は、実は恐ろしい計画を立てており、それを探るため、幕府からはくノ一のアヤメ(杉咲花)とウズラ(池谷のぶえ)が派遣される。右左エ門の探す反物を巡って、なぜか三すくみの忍者の戦いが起きます。そして仁兵衛の計画は止められるのか…?
 今回も、数馬のアクションに加えて、西洋剣を振り回す仁兵衛に、アヤメの殺陣が見どころでした。
 

しゃばけシリーズ第2弾 うそうそ
   手越祐也 主演   08年11月29日放送   関西 土曜夜9時から

 畠中恵原作の、妖怪推理時代小説・しゃばけシリーズの映像化第2弾です。
 廻船問屋の大店・長崎屋の若旦那の一太郎は、実は大妖・皮衣の孫で、人には見えない妖(あやかし)が見える。そんな彼の周りには、彼のこと
をなにより大事に思っている手代の仁吉(実は白沢)(谷原章介)と佐助(実は犬神)(高杉亘)の2人の兄やをはじめとして、妖たちがいっぱい。1
年のうち、寝込んでいる日の方が多いという、筋金入りに体の弱い若旦那。なんと今回、旅に出ることとなった!
 旅といっても、箱根に湯治。湯治に行けばちょっとは体が丈夫になるかもしれないということで、小田原まで船、そしてそこからは駕籠という、過保
護な旅。それでも、江戸どころか通りの向こうにさえもろくに出たことのない若旦那は大はしゃぎ。ところが、そんな旅初心者にも関わらず、途中で
仁吉と佐助はいなくなるわ、かどわかしに合うわ、烏天狗に襲われるわ、あげくに人柱にされそうに。矢継ぎ早の災難の中、いったいなぜ若旦那が
狙われ、人柱にされるのか、謎の数々を若旦那が持ち前の知恵と優しい心根で解いていく。
 前回登場して話題になった鈴彦姫役の早乙女太一が、今回は男装(?)でも登場。その他、屏風のぞき(宮迫博之)に、VFXで作られた子鬼・家
鳴(やなり)ももちろん登場。
 ちなみに「しゃばけ」とは、娑婆気。俗世間の名誉や欲望が離れない心のこと。そして「うそうそ」とは、うろうろ。落ち着かないで訪ねまわる様のこ
とです。
 かわいかったり、怖かったりの妖盛りだくさんの、ほんわか温かくって、前向きになれる、面白時代劇。第3弾も楽しみです。

上意討ち〜拝領妻始末
   田村正和 主演   13年2月9日放送   ABC 夜9時から

 会津松平藩馬廻りの三百石藩士・笹原伊三郎(田村正和)は、藩きっての剣の使い手。彼の長男・与五郎(緒形直人)に、藩主・松平正容(大杉
漣)の側室・お市の方(仲間由紀恵)が妻として下されるとの命令が。お市の方は男子を産んでおり、家臣に下げ渡されるには相当の理由がある
はず、伊三郎は丁重に辞退するも、藩命は覆らなかった。しかしやってきたお市は、気立ても良く、よく働く良い嫁となり、与五郎とも仲睦まじい夫
婦となる。やがて二人の間には娘も生まれる。だがそこで、藩主の世継ぎが亡くなるという事態が起こる。新たに世継ぎとなった男子の母親が家
臣の妻では体裁が悪いと、お市を城へと差し戻すようにまたも無慈悲な藩命が下る。人心を無視したあまりにも無体な仕打ちに見かねた伊三郎
は、ある決意を固める。
 脚本家・橋本忍氏が、かつて三船敏郎主演で映画化された自らの脚本に新たに手を入れてリメーク。滝口康彦原作の『拝領妻始末』が田村正
和主演で蘇ります。

ジロチョー 清水の次郎長維新伝
   中村雅俊 主演   10年1月13日放送   大阪 夜9時から

 時は幕末、愛妻のお蝶の敵討ちを成就した清水の次郎長。その名代として願掛けをしていた寺にお礼参りに行った森の石松(中村獅童)は、う
っかり酒に酔って正体を明かしてしまったために、殺されてしまう。次郎長一家の子分たちは、石松の敵討ちにと逸るが、次郎長は一家を解散す
る。死んだお蝶に「もう人は殺めない」と約束していたからだった。
 そんな彼の命を、宿敵・黒駒の勝蔵(佐野史郎)が狙っていた。次郎長の葛藤の行く末は、業を煮やした子分達の行動は? 
 維新伝の名にふさわしく、坂本龍馬(池内博之)も登場し、次郎長と対面します。
 殺陣シーンではCGを駆使し、まったく新しいテイストの時代劇を作り出した、この作品。またドラマの撮影と同時にパチンコ台を制作するという、
新たな試みもされました。

番組公式サイト http://www.tv-tokyo.co.jp/jirocho/index.html

新吾十番勝負・江戸城大奥の陰謀!
 真田広之 主演   90年1月3日(たぶん)   テレビ朝日
「新吾十番勝負」と言えば、過去何度も映像化されているんですが、あえて真田広之のものを上げてみました。
 ご存知、主役の葵新吾は、実は八代将軍・吉宗のご落胤。ですが生まれてすぐ、ある不幸により親のない子として育ち、天才剣士となる。出生の
秘密を知った後も、一人の剣士として生きる道を選ぶという設定。いわゆるお血筋ものと剣客ものを合わせた話。この新吾がまた、強いだけでな
く、気持ちのよい若者なんです。
 最初のころは元服前(幼名・美女丸)で、その後もポニーテールで若さ丸出しの演技をしてくれるんですが、真田広之が本当に若いので違和感ま
ったくなし。殺陣もうまいし、顔もいいし、精神的に成長しきれてないところもかわいいんです。高貴というよりは野性味強い感じですが、まあ、そこ
は捨て子ですし。
 三人姉妹の姫君がそろって新吾のファンになってしまったり、新吾の偽者(中村トオル)が現れたり、笑いも盛りだくさんの楽しい作品。もちろん勝
負シーンは、まじめに良いですよ。
 この中では三番勝負までしか描かれてないのですが、この作品だけ、近年続けて二回ほど放送されたところを見ると、続きは作られてないようで
す。残念。別局での放送で見たので、放送日があやふやです。ごめんなさい。(06.1.6)

新選組!!土方歳三最期の一日
〜新政府軍と最後まで戦い続けた男の思いとは?男達のドラマの総決算!!
 山本耕史 主演   06年1月3日放送   NHK   夜9時から
 04年のNHK大河ドラマ『新選組!』の続編として作られたスペシャル版。
 放送終了から約一年、「待たせたな」のセリフで登場した土方歳三は、本編よりもかっこよさに磨きがかかって、まことに良い男ぶりが丸々楽しめ
ました。
 親友であり、同志であり、そして仕えるべき隊長である、自分の中で大きすぎる人物・近藤勇を亡くした後、死地を探して戦い続けた土方歳三。そ
の彼が新しき夢を得て、生きるために戦う決意を見出した日、凶弾によって倒れるという皮肉な結末ながら、すさまじい生き様を堪能できました。
 本音をぶつけ合う討論によってドラマを展開する三谷幸喜得意の芝居のような展開が、本編よりも色濃く出ていて、彼の作品好きなら絶対に楽し
める作り。
 また本編レギュラーの出演者が島田魁(照英)しかいないものの、新選組結成以前の回想シーンを新撮りという、ファンには嬉しい場面も。続編
なのに全編再録シーンがないのはすごいことです。一方で、主題歌は同じ。これがまた懐かしかったです。

戦国自衛隊・関ケ原の戦い
 反町隆史 渡部篤郎 藤原竜也 主演  06年1月31日、2月7日 読売 夜9時から
 演習中の自衛隊が戦国時代にタイムスリップ、というコンセプトで過去二回映画化した作品を、二回に渡って約四時間半のテレビドラマ化。
 富士山近くで演習中の自衛隊、伊庭明義(反町隆史)、嶋村卓也(渡部篤郎)の両小隊、計26人は突然、光に襲われて、1600年の関ヶ原の合戦
間近にタイムスリップしてしまう。そこで伊庭は若き武将・小早川秀秋(藤原竜也)に出会う。この三人が物語の中心。
 自衛隊の兵力に目を付けた、東軍大将・徳川家康(津川雅彦)はしつこく協力を求めてくるが、伊庭は断固として断る。一方の嶋村は病で余命少
なく、どうせ死ぬなら歴史に名を残したいと、西軍大将・石田三成に成り代わって歴史を変えるために動き出す。そして両軍に情と恩があり、どちら
に味方するかで苦しむ小早川。また、戦国時代の女と恋に落ちる者や、各隊に一人ずついた女性隊員の話など、エピソードは盛りだくさん。
 一番の見所の戦国武者たちと自衛隊との戦いもあります。ただ、四時間半という時間を消費しきれなかったのか、テレビだからなのか、映画に
比べると迫力不足で、全体的に散漫な感じがしました。作品の雰囲気は旧作似で、1549の歴史上の人物に成り代わるというエッセンスを入れてみ
たけど、消化不良に終わっている気がします。個々の役者陣がみないい演技をしている分、もったいない仕上がりだと思いました。(06.2.23改稿)

戦国疾風伝・二人の軍師〜秀吉に天下を獲らせた男たち
   高橋克典 山本耕史 主演   11年1月2日放送   大阪 午後4時から

 今から400年以上の昔、天下を手中に収めようとする豊臣秀吉(西田敏行)の傍らには、黒田官兵衛(高橋克典)がいた。そして彼が友として心
を通わせ、師と仰いだ竹中半兵衛(山本耕史)。秀吉の躍進には、この二人の尽力があった。
 古今東西の書を読み漁り、学を極めた美濃の菩提山城城主であった竹中半兵衛は、主君の美濃の斎藤龍興(大沢健)の酒池肉林に溺れ、都
合のいい家臣のみを取り巻きにする態度を諌めるため、わずか16人の手勢で、稲葉山城を奪取する。城は龍興に返したが、龍興からうとまれ、
若き身で隠居を決める。そんな彼の元に、秀吉が主君・織田信長に仕えるよう説得に来る。そして彼の功名を聞きつけた播磨の姫路城城代で小
寺政識に仕えていた黒田官兵衛もまた興味を持ち、半兵衛に会いに来る。官兵衛は半兵衛の「天下は天下のための天下」という話に感服する。
そして半兵衛は秀吉の命懸けの勧誘に、信長ではなく秀吉に寄騎として仕えることを決意。
 破竹の勢いで勢力を伸ばす織田信長(加藤雅也)は、中国地方制圧に着手する。かねてから信長の才に惚れこんでいた黒田官兵衛は、信長に
面会し、近隣の諸侯を調略することを約束する。一方、元から体が弱かった竹中半兵衛は、たび重なる出陣に体を壊し、秀吉から療養を命じられ
る。着々と進んでいるかに見えた中国制圧だったが、一度は官兵衛の言葉を受け入れた諸侯たちが、信長の性格を恐れて寝返りだす。そしてか
ねてよりの盟友であったはずの摂津の武将・荒木村重(山田純大)が反旗を翻したと聞き、官兵衛は単身、説得に有岡城へと向かった。だが彼の
消息はそのまま途絶えてしまう。
 官兵衛が裏切ったと信長は、人質として預かっていた官兵衛の嫡男・松寿丸を、秀吉に斬るように命じる。官兵衛を信じる秀吉は、半兵衛にそ
の処分を任す。半兵衛は官兵衛の身を案じたまま病死する。
 官兵衛は村重に幽閉されていた。そして有岡城攻防の中で救出される。1年以上に渡る土牢での幽閉生活で、彼は足が不自由になるが、同時
に命の大切さを知る。半兵衛に代わり秀吉の軍師となった彼の功績もあり、中国攻めは佳境を迎えるが、その最中、本能寺の変が起こり、信長
が戦死する。官兵衛の策謀で信長の覇権を引き継いだ秀吉。だが官兵衛を心から信じることはなかった。それに気付いた官兵衛は、家督を半兵
衛に助けられた嫡男・長政(尾崎右宗)に譲り、隠居する。
 そして時代は流れ、世は天下分け目の関ヶ原の合戦を迎える。九州・豊前にいた官兵衛は、多くの兵が関ヶ原に向かい守りが手薄になっている
九州を攻め取り、天下を獲って半兵衛と語った民のための政(まつりごと)をするため挙兵する。
 病がちでありながら、天才軍師、しかし人当たりは穏やかで、その上欲がないという浮世離れした竹中半兵衛と、自信過剰で大きなことを平気で
言うが、人の言葉には耳を貸す素直さも持っている黒田官兵衛という二人の対照的だが、強いきずなで結ばれたさまと活躍を描いたこの作品。軍
師を主役に据えるという着眼点も面白く、7時間が短く感じられました。また主役の二人を演じた高橋克典と山本耕史も、とても役柄に合っていたと
思います。
 スポンサーは去年に引き続きヤマダ電機。イメージキャラクターを務める高嶋政伸も、官兵衛の父違いの兄弟で官兵衛の目となって諸国の情報
を集める目薬屋の源蔵役で出演。ナレーションもしてました。

番組公式サイト http://www.tv-tokyo.co.jp/gunshi/index.html

だましゑ歌麿
   水谷豊 主演   09年9月12日放送   ABC 土曜夜9時から

 最近、何かと話題の多い水谷豊が17年ぶりに時代劇に登場。その役は、美人画で右に出る者がいない浮世絵師・喜多川歌麿。
 時は寛政の改革の頃、贅沢禁止令を出した松平定信をはじめとする幕閣たちは、歌麿の描く枕絵に危機を感じていた。そんな中、歌麿が絵会
に出てる間に起こった水害に乗じて、彼の妻・おりよ(鈴木杏樹)が殺される。彼の描く美人画はすべておりよの顔というほど、愛していた妻を亡く
し、失意に沈んだ歌麿は、人知れず仇を取ることを決意。江戸を離れる。
 一方江戸では、現場に落ちていた印籠から下手人は身分ある侍だと踏んで、南町奉行同心・仙波(中村橋之助)が捜査をしていた。その頃、呉
服屋に押し込み強盗が入り、手代が一人殺される。取られた金は少額だったが、役人が立ち入った際に、蔵に隠し持っていた絹の反物が見つか
り、店は罰を受けることに。
 人相の悪い弟子を連れて江戸に帰ってきた歌麿。江戸では奇妙な強盗事件が続く。上役から止められてもなお、おりよ殺しを調べていた仙波の
周囲もきな臭くなってくる。果たして強盗の正体は?狙いは?そこに歌麿は絡んでいるのか? 真相を突き止めた仙波は襲われ、そこに助けに入
ったのは…。
 あっと驚く、見事な、歌麿のだましゑ。謎の多い歌麿の、粋な真実に、驚くこと間違いなし。歌麿の、一見まとも、でも狂気が宿っている、そんな彼
を自然に演じた水谷豊もみどころです。

番組公式サイト http://www.tv-asahi.co.jp/utamaro/

だましゑ歌麿U
   水谷豊 主演   12年9月15日放送   ABC 夜9時から

 ちょうど3年前に放送された同名単発ドラマの第二弾です。美人画で圧倒的な人気を誇る天才浮世絵師・喜多川歌麿。しかしその存在を、老中・
松平定信は危険視していた。
 歌麿が描いた女が立て続けに殺される。しかもその手口は、つい最近処刑された葵小僧という凶賊にそっくりだった。歌麿と親しい錦絵版元・蔦
屋(岸部一徳)は、世間を騒がせたいのではないかと推測。同心の仙波 (中村橋之助)は探索に乗り出すが、奉行所や火盗改めの反応は鈍い。
仙波は、遊女以外で歌麿に描かれた女を張って、下手人を待ち伏せしようとするが、一人だけ所在の分からない女がいた。そのお妙(内山理名)
という女は、歌麿に絵姿を描かれてからというもの、夫のある身でありながら歌麿に恋してしまい、だが歌麿には夫の元に帰るようにと諭され、行
き場を失って放浪していた。彼女を探すうちに、蘭陽(染谷将太)という軽業師の青年に行き当たる。彼の姿を描きたいと呼び出す歌麿。だが事態
は思わぬ方向へと進んでいく。
 謎多き浮世絵師の話ということで、全体に独特な雰囲気を放ちつつ、描かれることに陶酔する女性と、常人とは違う雰囲気をたたえた歌麿、美人
画はもちろん、現在は歌麿の弟子をしている、のちに葛飾北斎となる春朗(原田龍二)の分も合わせて絵もふんだんに登場し、見る者を惹きつけ
る魅力を放った作品です。画像だけではなく、時代劇ミステリーと呼べるストーリー展開も、作品に引き込む要素の一つ。ぜひまた見たい珠玉の作
品ですが、ラスト見る限り続編はなさそうです。

公式サイト http://www.tv-asahi.co.jp/utamaro/

だましゑ歌麿V
   水谷豊 主演   13年7月27日放送   ABC 夜9時から

 09年と昨年に放送された、元武家の天才浮世絵師・喜多川歌麿と、財政再建のため質素倹約の令を出した松平定信(梅沢富美男)との対決を
描いたスペシャルドラマの第3弾です。
 江戸では、極悪非道な盗賊、通称つきかげが跋扈する中、歌麿は覆面姿の者たちに襲われる。大怪我を負いながらも九死に一生を得た歌麿
は、吉原の料亭・鶴亀に匿われる。一方で、つきかげを追う南町奉行所同心の仙波一之進(中村橋之助)は、つきかげに襲われた店の唯一の生
き残りの娘(南沢奈央)の面倒を見ることに。記憶を失っていた娘がただ一つ覚えていたことは、歌麿の娘であること。娘と引き合わせてもらった歌
麿は、娘が、絵師になりたてのころに出会い恋したが突然いなくなった女の子供だと直感し、今まで存在も知らず面倒も見れなかったことを娘に詫
びる。だが、仙波や歌麿の懇意にしている版元の蔦屋重三郎(岸部一徳)は、娘が偽物ではないかと疑っていた。ところがその娘がかどわかさてし
まう。仙波と蔦屋は、歌麿をおびき出して殺すための罠ではないかと心配するが、歌麿は娘を助けるために出向くことを決意する。
 本気で歌麿の命を狙ってくる敵との対決と、運命に翻弄された娘と、それぞれに真剣に立ち向かう歌麿の活躍を描いた作品でした。女の美しさと
内面と、松平定信の政策を皮肉ったかげ絵が、今回のだまし絵でした。

番組公式サイト http://www.tv-asahi.co.jp/utamaro/

だましゑ歌麿W
   水谷豊 主演   14年9月6日放送   ABC 夜9時から

 浮世絵師・喜多川歌麿が絵姿に描いた女が続けて殺される。同心の仙波一之進(中村橋之助)は手がかりの手ぬぐいから杉戸屋を突きとめる
が、評判が悪い娼家とはいえ、その後ろ盾の近江屋は幕閣にも顔が利く大店で、証拠がないこともあり、手を出せない。一方の歌麿は、自分のせ
いで女たちが死んだと神経を擦り減らし、筆を折ると宣言して行方をくらましてしまう。
 死んだようになってさまよっていた歌麿を助けたのは、芝居小屋に勤める次郎吉(河相我聞)という男だった。次郎吉は自分の住む長屋に歌麿を
連れていき、空き部屋を世話してくれる。次郎吉には、ずっと探している幼馴染の娘がいた。その娘・お恭が、杉戸屋にいると聞き、出かけていく
が、逆に袋叩きに合い、刺されてしまう。
 次郎吉を助けるために、医者を呼んだことで居所が知られた歌麿のところに、絵姿を描いてほしいと女(田中美里)が訪ねてくる。不思議な色香
を持つその女は、その色香を見初められ、杉戸屋から近江屋孫兵衛(でんでん)が買い上げた女で、次郎吉が探していたお恭だった。初めは断り
続けていた歌麿だったが、お恭が、描いてもらえないなら歌麿を殺すとまで思い詰めていたこと、お恭の美しさの正体が次郎吉への愛だったことな
どから、描きたいと筆を取る。
 歌麿の新作はたちまち評判となる。だがそれこそが、歌麿を疎ましく思っている老中の松平定信(梅沢富美夫)に近づきたいという近江屋の罠だ
った。近江屋は、今までの殺しの下手人でもある杉戸屋の作太郎(渡辺大)たちを使い、お恭を殺そうと連れ出す。お恭を助けようとした次郎吉も
また、彼らの的となり、それを知った歌麿は怒りを爆発させる。

番組公式サイト http://www.tv-asahi.co.jp/utamaro/

忠臣蔵〜その義その愛〜
   内野聖陽 主演   12年1月2日放送   大阪 夕方4時から

 正月2日恒例のテレビ東京の大型7時間時代劇。堀部安兵衛を中心にした、忠臣蔵でした。
 時は太平の世と言われた元禄時代。江戸の下町で長屋暮らしをしていた浪人・中山安兵衛は、叔父甥の義盟を結んでいる菅野六郎左衛門(綿
引勝彦)が高田馬場で果たし合いをすると聞いて、駆け付ける。助太刀をした安兵衛は、多勢に無勢をものともせず、見事相手を討ち取った。この
ことで有名になった安兵衛の名を聞きつけ、赤穂浅野家の江戸家老・堀部弥兵衛(橋爪功)は、一人娘・ほり(常盤貴子)の婿にして、跡取りにした
いと申し出る。武家暮らしは堅苦しいと断固断った安兵衛だったが、話は藩主・浅野内匠頭(市川染五郎)にまで届き、内匠頭もぜひ家臣にしたい
と頼み込む。内匠頭の人柄に触れた安兵衛は、堀部家への婿入りと浅野家の家臣となることを決意したのだった。
 それから数年。内匠頭が吉良上野介(柄本明)の侮辱に耐えかね、江戸城松の廊下で斬りかかった。江戸城内で刃傷沙汰を起こした内匠頭は
即日切腹となり、吉良の生死を気にしながらこの世を去った。そして浅野家は断絶となる。
 吉良は軽傷であった。喧嘩両成敗が天下の御定法であるのに、吉良にはなんの処分もない。浪人となった安兵衛たち赤穂藩の元家臣たちは憤
り、殿の無念を晴らしたいと、吉良を討ち取ることを計画。しかし吉良には親せき筋である大藩上杉家が付いており、軽挙してはことを仕損じる。安
兵衛は逸る浪士たちを諌め、筆頭家老であった大石内蔵助(舘ひろし)を訪ね、その意思を聞き、従うことを約束する。
 しかし、お家再興を第一に考える大石は、なかなか動かない。浪人暮らしに生活は厳しくなり、焦れる安兵衛は大石と衝突を繰り返す。そしてお
家再興が叶わぬことが確実になった時、大石は吉良邸討入りの準備へと動き出す。安兵衛らもそれに尽力し、そして最後まで大石に付き従った
四十七人は、悲願をなし遂げる。
 多くは大石内蔵助主役で描かれることの多い忠臣蔵ですが、四十七士の中で最も強かったと言われる堀部安兵衛を中心に描いたことで、江戸
にいた浪士たちの苦労や焦燥感が全面に出ていた気がします。また大石を信じたいと思いながらも、動かない大石が信じられなくなってくる部下た
ちの心理がよくわかり、よくある忠臣蔵とは違った切り口が面白かったです。また堀部安兵衛主役ということで、妙にチャンバラシーンの多い、娯楽
色強めの忠臣蔵でした。
 浪人時代は、情は深いが豪快さが目立った安兵衛が、だんだんと武士らしく清廉になってきたのも良い感じでした。またそんな彼を時には面と向
かって意見を言い、支えてきた良妻・ほりとの絆もよかったです。

番組公式サイト http://www.tv-tokyo.co.jp/chushingura/index.html

忠臣蔵〜瑤泉院の陰謀
  稲森いずみ 主演   07年1月2日放送   大阪 昼2時から
 新春恒例の10時間ぶっとおし時代劇。浅野内匠頭の妻・瑤泉院を主役に、原作『瑤泉院 三百年目の忠臣蔵』を、ジェームス三木が脚本にし
た、討ち入りの首謀者を瑤泉院という新見解を示した作品。
 浅野内匠頭(高嶋政伸)が溺愛した美しく賢い妻・阿久利の愛に包まれた幸せな生活は、夫が刃傷に及んだことで一転する。幕府は内匠頭の言
い分をろくに聞かず、即日切腹を申し渡す。吉良上野介(江守徹)は内匠頭の乱心だと言い張るが、髪を下ろし瑤泉院となった阿久利は、遺恨だ
と信じ、「内匠頭が刃傷に及んだのは遺恨」、「ご政道は間違っている」、「浅野は善、吉良は悪」との噂を市中に広め、浅野が吉良に斬りかかった
というマイナス部分をうまく覆い隠し、浅野家家臣の敵討ちの気運を高めさせる。
 また、奥女中の喜世(吹石一恵)が、柳沢吉保(高橋英樹)の側室・正親町町子(萬田久子)と親しかったことを通じて、吉保に会う。そして大石内
蔵助(北大路欣也)と吉保の面会を実現。その腹のうちを探り合った内蔵助は、時期将軍には甲州家が有望と聞き出し、喜世を側室として送り込
む。
 その後も瑤泉院は、自ら同志の一人と名乗り、赤穂浪士たちの討ち入りに尽力する。殿の無念を晴らすため、美しき主君の妻の心の平穏のた
めにと、同じ目的に邁進する大石と瑤泉院は、いつしか信頼する主従関係からほのかな愛を芽生えさせる。
 討ち入り後、将軍となった家宣(磯部勉)は、綱吉(津川雅彦)の代に乱れた政道を正し、彼の嫡男を産んだ喜世は、遠島となっていた赤穂浪士
の遺児たちの救済を行う。
 よく知られた『忠臣蔵』ですが、瑤泉院が積極的に関与、世の風評を味方につけ、時の最高権力者・柳沢吉保にまで会ってしまうという、斬新な展
開でした。また吉保と風呂に入る内蔵助という珍しい場面や、幼児言葉の綱吉も見所です。
 見方によっては悪女とも思える瑤泉院を、稲森いずみが美しく、しとやかでかわいらしい女性として演じており、10年後に再開した喜世と、『忠臣
蔵』の人形浄瑠璃を見て、「あれでは吉良様がかわいそう」と微笑みあう笑顔に、女の強さとしたたかさを見た作品でした。
 また、全編通して狂言回しに、浄瑠璃調のナレーションを入れたところが、だらけがちな長丁場のドラマのアクセントとなって、良い感じでした。

番組公式サイト http://www.tv-tokyo.co.jp/chushingura/

徳川家康と三人の女
   松平健 主演   08年3月15日放送   ABC 夜9時から

 徳川家康の生涯に、深く関わった三人の女がいた。江戸幕府の祖となった家康と、その三人の女を描くドラマスペシャル。
 三方が原戦いで家康(松平健)は、武田信玄に惨敗した。彼はその時のみじめな自分の姿を絵に描かせ、生涯の戒めとする。その信玄も亡くな
り、その子・武田勝頼攻めを考える家康の元に、おそるべき知らせが届く。彼の愛妻・築山御前(高島礼子)と、彼女との間に生まれ成長した嫡男・
信康(柏原収史)に対して、織田信長(中村敦夫)が武田への内通の疑いありと切腹を命じてきたのだ。家康は二人を蟄居させ、信長へ取り計らい
を模索するが、信長の怒りは解けず、二人は死を迎える。築山御前は、最期に「女子の悲しまぬ世を作る」ことを家康に頼む。
 時代は移り、本能寺の変に倒れた信長に代わって、豊臣秀吉(片岡鶴太郎)が天下の情勢を押さえる。臣下の礼を取る気のない家康に対し秀
吉は、信長の盟友であった家康に、画策。家康と義兄弟となるために、すでに嫁に行っていた妹の朝日(若村麻由美)を無理やりに離縁させ、家
康の正室とする。そしてやっとのことで家康対面を終えた後は、母が病に倒れたと言い、朝日を大坂に引き戻す。朝日にとって家康との生活は短
いものだったが、兄に人形のように人生を翻弄された彼女は、家康は心の通じあえた方だと言い残す。
 秀吉の死により豊臣家の栄光にも陰りが出、豊臣と徳川の全面抗争へと時代は移る。それは秀吉の嫡男を生んだ淀殿(星野真理)と家康の戦
いであった。父を信長に殺され、母を秀吉によって亡くした彼女は、天下を我が子の手に入れるため、最後まで戦い続ける。家康は燃える大阪城
を前に、淀殿に向かって「よう戦われた」と漏らす。その彼の胸には、築山御前と朝日の姿が思い出されていた。
 三人の不遇の生を送った女性を、高島礼子と若村麻由美、星野真理が熱演。凛とした武家の妻、素朴で野心のない百姓出の娘、復讐と野望に
燃える激しい姫と、それぞれのイメージがよく合っていました。そして松平健演じる家康は、その三人を受け止めるような雄大な懐を持つ男として描
かれていました。

番組公式サイト http://www.tv-asahi.co.jp/ieyasu/

猫侍 玉之丞、江戸へ行く
   田中直樹 山口紗弥加 主演   16年2月25日放送   サン 夜7時から

 白猫の玉之丞がどうして江戸の加賀屋に飼われることになったのか、班目久太郎と出会う以前の玉之丞を描いたスペシャルドラマです。
 百姓一揆で重症を負い、山小屋に隠れていた竹三(モロ師岡)は、寄ってきた白い子猫に食料を与え、もうすぐ産まれてくる自分の子どもの名前を書いた紙をたくし、息を引き取ります。新垣勘兵衛(渡辺哲)は山で子猫を拾います。その
首輪に「命名 玉之丞」と書かれた紙が挟まれていたことから、子猫は「玉之丞」と名付けられました。
 数年後、勘兵衛が教える寺子屋に、美和(山口紗弥加)がやってきます。勘兵衛は白い玉之丞という猫がいる塾という意味で寺子屋を「白玉塾」と名付け、玉之丞も教室に置いて授業をしていました。勘兵衛から塾を引き継いだ美和は、はじめは玉之丞を邪険に扱いますが、しだいに猫の扱いにも慣れ、かわいがるようになります。しかし藩の意向で、白玉塾は閉鎖に追い込まれます。美和は塾を存続させて欲しいと江戸にいる藩主に直訴状を書くことを思いつき、子どもたちの作った野菜とともに、飛脚の飛松(田中直樹)に託します。
 飛松は事故で足を悪くして以降、走れず、飛脚の仕事は開店休業。格安で美和の仕事を引き受け、野菜を詰めた箱を背負い江戸へ向かいます。ところが途中で猫の鳴き声がし、箱を開けてみると、中には玉之丞が。開いたまま置いてあった箱に入った拍子に、ふたが閉まり、そのまま預けられてしまったのでした。飛松は訳が分からないままも、美和から子どもたちの夢と希望が詰まっていると言われたことを思いだし、江戸の上屋敷に届けます。ところが門番に玉之丞を渡そうとしても、門前払いされてしまいます。
 飛松は、飲み屋の女将(大島容子)に励まされ、何度も上屋敷に通い、江戸で暮らし始めます。そのうちに猫を連れた飛脚・「猫飛脚」として人気者に。人気をねたんだ飛脚仲間から嫌がらせを受けたり、玉之丞が体調を崩したりと、苦難にも遭いますが、それを乗り越え、玉之丞との絆を深めていきます。そんなある日、上屋敷の門番が変わり、玉之丞はあっさりと受け取ってもらえます。江戸から帰る道中、前の門番から藩主は猫嫌いで猫は殺されてしまうかもと聞いた飛松は、足の痛みも忘れて必死で江戸へ駆け戻ります。
 玉之丞は、猫飛脚のお得意様だった加賀屋の主人・与左衛門(伊藤洋三郎)によって助け出されていました。玉之丞を実の息子のように思っているので大切にしてほしいと話す与左衛門に、飛松は全国を飛び回る飛脚の仕事に戻るため、玉之丞を譲り渡します。
 そしてその後、すっかり玉之丞のかわいさに骨抜きになった与左衛門を見かねて、ある企みが…、というところで、話は「猫侍」へと続きます。
 連続ドラマとはキャスト総入れ替えでの、玉之丞の話でした。女ながら学問に生きる寺子屋の師匠を山口紗弥加が、足を悪くした飛脚をココリコの田中直樹が熱演。どこかささくれた二人の心を、玉之丞がゆっくりと癒していきます。

番組公式サイト http://nekozamurai.info/index.html

眠狂四郎ザファイナル

   田村正和 主演   18年2月17日放送   関西 夜9時から
 およそ半世紀ぶりに復活した田村正和の眠狂四郎。ファイナルということで、狂四郎の生い立ちに深く関わった話でした。
 今もまだ権勢を振るう松平主水正(津川雅彦)の娘(松本若菜)が転びバテレンに犯され、産まれたとされる眠狂四郎。幼少時に母とともに身を隠し、母の亡きあとは親代わりとなった勇勝寺の空然和尚(中原丈雄)が死んだと聞き、江戸に戻ってきた狂四郎。なじみの芸者・文字若(名取裕子)のところへ身を寄せ、瓦版屋の金八(八嶋智人)とともに、勇勝寺に参った狂四郎は、空然が実は殺されたと聞く。そんな狂四郎の前に、娘だと名乗る操(吉岡里帆)が現れる。
 一方、主水正の命を狙い、野望を掲げる加賀美耀蔵(椎名桔平)。彼は狂四郎を兄と呼び、円月殺法の使い手だった。耀蔵は、狂四郎に協力を求めるが、断られ、怒りに狂う。
 
 フジテレビサイト http://www.fujitv.co.jp/b_hp/180217premium/

 

濃姫〜信長に嫁いだ女
   観月ありさ 主演   12年3月17日放送   ABC 夜9時から

 油売りから一国の主にまで出世した『美濃のマムシ』こと、斉藤道三(里見浩太朗)の愛娘であり、隣国の『うつけ』と呼ばれた織田信長(城田優)
に政略結婚として正室に迎え入れられた濃姫の物語です。
 濃姫の腰入れから、斉藤家の内乱、信長の暗殺計画まで、濃姫の半生の話でした。
 とにかく主役の二人が突出して背が高いことが絵的に気になりましたが、それさえ慣れれば、正統派で安心して見れる良作でした。信長、道三、
濃姫がかっこよく描けていますので、この三人が好きな方にはおすすめの作品です。
 女性主役の戦国ものというと、「戦のない世の中に」というセリフがお決まりのような昨今ですが、それを「(親をかみ殺すという)マムシの生きられ
ぬ世の中に、殿の手で」とひとひねりしたセリフで表したところが、うまいと感じました。

番組公式サイト http://www.tv-asahi.co.jp/nouhime/

濃姫U〜戦国の女たち
   観月ありさ 主演   13年6月23日放送   ABC 夜9時から

 昨年3月に放送された作品の続編です。(前作の紹介はこちら
 濃姫は悪夢に目を覚ます。それは炎に包まれ、傷を追った夫・織田信長(城田優)が自分の名を呼びながら果てる夢だった。そんな折、信長と濃
姫の元に、隣国の今川義元(篠井英介)が兵を上げ、国境まで迫っていると知らせが入る。
 今回は桶狭間の戦いから、浅井家との同盟、延暦寺の焼き討ち、浅井・朝倉の滅亡までの話となっていました。木下藤吉郎(えなりかずき)や、
明智光秀(岡田浩暉)といった新しいキャストも登場しました。
 弟・信行を殺したことで母・香林院(余貴美子)から恨まれ、妹・市(比嘉愛未)を政略結婚させたことでその溝をさらに深め、延暦寺の焼き討ちで
鬼と恐れられた信長。だがそれはこの世の中を戦い続け、その先にあるものを目指すための仮面だった。それを知る濃姫は、その血にまみれた
人生を一緒に背負っていくと告げる。そして実家に裏切られ、夫を殺された悲しみから自害しようとする市に対しては、生き続けることが女の戦い
だと諭す。
 怒涛の人生を送った信長を理解し支えた濃姫の、強き女の物語です。

番組公式サイト http://www.tv-asahi.co.jp/nouhime/

逃亡者おりん2時間スペシャル
   青山倫子 主演   08年9月19日、26日放送   大阪

 昨年三月まで放送され、カルト的な人気を博した昨今まれにみるエンタメ時代劇『逃亡者おりん』の、2時間スペシャルです。しかも「紅蓮の巻」と
「烈火の巻」の2本立ての、2週連続放送です。
 次々と放たれる刺客との死闘の末、宿敵・植村道悦(榎木孝明)を倒し、幕府転覆の危機を救ったおりん。再会した娘・お咲(八木優希)と別れ、
供養の旅に出る。その続きが、今回のスペシャルの話です。
 紅蓮の巻では、おりんがそのお咲の姿を清から使節団の中に見つけたことからはじまります。清からの使節団というのは真っ赤な嘘で、その実
態は解体したはずの手鎖人たち。実は死んだと思われていた道悦は生きていた。再び彼の手に捕まり、手鎖をはめられたおりんは、また闘いの
渦の中に巻き込まれる。倉沢弥十郎(宅麻伸)の助けもあり、今度こそ道悦にとどめを刺したおりんだが…。
 烈火の巻は、蟄居中の大岡忠光(あおい輝彦)の元に由比正雪の亡霊が現れ、三万両の隠し軍資金があると伝えたことから、その軍資金を巡
って、駿河城代・土井采女庄(田村亮)やら風魔幻一郎(遠藤憲一)やら、そして弥十郎までも加わり、入り乱れての争奪戦。一方おりんは、襲われ
ていたすみれ(兼崎杏優)という幼女を助けるが、彼女は実は唯一の由比正雪の末裔だった。軍資金のありかは、彼女が母から教わった童歌の
歌詞に隠されており、彼女を助けたおりんもまた、戦いに巻き込まれる。そして、戦いの元凶となった由比正雪の亡霊の正体は、実は…。
 死んだはずの道悦が実は生きていて、またおりんと弥十郎が戦う、というパターンを確立した今回の2週連続スペシャル。連続テレビシリーズと
変わらないどころか、より高いクオリティで楽しませてくれました。ぜひともこのまま年二本ぐらいのペースで、ずっと新作を続けていってほしいと願
います。(09.10.2改稿)

テレビシリーズの紹介はこちら

番組公式サイト http://www.tv-tokyo.co.jp/orin_sp/index.html

逃亡者おりん・最終章スペシャル
   青山倫子 主演   12年1月12日放送   大阪 夜9時から

 宝暦10年、徳川家重は将軍職を辞し、田沼意次(山田純大)が権勢を奮っていた。家重直属の隠密だった倉沢弥十郎(宅麻伸)とともに、大岡忠
光(あおい輝彦)の陰謀を暴き、太平の世を築いたおりんは、江戸からほど近い根岸の里で自分が殺した人々の菩提を弔いながら飾り結びを作
り、平穏な生活をしていた。しかし飾り結びを納めた帰り道、浪人に襲われている娘(高松あい)を助けたことから、あらたな事件へと巻き込まれて
いく。
 記憶を失っていた娘を狙う浪人たちは、金がすべてで貧富の差が激しくなる田沼の政治に不満を抱き、幕府転覆の秘密を手に入れ世の中を変
えたい者たちだった。その中には、なぜか弥十郎の姿も。弥十郎はおりんに娘から手を引くように告げるが、娘を守ろうとするおりんは弥十郎の豹
変が信じられない。そして手鎖人たちもその近辺に現れる。植村道悦(榎木孝明)亡き今、手鎖人たちを動かしているのは宇玄斎という謎の人物
だという。
 舞台は、幕府転覆の秘密が眠るという日光東照宮へ。生きていた宇吉(左とん平)の協力も得て日光に着いたおりん。だがそこで待っていたの
は、自分に刃向おうとする浪人たちを一気につぶそうとする田沼の罠だった。幕府転覆の秘密の自体、田沼が流した噂だったのだ。そして手鎖人
である娘を使って日光の山中に集めた浪人たちに、幕府役人たちの銃弾が浴びせられる。娘をかばい、死闘の末、力尽きた弥十郎は、幕府転覆
の秘密がなくてよかったと息を引き取る。おびただしい数の死体を前に、おりんは静かに怒りを燃やす。
 実は生きていた道悦は、宇玄斎によって吉原の地下に閉じ込められていた。道悦救出を企む手鎖人から宇玄斎が吉原にいると知らされたおり
ん。吉原で、燃え盛る炎の中での戦いの末、おりんはとうとう道悦を倒す。「闇の鎖、すべて切りました」。しかし吉原炎上の罪を着せられたおりん
は、再び逃亡者(のがれもの)となって旅に出ることになった。
 06年〜07年に放送され、08年にスペシャルが放送された『逃亡者おりん』の、ずっと続いてきた道悦との戦いに終止符を打ち、そして新たに始ま
る新シリーズへの導入となるスペシャルでした。

番組公式サイト http://www.tv-tokyo.co.jp/orin2/index.html

信長の棺
  松本幸四郎 主演   06年11月5日放送   ABC 夜9時から
 本能寺の変後、見つからなかった織田信長の遺体を巡る、後に『信長公記』を書くこととなる太田牛一を主役に据えた歴史ミステリーです。原作
は、首相を務めた小泉純一郎が愛読書と語ったことで脚光を浴びた、加藤廣の同名小説。
 信長の配下で書き役を務める大田牛一(松本幸四郎)。彼の仕事は各地から届く戦況の報告書を、それぞれの土地で使われている暦や地名の
間違いを直して信長に提出することだった。
 安土城を完成させ、天下掌握まであと少しとなった信長(松岡昌宏)に呼ばれた牛一は、密かに命を受け、五つの箱を預かり、それを京に届ける
よう命じられる。だがその直後、わずかな小姓だけをつれて京に向かった信長は、本能寺で明智光秀(小日向文世)に討たれてしまう。
 知らせを聞いた牛一は、これまでに書き溜めた信長に関する記述物を持って城を抜け出すが、途中で襲われ、ひなびた浜辺の村で身を隠しつ
つ傷の養生をすることに。
 十ヵ月後、城に戻れた牛一を待っていたのは、信じられない事実だった。信長が愛した安土城は焼け落ち、牛一が「調子が良すぎる」と好ましく
思っていなかった秀吉(中村梅雀)が跡を継いでいた。そして焼かれた本能寺からは、信長と森蘭丸の遺体だけが見つからなかったという噂を聞
く。
 敬愛する信長の遺体を探し出そうとする牛一を襲う影。光秀の謀反を促した裏の人物、秀吉の破格の出世を裏で支えた者たち、そして信長が牛
一に託した箱の中身と耳打ちした話に隠された信長の果たせなかった夢。数々の謎を新見解で暴いています。歴史好き、信長好きにとっては興
味深く見れた作品でした。

番組公式サイト http://www.tv-asahi.co.jp/hitsugi/
 

信長燃ゆ
   
東山紀之 主演   2015年1月2日放送   大阪 夜9時から

 小さな墓石のようなものを拝む老人の前に、一人の女性が現れる。彼女は35年前の本能寺の変で何があったのか、唯一の生き残りである森坊丸(内藤剛志)に尋ねる。彼女が持つ笛が、織田信長にとって特別な人であった晴子(栗山千明)のものであったことに気づいた坊丸は、長い話を語り始める。
 本能寺の変の直前の一年間の織田信長と、彼のライバルであり朋輩でもあった近衛前久(寺尾聰)や彼の家臣たちを三時間かけて丁寧に描いた、正月二日恒例の長時間時代劇です。本能寺の変に裏側に隠された思惑とは? 本当の黒幕は? 本能寺の変の真相を新たに描いた作品でした。
 原作は安倍龍太郎の同名小説。提供は今年もヤマダ電機でした。

 番組公式サイト http://www.tv-tokyo.co.jp/nobunaga.moyu/

   永山瑛太 向井理 主演   22年1月3日放送   NHK 夜9時から
 大政奉還を画策していた徳川慶喜(渡辺大)は、密談のために秘密裏に西郷隆盛(谷田渉)に会いに行こうとしていました。ところがその行列が襲撃されます。命の危険を感じた慶喜は大政奉還を中止。幕府官僚の永井尚志(杉本哲太)は、下手人探索を坂本龍馬(永山瑛太)と土方歳三(向井理)に手を組んで進めるように命じます。与えられた期間は2日。前代未聞の敵どうしの強烈バディが誕生します。
 内戦になるのを避けるため、なにがなんでも大政奉還を成し遂げたい龍馬と、徳川家を守ることが己の武士としての矜持と心に決めている土方、お互いがお互いの味方を怪しみつつ、それぞれの領分に飛び込んでの単刀直入での捜索。下手人はなかなか分からず捜査は難航しますが、思わぬところから手掛かりが。そして意外な結末からの、その後も物語は意外な先まで続いていきます。90分でここまで描くとは思っていなかったのですが、急ぎ足になり過ぎることもなくテンポよく見れる仕上がりになっていました。
 天敵どうしが命令をきっかけに利害の一致でバディを組んで命がけの仕事に挑む、幕末の主要人物総出演で、コミカルかつ骨太に描いた正月時代劇です。
 原作は五十嵐貴久の小説『相棒』です。89分の作品でした。

 
花の誇り
   瀬戸浅香 主演   08年12月20日放送   NHK 夜9時から

 商家の生まれだった田鶴は、幼き頃その気質を見込まれ、組頭の寺井家の養女となった。ところが13年前、田鶴が慕っていた寺井家の跡取り
である兄の新十郎(山口馬木也)が割腹自殺する。その理由は、田鶴がお城に行儀見習いとして上がっていた時の友達・三弥(酒井美紀)にふら
れたためだとされた。
 そして時は流れ、田鶴と結婚し寺井家の婿となった織之助(田辺誠一)に、家老職へ推挙の話が舞い込む。だがその最有力候補は、新十郎をふ
って三弥が嫁いだ宗方惣兵衛(葛山信吾)だった。三弥に対する報復の念が燃え上がった田鶴は、織之助を焚きつけようとするが、当の本人は出
世欲のない釣り好きののんき者。
 そんな折、寺井家の前で斬り合いがあり、田鶴は怪我を負った旅の侍を助ける。その侍は、なんと亡くなった兄・新十郎に生き写しだった。関根
友三郎(山口馬木也・二役)と名乗った侍は、国元に不正ありという密書を江戸から届けに来たという。その不正の大元は、筆頭家老の平岐権左
衛門(石橋蓮司)。家老になるためには、最権力者である彼のご機嫌をとらなければならないが…。
 平岐が放ったと思われる刺客に、関根と家来を殺され、田鶴は免許を受けた小太刀を持って仇討ちに立つ。
 死んだ兄のことが忘れられない田鶴、新十郎に重ねられ、自分を生きていないと感じる織之助、そして素直に思いを告げられなかった三弥、そ
れぞれが前を向いて生きていけるようになるまでの話に、お得意のお家の不正と下っ端役人の葛藤を絡めた、藤沢周平原作の物語です。原作は
「榎屋敷宵の春月」(「麦屋町昼下がり」所収) 。
 なんでもそつなくこなせる田鶴と、虫も殺さぬようなかわいい美人の三弥の笑顔の対決が怖い、女の物語です。

母恋いの記
   黒木瞳 劇団ひとり 主演   08年12月13日放送   NHK 夜9時から

 平安の時代を舞台にした、世にも美しい女性と、その息子の物語。
 大納言国経(大滝秀治)とその妻は、50歳以上の年の差がありながら、互いに愛し合っていた。そして7歳の息子・滋幹(谷端奏人)とともに、身
分は低いながらも幸せに暮らしていた。ところがその妻が絶世の美女であると知った時の権力者・左大臣の藤原時平(長塚京三)は、策謀を巡ら
し、彼女を奪い去ってしまう。
 大納言は失意のうちに狂い、亡くなってしまう。
 わずか7歳で突如、母と別れさせられた滋幹(劇団ひとり)は、成人した後も美しかった母を忘れることができない。身分違いとなり、会えなくなっ
た母に文を出すが、時平と母の子である敦忠(川久保拓司)の嫉妬を買ってしまう。そして陰険な陰謀を巡らされ、しだいに滋幹も、精神を追い詰
められていく…。
 前半の役は23才と、実年齢と20才以上の差がありながら、それを全然感じさせないどころか、心からきれいだと思える黒木瞳の美貌がすばらし
いです。そりゃ、あんなにきれいなお母さんなら、取りあいになるし、息子たちもいつまでも親離れできないというもの。説得力のある美しさです。
 原作は、谷崎潤一郎の「少将滋幹の母」。74分間の作品です。

必殺仕事人2009
   東山紀之 主演   09年1月4日放送   ABC 夜9時から

 2007年に放送された必殺仕事人の新作が、帰ってきました。9日から始まる連続ドラマに先駆けての、2時間スペシャルです。また、今年は必殺
仕事人30周年ということで、記念の作品でもあります。
 主役は前回に引き続き、南町奉行所の見回り同心・渡辺小五郎。相変わらず姑と嫁からの豪華な朝食に辟易。そして経師屋の涼次(松岡昌
宏)。相変わらずの食道楽で、その周りには同じ抜け忍の玉櫛(水川あさみ)の姿が。一方、からくり屋の源太(大倉忠義)は亡くなった恋人の残し
ためし屋「その」の経営が忙しく、からくりは止め、また罪の意識から裏稼業からも足を洗っていた。そして忘れていけない中村主水(藤田まこと)
は、なんと今回、書庫番から番屋勤務に回されてしまう。
 街中では薬が値上がりし、年寄りたちの住む長屋は取り壊されようとしているのに、幕府はなんの対策も打たず、年寄りたちの憤りが高まってい
た。そんな中、薬種問屋の恵比寿屋(竜雷太)だけが薬を安売りし、評判になっていた。ところがこの恵比寿屋こそが、薬の値上げを企み、金払い
の悪い老人たちを苦しめている張本人だったのだ。年寄りたちを守る戦いで玉櫛は命を落とし、知り合いを殺された源太は、再び裏稼業に手を染
めることを決意。また小五郎は、剣術道場時代の友人で、今は浪人の権藤伊左衛門(沢村一樹)と再会。世のために何かをしたいと言う伊左衛門
だったが、彼もまた貧困と出世欲に溺れていく。
 必殺シリーズらしく世相を反映させた話となっていましたが、必殺シリーズには珍しく大立ち回りがクライマックスでした。連続ドラマに登場する玉
櫛の妹・如月(谷村美月)の顔見せもあり。

番組公式サイト http://hissatsu2009.asahi.co.jp/

必殺仕事人2010
   東山紀之 主演   10年7月10日放送   ABC 夜9時から

 今年の初めに亡くなられた藤田まことさんの追悼作品です。作中では中村主水は亡くなったわけではなく、書き置きを残して急に西国へ旅立った
ことになっていました。
 世の中が不況に苦しむ中、若くして勘定吟味役に抜擢された風間右京乃助(小澤征悦)は幕府の財政難を立て直すため、橋の架け替えやお狩
り場普請など金のかかる工事を次々と取りやめにしていった。その事業仕分け政策は一部の奉行と大店の癒着を崩す効果もあったが、その一方
で町では、元からの不況の上に工事の取りやめから日銭稼ぎもできず、貧困にあえぐ庶民たちが溢れていた。また武士ばかりを狙った武士殺しも
横行していた。
 庶民たちから不況の根源だと恨まれる右京乃助だが、裏で彼は無役の旗本・柿本平三郎を名乗り、私財を投じて寺で炊き出しを行っていた。だ
が彼を敬愛する町民たちが右京乃助を恨み武家殺しを重ねていると知り、また彼が炊き出しのために父が徳川家より頂いた由緒ある茶碗を売り
に出したことを政敵である、普請奉行・酒巻勘解由(本田博太郎)と大奥のお年寄り・霧島(かたせ梨乃)に知られてしまったことで、進退きわまった
彼は一変、悪事の道へ転がり落ちる。
 主水を除いて今回もメンバーには変わりなし。南町奉行所見廻り同心の渡辺小五郎(東山紀之)は、妻のふく(中越典子)が懐妊したと聞き、人
殺しである自分が親になっていいものかどうか思い悩む。経師屋の涼次(松岡昌宏)は旅先で、貧困のために家族を失った少女から右京乃助を
殺して欲しいと依頼を受ける。また彼の妹分である如月(谷村美月)は、柿本平三郎と恋仲になり子を身ごもった娘・お咲(前田亜季)と親しくなり、
豹変した右京乃助の毒牙にかかった彼女の仇を、涼次の前から自分が姿を消すことと引き換えに討ってほしいと依頼する。仕立て屋の匳(田中
聖)は、仕事中を武士殺しと思われる人物に見られてしまい、しばし身を隠す。花御殿のお菊(和久井映見)は、右京乃助の身辺に付きまとってい
る坊主(内藤剛志)が、流しの仕事人だと気づいて接近する。レギュラー陣それぞれにもドラマがあるものの、右京乃助パートに比重が多く置かれ
た展開でした。

番組公式サイト http://hissatsu2010.asahi.co.jp/

必殺仕事人2012
   東山紀之 主演   12年2月19日放送   ABC 夜9時から

 必殺仕事人が一年半ぶりに復活です。
 新しくできた本町奉行所に移動になった見回り同心の渡辺小五郎(東山紀之)。そのころ巷には、幕府から次々と大きな土木仕事を受け負って
いる塵尽会が、あちこちの牢屋に溢れかえる罪人たちを人足として使っているという噂が流れる。小五郎は噂の真相を確かめるために塵尽会に
潜入捜査をしろと命じられるが、嫌で、仕立て屋の匳(田中聖)に押しつけようとする。一方、金のために家出娘・お春(剛力彩芽)を助けた経師屋
の涼次(松岡昌宏)は、すぐに金を払えないというお春の扱いに困って、匳に押しつける。実はお春は、大店のお嬢様だったが、恋人の与平(満島
真之介)が自分のために人殺しをしてしまい、牢に入れられたものの、今は塵尽会の人足をしているという手紙をもらって、彼に会うために家出を
してきたのだった。お春の話を聞いた匳は、彼女のために罪人の振りをして、塵尽会の人足たちに近づく。「世のため、人のため」が合言葉の塵尽
会の真の顔とは…。また塵尽会の棟梁・弥勒坊燕斎(高橋英樹)は、花御殿のお菊(和久井映見)の昔の恩人・仙吉だという。燕斎は本当に悪人
なのか…。
 レギュラー陣には変わりなし。高橋英樹が悪役に初挑戦するのが見どころでした。


必殺仕事人2013
   東山紀之 主演   13年2月17日放送   ABC 夜9時から

 ジャニーズの必殺が1年ぶりに登場です。
 なんと仕立て屋の匳(田中聖)が辻斬りに襲われる。傷は急所をわずかに外れており、命に別状はない。そして同じように急所を外れた辻斬りの
被害がすでに16件も起きていた。そして怪我人が続出したおかけで患者で賑わっているのが小宮山診療処。だが院長の青年・小宮山勝之進(渡
辺大)には重大な秘密があった。そしてそれを知りながらも勝之進を立派な医者にするためにどんなことでもすると言う、父の小宮山泰山(里見浩
太朗)。彼らと彼らの背後の闇を、仕事人が暴き、始末する。
 大怪我をした匳に変わり、ゲストの仕事人が登場。その名も胡桃割りの座坊(中村獅童)。首の骨をへし折る指の力もすごいが、性格も一癖あ
り。姑・こう(野沢陽子)と妻・ふく(中越典子)に大事にされるさぼり魔・渡辺小五郎に、なんだかんだ言いながらも今回もいい人ぶりを発揮しまくり
の経師屋の涼次(松岡昌宏)、そして飄々とした美人の花御殿のお菊(和久井映見)と、レギュラーは変わらずでした。

番組公式サイト http://www.asahi.co.jp/hissatsu2013/

必殺仕事人2014
   東山紀之 主演   14年7月27日放送   ABC 夜9時から

 昨年の2月に続いて、必殺仕事人が今年も帰ってきました。しかも2012で、花御殿のお菊(和久井映見)の昔からの知り合い・阿部川の仙吉と、
悪人の弟の双子の兄弟を演じた高橋英樹が再び登場でした。
 渡辺小五郎は仙吉から、近々江戸で大変なことが起こると言う忠告を受ける。その忠告通り、まもなくお上からのお達しがあり、幕府公認の仇討
ち屋が開業する。その元締めが仙吉だった。誰でもお金を出せば合法で仇が討てる商売の登場に、小五郎とお菊は困惑する。
 一方、経師屋の涼次は、江戸を離れて田舎の村で、寺の襖絵を描いていた。ところが井戸の所有権を巡っての村人のいざこざで、住職の隆斎
(永島敏行)が殺されてしまう。
 江戸では、仇討ち屋のずさんな下調べのせいで、人違いで家族を殺された遺族たちの訴えが、奉行所に押し寄せていた。だが幕府からの取り
合うことなしとの通達のせいで、小五郎たちは何もできない。実は仇討ち屋の一件は、異人の来航に向けて江戸の街を大掃除しようという、老中・
加門橋ノ介(岡田義徳)の目論見だった。仇討ち屋の軌道修正を計ろうとする仙吉は、加門から罷免されてしまう。仙吉の後釜になったのは、隆斎
を殺した後、江戸に逃げてきて仇討ち屋となっていた源兵衛(堀部圭亮)だった。隆斎の息子の隆生(知念侑李)は、父の仇を討ちたいと江戸へ出
てきて、源兵衛を見つける。源兵衛を訪ねて行った仇討ち屋で、隆生を止めようとした恋人のおつう(佐々木希)が、加門に斬られてしまう。加門
は、仇討ち屋への反発が大きくなったことで、後ろ盾となってくれていた側用人・中之島頼政(中村梅雀)に裏切られて、仇討ち屋に身を寄せていた
のだ。
 仇討ち屋に家族を殺された人たちの仕事人への依頼料が山積みに。小五郎たちは、隆生を加えての仕事を決意する。
 今回、遺族の訴えを取り上げられないことに小五郎の上司の増村(生瀬勝久)が憤ったり、おつうの面倒を見ていたこう(野際陽子)とふく(中越
典子)が怒りをあらわにしたりと、いつもなら仕事に関わってこない人たちが小五郎の前で感情をぶつけていたのが新鮮でした。


必殺仕事人2015
   東山紀之 主演   15年11月29日放送   ABC 夜9時から

 ジャニーズの必殺仕事人が今年も放送されました。前回、仕事人となったリュウ(知念侑李)も引き続き登場です。
 本町奉行所の同心・渡辺小五郎(東山紀之)と妻のふく(中越典子)は、ささいなことでケンカになり、ふくが家出してしまう。そんな時、縁切り寺の縁天寺の住職と駆け込んでいた女たちが切り殺される事件が起きる。ふくがいたのではと小五郎は焦るが、ふくはいなかった。縁天寺には、寺社奉行・江田島(中丸新将)の鶴の一声で、燕天(竹中直人)が新しい住職となる。
 街で暴れていた旅の男(遠藤憲一)を捕えた小五郎。彼の身元引受人として呼び出されたのは、花御殿のお菊(和久井映見)だった。男は「瓦屋の陣八郎」といい、妻の「泣きぼくろのお宮」と夫婦で裏家業をやっていたのだ。
 寺社奉行から町奉行所にも、縁天寺皆殺しの一件の下手人・勘吉(金子貴俊)を捕えるようにとお達しが来る。しばらくして首を刺した跡のある勘吉の遺体が見つかり、自害したとして処理される。だがその夜、三番筋に勘吉の母親が、息子は下手人ではないと、恨みを晴らすように頼みに来る。お菊は証拠がないと断ろうとするが、陣八郎が勝手に引き受けてしまう。陣八郎はやくざ者に連れて行かれる勘吉をたまたま見ていたのだ。
 陣八郎は勘吉の一件には大きな裏があると主張する。元は寺で暮らしていたリュウも縁天寺は何かおかしいと感じていた。小五郎も引っかかるものを感じるが、縁天寺は寺社奉行の管轄で、調べることもできない。彼らは勘吉を殺したやくざ者たちを仕事に掛ける。だがその時、現場にいた浪人・雉沢清十郎(丸山智己)に陣八郎が襲われ、陣八郎をかばってお宮は命を落とす。
 お宮を亡くして力を落とした陣八郎を見舞った経師屋の涼次(松岡昌宏)は、海に身を沈めようとしていた娘・ゆい(宮武祭)を助ける。彼女は母・お市(田中美奈子)と姉・みさと(宮武美桜)を縁天寺の者たちに殺されていた。縁天寺は、夫の暴力から逃れて駆け込んで来た女たちを食い物にしていたのだ。そして縁天寺を手に入れるため、先代の住職たちを殺したのも、燕天と江田島に雇われた雉沢の仕業だった。お菊の潜入捜査でそれを突き止めた仕事人たちは、陣八郎も加えて仕事に掛かる。

番組公式サイト http://asahi.co.jp/hissatsu2015/index.html
 

 

必殺仕事人2016
   東山紀之 主演   16年9月25日放送   ABC 夜9時から
 今年も必殺が帰ってきました。
 巷では、遊びたい盛りの小娘を言葉巧みに誘っては絵姿を描いて売りさばき、もてあそぶという外道な商売が話題になっています。仕事人たちは、もてあそばれて捨てられた小娘の母の頼みで、関係者たちを仕事に掛けます。
 一方、渡辺小五郎のいる本町奉行所に、大目付預かりの役人、朝比奈藤十郎(安田顕)がやってきます。彼の仕事は奉行所の無駄をなくすこと。先だっても南町奉行所で五人がクビになった聞き、本町奉行所では誰がクビになるのかとピリピリとした空気になります。朝比奈の世話役を命ぜられた結城新之助(田口浩正)も他の同心たちから告げ口されるのではと疑われた上に、家では年頃になった長女のお絹(浜辺美波)が口を利いてくれず、心労が絶えません。久しぶりに出会った幼馴染の鬼頭進之助(寺島進)に愚痴るも、すっかり様子が変わった鬼頭は殺伐とした気配を漂わせて、相手になってくれません。
 経師屋の仕事がなく金に困っていた涼次(松岡昌宏)は、絵師の仕事にありつきます。ところがその仕事は、たぶらかして連れてきた小娘のみだらな姿を描くもの。いつの間にか殺したはずの者たちの商売が復活していたのです。涼次はリュウ(知念侑李)からなじられるが、金のためならなんでもやると、意に介しません。
 奉行所が巻き込まれた朝比奈の陰謀と、年若い娘を食い物にする外道な奴ら、それらが結びつき、結城の命が消された時、仕事人たちが動き出します。
 幕府のお偉方にもツテを持つ、事情通の花御殿のお菊(和久井映見)に、瓦屋の陣八郎(遠藤憲一)も引き続き登場。
 
番組公式サイト http://www.asahi.co.jp/hissatsu2016/
 
 
必殺仕事人
   東山紀之 主演   18年1月7日放送   ABC 夜9時から
 ヤクザに娘を殺された恨みを晴らして欲しいと頼まれた仕事人たち。だが仕事の現場に頼み人が現れ、「この恨み、この手で晴らすが本懐!」と叫びながら、自らの手で相手を殺してしまう。顔を見られたリュウ(知念侑李)に代わって、その頼み人の口を封じた渡辺小五郎。だがそのあと、リュウはいなくなってしまう。
 一方、街では、火を付けた焙烙玉を背負った若者が「我らの怒りを恐れよ!」と叫びながら人ごみの中に飛び込み、爆破自殺をする事件が連続して起きていた。焙烙玉も、頼み人が持っていた武器も、町人が簡単に手に入れられるような物ではない。小五郎はその後ろに、大きな組織があると考える。
 そのころ、みなしごを引き取り無償で勉学を教える「すずらん塾」が話題になっていた。その主宰のすずらん(黒木瞳)は、祭で混雑する境内で焙烙玉事件を身を呈して防いだことで、さらに名声を高める。だがすずらんには裏の顔があった。みなしごの中から、今の世の中に不満を持ち、それを正すためなら犠牲を出してもいいと考える子を選び出し、壬生の幻楼(奥田瑛二)に引き渡していたのだった。幻楼は、武器を集め、恨みを持つ者を言葉巧みに操り、世に不満を持つ若者たちを「世のため人のため」とそそのかし、命を賭けて命令に従う私兵を作り、焙烙玉での自爆をさせていた。
 仕事の現場にいた幻楼の配下の雀蓮(間宮祥太朗)の跡を付けようとして頭を打ったリュウは、記憶をなくし、幻楼の組織の一員となっていた。そして彼を見つけて連れ戻そうとした涼次(松岡昌宏)に襲い掛かる。
 幻楼の顔を見た小五郎は、幼い頃に庄屋だった両親を殺した盗賊だと気づく。だが頼み人のいない仕事をするわけにはいかない。悩む彼に、旅からいつの間にか戻っていた主水(藤田まこと)が、そっと頼み料を差し出す。
 そのほか、花御殿のお菊(和久井映見)に、瓦屋の陣八郎(遠藤憲一)、小五郎の義母・こう(野際陽子)と妻・ふく(中越典子)、小五郎の上司の増村(生瀬勝久)といったおなじみのメンバーも出演。また新たに小五郎の同僚で相棒に住之江彦左衛門(松尾諭)が登場しました。
 1年3カ月ぶりの新作となった今作は、必殺復活からの10周年記念作品。亡くなった藤田まことを出演させるなど、豪華な作品となりました。
 
 番組公式サイト https://www.asahi.co.jp/hissatsu2018/
 
必殺仕事人2019
   東山紀之 主演   19年3月10日放送   ABC 夜9時から
 母が亡くなって一年、落ちこんで遺品整理も進まないふく(中越典子)に困っている小五郎は、気分転換してもらおうと家に招いた住之江(松尾諭)から、価値のある品物を欲しがっている人と人との橋渡しをしている弥吉(伊藤健太郎)という青年を紹介されます。遺品を仏像に替えてもらいふくも喜びますが、弥吉は手間賃をもらっていないと言います。
 一方、怪我をして医者に行ったリュウ(知念侑李)は、そこでおたね(飯富まりえ)という娘に出会います。優しく手当てされて惚れそうになるリュウでしたが、彼女は弥吉と結婚の約束をしていました。弥吉は油問屋の手代で、よく働く絵に描いたような善人だと評判でした。彼の評判を聞きつけた豪商・上総屋清右ヱ門(西田敏行)は、弥吉のやっていることは『献残屋』という立派な商売で、弥吉に商売を始めないかと誘います。が、弥吉は断ります。
 おたねの住む長屋がやくざ者に襲われ、母親が殺されてしまいます。奉行所に訴えた弥吉ですが、奉行所は上からのお達しがあり、訴えを聞いてもらえません。悔しさに沈む弥吉でしたが、お金を出せば恨みを晴らしてくれる仕事人の噂を聞き、一度だけと決め、手間賃をもらい、そのお金で頼み人となります。
 再び、清右ヱ門から「金があればなんだってできる」と聞かされた弥吉は、油問屋を辞め、清右ヱ門を後ろ盾に献残屋を始めます。商売はうまくいき、羽振りがよくなった弥吉はおたねに、一緒にいれない代わりにと小判を渡します。さらに弥吉の店は繁盛し、弥吉は持ち前の善人ぶりで周りの人を助けようとしますが、それは清右ヱ門の望んでいないことでした。実は清右ヱ門は老中ともつながりがあり、おたねの長屋を壊した黒幕でもあったのです。弥吉は巧妙な罠をかけられ、清右ヱ門に言葉巧みに操られ、清右ヱ門が仲立ちをした将軍家と縁のある娘と結婚するために、おたねを手にかけます。
 一命を取り止めたおたねは、弥吉にもらった金で仕事を頼みます。そして弥吉の祝言の夜、仕事人たちは仕事に出かけていきます。
 花御殿のお菊(和久井映見)に、経師屋の涼次(松岡昌宏)、そして瓦屋の陣八郎(遠藤憲一)たち仕事人も引き続き登場。さらに渡辺家には、亡くなったこうの代わりに、こうの妹・綾小路てん(キムラ緑子)がやってきます。
 新しい商売を始める若者たちを操る大商人に、真面目な若者が狂わされていく様子を描いた今作でした。
 
 番組公式サイト https://www.asahi.co.jp/hissatsu2019/
 
必殺仕事人2020
   東山紀之 主演   20年6月28日放送   ABC 夜9時から
 江戸の町では子を思う親の心に付け入る詐欺が横行していました。渡辺小五郎の勤める本町奉行所に、新しい奉行・湯川(市村正親)と与力・田上(杉本哲太)がやってきます。湯川はやくざ者の取り締まりを強化する方針を打ち出します。
 庭師として、田上の屋敷の庭の手入れをしていたリュウ(知念侑李)は、引きこもりになっている田上の息子・新之丞(杉野遥亮)と親しくなります。リュウに触発されて外に出た新之丞は、若者たちに新しい考え方を無償で教える『新生塾』の溝端(駿河太郎)の講義を聞き心酔します。
 小五郎は、町で助けた少女・おつゆ(古川凛)に懐かれ、家まで付いて来られてしまいます。おつゆの母・たけ(森川葵)は住み込みで働いていました。
 涼次は飲みに行った店で、たけと出会います。たけは、いつか娘と小さな居酒屋をやるのが夢だと語ります。たけはすぐに贔屓の客に呼ばれて行ってしまいます。たけのことを贔屓にしていたのは、羽振りの良い若い男達で、彼らは実は半グレと呼ばれる、やくざ者と違って義理も人情もない分よけいにたちが悪い者たちでした。たけは彼らに店が安く手に入ると騙され、貯めていたお金を取られ、最後にはおつゆが見ている前で殺されてしまいます。おつゆを不憫に思った涼次は、おつゆに仕事人のことを教え、おつゆを頼み人に、仕事人たちは半グレの3人を始末します。
 一方、新生塾に入った新之丞は、知らずに溝端から親を騙すための手紙を書かされ、詐欺の片棒を担がされていました。新生塾は詐欺の手下となる若者を見つけるために溝端が開いたものでした。そのことを知った新之丞は父に訴えようとします。しかし田上は、湯川から新之丞が首謀者だと聞かされ、新之丞の筆跡の手紙を見せられ、新之丞の言葉を聞かず、息子を殺し、自分も自害します。しかし真の黒幕は湯川でした。夫と息子を一度に亡くした田上の妻・しずえ(中島ひろ子)の恨みを晴らすため、仕事人たちは再び仕事に出ます。
 仕事人の花御殿のお菊(和久井映見)を初めとして、小五郎の妻・ふく(中越典子)や、その叔母・てん(キムラ緑子)、小五郎の同僚・住之江(松尾諭)に、上司の増村(生瀬勝久)など、レギュラー陣も出演。リョウの武器が、剪定ハサミをばらした物に変更になりました。
 
 番組公式サイト https://www.asahi.co.jp/hissatsu2020/
 
   東山紀之 主演   22年1月9日放送   ABC 夜9時から
 同心の仕事にやる気を見せない渡辺小五郎を見かねて、与力の増村(生瀬勝久)は正義感の強い岡っ引き・亥ノ吉(岸優太)を付けます。小五郎を「親方」と呼ぶ亥ノ吉は、若者らしい無鉄砲さで、女性に乱暴しようとした旗本・岸田藤十郎(木村了)を捕まえてきますが、藤十郎は実は勘定奉行の息子で、すぐに無罪放免となります。
 同じころ、経師屋の涼次(松岡昌宏)は、伊ノ助の弟で、旧知の若い絵師・才三(西畑大吾)と一緒に仕事をすることになります。涼次は才三の才能を認めており、人見知りの才三は涼次のことを慕っています。
 藤十郎がまたも女性を狙っているのを見た亥之吉は捕まえようとしますが、奉行所は動きません。憤った伊ノ吉は「世の中には知られていない悪人がごまんといる」と才三に言い含め、水で薄めた酒を銘酒と偽り売って儲けた酒屋を告発する絵を、夜陰に紛れて酒屋の外に描きます。絵はたちまち話題になり、気をよくした亥ノ吉は世直しのためと、房楊枝を売り渋って値を釣り上げた楊枝屋を告発する絵を才三に描かせます。人が集まったところに十手を持った亥ノ吉が乗り込み、店の主人を問い詰めて罪を認めさせます。才三の絵は、人知れず一晩で描かれることから『晩来(ばんくる)』と呼ばれるようになり、亥ノ吉の元には世直しをしたいと考えていた勘太(須賀健太)たち若者が集まってきて、『世直し組』を結成します。
 一方、瓦屋の陣八郎(遠藤憲一)は足を怪我して屋根に登れなくなり、リュウ(知念侑李)を誘ってそば屋を始めます。そのそば屋の初めての常連客となってくれた、辰巳芸者の美代(高月彩良)。彼女は亥ノ吉と才三の幼馴染みでもありました。しかし藤十郎に目を付けられ、手ごめにされそうになったのを拒んだ美代は殺されてしまいます。それを知った才三は、仕事人に仇討ちを依頼します。
 晩来と世直し組の活躍はますます勢いを増やし、江戸の人々はいつ自分たちが釣るし上げられる側に回るかもしれないと、不安に怯え始めます。そして亥ノ吉たちがみなしごだった幼い頃によく握り飯を分けてくれた団子屋の老夫婦が、子供を虐待しているという噂に、世直し組が追い打ちをかけ、その心労で老夫婦は亡くなってしまいます。ですがその噂は誤解でした。正義を暴走させた亥ノ吉は、それを止めることができず、さらに暴走。才三は団子屋の老夫婦の仇を仕事人に依頼します。
 前回の作品から約1年半後の放送となった今回、ウーバーイーツや、流行り病による居酒屋の時短営業など、時勢を取り入れた小ネタもたくさん。正義の振りをして不特定多数が1人を執拗に叩くSNSの事件を下敷きにした、熱い正義の心を持った若者が、その心の強さで暴走し、堕ちていく話でした。
 花御殿のお菊(和久井映見)他、ふく(中越典子)や、その叔母のてん(キムラ緑子)など、主要配役は変わらず。リュウの武器は匕首になりました。


 
   東山紀之 主演   23年1月8日放送   ABC 夜9時から
 江戸では、疫病が大流行。かかると高熱で顔が赤鬼のようになることから鬼面風邪と名付けられ、
その病に対処するために、疫病改め方に天野景信(西村まさ彦)が付き、そこに渡辺小五郎は派遣されます。天野は、呉服屋の越前屋孫次郎(正名僕蔵)が私財で建てた
江戸養生所を紹介。腕が良いと評判の町医者・酒井東庵(橋本じゅん)とその助手の文代(秋元才加)もそこに呼ばれます。東庵は瓦屋の陣八郎(遠藤憲一)の幼馴染みで、
二人は子供のころ、どんなに貧しくても人に胸を張っていける生き方をしようと約束した仲。それを思い出さされた陣八郎は、体調の悪さもあって、心に迷いが生じます。
 経師屋の涼次(松岡昌宏)は、近所に住む働き者の娘・あかり(志田彩良)が風邪をひいているのを見て、東庵のいる養生所で診てもらうことを勧めます。
しかし越前屋の目当ては、患者の数によって幕府からもらえる給付金でした。越前屋と結託している医者・玄斉(相島一之)は、ただの風邪だったあかりを鬼面風邪と診断して
牢屋のような隔離部屋に押し込めます。その仕組みを聞いてしまったあかりは、越前屋たちに殺されてしまいます。
 魚屋をしていたリュウ(知念侑李)が、お得意様の文代とその父・源蔵(ガッツ石松)から聞いた話から、養生所の裏に気づいた仕事人たち。あかりの弟・田助(池川侑希弥)を
依頼人として仕事をします。
 ところが給付金詐欺の首謀者は天野でした。天野は玄斉の代わりに東庵を抱き込もうとします。真面目に鬼面風邪の特効薬を研究していた東庵は、文代から特効薬の開発に
成功したと聞いて、己の虚栄心のために文代の功績を自分のものにし、天野が薬を高額で売るのを黙認。そのことを咎めた文代を殺します。源蔵から依頼された仕事人たちは、
再び仕事へ。しかし東庵に情けをかけた陣八郎が相打ちになってしまいます。
 コロナと給付金詐欺を題材にした今作。ふく(中越典子)が小五郎に、あまびえの木彫りのお守りを渡したり、特効薬に「鬼滅丸」と名付けて人気が出そうというセリフがあったりと、
時勢ネタもありました。
 花御殿のお菊(和久井映見)や、てん(キムラ緑子)に、増村様(生瀬勝久)と住之江さん(松尾諭)と、レギュラー陣は変わらず。リュウの身のこなしが格段に上がり、
住之江さんが増村様に対してちょっと生意気になりました。

 
 
   東山紀之 主演   23年12月29日放送   ABC 夜9時から
 リュウ(知念侑李)は、亡くなった瓦屋の陣八郎(遠藤憲一)の使っていた武器を手に仕事をするも、殺し損ない反撃にあいかけたところを、浪人に助けられます。彼は
花御殿のお菊(和久井映見)が助っ人を頼んだ流しの仕事人・雪丸(中尾明慶)でした。剣の腕は立つが、執拗なほどになます切りにしてめった刺しにする手口に、
渡辺小五郎は不快感を覚えます。
 そのころ江戸の町では、残忍な殺し方から「人斬り牛鬼」と呼ばれる辻斬りが出没しており、奉行所をあげて探索が行われていました。その一方で、川に橋を架ける
大掛かりな土木作業が行われており、作事奉行の豊川大和守忠次(田山涼成)から見回りを強化するように頼まれていました。その工事は、仏のツネと呼ばれる
小間物問屋の女将・山崎ツネ(松下由樹)が一手に仕切っていました。リュウはその現場で働き、若くて腕のいい大工の六助(平井亜門)と知り合います。六助から
仕事をきっちりこなすことの大切さを説かれたリュウは、しくじってしまった裏の仕事に迷いを持ちます。
 物価高で仕事道具の値上がりに苦しむ経師屋の涼次(松岡昌宏)は、借金を頼みに行ったお菊の家で、髪結いの棗(松下奈緒)に出会い、一目惚れ。生真面目な棗には
相手にされませんが、のちに踊りのうまい娘たちが歌って踊る「神田女子衆」という興行小屋の楽屋で再会します。女子たちの一人・きよ花(小西桜子)が休んでいるのを知り、
二人はお見舞いへ。そこできよ花が、興行主に騙され、興行小屋に金銭援助をしている人気女形・蔦八(野間口徹)たちに手籠めにされたことを知ります。きよ花は瓦版屋に
その話を持っていきますが、自分の名を売るために蔦八を利用したと世間から攻撃され、命を絶ちます。きよ花を熱心に応援していた梅蔵(黒田大輔)は、きよ花を手籠めにした
奴らへの復讐を三番筋に頼みます。的は四人。人を斬りたい雪丸から、リュウは手を引けと言われてしまいます。ところが仕事に乗り込んだ先で、的の蔦八が男装をした棗に
切り殺されるのを目撃。翌日、お菊と涼次が棗の家を訪ねると、棗は死のうとしていました。実は棗の夫は、商売を誹謗中傷で邪魔されて、亡くなっていたのでした。
そして形見の刀で鍛錬を積んだ棗は、夫を死に追いやった者たちに復讐をして回っており、それが人斬り牛鬼の正体でした。お菊は棗に仕事人になるように誘います。
 橋が完成し、橋の周りは人が押しかけます。しかしその後の長雨で、橋は崩落。幾人もの人が亡くなり、六助の母親も犠牲になります。六助は、工事の現場を見に来ていた
ツネの落とし物から、工事が手抜きだったのではないかと疑い、山崎屋へ乗り込みます。豊川とツネは手を組み、手抜き工事で金を儲けていたのでした。それを知った六助は
殺され、罪をかぶせられます。しかし六助が書いた手紙から真相を知ったリュウは、六助に代わって復讐を頼みます。
 仕事から外されたリュウを除いて、仕事に向かう涼次、雪丸、小五郎、そして初仕事の棗。しかし小五郎が豊川を追い詰めた時、雪丸が裏切ります。雪丸は用心棒に
雇われていたのでした。雪丸に代わってリュウが匕首で的を仕留めます。そして雪丸は小五郎に斬られます。
 50周年となった今年、2本目の必殺仕事人スペシャルでした。奉行所の増村様(生瀬勝久)と住之江さん(松尾諭)、ふく(中越典子)に、てん(キムラ緑子)と、
レギュラー陣に変わりはありませんでした。


 
白虎隊
  山下智久 主演   07年1月6日、7日放送   ABC 夜9時から
 悲劇の最期を遂げた会津の少年隊・白虎隊を、ジャニーズの少年たちを中心に、二夜連続の約5時間で描いた大作。
 白虎隊の直系の子孫・酒井新太郎(山下智久)は、朝帰りしたところを会津から来た祖母・敏子(野際陽子)に見つかり、こっぴどく叱られそうにな
る。新太郎は、運悪く訪ねてきた篠田雄介(田中聖)とともに、祖母がいないところ、会津へと逃げる。ところが頼った優しい祖父・峰男(伊東四朗)
は、二人を白虎隊記念館に連れて行く。そこには二人にそっくりな肖像画が飾られていた。
 会津藩では、幼少の頃から「什の教え」と呼ばれる教訓を叩き込まれ、会津魂を持つ武士になるようにと厳しく育てられる。酒井家の次男として
生まれた峰治(山下智久)もまた、病弱な母・しげ(薬師丸ひろ子)から「立派に生き、立派に死ね」と育てられ、藩一の名門の藩校・日新館に、幼
馴染の篠田儀三郎(田中聖)とともに入学する。
 だが幕末の動乱は、会津魂を貫き通そうとする藩主・松平容保(東山紀之)の会津藩を過酷に追い詰める。孤立無援となった会津藩は、峰治た
ち16、17才の少年たちだけで結成された白虎隊をも、戦場に送り込むことを余儀なくされる。
 什の教えによって、母や家族以外の女と口を利いたことがなく、初陣がはじめての泊りがけの外出になるような少年たちは、藩のために命を賭
けて戦えることを誇りに思い出陣していく。だが猛攻撃を受け、散り散りになった隊士たちは、負傷し、疲弊し、ある者は倒れ、ある一団は街が燃
やされた煙に包まれた城を見て、城が落ちたと思い自刃する。また生きて城に撤退した隊士も、日夜銃弾の撃ち込まれる城内で女子供関係なく篭
城し、命をすり減らしていく。
 今からたかだか140年前の時代に、これほど気高く戦い死んでいった少年たちがいたとは。そんな少年たちの日常の風景も織り交ぜ、涙を誘っ
た作品でした。

番組公式サイト http://www.tv-asahi.co.jp/byakkotai/

白虎隊〜敗れざる者たち
   北大路欣也 主演   13年1月2日放送   大阪 夕方5時から

 文久2年(1862年)、京都守護職を命じられた会津藩主・松平容保(伊東英明)に対し、会津藩家老・西郷頼母は強硬に辞退するよう諫言してい
た。会津藩は飢饉が続いており、東北からは遠い京都を守るための財源の余裕はなかったのだ。
 会津の民のことを常に思い、領主のために民はいるのではないと説き続けながら、幕末の逆風にさらされた会津に生きた西郷頼母と、妻の千重
子(黒木瞳)を初めとする家族の話でした。
 毎年恒例の一挙七時間放送の新春ワイド時代劇。今年の提供もヤマダ電機でした。

番組公式サイト http://www.tv-tokyo.co.jp/byakotai/

風雲児たち〜蘭学革命篇(らんがくれぼりゅうしへん)〜
   片岡愛之助 主演   18年1月1日放送   NHK 夜9時から
 日本の医学を大きく発展させた、オランダの医学書の翻訳『解体新書』の制作に取り組んだ前野良沢と杉田玄白(新納慎也)。しかし刊行された『解体新書』に、前野良沢の名前はなかった…。鎖国時代の日本で、オランダ語で書かれた医学書『ターヘル・アナトミア』の翻訳に臨んだ前野良沢と杉田玄白を中心とする蘭方医たちの苦労と心情を描いた正月時代劇。
 原作はみなもと太郎の同名大河ギャグ漫画。脚本は歴史ファンを自称する三谷幸喜。お正月らしく、草刈正雄、山本耕史、村上新悟、迫田孝也など、同じ三谷幸喜脚本の『真田丸』の出演者をふんだんに使った豪華な配役でした。
 
 
吹く風は秋
   橋爪功 主演   18年7月1日放送   関西 日曜夕方4時から
 スカパーと時代劇専門チャンネルが、藤沢周平没後20年を記念して制作した新作時代劇、藤沢周平新ドラマシリーズ第二弾『橋ものがたり』の中の一作です。
 壺振りの弥平は、六年ぶりに江戸に戻ってきた。世話になっていた親分に不義を働き、これまで逃げていたのだ。訪れた深川で、言葉を交わした女郎のおさよ(臼田あさ美)の身の上を聞くと、夫の借金を返すため、子どもと旦那を置いて、ここで働いていると言う。弥平は弟分だった徳治(杉本哲太)のとりなしで、親分の喜之助(岩松了)に詫びを入れる。喜之助は許す条件として、今度遊びに来る他国の親分からイカサマ博打で金を巻き上げることを命じる、しくじれば右腕をもらう、と。その喜之助の元で、おさよの夫・慶吉(波岡一喜)を見かける。おさよは慶吉が必ず買い戻しに来ると言った言葉を信じていたが、慶吉はどうしようもないクズだった。弥平は…。
 原作の『橋ものがたり』は、10篇からなる短編集。短編らしく、1時間15分の放送時間でした。
 
   望月歩 葵わかな 主演   23年1月6日放送   大阪 夜7時30分から
 元和八年、江戸城では、次期将軍となる徳川家光(望月歩)が悩みを抱えていました。
 一方の令和五年の東京でも、一人の若者(望月歩・二役)が進路について悩んでいました。そこに現れた幼馴染みの娘(葵わかな)の付き添いで、家の蔵から出てきた
家光が描いたという絵をテレビ番組『なんでも鑑定団』で鑑定してもらうためテレビ局に向かうことになります。通された部屋で収録の時間まで待っている二人の前に
現れた老紳士(里見浩太朗)は、絵を見て、二人にその絵が描かれたいきさつと、家光の隠された恋の話を始めます。
 若き家光は、城での窮屈な暮らしに嫌気がさし、もっと自由に生きてみたい、将軍にはなりたくないと、教育係の大久保彦左衛門(里見浩太朗・二役)に言い出します。
 売り言葉に買い言葉で、家光は十日で一人前の魚屋になるという賭けをすることに。彦左衛門は以前から知り合いの魚屋・一心太助(高嶋政伸)に、貧乏旗本の三男坊だと偽って
家光を預けます。十日で一人前になるように仕込むという無茶な願いですが、大恩ある彦左衛門の頼みでは断れないと、引き受けた太助と、その妻・お仲(戸田菜穂)。
尻っぱしょりもメザシも知らない家光の世間知らずっぷりに呆れながらも、二人は親身になって時に厳しく家光に魚屋の仕事を教えます。
 怒られることになれていない家光も、十日の辛抱と耐えているうちに、魚の扱いや魚河岸の符丁、江戸っ子口調など驚異的な早さで覚え、江戸の暮らしになじんでいきます。
その中で出会った医者・杉野一庵(内藤剛志)と、その娘・お仙(葵わかな・二役)。医者の修業のため男の恰好をしていたお仙を、はじめは無礼な小僧だと思っていた
家光ですが、一庵とともにみなしごの世話をしていると知り、また大坂の戦で本当の両親を亡くしていた境遇などを知って、だんだんと心惹かれていきます。お仙もまた、
人とは違う大きな考え方を持った家光に好意を寄せていきます。
 家光のいなくなった江戸城では、家光の弟を将軍に推す母・お江(財前直見)と本多正純(小林稔侍)が陰謀を画策。また魚河岸を乗っ取り、その上前を撥ねようとする
悪徳商人も現れ、不穏な空気に。太助たち魚屋の生活がおびやかされていきます。
 男女逆転『ローマの休日』さながら、江戸の街に姿をくらましたプリンスの秘密の十日間。将軍の世継問題と、魚河岸の未来、賭けの結果に一回り成長した家光は
どんな決断を下すのか、そしてお仙との恋の行方は…
 その他、彦左衛門の用人・笹尾喜内(中村梅雀)、家光の剣術指南役・柳生宗矩(本田博太郎)、その息子・十兵衛(上川隆也)、家光の乳母・お福(名取裕子)に、
在りし日の家康(高橋英樹)など豪華ゲストを配しての、テレビ東京七年ぶりの正月時代劇。お正月らしい、爽やか青春もので、時代劇俳優勢ぞろい、大立ち回りもある、
華やか明るい時代劇スペシャルでした。
 原作は映画『江戸っ子祭り』(脚本・小國英雄、監督・島耕二)です。


 
 
水戸黄門SP〜ご老公最後の旅へ〜
   里見浩太朗 主演   15年6月29日放送   MBS 夜9時から

 2011年に第43部で終了した『水戸黄門』が、今夜限りの2時間スペシャルとして復活しました。
 養子に出し、讃岐高松藩主となった息子・松平頼常(高橋光臣)が、自分を恨み、斬りかかってくる夢を見た光圀(里見浩太朗)。そのころ、次期将軍の有力候補の甲府藩主・徳川綱豊(永井大)が、刺客に襲われる。だが綱豊本人は、神輿として担がれるだけの将軍になどなりたくないと覇気がない。光圀は綱豊を連れて旅に出ることを提案。綱豊にも町人の姿をさせ、格さん(合田雅吏)、助さん(原田龍二)、八兵衛(林家三平)を連れて、江戸から甲府へ旅立つ。
 甲府で藩を揺るがす悪事を暴いた黄門様一行。だが高松藩で頼常が、女と酒におぼれているという噂を聞き、今度は高松へ。
 噂どおり、頼常は奇抜な格好で領内をうろついては、酒池肉林の日々。領民たちも困り果てていた。だがそれは、本当の悪人を誘い出すための芝居だった。高松藩での陰謀を暴いた一行。頼常も光圀と本音をぶつけ合い、親子の絆を取り戻す。また綱豊も、庶民の暮らしに触れ、よい将軍となる決意を固めた。
 柘植の飛猿(野村将希)と風車の弥七(内藤剛志)も大活躍。弥七にはくノ一の部下が二人もできていました。

番組公式サイト 
http://www.tbs.co.jp/mito/

 

宮本武蔵

   木村拓哉 主演   14年3月15日、16日放送   ABC 夜9時から

 テレビ朝日開局55周年記念ドラマスペシャルと題して、2夜連続、合計5時間近い放送でした。
 記念ドラマというだけあって、主役にキムタク、佐々木小次郎に沢村一樹、お通に真木よう子、沢庵和尚に香川照之と、出演者は話題の人ばか
り。視聴率の取れる人を集めてのお祭りドラマかと思っていたのですが、通常の監督に加えてアクション監督をつけるなど、気合の入った作りこみ
でした。特にアクションは今までにない斬新な感じで、スピードと迫力があり、見応えがありました。
 話題の人を集めただけあって、ビジュアルにも凝っていました。京の名門、吉岡道場の若き天才当主・吉岡清十郎は長い総髪でいかにも遊び人
っぽく、松田翔太の京都弁も似合っていました。佐々木小次郎もイメージどおりの長髪で、沢村一樹がさわやかな好青年に演じていました。しかし
もっとも似合っていたのは、本位田又八のユースケ・サンタマリア。もう出てきた瞬間、「又八だ!」と思ったほどイメージにぴったりでした。
 原作の吉川英治の小説にほぼ沿ったストーリーで、関ヶ原の戦いから、巌流島での決闘までを描いています。前半は荒々しい武蔵が、だんだん
と悟りを開いていくような展開でした。

番組公式サイト http://www.tv-asahi.co.jp/musashi/

みをつくし料理帖
   北川景子 主演   12年9月22日放送   ABC 夜9時から

『この時代小説がすごい!2012年版』で一位を取ったベストセラーの映像化です。
 大坂で生まれた澪は、8歳の時に、大水で家族も家も失ってしまう。そんな彼女を見かねて拾ったのは、大坂一の名店・天満一兆庵の主人夫
婦。澪の舌に才能を感じた夫婦は、澪に板場での修業を付ける。しかしその天満一兆庵も火事で焼失。主人を失くし、女将の芳(原田美枝子)は
澪とともに息子を頼って江戸に出てくるが、息子は行方知らず。生活に困窮する澪は、蕎麦屋・つる家の種市(大杉漣)の好意で店で働けるように
なる。だが水も、味の好みも、風習も、まるで上方と違う江戸の客たちからは、味がしない、女の作る物など食えるかと、散々な扱いを受けてしま
う。そんな中、種市が腰を悪くし蕎麦を打てなくなる。店を任された澪は、時々ふらりと現れる謎の侍・小松原(松岡昌宏)から、厳しくも的確な助言
を受け、独自の合わせ出汁を作り上げる。その出汁で作ったとろとろ茶碗蒸しは評判を呼び、料理番付に載るほどに。しかしそのことで江戸一の
名店・登龍楼からやっかまれ、店に付け火をされてしまう。店を失い悲観に暮れる澪たち。そこに吉原から出られない花魁のために弁当を作って
ほしいと又次(高橋一生)という遊郭の料理番が訪ねて来る。届け先は、あまりの美貌で幻の花魁といわれる・あさひ太夫。実は彼女は、大水に巻
き込まれるまで澪の親友であった大店の娘・野江だった。泣き虫の澪をいつも励ましてくれた野江が生きていたことに勇気づけられた澪は、屋台
でつる家を再建する。
 人相見に「雲外蒼天の相」と言われた澪が、慣れ親しんだ上方と様々な違いのある江戸で、女が料理人となることなど考えられなかった時代とい
う二重の困難を乗り越えながら料理人として育っていく姿を描く、人情と根性の料理時代劇です。


みをつくし料理帖
   北川景子 主演   14年6月8日放送   ABC 夜9時から

 約2年前に放送され、好評を得たシリーズの第二弾となる続編です。
 前回、不幸な境遇になりながらも、工夫して作ったとろとろ茶碗蒸しが料理番付に載り、料理人として江戸の人々に認められた澪。勤めるつる屋
も繁盛しているところから始まりますが、澪が考えた季節の料理を、江戸一の料理屋・登龍楼に先に出されてしまうという事件が。さらに店を手伝
ってくれている、澪の恩人でもある長屋のお隣さん・おりょう(室井滋)が麻疹にかかり、生死の境をさまよう。そして火事でなくなった、前のつる屋の
跡地に同じ店名の女料理人がいる店ができ、そこで食中毒が発生、つる屋の評判は地に落ち、客が来なくなってしまいます。
 一方で、澪の幼馴染みで生き別れになったあさひ太夫(本名・野江、貫地谷しほり)が、別の遊女をかばって客から刺されてしまいます。治っても
どうせ境遇は変わらないと生きる気力をなくしてしまったあさひ太夫を心配して、彼女のいる遊郭・翁屋の料理番の又次(高橋一生)が澪の作った
料理を食べれるよう、あさひ太夫のなじみ客が上方から取り寄せた鱧の調理を澪に頼みますが、翁屋の主人・伝右衛門(本多博太郎)は、女の料
理人を認めません。澪は、うまく料理できなかったら、料理人を辞めるという条件を飲んで、難しい食材である鱧の料理に望みます。
 今回も、身寄りをなくしても一生懸命に生き、料理人の修業を積む澪に、これでもかという不幸が襲いかかります。泣き虫の澪は、涙を流しなが
らも、必死に立ち向かっていきます。
 情に厚いつる屋の主人・種市(大杉漣)や、両親を失くした澪の恩人で親代わりの芳(原田 美枝子)、そして忘れてはいけない、絶妙なタイミング
で澪を助けてくれる浪人(?)の小松原(松岡昌宏)といった前作からのキャストに、やたらといちゃもんを付けるくせに、つる屋に通う人気戯作者の
清右衛門(片岡鶴太郎)が加わりました。
 原作は田郁の同名小説です。
前作の紹介はコチラ


みをつくし料理帖スペシャル
   黒木華 主演   19年12月14日、21日放送   NHK 夜9時から
 約2年半前に放送された連続時代劇の続編となるスペシャル版です。2週に渡って『前編 心星ひとつ』、『後編 桜の宴』それぞれ73分の作品でした。
『心星ひとつ』では澪の作る料理で盛況なつる屋に武家の妻女(佐藤めぐみ)が訪ねてくるところから、話が始まります。早帆と名乗った彼女は、澪に料理を教えて欲しいと頼みます。この早帆、実は小松原(森山未來)の妹で、澪のことを見に来たのでした。彼女の母が腎臓を患っていると知った澪は、医者の源斉(永山絢斗)に相談し、ほうき草の実を料理します。別名ははきぎと呼ばれるほうき草の実を食べられるように加工するには、大変な苦労がいり、澪の手はあかぎれだらけになります。澪は食べられる状態になったほうき草の実を早帆に渡し、調理の仕方を伝えようとしますが、早帆はそれを自分の家に来て料理して母・里津に出して欲しいと澪を連れ帰ります。里津は澪の荒れた手を見、また、澪の心のうちに秘めた恋心を聞き出した早帆から話を聞き、澪を小松原の嫁にと望みます。そして小松原からも嫁になって欲しいと告白を受け、澪はうれし涙を流します。しかしその後、旗本の家に嫁げば包丁を持てなくなると知り、愕然とします。悩む澪に、源斉は「迷った時は目印となる星、心星(しんぼし)を探す」と話し、澪はそれが、自分の料理を美味しいと食べてくれる人たちの顔だと痛感します。澪は辛い決断を下し、小松原に自分の正直な気持ちを打ち明け、涙を流します。
『桜の宴』では、澪の決意に、自分がすべて引き受けると答えた小松原が、自分が心変わりをしたことにして澪を守ります。すべてを知っている澪は小松原の辛さを想い、苦しみます。しかしつる屋の客たちは、澪が戻ってきたことを喜ぶのでした。
 そんなある日、あさひ太夫(成海璃子)のいる吉原の大店・翁屋の主人の伝右衛門(伊武雅刀)がつる屋に澪を訪ねて来ます。上客を招いて開く桜の宴で、澪の料理を振る舞ってほしいという話でした。実は江戸一の料理屋・登龍楼の主・采女宗馬(松尾スズキ)が、伝右衛門が買って吉原で初めての料理屋を始めようとしていた土地を狙っており、それを断るためには伝右衛門は采女が納得するような料理を出さなければならないのでした。引き受けた澪は、高価な紅花をふんだん使った、春を感じられる料理を作り、好評を得ます。しかし采女は、付け合わせに山菜を使ったことを貧乏くさいとケチを付けます。そこにあさひ太夫が現れ、機知に富んだ歌でその場を納めます。宴のあと、澪はあさひ太夫となった幼馴染みの野江と語る時間を得ます。そして伝右衛門からは新しい店の料理人にと望まれますが、澪は断ります。もっと研鑽を積んで、いつかまっすぐ目を見て野江と会いたいからと。
 女の料理人などなく、見下されていた時代に、泣き虫だけど芯の通った澪の強さが痛々しい程に感じる作品でした。
 原作は田郁の同名小説です。


 
壬生義士伝
 渡辺謙 主演   02年1月2日   テレビ東京
 中井貴一主演の映画の方ではなくて、テレビ東京系で正月時代劇として10時間ぶっ続けで放送された方です。放送中に、映画の方のCMバン
バン流してて、ちょっと大丈夫なのか?とか思いました。原作は浅田次郎。
「新選組で一番強かった男」吉村貫一郎(ちなみに実在の人物です)。南部藩の極貧足軽だった彼は、京の新選組の噂を聞き、妻子を養う金を稼
ぐために脱藩、新選組に加わる。そして手当てが出る仕事を好んでやり、「金の亡者」とののしられながらも、自分は生活を切り詰めて金を家族に
送り続ける。しかし時代の波は、新選組にも、そして身分を越えた親友と家族の待つ南部藩にも、容赦なく襲い掛かる。
 剣の腕は一流なれど、心優しい南部藩訛りのさえない男を、渡辺謙が熱演。素朴な人柄がにじみ出る演技も、ひとたび刀を抜いたときの悲痛な
気迫も、さすがは世界の渡辺謙(当時はまだハリウッド行く前だけど)と素直に思える実力です。特に後半、ボロボロになる貫一郎を、「けっこう大
物俳優の謙さんがそこまでしなくてもいいんじゃないの?」と心配になるぐらい、体当たりで怪演しています。またこのシーンが泣けるんですよ。
 全四話構成で、最後は子供の世代の話になるので、渡辺謙は出てこなくなってしまうのですが、これまた、子供たちが切ないいい演技をするので
す。
 他の新選組隊士の配役も、なかなか似合っていると思います。特に近藤勇役の伊原剛志は、私の中でベスト近藤です。斎藤一役に竹中直人
は、乙女心には複雑ですが、人斬りのキラギラした感じは上手いなあ、と。
 10時間という長丁場ですが、時間を忘れて見入れる大作。武士と家族の切なさが詰まって、こんなに泣けたドラマは初めてです。ぜひ、食料と涙
対策のティッシュかハンカチを用意して、一気にどうぞ。(05.10.5)

※あとで分かったのですが、伊原剛志は近藤勇役ではなくて、土方歳三役でした。すいませんでした。

無用庵隠居修業
   水谷豊 主演   17年12月24日放送   ABC 朝10時から
 時は松平定信が寛政の改革を推し進めていたころ。枯れた隠居に憧れる日向半兵衛は、江戸城の警護を勤める直参旗本の大番士。子供の頃から世話を焼く用人・勝谷彦之助(岸部一徳)から、隠居をしたいなら妻をめとり、跡継ぎを作ってからに、さもなくば養子を向かえるようにと小言を受ける日々。江戸の街では辻斬りが横行し、倹約令と相まって、活気がなっていた。剣の腕が立つ日向は、同僚に見回りを誘いかけるが、同僚たちは皆、やる気がない。そんな中、日向も襲われそうになる。行きずりで助けた若者・相馬新太郎(田中偉登)と、辻斬りから同じ白檀の香りを感じた日向は、辻斬りの正体が新太郎の兄・安田兵庫(平山浩行)だと知る。安田は松平定信(杉本哲太)を恨み、斉藤与之助(野間口徹)の率いる世直し党に入っていた。しかしその世直し党の裏には、幕閣とつながりがあり、定信を貶める陰謀が企てられていた。
 身寄りのなくなった新太郎を養子にし、憧れの隠居生活を始めた日向。だが陰謀の影はまだうごめいていた。
 私利私欲に走る者たちの陰謀のために、無残に殺された者たちの仇を取るため、日向は知恵を巡らし立ち上がる。
 出戻りで日向に好意を寄せる旗本の娘・奈津(檀れい)が大奥に潜入したり、日向が長谷川平蔵(榎木孝明)と友人だったりと、出演者も多岐に渡り華やか。ストーリーも二転三転して見ごたえありました。
 原作は海老沢泰久の同名小説。
 BS朝日にて9月15日に放送された作品が、このたび地上波での放送となりました。
 
 
名奉行!遠山の金四郎
   松岡昌宏 主演   17年9月25日放送   МBS 夜8時から
 桜吹雪でおなじみの遠山の金さんをTOKIOの松岡昌宏が演じる3時間スペシャル。
 北町奉行の遠山金四郎は、遊び人の金次に化けて、常日頃から市中を見回っていた。世は水野忠邦が老中になった時代、倹約令が布かれ人々の間にはうっぷんがたまってきていた。そんな折り、金四郎が放蕩をしていた若い頃、世話になった魚問屋の粂島屋(西田健)が、吉原で人気の花魁・朧月(実咲凛音)と心中する。人徳があって評判もいい彼が、妻子と仕事を放り出して心中するなんて考えられない金四郎。調べていくうちに、その裏には魚河岸の移転に絡んだ悪だくみが明らかになっていく…。
 金さんの他にも、居酒屋『おかめ』の主人で密偵も引き受ける又五郎(平田満)に、女鼠小僧のおせん(稲森いずみ)、金四郎のことが大好きな母親・寿々(原田美枝子)、金四郎と対立する南町奉行・鳥居耀蔵(加藤雅也)、金四郎の後ろ盾となる若年寄の樋口出雲守勘解由(北大路欣也)など、いろいろな人物
が入り乱れての豪華作品。最期はもちろんお白洲で、証人を呼んで来いと開き直る悪人たちを前に、桜吹雪を見せての啖呵のお決まり名場面も。
 
 
名奉行!遠山の金四郎
   松岡昌宏 主演   18年8月13日放送   МBS 夜8時から
 昨年9月に放送された松岡昌宏主演の遠山の金四郎の2作目です。3時間を越えるスペシャルでした。
 異国船来航で江戸城内があわただしくなっているころ、水野忠邦の倹約令による締め付けで、庶民の間では不満が巻き起こっていました。そんな中、金さんたち行きつけの居酒屋おかめの看板娘、おたね(渡辺麻友)は、貸本屋の政吉(山崎裕太)といい仲に。政吉は、20年前に異人たちに攻められて江戸が壊滅する絵を描いた咎で死罪となった浮世絵師・月次郎の絵が好きで、彼の描いた美人画の水茶屋の娘に、おたねがよく似ていると言います。
 江戸の町では不審火が相次いで起こっていました。その現場に毎回居合わせる、浮世絵師の歌川国芳(吹越満)が疑われますが、下手人は月次郎をあがめる若者たちの集団だと分かります。ところがその首謀者の伊之助(村上新悟)が殺されてしまいます。そして政吉も追われる身に。
 金さんは伊之助を援助していた後ろ盾がいると目をつけます。その人物を、江戸に戻ってきていたおせん(稲森いずみ)が、危険に身を投じて証拠を盗み出し、示唆してくれます。
 一方、おたねは、政吉の言葉から、美人画のモデルが自分の母親ではないかと思い、調べ始めます。そして父の又五郎(平田満)から、真実を聞き出します。
 そして襲われる国芳を助けたことで、金さんは謎の真相にたどり着きます。 
 今回、猫が大好きで猫がいないと仕事ができないと言う国芳の屋敷の猫や、金さんが拾う子猫と、猫がたくさん登場。金さんが拾った子猫は、金さんの母親・寿々(原田美枝子)に銀ちゃんと呼ばれて可愛がられます。妖怪とあだ名されて嫌われる金さんのライバル・鳥居耀三(加藤雅也)も健在。『江戸を斬る』で遠山金四郎を演じた里見浩太朗も、花火師棟梁役でゲスト出演していました。
 
 
樅の木は残った

   田村正和 主演   10年2月20日放送   ABC 夜9時から

 70年にはNHKで大河ドラマ化された、山本周五郎の大作小説のドラマ化です。
 舞台となるのは徳川四代将軍のころ、実際に仙台藩で起こったお家騒動である、伊達騒動。仙台藩三代藩主である伊達綱宗が、遊興放蕩を理
由に蟄居引退を申し渡される。そして新たな藩主となったのは、わずか二歳の亀千代。その後見役となった伊達兵部は、藩をわたくしものにし始
める。兵部には、藩の取りつぶしを進める幕閣の要人・老中筆頭の酒井雅楽頭との、仙台藩の石高を半分にした後、残りの半分を与えられるとの
密約を交わしているという噂があった。
 藩吟味役・原田甲斐は兵部に取り入り、国家老に取り立てられる。他の心ある重臣からは裏切り者とそしりを受けることになる。400年近くの間、
裏切り者と思われてきたこの原田甲斐を、山本周五郎は大胆に解釈。藩を救うため、敢えて兵部の懐に入り、その密約の証拠をつかみ、そして自
分の命と名を犠牲に藩を救う憂国の士として描きました。
 孤独に戦い抜いた忠義の士・原田甲斐を田村正和が寡黙に熱演。原田甲斐の気の置けない友人・伊東七十郎に山本耕史や、最初の犠牲者と
なった藩士の娘・宇乃に井上真央など、脇役陣も見どころあり。また笹野高史が憎らしげに伊達兵部を演じていたのも印象深かったです。


柳生武芸帳
   反町隆史 主演   10年1月2日放送   大阪 昼4時から

 毎年恒例のテレビ東京系の新春ワイド時代劇。今年はとうとう7時間の放送となりました。ちなみに今年の提供はヤマダ電機でした。
 将軍家指南役・柳生但馬守宗矩(高橋英樹)が、徳川家康(石橋蓮司)に命じられて作った柳生武芸帳。三巻からなるその巻物は、江戸城、柳
生家、京の薮左中将嗣長卿の元にそれぞれ保管されていた。だがその武芸帳には、三巻揃えると徳川幕府を揺るがす秘密が隠されていた。
 その武芸帳を巡り、宗矩を不倶戴天の敵と憎む山田浮月斎(松方弘樹)は、三巻揃えて天下を獲ろうと暗躍し、江戸城にある武芸帳が盗まれた
ことでその存在を知った、反幕派の公家・中ノ院大納言通村(京本政樹)や、お家再興を望む佐賀の竜造寺家の遺児・夕姫(逢沢りな)なども、武
芸帳を狙い始め、熾烈な争奪戦が展開される。宗矩から武芸帳の奪還を命じられた柳生十兵衛もまた、その戦いの場へと身を投じたのだった。
 戦いの場は江戸から、尾張、京へと西へ西へと移っていく。その中で十兵衛は、出会った夕姫への思慕を覚え、盲目的に従っていた父への疑問
を抱いていく。そんな十兵衛と行動を共にする弟・又十郎(速水もこみち)もまた、中ノ院の娘・桔梗(菊川怜)と恋に落ちるも、兄とは違う決意をす
る。また浮月斎を父と慕い、その命令に従っていた多三郎(山本太郎)も、浮月斎への疑念を抱き始め、似た境遇の十兵衛に敵愾心を募らせる。
武芸帳の争奪戦は、いつしか父と子の葛藤へと移っていく。
 柳生武芸帳は誰の手に、そしてそこに書かれた秘密とは。十兵衛は徳川幕府を守れるのか。
 原作は五味康祐の同名小説。松平健など、ゲストも多数でした。
 

 

 

番組公式サイト http://www.tv-tokyo.co.jp/yagyu/top.html
吉原裏同心〜新春吉原の大火
   
小出恵介 主演   16年1月3日放送   NHK 夜7時30分から
 
 約1年半前に放送された同名作品の続編スペシャルです。お正月らしい、レギュラー全員集合の話でした。
 神守幹次郎と汀女(貫地谷しほり)が吉原で暮らすようになってから、三度目の正月を迎えます。そんな折、薄墨太夫(野々すみ花)と人気を二分していた香瀬川太夫(安達祐実)が神隠しにでも遭ったかのようにいなくなります。調べていくと、つい先日にも、市川(朝倉あき)がいなくなっていました。もちろん、女が簡単に大門を抜けられるはずもなく、吉原を仕切る四郎兵衛(近藤正臣)から幹次郎は捜査を頼まれます。そのうち、市川に似た女が深川の岡場所にいると噂を聞き…。
 事件の裏には、自分の欲望のためなら、どんな非道もやってのける血も涙もない男達の姿が。遊女たちの切ない願いを踏みにじる彼らに、幹次郎は、怒りの鉄槌を下す。
 
   中村七之助 永山瑛太 主演   21年1月2日放送開始   NHK 夜7時20分から
 「天才かく覚醒せり」とサブタイトルのついた、NHKの正月時代劇です。
 裕福な青物問屋の長男として育った枡屋源左衛門(中村七之助・のちの伊藤若冲)。絵を描くことへの情熱が抑えきれず、弟の勧めもあり、絵描きとなります。ある日出会った茶人・売茶翁(石橋蓮司)の紹介で、相国寺の僧で詩人の大典顕常(永山瑛太)の元を訪れます。大典は若冲の絵の才能に気づき、彼の絵のために力を貸すことを約束、若冲もそんな大典を心の支えに、絵の修業に励みます。池大雅(大東俊介)や丸山応挙(中川大志)との出会いも経て、若冲は大典の「この世の森羅万象、そして仏を描いて欲しい」という希望をかなえるため、『動植綵絵』という前代未聞の大作を仕上げます。
 若冲と大典、二人の心の絆と愛を描いた作品でした。


 
龍馬・最後の30日
   新井浩文 主演   17年11月19日放送   NHK 夜9時から
 坂本龍馬が暗殺される5日前に出した手紙が見つかるなど、近年新たに見つかった史料を元に、龍馬暗殺前の30日間の彼とその周りの人物の動きを追った、60分の作品でした。
 大政奉還を成し遂げた坂本龍馬は、さっそく新国家の実現に向けて動き出す。新しい国の中枢には、薩摩、長州、徳川、そしてその三者から中立にある福井の協力が不可欠だと考え、一堂に集めての会議の場をもうけようとしていました。しかし、あまりに目立ちすぎる彼の動きを土佐藩は警戒し、暗殺を企む。日本を一つにまとめるため、時には嘘やはったりも交えて人を動かす龍馬は、薩摩、長州、徳川からも疎まれ始めていた。尽力した新国家構想の実現にやっと一歩踏み出した彼の知らないところで、彼の死の運命の時は迫っていた。
 淡々とした展開ながら、最後の松平春嶽(筒井道隆)の言葉が重く響く、龍馬暗殺の黒幕を新たな仮設で描いた作品でした。
 
 
 
   上白石萌音 主演   24年5月4日放送   ABC 夜9時から
 岡っ引きの兄・六蔵(満島真之介)とその妻・およし(野波麻帆)の一膳飯屋『姉妹屋』で働くお初は、仕出しに行った武家屋敷で火事に遭います。炎が迫る中、死者の声を
聞いてみなを誘導し、お初たちは助かります。後日、不思議な話が好きで収集している南町奉行の根岸肥前守(坂東彌十郎)に呼び出されたお初。不思議な事件を自分の代わりに
集めてきてほしいと言われます。根岸は火事の時のお初の様子を見ていたのでした。お初は、相方として付けられた与力見習いの吉沢右京之介(京本大我)とともに、死人憑きになった
という職人の男に会いに行きます。
 お初たちに襲い掛かろうとする職人の男の顔に、お初は別の浪人の顔が重なって見えます。そしてのちに男が幼い女児を殺害していたことが分かります。
 根岸に呼び出され、浅野内匠頭が切腹したという田村家に連れていかれたお初と右京之介。赤穂浪士事件から百年経った今、庭の岩が毎夜震えるというのです。震える岩を見たお初は、
重なって見えた浪人と別の浪人が斬りあっている幻を見ます。そして岩が震え出したのは、職人の男が死人憑きとなったのと同じころだと知り、二つの怪異はつながっていると考えます。
 今度は幼い男子が殺される事件が起こります。この下手人にも同じ顔が見えたお初。死人憑きが次々と乗り移る相手を変えていることに気づき、浪人の素性をお初と右京之介と六蔵は
調べます。浪人の名は内藤安之介(味方良介)といい、生類憐みの令が出ていた時代に、子供を襲おうとしていた犬を斬り、その罪で浪人となり、貧困と絶望の果てに妻と娘と息子を
斬り殺していたのでした。死んだ人間の想いを知ってしまうことに疲弊していたお初でしたが、次の事件を防ぎ、安之介の魂を救いたいと奮闘します。
 一連の事件を解決したお初に、根岸は「霊験お初」の二つ名を付け、今回の事件を自身の随筆集『耳袋』に記したのでした。
 特殊効果もふんだんに使ったホラー時代劇です。原作は宮部みゆきの小説『霊験お初捕物控』です。


 
 

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